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14.再会と答え③
「俺の気持ちは、そうだね。色々考えたけど、変わってないよ」
「そっか。衝動的な感傷だった訳じゃないんだね」
「その感じだと、俺はフラれるのかな」
「ごめん。今日までずっと考えたけど、まだ答えが出てないの」
お箸を置いて背筋を伸ばすと、真っ直ぐに彼の顔を見て、断る理由が見つからなくて困ってると正直に伝えることにした。
「今でも慶弥さんのご両親への罪悪感があるの。はっきりと断れないのはそれも大きい」
「瑞穂は俺のこと嫌い?」
「ううん。そんなことはないよ。でも情熱的な好きっていう感じはない。そこが引っ掛かるから、話を受けるべきなのかずっと迷ってる」
「もしかして、親御さんとなにかあった?」
「実は半月前くらいに衝突しちゃって。それもあって、純粋に付き合うってことを考える余裕がなかったのもある」
「それは、結婚が現実的じゃないから?」
「そうだね。慶弥さんと付き合うとしても、私は夢を諦めるつもりはないし、慶弥さんにも結婚を意識しすぎないで欲しい気持ちがある」
「俺はその辺りに拘ってないけど」
「うん。でもご両親と会ってしまったから、慶弥さんと付き合うなら、それは視野に入れて考えないといけないことだと思うんだよね」
「そっか。瑞穂は真面目すぎるんじゃないかな」
「そうかな」
「もっと気楽でいいよ。友だちよりちょっと進んだ関係とでもいうか、波長が合うから、一緒に過ごす時間を増やしていくくらいでいいのに」
「でも」
「俺の親に会っちゃったから、凄く思い悩むんだろうけど、まずはそれを切り離して考えてみてよ。それでも仕事に集中したいから恋人は要らないって感じかな」
「分からない。作る努力はしてこなかったし、必要に感じることもなかった」
「じゃあ、もしかしたら、恋人がいたらなにか変化が起こる可能性もあるんじゃないか」
「そうなのかな」
「まあ俺も一人で気楽にやってきたから、いないのが当たり前だったんだけど」
慶弥さんは苦笑すると、これじゃ説得にならないねと呟く。
「ごめんね、煮え切らなくて」
「とりあえずさ、付き合ってみてから考えるんじゃダメなのかな」
「え?」
「瑞穂は色々考えすぎる。親のこととか一旦置いといて、俺と合うかどうか試せばいいよ。それこそ気楽に」
「いいのかな」
「いいんだよ、その程度で。俺思ったんだけどね、恋をしようと思ったら凄く大変だけど、恋に落ちるのは案外一瞬のことなんだよ。理屈とかじゃない」
「慶弥さんは、恋に落ちたの」
「うん。理屈じゃなかった」
これでも俺も考えたんだよと言って苦笑すると、慶弥さんは肩の力を抜いて欲しいと続けた。
「子どもみたいでもいいんじゃないかな。いいな、好きだなって、そんな風に思える瞬間があるなら、屁理屈こねてないで付き合ってみればいい」
「そこまで言われたら、断れないよね」
「よし。俺の粘り勝ちだね」
「こんな面倒臭い私だけど、本当に大丈夫?」
「付き合ってお互いを知っていこうよ。俺だって結構面倒臭いよ?」
この歳まで独り身なんだからと、冗談まじりに笑う慶弥さんに釣られて私もようやくクスッと笑う。
「さあ。じゃあ改めてよろしくってことで。はい、乾杯」
「乾杯。よろしくね」
こうしてようやく慶弥さんの告白を受け入れると、これまでモヤモヤしてたものがスッと晴れたような気がした。
「そっか。衝動的な感傷だった訳じゃないんだね」
「その感じだと、俺はフラれるのかな」
「ごめん。今日までずっと考えたけど、まだ答えが出てないの」
お箸を置いて背筋を伸ばすと、真っ直ぐに彼の顔を見て、断る理由が見つからなくて困ってると正直に伝えることにした。
「今でも慶弥さんのご両親への罪悪感があるの。はっきりと断れないのはそれも大きい」
「瑞穂は俺のこと嫌い?」
「ううん。そんなことはないよ。でも情熱的な好きっていう感じはない。そこが引っ掛かるから、話を受けるべきなのかずっと迷ってる」
「もしかして、親御さんとなにかあった?」
「実は半月前くらいに衝突しちゃって。それもあって、純粋に付き合うってことを考える余裕がなかったのもある」
「それは、結婚が現実的じゃないから?」
「そうだね。慶弥さんと付き合うとしても、私は夢を諦めるつもりはないし、慶弥さんにも結婚を意識しすぎないで欲しい気持ちがある」
「俺はその辺りに拘ってないけど」
「うん。でもご両親と会ってしまったから、慶弥さんと付き合うなら、それは視野に入れて考えないといけないことだと思うんだよね」
「そっか。瑞穂は真面目すぎるんじゃないかな」
「そうかな」
「もっと気楽でいいよ。友だちよりちょっと進んだ関係とでもいうか、波長が合うから、一緒に過ごす時間を増やしていくくらいでいいのに」
「でも」
「俺の親に会っちゃったから、凄く思い悩むんだろうけど、まずはそれを切り離して考えてみてよ。それでも仕事に集中したいから恋人は要らないって感じかな」
「分からない。作る努力はしてこなかったし、必要に感じることもなかった」
「じゃあ、もしかしたら、恋人がいたらなにか変化が起こる可能性もあるんじゃないか」
「そうなのかな」
「まあ俺も一人で気楽にやってきたから、いないのが当たり前だったんだけど」
慶弥さんは苦笑すると、これじゃ説得にならないねと呟く。
「ごめんね、煮え切らなくて」
「とりあえずさ、付き合ってみてから考えるんじゃダメなのかな」
「え?」
「瑞穂は色々考えすぎる。親のこととか一旦置いといて、俺と合うかどうか試せばいいよ。それこそ気楽に」
「いいのかな」
「いいんだよ、その程度で。俺思ったんだけどね、恋をしようと思ったら凄く大変だけど、恋に落ちるのは案外一瞬のことなんだよ。理屈とかじゃない」
「慶弥さんは、恋に落ちたの」
「うん。理屈じゃなかった」
これでも俺も考えたんだよと言って苦笑すると、慶弥さんは肩の力を抜いて欲しいと続けた。
「子どもみたいでもいいんじゃないかな。いいな、好きだなって、そんな風に思える瞬間があるなら、屁理屈こねてないで付き合ってみればいい」
「そこまで言われたら、断れないよね」
「よし。俺の粘り勝ちだね」
「こんな面倒臭い私だけど、本当に大丈夫?」
「付き合ってお互いを知っていこうよ。俺だって結構面倒臭いよ?」
この歳まで独り身なんだからと、冗談まじりに笑う慶弥さんに釣られて私もようやくクスッと笑う。
「さあ。じゃあ改めてよろしくってことで。はい、乾杯」
「乾杯。よろしくね」
こうしてようやく慶弥さんの告白を受け入れると、これまでモヤモヤしてたものがスッと晴れたような気がした。
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