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しおりを挟む恒輝は、明人と一緒に校門を出て、送迎車に乗り帰宅する明人を見送る事にした。
恒輝は、明人を見送る最中、明人の恒輝を見詰めてくる強い視線は感じていた。
しかし、さっきキスしかけた事を意識する余り、恒輝はまともに明人の顔が見られなかった。
ただ、恒輝は、さっき明人と一緒にいて、ほんの一瞬だけ感じたかすかな甘い匂いが頭からずっと離れなかった。
オメガは、フェロモンを抑える薬を飲んでいても、アルファの性欲コントロールを狂わせる程では無い微弱なフェロモンの香りが常にしていると、恒輝はそれ位は知っていた。
フェロモン不完全症の恒輝には、オメガのフェロモンは感知出来ないはずだが……
あの匂いが、明人のフェロモンかどうかは全く分からないが……
恒輝の唇から自然と明人に、さっきの匂いが明人のものか質問しようと言葉が出ていた。
本当に、恒輝はそれを知りたくて知りたくて仕方無かった。
「あのさ……」
しかし、偶然にも明人も「あのさ……」と同時に切り出し、恒輝と明人の「あのさ……」の声が重なる。
明人も、さっきわずかに感じた匂いが恒輝からフェロモンが出ていたなではないかと感じていて、それを確認したかったのだ。
本当に、明人はそれを知りたくて知りたくて仕方無かった。
恒輝も明人も、恒輝の体質に関して同じ疑問を感じていた。
でも、明人はやはり、アルファのフェロモンを出せない、オメガのフェロモンを感知出来ないはずの恒輝を傷付けたくなくて、もどかしさを感じながらも質問をそっと飲み込み恒輝に言った。
「あっ……又明日……」
明人は、本当はもっと恒輝と一緒にもっといたかった。
「おお……」
恒輝も質問ともどかしさを飲み込みそう返し、明人の乗った車が見えなくなるまで明人を見送った。
だが、恒輝が帰宅しても、恒輝の頭からずっとあのわずかに感じた甘い匂いが離れない。
そして、明人が無事帰宅したかどうかがやたら気になり、初めて恒輝から
―もう帰ったか?―
と、明人に帰宅確認メールを入れた。
明人から返信はすぐに来た。
―帰ってるよ。何かあった?―
―別に。帰ってんならいい―
恒輝は、ただそれだけぶっきらぼうに返した。
しかし、恒輝は本当は、凄く……明人の声が聞きたかった。
そして、あの匂いを思い出すと、恒輝はどこか落ち着かなくて、体も熱っぽくてソワソワし始めた。
こんな事は今まで無かった事だ。
常に恒輝の事に目ざとい花菜は……
「コウちゃん、今日絶対なんかおかしい!」
と家の中でギャーギャー騒いだが、恒輝は、いつも通り花菜を軽く受け流し早めにベッドに入り眠りに着いた。
だが、眠ろうとしても、やはり体が熱っぽくソワソワして、しかも、目を閉じると明人の顔ばかり思い出しなかなか寝付けなかった。
「何だよ?……これ……」
恒輝の体が、本当にコントロール出来ない。
まるで、発情しかけているかのようだ。
でも恒輝は、自分の体の急激な異変を感じながらも、冷静にひたすら自分を諌めた。
そして明日も学校なので早く眠ろうと目を閉じ続けた。
だが、恒輝はいつの間にか眠っていて、いつの間にか朝だった。
しかし、あまり寝てないのは確かだし、
恒輝はダルそうにその瞼をベッドの中で開けた。
すると、下半身に何か違和感があった。
「ヤベっ!」
恒輝は、大慌てて上半身起き上がり、初夏の季節の薄い掛布団をめくった。
すると、恒輝の下着とパジャマのズボンが、いつの間にやら夢精で濡れまくっていた。
「嘘だろ……中坊かよ……」
恒輝は、フェロモン不完全症でアルファの発情期は来ないが、ベータの男子と同じ普通の性欲くらいはあった。
だから、本当にごくたまに自慰もするし夢精などした事は無かった。
恒輝の個人的イメージでは、夢精などまだ心と体の成長期真っ盛りの幼い中学生がするものだった。
これではまるで、今恒輝に心と体の成長期がかなり遅れていきなり来た感じにすら見える。
そして恒輝は、今回の夢の中で、誰かと舌を絡めて激しいキスしていたのを薄っすら覚えていた。
恒輝は、夢の中でまるで、まるで別人のように、飢えた獣のようにその誰かの仰向けの体に被さり、その誰かの唇を貪っていた。
だが、その誰かの顔は、おぼろげでハッキリしなくて……
「マジかよ……」
恒輝は、下半身を濡れさせたまま、しばらく身動きせずかなり戸惑い唖然としていた。
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