お見合いから本気の恋をしてもいいですか

濘-NEI-

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26.海水浴②

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 千颯くんが選んだ爽やかな香りが印象的なワインを楽しみながら、まずは彩り豊かな前菜が運ばれてくる。普段ならしないけれど旅の恥は掻き捨てと思って、目の前の料理を写真に収める。
 六つに分かれた長方形のお皿に、六種類の前菜が盛り合わせてあり、酸味の効いたピクルスや小さなテリーヌ、生春巻きやキャビアの乗った一口大のそうめんらしきものもある。
 どれも美味しくてワインも進み、千颯くんとの会話も弾む。
 次に根菜のポタージュスープが運ばれてくると、続けて新鮮な魚介料理や、みやざわ和牛のステーキを堪能して最後にデザートを楽しんだ。
「あぁあ、もうお腹いっぱい」
「凄いボリュームだったね」
 ラウンジからデッキに出て、そこに設置されたカウチに腰を下ろすと、海からの夜風が当たって気持ちがいい。
「都内からそんなに離れてないのに、凄いリゾート感だよね」
「確かにね。来てみて良かった」
 うっとりするほどロマンチックな空気だけど、隣で家族連れがワイワイ騒いでいるので、二人で顔を見合わせて苦笑する。
 そのまま夜空を見上げてたわいない話をしつつ、秋になったら紅葉こうようを見に旅行しようと話が盛り上がる。
 三十分ほど外の空気を楽しむと、部屋に戻って今日撮った写真を見て過ごし、海での写真がないと千颯くんが騒ぐので、明日の帰りも海に立ち寄ることに決めた。
「旅行の写真もだけど、ちぃちゃんとの思い出は、記録がいっぱい残ってる」
「俺もスズといると、なんか写真撮りたくなるんだよね」
 千颯くんはそう言うと、フォルダにある私が大あくびしている腑抜けた写真を見せてきた。
「ちょっと、これ消してって言ったのに」
「可愛いからダメ」
「どこが可愛いの、もう」
 千颯くんといると自然体でいられるし、こんな些細なことも嬉しかったりする。バカらしいことでさえ、楽しいことに変わってしまうのだから不思議だ。
「あ、スズ」
「ん?」
「岩盤浴の予約してたよね」
「ああ。そうだったね」
「じゃあ先にお風呂行ってこようか」
「そうだね」
 支度を済ませて部屋を出ると、三十分後に待ち合わせにして大浴場でお風呂に入る。
 日焼け止めを適当に塗ったせいか、少し肌がヒリヒリする気がしたけれど、海でたくさん泳げたのは楽しかったし、千颯くんの水着姿は目のやり場に困るほどセクシーだった。
 思い出したら顔が赤くなった気がして、大浴場の広い湯船にしっかり浸かり、のぼせたようなフリで顔を煽ぐ。
 やはりここでも家族連れの姿があり、私もいつかは千颯くんとの間に子どもができることを想像する。
 ブライダルチェックの結果、特に大きな問題は見つからなかった。だからといって、欲しいと思ってすぐに授かれるものでもないし、仕事との折り合いもある。
 千颯くんはどう考えているのか。その辺りの話をしたことはないけれど、私よりも歳上だし、子どもは早く欲しいと思っているかもしれない。
 私ももうすぐ二十九になるし、その辺りは真剣に考えないといけないと思った。
 お風呂から出ると、千颯くんは先に上がって待っていて、お互いにお風呂の感想を言い合って一旦部屋に戻る。
 岩盤浴を予約した時間が近くなり、完全貸切の個室に案内されるとサウナウェアに着替えて岩盤に寝転ぶ。
「へえ。こういう感じなんだ」
「俺も初めて。じわっとあったかいんだね」
「いい汗かけそう」
 通路を挟んで隣で横になる千颯くんを見ると、くつろいだ様子で天井を見上げている。アロマの香りが心地よくて、うっかりすると眠ってしまいそうだ。
「いい旅行になったね」
「国内にして良かったわ」
「海外もいいけど、まだ行ってない都道府県たくさんあるし」
「そうだよな……連れて行きたい街がたくさんあるよ」
 千颯くんはどこかを思い浮かべるようにそう答えた。
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