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しおりを挟む今日の授業全てが終わり、この後は恒輝が世話になってる皆川家での恒輝と明人と御崎の3人での勉強会の時間だった。
混み合う電車で不特定多数の乗客と距離の近くなるのはオメガには危険なので、明人はいつもの送迎用の運転手付きの車で、恒輝より先に皆川家に向かう事になる。
オメガの送迎用の車は、国から支給されてる事もあり、使用するのは支給されたオメガ本人かその家族しか基本許されない。
しかし、アルファが、車を使用するオメガとパートナーある事を国に登録すれば結婚してなくても同乗できる。
アルファの恒輝とベータの御崎は、二人で電車で恒皆川家に向かうので、校門の所で、車に乗った明人を見送る事になった。
後部座席の開けた車窓から、明人が恒輝を見詰めてくる。
学校から恒輝の家まで電車で15分。
車ならたかだか10分かからない程度。
それなのに、いつもアルファのようにしっかりしてる明人が、まるで恒輝がいないとダメみたいな不安そうな表情をするので、それを見ると恒輝は胸がチクチクとした。
恒輝は、明人の視線の変化、僅かな睫毛の動きすら気になる。
そして、あんなにオメガ嫌いだった、しかも不完全なアルファの恒輝かいつからこうなったのだろうか?
こんな明人を見ると、恒輝は、まるで自分が普通のアルファであるかのように、オメガの明人に安心感を与えたくなり明人を見て言った。
「俺もすぐに行くから……」
でも、恒輝は相変わらず。
それ以上は言葉は多くつむげないし、口調もぶっきらぼう。
恒輝は、そんな自分に悶々としたが、
明人は意外とうれしかったのか?満面の笑顔を恒輝に向けて応えた。
「うん。待ってるよ」
恒輝は、引き寄せられるように明人から目が離せなくなり、ただボーっと見詰めた。
明人を乗せた車は、ゆっくり皆川家に向かい発車した。
その姿を恒輝は見送ったが、その恒輝の後ろ姿を、御崎が何を思うのかじっと見詰めていた。
しかし、この様子を、遠くの校舎の教室の窓から佐々木も観察していた。
会議はもうすぐ始まるが、たまたま用があり立ち寄った。
そして、明人の車が発車すると、たまたま偶然佐々木のズボンのポケットの中の携帯が鳴った。
手に取り、電話をかけてきた相手の表示を見る。
すると、西島と、恒輝と同じ苗字だった。
そしてそれは、まさしく恒輝の父親だった。
窓から、まだ恒輝を見ながら電話に出る。
「こんにちは!西島先輩」
佐々木は実は、恒輝の父の大学の後輩だった
佐々木は、いかにも好印象の後輩を演じる。
そして、大人同士が交わす型通りな挨拶を交わした後、恒輝の父親が切り出した。
「恒輝には内緒だか、昨日、恒輝を転校させようと思っている翔真学園の見学にいってきたよ。翔真学園の校長とも面会して話も出来た。これも、佐々木のアドバイスと、私が翔真学園の校長にも直接会えるよう佐々木が手配してくれたからだ。今回の中間テストの成績が良ければ転校はさせないと恒輝には言ってたが、今回の中間テストだけ良くてもこの分だと多分恒輝は留年になる可能性が高い。やはり佐々木の言う通り、もう出来るだけ早く寮生活の翔真学園に転校させ、来年翔真学園でもう一度3年生やらせるよ」
佐々木は、電話で恒輝の父親に顔が見えないのをいい事にニヤリと笑った。
そして、教室には佐々木の他は誰もいなかったが、念の為に小声になる。
「それは良かったです。私も安心しました。今通ってるこの学園は比較的自由なのは良いのですが、残念ながらこの学園の教育方針では恒輝君は絶対にダメになると思うので、先輩のご決断で恒輝君は必ず立ち直ると思います。それと何度も申し上げてすいません。私が自分の教える生徒を他の学園に転校するよう斡旋したこの件は、くれぐれもも周りには、それと恒輝君にもご内密に願います。今回、西島先輩の息子さんだからこそ特別なので。それと、西島先輩と私が先輩後輩なのも、恒輝君が甘えない為にも伏せてどうかよろしくお願いします」
実は、最初に恒輝の翔真学園への転校を考えたのは恒輝の父親では無く、佐々木だった。
数日前の恒輝と佐々木との面談では、佐々木はあたかも、恒輝の父親から言い出したかのように恒輝の父親と口裏を合わせ恒輝に話していた。
明人が恒輝のいるこの高原(たかはら)学園に転校するのがわかると、佐々木はいち早く高原学園に教師として潜入した。
そして佐々木は、大学の先輩の子供を心配する良き後輩の振りをして早くから恒輝の父親に連絡を取り、最初は恒輝の成績や生活態度の話からまず始めて恒輝の転校を勧めていた。
翔真学園は、全寮制の男子校。
恒輝が転校すれば、オメガの明人は身の危険があるので絶対に入学は許されないし恒輝を追えない。
佐々木は、恒輝が意地を張り恒輝の父親と会話すら全く出来ない現状を利用している。
「ああ。佐々木、恩にきるよ。しかし、お前は学生時代から本当に頼りになるいい奴だな。今回も世話になったから、少しだが
和牛の詰め合わせとワインを佐々木の家に送ったよ。楽しんで貰えるとうれしい。でも、佐々木に何か困った事があれば私に何でも言ってくれ。今度は私が佐々木の力になるよ」
恒輝の父はそう言うと、佐々木は又ニヤリとして応えた。
「ありがとうございます。西島先輩」
電話は、和やかな雰囲気で終わった。
しかし、佐々木は、目付きを険しくして思った。
(西島先輩。俺の力になると言うなら、さっさとあんたの出来損ないアルファのくそガキを翔真学園にほりこんでくれ!)
そして、心の中での佐々木のは悪態は止まらない。
(西島恒輝……お前みたいなアルファに生まれながらアルファの能力の無い出来損ないアルファは、俺のような上級アルファには所詮敵わない。それに、明人……舐めた事言いやがって!アルファの能力を持たないアルファ相手に運命の番だと感じるだと?そんなものはお前のただの勘違いなんだよ!」
最近の佐々木は、あれ程求愛しているはずの明人にさえ険しい事を思うようになっていた。
更に、佐々木は不敵な嗤いを浮かべ、今度は直に口にして静かに呟いた。
「俺は高原学園も翔真学園も、明人の親も西島の親も握っていてどうとでも誤魔化せるし動かせる。明人が高原学園に転校した時から、所詮西島と明人は俺の手の平の上にいるんだからな……」
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