インフィニット ウィンター  

みゃー

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  時間は戻る。

 人の多いイルミネーション輝く通りで、一礼して去る空也の走る後ろ姿を長身の男が見送っていた。
 だが、空也の姿が消えたのを見た長身の男は、急に背後に気配を感じた。
 
 そして、その一瞬で周囲の人々や車やバスの動きが止まり、様々な色のイルミネーションも街も人々の装いも灰色になり色彩を失った。
 時間が止まったのだ。
 
 しかし、長身の男と、その背後に急に現れた男に変化は無く動きも止まらなかった。

 「何だ?何の用だ?」

 長身の男は、後を振り返りもせず、空也が去って行った先を見据えながら背後の男に言った。
 
 背後の男は、長身の男より少し若い感じだが、グレーの短髪にやはり長身の甘いマスクのイケメンで、短かいコートもニットもズボンも黒で統一されていた。

 「久しぶりに会ったと言うのに、実の弟にもっと言い方があるでしょう……でも、良かったですよ、兄上お元気そうで。そして、もうこの人間世界にかれこれ長く滞在されてるんで、地球の人間世界の暮らしがよほどお気に召されたようで」

 グレーの髮の男は、やれやれと言った感じで呆れたような口調だ。そして間を置かず質問の答えを口にした。

 「兄上に、父上からの良い話しをお持ちしてこの地球に来ました」

 「良い話し?」

 長身の男は、まだ前をみたままだ。

 「ええ」 

 グレーの髮の男は、ニコリとした。

 「で、だから何だ?」 

 長身の男の口調は冷ややかだ。

 「実は近々、我等一族の仇の天空神が結婚するとかで、その相手がどうもこの地球の人間のようでして、父上が恨みを晴らすべく、地球にいて警護も手薄なその天空神の婚約者を亡き者にしたいと。ちょうど兄上が地球にいるので天空神の婚約者を手にかけるのを兄上に命じるとおっしゃっていて、それを僕がお伝えに参りました」

 「…」

 重大な事を聞いても、長身の男は黙って微動だにせず、まるで、もう目の前にいない空也をまだ視線で追いかけているように前を見詰める。

 「で、兄上に父上のご命令をお伝えに上がる前に、天空神の婚約者の詳細を探ってましたら……何と言う偶然か、その婚約者は今さっき兄上とぶつかったあの男ですよ。もう兄上も、あの男がただの人間じゃ無いのは見た瞬間にはお分かりだったでしょうが」

 「…」

 やはり、長身の男は無言、後ろすら振り返らない。

 弟は、兄の冷たさに、再び微妙な表情を浮かべた。

 すると、長身の男の唇がやっと開いた。 
 しかし、やはり口調は冷ややかだ。

 「俺は、ケガで自分の生まれや過去の記憶をずっと以前に失くして、色々な異世界をただ放浪して今はたまたま地球に来てふらふらしてる身だ。そんな俺は、天空神の婚約者を殺す役に適任じゃ無い……お前が勝手にやればいい」

 「ええ~っ!」

 弟は大声を上げた。しかしその声音は、どこかしら大袈裟に演技っぽく聞こえる。そして説得は続いた。

 「いい話だと思いますけどね。父上は、もし兄上が天空神の婚約者を殺せたら、もう兄上を自由にさせてやると約束なさいましたよ。兄上が天空神の婚約者さえ殺せば、もう父上は、兄上に父上の跡を継ぐように言わないし、どこに行こうが追いかけないし、父上からも一族からも自由にしてやるとおっしゃってましたけど」

 長身の男は、下に視線をやると少し考えたが、やがてすぐに空也が走り去った方を見て、空也を追うようにスッとその場から一瞬で消えた。
 
 すると、弟も満足そうにニコリと笑い、もうすでに目の前に兄はいないのに右手を振り激励した。

 「兄上!では天空神の婚約者の始末、よろしくどうぞ!」

 そして、弟も風のように消え去り、又、街の人々や車やバスが動き出し、街の全てに彩りが戻った。

 

 

 
 

 

 

 

 

 
 
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