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22.呼び出し②
そんなやり取りをしつつ、私が寝室に移動して不動産屋さんに問い合わせている間に、どうやら慶弥さんにも電話がかかってきたらしい。
幸いにも私が希望する物件なら、すぐに内見が出来るらしく、今日でも案内は可能だと言う。
慶弥さんに相談してから決めたほうがいいだろうと、担当者の名前を確認してから一旦電話を切り、彼の電話が終わるのを待った。
「いや、本当に無理なんだって」
慶弥さんは困ったように頭を抱えている。
「本当だよ。瑞穂が来てるんだよ」
突然私の名前が出て驚いていると、慶弥さんはスピーカーを手で押さえてお袋からとスマホを指差した。
無理だとかダメだとか繰り返してる様子を見ていると、もしかすると呼び出しの連絡だったのだろうか。
「いや、今日は本当に時間ないんだって。うん、だからそうだって。本当だよ。え? なんでだよ」
益々困惑した様子の慶弥さんを見守っていると、彼は私をチラリと見て、久々の休みだからゆっくりさせたいと溜め息を吐く。
どうやら私が電話に出た方が話は早そうだ。
「代わろうか?」
小さな声で話しかけると、慶弥さんは驚いたように目を見開く。そしていいのかと確認すると、電話の向こうにいるだろうお母様に代わると言って、スマホを私に手渡した。
「ごめんね、瑞穂」
「いいよ。もしもしお電話代わりました。赤西です。ご無沙汰してます」
『お久しぶり。ごめんなさいね、せっかくお休みのところ』
「構いませんよ。それよりどうなさったんですか」
『いえね、美味しい牡蠣をいただいたのだけれど、私たち夫婦では食べきれなくて。慶弥を食事に呼んだら赤西さんがいらしてるって言うものだから』
「そうだったんですね。お誘いは大変嬉しいのですが、実は私、転勤が決まりまして。今日はその家探しも兼ねてこちらにお邪魔してるんです」
『あら、そうだったの』
「ええ。ですから私は予定があって伺えませんけど、慶弥さんだけ伺うようにお伝えしましょうか」
元々は昨夜帰る予定だったし、何気なくそう答えると慶弥さんがギョッとしている。
『そんな。赤西さんがいらしてるのに、慶弥だけなんて寂しいわ。ご用事はいつ頃終わるのかしら』
「終わる時間ですか? 少しお待ちいただいてもよろしいですか」
『ええ』
一旦マイクをオフにすると、慶弥さんを見つめてどうしようかと相談する。
「あのね。不動産屋さんは今すぐにでも内見OKらしいから、慶弥さんのご実家に顔を出すなら、夜なら行けないこともないの」
「いやでも……」
「せっかくだし、美味しい牡蠣食べたくない?」
「まあ食べれるなら食べたいけど」
「ほら、私明日も休み取ってるから。今日も泊まっていいなら一緒にいられるし。せっかく声をかけてくださってるんだし、夜で大丈夫そうなら顔出そうよ」
「瑞穂がそれでいいなら」
「うん。ありがとう」
そう答えてキスをすると、仕方ないなと慶弥さんは苦笑する。
「お待たせしました。今慶弥さんとお話ししてたんですが、ご迷惑でなければ夕方以降……そうですね、十九時くらいになってしまうかもしれませんけど、私もお邪魔してよろしいですか」
『あら、赤西さんも来てくださるの』
「はい。私もお母様にお会いしたいですし』
『嬉しいわぁ。でしたら是非夕食をご一緒しましょう。楽しみに待ってるわ』
「私も楽しみです。では、予定が終わり次第、慶弥さんから改めてご連絡をさせていただきますので」
『分かりました。腕によりをかけてお食事ご用意しておくから、お腹を空かせていらしてね』
「ありがとうございます。では、予定があるので申し訳ないんですが、一旦失礼しますね」
そうして電話を切ると、私は慶弥さんにピースして見せた。
幸いにも私が希望する物件なら、すぐに内見が出来るらしく、今日でも案内は可能だと言う。
慶弥さんに相談してから決めたほうがいいだろうと、担当者の名前を確認してから一旦電話を切り、彼の電話が終わるのを待った。
「いや、本当に無理なんだって」
慶弥さんは困ったように頭を抱えている。
「本当だよ。瑞穂が来てるんだよ」
突然私の名前が出て驚いていると、慶弥さんはスピーカーを手で押さえてお袋からとスマホを指差した。
無理だとかダメだとか繰り返してる様子を見ていると、もしかすると呼び出しの連絡だったのだろうか。
「いや、今日は本当に時間ないんだって。うん、だからそうだって。本当だよ。え? なんでだよ」
益々困惑した様子の慶弥さんを見守っていると、彼は私をチラリと見て、久々の休みだからゆっくりさせたいと溜め息を吐く。
どうやら私が電話に出た方が話は早そうだ。
「代わろうか?」
小さな声で話しかけると、慶弥さんは驚いたように目を見開く。そしていいのかと確認すると、電話の向こうにいるだろうお母様に代わると言って、スマホを私に手渡した。
「ごめんね、瑞穂」
「いいよ。もしもしお電話代わりました。赤西です。ご無沙汰してます」
『お久しぶり。ごめんなさいね、せっかくお休みのところ』
「構いませんよ。それよりどうなさったんですか」
『いえね、美味しい牡蠣をいただいたのだけれど、私たち夫婦では食べきれなくて。慶弥を食事に呼んだら赤西さんがいらしてるって言うものだから』
「そうだったんですね。お誘いは大変嬉しいのですが、実は私、転勤が決まりまして。今日はその家探しも兼ねてこちらにお邪魔してるんです」
『あら、そうだったの』
「ええ。ですから私は予定があって伺えませんけど、慶弥さんだけ伺うようにお伝えしましょうか」
元々は昨夜帰る予定だったし、何気なくそう答えると慶弥さんがギョッとしている。
『そんな。赤西さんがいらしてるのに、慶弥だけなんて寂しいわ。ご用事はいつ頃終わるのかしら』
「終わる時間ですか? 少しお待ちいただいてもよろしいですか」
『ええ』
一旦マイクをオフにすると、慶弥さんを見つめてどうしようかと相談する。
「あのね。不動産屋さんは今すぐにでも内見OKらしいから、慶弥さんのご実家に顔を出すなら、夜なら行けないこともないの」
「いやでも……」
「せっかくだし、美味しい牡蠣食べたくない?」
「まあ食べれるなら食べたいけど」
「ほら、私明日も休み取ってるから。今日も泊まっていいなら一緒にいられるし。せっかく声をかけてくださってるんだし、夜で大丈夫そうなら顔出そうよ」
「瑞穂がそれでいいなら」
「うん。ありがとう」
そう答えてキスをすると、仕方ないなと慶弥さんは苦笑する。
「お待たせしました。今慶弥さんとお話ししてたんですが、ご迷惑でなければ夕方以降……そうですね、十九時くらいになってしまうかもしれませんけど、私もお邪魔してよろしいですか」
『あら、赤西さんも来てくださるの』
「はい。私もお母様にお会いしたいですし』
『嬉しいわぁ。でしたら是非夕食をご一緒しましょう。楽しみに待ってるわ』
「私も楽しみです。では、予定が終わり次第、慶弥さんから改めてご連絡をさせていただきますので」
『分かりました。腕によりをかけてお食事ご用意しておくから、お腹を空かせていらしてね』
「ありがとうございます。では、予定があるので申し訳ないんですが、一旦失礼しますね」
そうして電話を切ると、私は慶弥さんにピースして見せた。
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