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11.①
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駅前のビジネスホテルを何軒か回ったものの、部屋に空きがなく途方に暮れた様子の凌さんは、なにかを決意したように振り返って私の肩を掴んだ。
「散らかってるけど、俺んち行こっか」
「え、と……はい」
どんな顔をして頷けばいいか分からなくて、返事をしてからそっぽ向くことになってしまった。
混雑したタクシー乗り場を一瞥すると、電車で移動しようかと駅の構内に移動して改札を抜ける。
緊張から会話もなく、ただ繋いだ手が、絡んだ指がとんでもなく熱い。
ホームに到着した電車に乗り込むと、電車に揺られること二十分。相変わらず繋いだ手が熱く、にわかに色めき立つ気分を抑えられない。
電車を降りて改札を抜けると、駅から五分ほど歩いてコンビニに寄り、なにもないからと飲み物を何本か買ってから凌さんの自宅に向かう。
オシャレな低層マンションのエントランスを抜けると、オートロックの扉を抜け、ポストを確認した凌さんに続いてエレベーターに乗り込む。
「本当に散らかってるから、引かないでね」
「そんなにですか」
「そうなの」
最上階の三階で降りると、廊下を進んで角部屋の前に立ち、凌さんが生体認証でドアロックを解除する。
「とりあえず玄関に入って待っててくれる?」
そう言われて部屋の中に入ると、広々とした玄関にはウッドチェアが置かれていて、コートを脱ぐとすぐに、そこに座って待つようにと座らされた。
先に中に入った凌さんは、バタバタとフロアモップをかけて部屋中を走り回り、換気のために窓を開けたのか、ひんやりとした空気が流れて込んでくる。
そうして広い玄関で待つこと十分。ようやく納得がいったのか、凌さんはフロアモップを持ったまま玄関にやってくると、お待たせと苦笑した。
「さあ、上がって」
「お邪魔しますね」
ブーツを脱いで出されたスリッパに履き替えると、先を行く凌さんを追ってリビングに入る。
「うわあ、凄く広いんですね」
十畳以上は確実にありそうな広いリビングに、センスの良い家具が配置され、壁には額縁に入れられた写真やポスターが飾られている。
「あんまりしっかり見ないでね、隅々までは掃除出来てないから」
「分かりました」
綺麗に拭いたからと、白い革張りのソファーに座るように声を掛けられ腰を下ろすと、コンビニで買ってきたペットボトルを手渡された。
「あ、グラス使う?」
「いえ。このままで大丈夫です」
凌さんはごめんねと言いながら寝室へ向かい、慌ててシーツを取り替えてまだバタバタと動き回っている。
「あの、そんなに気を遣わなくて大丈夫ですよ」
「気を遣うっていうか、本当に掃除出来てなくて」
一通り気になるところの掃除が済んだのか、凌さんはようやくソファーに腰を下ろすと、ペットボトルの炭酸水を一気に飲んで喉を鳴らす。
「お風呂入るよね、着替えは俺の服でも良いかな」
「ありがとうございます」
お風呂とトイレだけは毎日掃除してるからと、凌さんは再び立ち上がって寝室に移動し、クローゼットから取り出した、今日話題に出たモコモコのパジャマを私に貸してくれる。
「バスタオルは洗面所にあるから、どれでも好きなの使ってね。それと洗うものがあれば、乾燥もかけちゃうから、洗濯機に放り込んでおいて」
「はい。じゃあ、お先にお風呂いただきますね」
そう答えると、すぐにバスルームに向かった。
「散らかってるけど、俺んち行こっか」
「え、と……はい」
どんな顔をして頷けばいいか分からなくて、返事をしてからそっぽ向くことになってしまった。
混雑したタクシー乗り場を一瞥すると、電車で移動しようかと駅の構内に移動して改札を抜ける。
緊張から会話もなく、ただ繋いだ手が、絡んだ指がとんでもなく熱い。
ホームに到着した電車に乗り込むと、電車に揺られること二十分。相変わらず繋いだ手が熱く、にわかに色めき立つ気分を抑えられない。
電車を降りて改札を抜けると、駅から五分ほど歩いてコンビニに寄り、なにもないからと飲み物を何本か買ってから凌さんの自宅に向かう。
オシャレな低層マンションのエントランスを抜けると、オートロックの扉を抜け、ポストを確認した凌さんに続いてエレベーターに乗り込む。
「本当に散らかってるから、引かないでね」
「そんなにですか」
「そうなの」
最上階の三階で降りると、廊下を進んで角部屋の前に立ち、凌さんが生体認証でドアロックを解除する。
「とりあえず玄関に入って待っててくれる?」
そう言われて部屋の中に入ると、広々とした玄関にはウッドチェアが置かれていて、コートを脱ぐとすぐに、そこに座って待つようにと座らされた。
先に中に入った凌さんは、バタバタとフロアモップをかけて部屋中を走り回り、換気のために窓を開けたのか、ひんやりとした空気が流れて込んでくる。
そうして広い玄関で待つこと十分。ようやく納得がいったのか、凌さんはフロアモップを持ったまま玄関にやってくると、お待たせと苦笑した。
「さあ、上がって」
「お邪魔しますね」
ブーツを脱いで出されたスリッパに履き替えると、先を行く凌さんを追ってリビングに入る。
「うわあ、凄く広いんですね」
十畳以上は確実にありそうな広いリビングに、センスの良い家具が配置され、壁には額縁に入れられた写真やポスターが飾られている。
「あんまりしっかり見ないでね、隅々までは掃除出来てないから」
「分かりました」
綺麗に拭いたからと、白い革張りのソファーに座るように声を掛けられ腰を下ろすと、コンビニで買ってきたペットボトルを手渡された。
「あ、グラス使う?」
「いえ。このままで大丈夫です」
凌さんはごめんねと言いながら寝室へ向かい、慌ててシーツを取り替えてまだバタバタと動き回っている。
「あの、そんなに気を遣わなくて大丈夫ですよ」
「気を遣うっていうか、本当に掃除出来てなくて」
一通り気になるところの掃除が済んだのか、凌さんはようやくソファーに腰を下ろすと、ペットボトルの炭酸水を一気に飲んで喉を鳴らす。
「お風呂入るよね、着替えは俺の服でも良いかな」
「ありがとうございます」
お風呂とトイレだけは毎日掃除してるからと、凌さんは再び立ち上がって寝室に移動し、クローゼットから取り出した、今日話題に出たモコモコのパジャマを私に貸してくれる。
「バスタオルは洗面所にあるから、どれでも好きなの使ってね。それと洗うものがあれば、乾燥もかけちゃうから、洗濯機に放り込んでおいて」
「はい。じゃあ、お先にお風呂いただきますね」
そう答えると、すぐにバスルームに向かった。
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