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しおりを挟む空也を漆黒の川の中に引きずり込もうとした化け物は、絶叫した後気配が消えた。
空也はさっき、確かにイケメンの両目が強く光るのを見て、その瞬間化け物は悲鳴を上げた。イケメンが何か力を使ったと思うのが普通だ。
「もしかして、あなたがあの化け物を退治してくれたんですか?」
空也は、まだ空也の腰に両腕を回し、空也の体を抱く名前さえ知らない長身のイケメンを見上げ尋ねた。
「化け物?何の事だ?俺はただお前がお前自身から橋から落ちようとしてたから助けただけだ。お前、酔っ払ってんのか?」
長身のイケメンの声は、空也とイケメンの立つこの大きな橋を吹き抜ける冬の風並みに冴て冷たく聞こえる。
そして、橋の外灯に照らされるイケメンの顔は、やはり本当に整い美しい。
「酔っ払ってません」
空也がボソッと答えると、イケメンはサッと空也から腕と体を離した。
途端に、空也の体が冬の風で一気に冷える。
それだけ、空也を抱いていたイケメンの体が空也を温めていたのだ。
「なら、いい」
イケメンはそう言い、空也から去ろうと背を向けゆっくり歩きだした。
「あの……すいません……僕……」
空也が言うと、イケメンは、空也を振り返えらず足を止めた。
「僕……ここがどこか分からなくて。家に帰らないとならないんですが、帰り方が分からなくて……」
空也の頭は、体以上に冷えて冷静になっていた。
やはり、自分は自宅に帰るしか無いし、
天空神と結婚するしか道は無いのだ。
どんなに嫌で嫌で苦しくても…
空也は、イケメンの黒のロングコートの背中を真っすぐ見て静かで穏やかな声で告げた。
「なら、スマホでタクシーでも呼べよ……」
イケメンは振り返らず、やはり返答は冷たく聞こえた。
空也は、よく周りから凄くしっかりしてる風に見られる。
イケメンにもきっと、空也はそう見られてるんだろうなあ……と思いつつ、空也はため息を我慢した。
「僕、スマホ置いてきて、今持ってないんです」
空也は下を向くと、表情が自嘲に少し歪んだ。
結局、イケメンは自分のスマホアプリでタクシーを呼びんだ。
5分ほどでタクシーは来て、イケメンは、後部座席に空也だけを乗せた。
「ありがとうございました」
空也は、車内からフロントガラスを開けて、車外のすぐ横にいるイケメンに言った。
家にはやはり帰りたくない。
しかし、イケメンに、家に帰りたくない気持ちを悟られないよう、空也は出来るだけ笑顔を無理やり作ってイケメンに向けた。
だが、それ以上に、さっき会ったばかりなのに、空也はこのイケメンと別れるのがなんとなく寂しかった。
それ所か、このイケメンと過去にどこかで会った気がして「以前、僕とどこかで会った事ありますか?」と聞きたい位だったが、勿論聞ける訳も無かった。
「ああ……」
イケメンは、空也の顔を見詰めていたが、返答は最後まで素っ気無い。
しかし、イケメンとは周りに気を使わなくても人が勝手に周りに集まるのが日常だろうし、周りに気を遣う必要など無いのだと空也は諦めた。
「運転手さん、車出して下さい」
空也は、運転席に向かい言った。そして、フロントガラスを閉めようとした。
だが、その時、イケメンが一言を発した。
「ちょっと待て。運転手、後部座席側のドアを開けろ。俺も乗る」
「えっ?!」
運転手は驚くと、後ろを振り返り空也の顔を見た。
「えっ?!」
空也も驚く。
「いいから、俺も乗せろ!ドアを開けろ!」
イケメンが急かすので、空也は、イケメンにも何か事情があるのかと思った。
「運転手さん、ドア、開けて下さい!」
空也が言うと、空也の座っている右側とは逆の左の後部座席側のドアが開き、イケメンがさっと車内に入り空也の横に座った。
「どっ……どうしました?」
空也は、眉間に皺を寄せイケメンに尋ねた。
「お前、時間あるんだろ?今から一緒に何かメシ食いに行くぞ!」
イケメンは、前を向いたまま、表情も口調も無愛想だった。
しかし、何故か空也は、このイケメンとまだ一緒にいられると思うと心がホッと落ち着いた。
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