嘘つき同士は真実の恋をする。

濘-NEI-

文字の大きさ
61 / 87

22.呼び出し②

 そんなやり取りをしつつ、私が寝室に移動して不動産屋さんに問い合わせている間に、どうやら慶弥さんにも電話がかかってきたらしい。
 幸いにも私が希望する物件なら、すぐに内見が出来るらしく、今日でも案内は可能だと言う。
 慶弥さんに相談してから決めたほうがいいだろうと、担当者の名前を確認してから一旦電話を切り、彼の電話が終わるのを待った。
「いや、本当に無理なんだって」
 慶弥さんは困ったように頭を抱えている。
「本当だよ。瑞穂が来てるんだよ」
 突然私の名前が出て驚いていると、慶弥さんはスピーカーを手で押さえてお袋からとスマホを指差した。
 無理だとかダメだとか繰り返してる様子を見ていると、もしかすると呼び出しの連絡だったのだろうか。
「いや、今日は本当に時間ないんだって。うん、だからそうだって。本当だよ。え? なんでだよ」
 益々困惑した様子の慶弥さんを見守っていると、彼は私をチラリと見て、久々の休みだからゆっくりさせたいと溜め息を吐く。
 どうやら私が電話に出た方が話は早そうだ。
「代わろうか?」
 小さな声で話しかけると、慶弥さんは驚いたように目を見開く。そしていいのかと確認すると、電話の向こうにいるだろうお母様に代わると言って、スマホを私に手渡した。
「ごめんね、瑞穂」
「いいよ。もしもしお電話代わりました。赤西です。ご無沙汰してます」
『お久しぶり。ごめんなさいね、せっかくお休みのところ』
「構いませんよ。それよりどうなさったんですか」
『いえね、美味しい牡蠣をいただいたのだけれど、私たち夫婦では食べきれなくて。慶弥を食事に呼んだら赤西さんがいらしてるって言うものだから』
「そうだったんですね。お誘いは大変嬉しいのですが、実は私、転勤が決まりまして。今日はその家探しも兼ねてこちらにお邪魔してるんです」
『あら、そうだったの』
「ええ。ですから私は予定があって伺えませんけど、慶弥さんだけ伺うようにお伝えしましょうか」
 元々は昨夜帰る予定だったし、何気なくそう答えると慶弥さんがギョッとしている。
『そんな。赤西さんがいらしてるのに、慶弥だけなんて寂しいわ。ご用事はいつ頃終わるのかしら』
「終わる時間ですか? 少しお待ちいただいてもよろしいですか」
『ええ』
 一旦マイクをオフにすると、慶弥さんを見つめてどうしようかと相談する。
「あのね。不動産屋さんは今すぐにでも内見OKらしいから、慶弥さんのご実家に顔を出すなら、夜なら行けないこともないの」
「いやでも……」
「せっかくだし、美味しい牡蠣食べたくない?」
「まあ食べれるなら食べたいけど」
「ほら、私明日も休み取ってるから。今日も泊まっていいなら一緒にいられるし。せっかく声をかけてくださってるんだし、夜で大丈夫そうなら顔出そうよ」
「瑞穂がそれでいいなら」
「うん。ありがとう」
 そう答えてキスをすると、仕方ないなと慶弥さんは苦笑する。
「お待たせしました。今慶弥さんとお話ししてたんですが、ご迷惑でなければ夕方以降……そうですね、十九時くらいになってしまうかもしれませんけど、私もお邪魔してよろしいですか」
『あら、赤西さんも来てくださるの』
「はい。私もお母様にお会いしたいですし』
『嬉しいわぁ。でしたら是非夕食をご一緒しましょう。楽しみに待ってるわ』
「私も楽しみです。では、予定が終わり次第、慶弥さんから改めてご連絡をさせていただきますので」
『分かりました。腕によりをかけてお食事ご用意しておくから、お腹を空かせていらしてね』
「ありがとうございます。では、予定があるので申し訳ないんですが、一旦失礼しますね」
 そうして電話を切ると、私は慶弥さんにピースして見せた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

フリーランスエンジニアの優しすぎる無償の愛

咲妃-saki-
恋愛
26歳OLの木崎茉莉は人生のどん底にいた。上手くいかないことに慣れ、心を凍らせることで自分を守る毎日に絶望した茉莉は、雨の夜に思わず人生の終わりを願ってしまう。そんな茉莉に手を差し伸べたかっこいい彼。茉莉は、なぜか無償の愛のような優しさをくれる不思議な男性に少しずつ救われ、前を向いていく。けれど、疑ってしまうほど親切な彼には、親切であり続ける理由があって……。雨の夜の出会いがもたらした、優しくも切ない物語。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。 処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。 まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。 私一人処刑すれば済む話なのに。 それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。 目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。 私はただ、 貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。 貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、 ただ護りたかっただけ…。 だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ ゆるい設定です。  ❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。

秘められた薫り

La Mistral
恋愛
エブリスタにて、トレンド#恋愛で最高位 55位を獲得した作品です。 「愛しているよ」という夫の言葉が、今の美咲には虚しい空気にしか聞こえない。 欠けていたのは、理性を焼き尽くすような衝動。 ​クライアントの慎吾と交わす視線。ビジネスという仮面の下で共有される、剥き出しの欲望。 指先が触れる。名前を呼ばれる。ただそれだけで、美咲の積み上げてきた「良き妻」としての世界は音を立てて崩れ去る。 ​完璧なアリバイ、塗り固めた嘘。 夫の隣で微笑みながら、心は別の男の指先を求めている。 一度知ってしまった濃厚な「薫り」は、もう彼女を元の場所へは戻してくれない。 ​守るべき家庭と、抗えない本能。 二つの世界の境界線で、美咲が選ぶ「最後の一線」とは――。 欲望の熱に浮かされた女の、美しくも残酷な堕落の記録。