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みゃー

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  長身のイケメンと別れた後、空也は5分程走り、その後そこそこ大きな橋に辿り着き、息を弾ませながら橋の入り口近くから夜の川を眺めた。
 
 だが、ここも都会の真ん中なのに、今は周りには誰もいないし、車も時々通るだけ。
 
 頬をかすめる風は冷たく、橋には明るいライトがあると言っても、かなり下を流れる大量の水はただ黒くうねる不気味さしか見え無い。
 
 そして、欄干に手をかけていた空也は、産まれた時から肌身離さず、ずっと自分の右手にしていた水晶のブレスレットが無い事に今ようやく気付いた。
 
 それは何でも、空也の許婚の神様からの贈り物で、空也を災難から守ると言われていた。
 小学校や中学、高校に行く時も、宗教上の理由からと、空也だけブレスレットは許された。
 そして、何故か同級生達からも、一度もブレスレットの事を聞かれたり、からかわれたりもしなかった。
 
 不思議な事に、やはり神の力か……
 空也が成長する毎に、ブレスレット自体が勝手に空也の手首の太さに合わせ大きくなった。
 
 しかし、昼間の結婚衣装合わせの時に空也が自発的に取り、そのまま呉服店に置いて来てしまった。
 
 「ハァ…」

 空也は溜め息をつき、今更ながら、スマホだけでなく自分の何もかも置いて、そこまでしてここまで逃げるように走って来たんだと、自分のしてしまった行動を思い返した。

 (僕は、許婚の異世界の神様と結婚したくないんだろうか?)

 すると、その空也の心の中の問いに反応したかのように、どこからか話し声が聞こえてきた。

 「これは珍しや。お前、纏う気が高いから誰かと思えば、お前は、この世とは違う異世界の天空神に天空世界を追放されて、この元々人間の住む世界に堕とされて、人間に生まれ変わった元天空人だね?お前は、一体どんな罪を犯したんだい?」

 「えっ?!」

 空也は、周りをキョロキョロしたが誰もいない。
 
 そして、声は明らかに川の中から聞こえてきた。
 
 天空神とは、空也が数日後に結婚する許婚の神様の事だ。

 「この世界には、異世界の天空世界で恐ろしい大罪を犯した天空人の罪人が、天空神から罰を受けて時々堕とされて来る。それに、天空世界だけでなく他の異世界の罪人も時々堕とされて来る。あの有名な、なよ竹のかぐや姫も、本当は罰を受けてこの世界に堕とされた異世界の罪人だったと言う話しを聞いた事はないかい?」

 「…」

 空也は一瞬黙った。
 
 しかしすぐに、その声が怖いと思いながらもその声に誘われるように欄干から身を乗り出し、川面に向かい何故か普通に答えていた。

 「何を言ってるか分からない。僕はただの人間だし…」

 すると、川から楽しそうな声がした。

 「イヒヒ……やはり記憶は消されてるんだね。でもお前は本当に元々はこの世界の人間じゃないよ。お前は元々異世界の人間。絶対に何か恐ろしい大罪を犯して天空神から天空世界を追放されたんだよ。この世界に堕とされるなんて、イヒヒ……お前は一体、どんな恐ろしい罪を犯したんだろうねぇ……イヒヒ…」

 「違う!僕は罪なんて……罪なんて犯してない!……だって天空神は、僕の…」

 許婚だと言いかけて、空也は言葉を飲みこんだ。
 
 だが、それならおかしい話になる。
 空也が、本当に天空神に異世界の天空界を追放された大罪人なら、何故数日後にその天空神と空也は結婚するのか?
 
 すると、川からの声は囁くようになった。

 「おいで……こっちにおいで……お前から、深い迷いと不安と悲しみがする。この世界に堕とされ、今お前は辛いだろう?……人間とは、この世界の暮らしはさぞ辛いだろう?さぁ、儂の所へおいで……そうすれば何もかも楽になる。おいで……おいで…」

 空也は、ダメだと思っているのに、その声に反応して誘われるように体がふらふらと、更に川に身を乗り出し落ちそうになる。
 
 そして漆黒の川面からは八本の黒い手が出ていて、それが空也を手招きしていた。
 
 だがそこに突然、そんな空也の右腕を強く掴んで空也を抱きしめ、それを阻止した者がいた。
 そしてその人物は空也に、目が覚めるような強い口調で言った。

 「おい!しっかりしろ!」

 ハッと我に返った空也は、その声をどこかで聞いたと、抱きしめられたままその人物の顔を見た。
 空也の方が背が低いので、見上げる格好だ。
 
 すると、橋のライトに照らされたその人物は、さっき道で腕がぶつかった長身のイケメンだった。
 
 「…」

 空也が言葉も出ず驚き呆然とイケメンの顔を見詰めると、何故かイケメンの両目が光ったように見えた。
 
 空也は、ビクっとして更に驚いた。
 
 しかし同時に、空也には見えなかったが、川の中のさっきまで空也としゃべっていた何かが断末魔のような大きな声で叫んだ。

 「こんな力を使うなんて、お前は誰だ?!助けて!ギャーっっっ!」

 そして、これも空也からは見えなかったが、まっすぐ川から出ていた黒の八本の腕は、ピクピクと痙攣して、まるで絶命していくように暗流の中に沈んでいった。
 
 



 
 


 

 

 

 

  

 
 

 

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