お見合いから本気の恋をしてもいいですか

濘-NEI-

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13.帰国①

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 スペインに滞在した日々は心が洗われるようで、こんなにも充実した時間は初めてだった。
 別れを惜しんでくれる千颯くんのおじいちゃんおばあちゃんと別れると、手配したタクシーに乗り込んで空港に向かう。
「凄く寂しい」
「そうだね。また来よう」
 グラナダの店で買った食器をおばあちゃんはいたく気に入ってくれて、お皿に私の名前を付けて、大切にすると言ってくれた。
 些細なことかもしれないけれど、全てのことが愛おしくて、そこから離れるのが酷く辛かった。
 帰りの飛行機で眠れるか心配だったけど、疲れは溜まっていたらしく、乗り継ぎの記憶もぼんやりとしていて気が付いたら日本に到着していた。
「ゆっくりしたいだろうけど、もう少し一緒にいたいから家に行っていい?」
「それは構わないけど、荷物一回置きに帰った方がいいんじゃないかな」
「じゃあそうするよ」
 正直なところクタクタで、飛行機であんなに眠ったのにベッドでゆっくり眠りたいと思ってしまう。
 でも千颯くんが来るならダラダラできないし、時差ボケ防止にはちょうどいいのかもしれない。
 帰国ラッシュの混雑した空港から電車に乗り、一旦解散して買い物してから家に帰ると、一週間も家を空けたせいでなんだか部屋の空気がこもっている気がする。
「掃除機かけて、洗濯物干しちゃおうかな」
 買ってきた食材を冷蔵庫に入れ、一度でも座ったら絶対にヤル気がなくなるのが分かるので、勢い任せに窓を開け、千颯くんの分も布団を干して掃除機をかける。
 スペインに行く前は、千颯くんとは付き合いたてなのに一週間もなんてと思っていたけど、行ってみたら最高の思い出になった。
「行動するって大事だな」
 しみじみと呟いて掃除機をかけ終えると、今度は玄関に置いていたスーツケースの足元を雑巾で拭き、部屋で開けて洗濯物を洗濯機に放り込む。
 ほとんどはおばあちゃんが洗ってくれたので、持って帰ってきた汚れ物は少ないけれど、今着てる服も洗ってしまいたいし、とりあえず部屋着に着替えた。
「あとは風呂掃除か」
 次から次へとやることがあるのは気が紛れていい。ふとした拍子に、別れ際の千颯くんのおじいちゃんおばあちゃんの顔が浮かんでしまって感傷的になってしまう。
 とっても素敵な思い出だからこそ、切なくなってしまうのだ。
「これでちぃちゃんが来ても大丈夫かな」
 部屋に戻って辺りを見回し、スーツケースの中身を出して片付ける前に一度外に干す。そのまましまっても問題ないだろうけど、なんとなく天気もいいし干してしまいたかった。
 ようやくへたり込むようにテーブルの前の座椅子に座ると、ショルダーバッグからスマホを取り出して、今度はバッグの中身を整理する。パスポートはもうしばらく使うこともないだろう。
「スペインに行ったんだよなあ」
 パスポートをしみじみ眺めてボーッとしていると、テーブルに置いたスマホが震え、千颯くんからメッセージが届いた。
「ああ、お昼ご飯の時間か」
 なにか買っていく。支度はしないで大丈夫という二件続く文章に、そこまで気が回らなかったことに苦笑してしまう。
 ありがとうと短くメッセージを返すと、面倒だけど立ち上がってキッチンに向かい、買ってきたペットボトルのお茶をグラスに移して部屋に戻る。
「ああ、お土産もまとめとかないと」
 お茶を飲みながら開きっぱなしのスーツケースを眺め、すっかりヤル気が鎮静化してしまって、もう座ってるのがやっとだ。
 千颯くんには悪いけれど、これ以上はもう限界だ。後でやることにして今は体を伸ばしたい。
 スマホのマナーモードを解除して充電ケーブルをセットすると、ベッドに寝転んで大きく伸びをする。
「あぁあッ、帰ってきたー」
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