嘘つき同士は真実の恋をする。

濘-NEI-

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23.恋人としての再会①

 希望してた物件は、直接見るとイメージよりも印象が良くて、他にも見て回る覚悟を決めていただけに、拍子抜けするくらい簡単に絞り込むことが出来た。
 会社経由で管理会社を挟んでの契約も問題ないそうなので、翌日改めて連絡を入れることにして不動産屋さんを後にする。
「凄いね。結構簡単に見つかっちゃった」
「うちから車で二十分くらいだし、電車でも三十分かからないから、これからはもう少し頻繁に会えそうだね」
 雨が降りしきる中、慶弥さんの運転で彼の実家に向かう前に、デパートに寄ってお土産を買って行くことになっている。
「そっか。こっちに引っ越してきたら、仕事終わりにデートも出来るようになるのか」
「そうだよ」
 可笑しそうに肩を揺らす慶弥さんは、朝と違ってだいぶ落ち着いたように見える。
 そしてデパートに到着すると、やっぱり服装がカジュアルすぎるのが気になって、お土産を買う前に洋服を見て回ることになった。
「急に誘ってきたんだから、そんなの気にしなくていいのに」
「そうは言っても、デニムはね。もう少し親しくなったら大丈夫だろうけど、まだお会いするのは二回目だから」
「だったら俺がプレゼントするよ」
「え、ダメだよ。自分で買うから」
「いいって。異動のお祝いも兼ねて、せっかくだからさ」
「出たよ。優しさのパワハラ」
「ははは。別にいいんじゃない? ていうか、今役職は関係ないから。ただの恋人としてのお祝い」
「じゃあ、お言葉に甘えようかな」
「うん。そうして」
 幸いにもご実家にお邪魔するまでに時間はあるし、滅多に入ることのないハイブランドのショップも覗いてみたりして、小物ならお揃いで持つのもありだよねと、ショッピングして回る。
 そして、レディースフロアで着回しが利きそうなセットアップを試着すると、慶弥さんが無難すぎると難色を示した。
「せっかくだしワンピースとかはどう?」
「ああ、そういえば持ってないかも」
「あんな感じとかはどうかな」
 ディスプレイされたワンピースは、重ね着したようなデザインで、丸首のブラウスの胸元に切り返しがあって、腰元にリボンベルトが付いている。
 エクルベージュのブラウス部分と、厚手のタンジェリンオレンジのワンピースは、上にジャケットを羽織ればきちんとして見えると思う。
「いいね。着てみようかな」
「ジャケットも合わせてみたら? 今日着てるのでも良いけど、ブラウン系が可愛いと思うよ」
「そう?」
 慶弥さんとディスプレイを見つめて喋っていると、店員さんが近付いてきて、ご案内いたしましょうかと声をかけてきた。
 早速試着して、幾つか用意してもらったジャケットを合わせて一つに絞り込むと、慶弥さんからもいい感じとOKをもらって購入する服を決める。
「このまま着ていきます」
 タグの処理をお願いして、慶弥さんに会計をしてもらうと、着替えた服の入った紙袋を受け取って売り場を離れた。
「ありがとう、慶弥さん」
「凄く似合ってるよ」
「私も気に入った。よし、じゃあお土産を見に行こうか」
「そうだね」
 地下に降りて迷わず向かったのはワイン売り場。
 前回は焼き菓子を持参したけど、ご両親も実はワイン好きと聞いたら、さすがに本職としてこのお土産選びは譲れない。
 軽めの飲み口よりもフルボディがお好きなようなので、普段からよく飲んでいるらしいヨーロッパ産はあえて外し、アメリカワインから選ぶことにする。
 せっかくだから、ジンファンデルを使ったワインがいいかもしれない。これなら味わいに力強さがあって、果実の印象も強い。
「これとかどうかな」
「ああ、いいね」
 試飲しながらお土産に持っていくワインを絞り込むと、手軽な値段なので本数に悩む。
「一本だと味気ないかな」
「二本買う? 俺はどのみち、今日は運転があるから飲めないけど」
「あ、そっか。じゃあ一本でもいいかな」
「瑞穂は一緒に飲めばいい」
「手土産を一緒に飲む前提なのダメじゃない?」
 つい可笑しくなって噴き出すと、慶弥さんも楽しそうに笑う。
 結局は二本のワインを選んで、その他にもチーズやオリーブを購入すると、ようやく慶弥さんが今から向かうとご実家に連絡を入れ、デパートを出て車に乗り込んだ。
「親御さんにお会いするのは、あの時以来だね」
「もう一ヶ月も経ったんだよね。まさか二度目があるとは、あの時は思ってもいなかったけど」
「人の縁って不思議だよね」
「本当にそうだね」
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