お見合いから本気の恋をしてもいいですか

濘-NEI-

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3.降って湧いたお見合い話②

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「いやもう、夕香里が乗り気でね。あの子あなたのこと気に入ってるから。なにも結婚しろって話じゃないのよ。お互いの知り合いに紹介するとかでもいいんだし」
「そうは言うけど、子どもの頃に会っただけだよ? 向こうだってそんな話受けないでしょ」
 こういうところは私の母親なんだなと痛感する。大雑把で深く考えない。勢い任せなところがそっくりで嫌になる。
「それがそうでもないのよ。涼葉に久しぶりに会えるの、結構楽しみにしてるみたいなのよ」
「楽しみって言われてもな……」
 実際、ちぃちゃんこと千颯くんとは幼稚園か小学校低学年の頃に会ったのが最後で、懐かしい気持ちはあるけれど、お見合いだなんて言われてもピンとこない。
「千颯くん凄いのよ。弁護士になって忙しくしてるらしいのよ」
「へえ」
「それにね、パパに似て物凄く色男になってるのよ」
「あっそ」
「なんなのその返事は。あなただってもう三十前なんだから、そろそろ真剣に結婚を考えなさいよ」
「結婚って……。そもそもちぃちゃんだって、懐かしいから会いたいだけじゃないの? おばさんが乗り気なだけで、ちぃちゃんがそうとは限らないでしょ」
「それはまあ、そうなんだけど」
「お見合いだなんて。南方のおばさんもだけど、お母さんが勝手に盛り上がってるだけでしょ」
 呆れてものが言えないとはこのことだ。
 南方のおばさんと母からしてみれば、仲良しな自分達の子供が結婚したらなんて、冗談混じりで盛り上がったのかもしれないが、それに巻き込まれる方はたまったもんじゃない。
「そもそもちぃちゃんっていくつだっけ」
「あなたより四つ上だったかな。だから三十二じゃないかしら」
「そんなの結婚を焦る歳じゃないでしょ」
「そんなことないわよ。出会いなんてそうそうあるもんじゃないんだから。それともあなた、もう新しい恋人でもできたの」
 母に顔を覗き込まれ、不意に一夜を共にした彼の顔が思い浮かぶ。いや、一夜を共にしたと言っても別になにかあった訳じゃない。ないけども。
 それにあの人のことは、連絡先どころか名前だって知らない。会いたいと思ったところでどうにもできない相手だ。
「そんな簡単に恋人ができれば苦労はしないよ」
「だったらいいじゃない。千颯くんみたいなあんな色男、会ったらすぐに好きになるわよ」
「外見で好きになる訳じゃないでしょ」
「幼馴染みみたいなものじゃない。会って話をすれば意気投合するわよ」
「私が断るって選択肢はない訳?」
「夕香里が悲しむわ。なにも絶対千颯くんと結婚しろって話じゃないから。会うだけ会ってよ」
 お願いと頭を下げられてしまって、どうやらもう先方にOKを出したと察する。断れる話ならこんなに強引に勧めてはこないだろう。
「分かった。会うだけならいいよ。久しぶりだし、私も懐かしいからね」
「本当に? なら早速夕香里に連絡しないと」
 ウキウキして答えると、母はテーブルに置いてあったスマホを手に取ってメッセージを打ち始めた。
 慎次郎とのことで確かに心配をかけたから、母なりの気遣いなのも理解はできる。見合いと言われると気は重いけれど、久々に幼馴染みに会うだけだと思えば気は楽だ。
 残り少なくなった焼きそばを頬張ってスープを飲み、楽しそうに友人とやり取りする母の様子を眺める。
 腰を痛めたなんて心配したけれど、本題がこういうことだと分かるともう苦笑するしかない。
「ねえ涼葉、明日なんてどうかしら」
「どうかしらとは?」
「千颯くんとのお見合いよ」
「はあ⁉︎」
「善は急げって言うじゃない。千颯くんも忙しいみたいで、明日ならちょうど都合がつくらしいのよ」
「いや、急すぎるでしょ」
「いいじゃない。どうせ予定はないんでしょ」
「ないけどさ……」
「じゃあ決まりね」
 私の返事も聞かずにまたスマホと睨めっこが始まったかと思うと、母のスマホに着信があって今度は会話し始めた。
 どうやら相手は南方のおばさんで、スピーカー越しにテンションの上がった様子が伝わってくる。
 そうしてトントン拍子に話が決まり、約二十年ぶりに幼馴染みとお見合いという形で再会することが決定した。
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