嘘つき同士は真実の恋をする。

濘-NEI-

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19.これから知っていく②

「ごめん瑞穂。ちょっとトラブルで、会社に顔出さないといけなくなった」
「え、大丈夫なの? すぐ行かないと」
「うん、ごめん。瑞穂このまま帰る?」
「どうしようかな」
「もし夜まで大丈夫なら、とりあえず俺の家で待っててくれないかな」
「それは別に構わないけど」
「ごめんね。水族館はまた今度ね」
「いいよ。仕事なんだから仕方ないって」
 私よりも落ち込んでしまった慶弥さんを励ますと、早速駅まで引き返して来た電車に乗り込んだ。
「結構混んでるね」
「俺に掴まってなね」
「ありがとう」
 週末なのもあって、昼過ぎの電車は混雑している。家族連れやカップル、友だち同士。様々な顔ぶれの中で、私たちは恋人同士に見えているんだろうか。
 電車が揺れる度、慶弥さんに腰を抱かれて密着してるのは、周りから見えづらいとはいえ、かなり恥ずかしい。
「顔赤いけど、具合悪い?」
「違う違う。掴まってないと立ってるのキツいから」
「そう? あと一駅だから、もう少し頑張って」
「うん」
 そんな会話をしている間も、別に悪いことをしてる訳じゃないのに、周りからそっと盗み見されてるようで羞恥心が募っていく。
(この混雑では密着せざるを得ないから、見逃して欲しい)
 そうこうしてるうちに、ようやく慶弥さんの自宅がある最寄駅に到着すると、会社には車で向かうらしく、二人で一緒に家まで帰ることになった。
「ごめんね瑞穂。結局一人にしちゃうとか」
「全然いいよ。それよりこんな風に休日出勤とか、よくあるの」
「……うん。まあ、時々ね」
 微妙に間があったと思うのは気のせいだろうか。
「そうなんだ。お疲れ様」
「不動産屋も見にいくはずだったのに。本当にごめん。あ、もしお腹減ったら、適当に冷蔵庫の物使ってくれていいから。棚にお菓子もあったと思う」
「いいのいいの。ありがとう。じゃあ勝手に使わせてもらうね」
 なんだか違和感を覚えるけど、仕事のことが気になっているんだろうし、ここは早く慶弥さんを送り出さないと。
「瑞穂……」
「ん? 運転気を付けてね。遅くなりそうなら早めに連絡して。電車で帰るから」
「ごめんね」
「ごめんはいいから。ほら、行ってらっしゃい」
「うん。行ってきます」
 玄関でキスをして慶弥さんを見送ると、鍵を閉めてリビングに引き返す。
 なにか言おうとしていたような気もするけど、休日にわざわざ連絡があるくらいだし、仕事なのに引き止めても仕方ない。
 そう思ってテレビをつけると、使い方を教えてもらったので、サブスクで映画でも見て時間を潰すことにする。
 まだ付き合うと決めて一日経ってない。
 私たちは他人よりも少しだけ身近になった程度で、相手の本質なんてまだ何も知らなかった。
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