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(51)私の婚約者
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「は?なんで居るの」
突然現れた一稀さんは、奥に詰めてと私を押し退けてソファーに座ると、私の左手を手に取っておもむろにキスをする。
「なんでって、話聞いてたから心配だからに決まってるでしょ」
「いやいや、ここ日本だよ。仕事はどうしたのよ」
「俺が奏多のためならなんでもするの知ってるでしょ」
私と一稀さんがいつもの調子でやり取りしてると、その様子、と言うか一稀さんに見惚れてた坂牧さんがスプーンを落とした音で我に返る。
「ちょっと大丈夫?」
「ご、ごめんなさい。梅原さん、この方は」
「耳悪いの?それとも目が悪いのかな」
「ちょっと、一稀さん!ごめんなさいね、この人が私の婚約者なの」
一稀さんが離してくれない左手を持ち上げると、右手で指差してエンゲージリングを見せる。
婚約者なんてでっち上げの嘘だと思われてたのか、一稀さんのセクシーでワイルドな見た目に動揺したのか、坂牧さんは頬を染めて私たちを見つめたまま固まってしまった。
もっと上モノの男が欲しくなったのか、純粋に一稀さんに見惚れているだけなのか。
だけどさっきの話が嘘だとは思えなくて、私は大きめの咳払いをすると、カバンから封筒を取り出して坂牧さんの前に置いた。
「まあそういう訳で、私は貴方たちのせいで不幸になんてなってないし、今の話も信じてる。だからこれは貴方と吉澤へのご祝儀ってことで」
受け取るように目で促すと、坂牧さんは中身を見て驚いて顔を上げる。
「これって」
「全額下ろしてきて口座も解約したの。これで清算ってことです。だから幸せになるのよ」
「梅原さん」
困惑する坂牧さんに連絡先を削除してもらうと、これで本当に最後だからと釘を刺して伝票を掴む。
「じゃあ行きましょうかプリンセス」
「何ふざけてんの。じゃあね、坂牧さん。吉澤にも二度と会社周りや家に近付くなって釘刺しといてね」
一稀さんと一緒に席を立つと、元気な子どもを産んでねと最後に伝えて、振り返らずに会計に向かう。
「なーたんはやっぱり良い女だね」
「そんなことより、本当になんで居るの」
「俺の彼女最高じゃない?浮気相手に400万近いお金、ご祝儀って渡しちゃうんだよ?俺はそれを見学に来たんだよ。あんまり心配させないで」
会計を済ませて店を出てコートを羽織りながら、冷えるねって何気なく顔を見つめると、人目も憚らずに力強く抱き締められて、会いたかったよと呟いた一稀さんに唇を奪われる。
「ふぅ、んっ」
喧騒が掻き消えるこの感覚は久しぶりで、外にいることも忘れて一稀さんのキスを貪ると、唇を離した時にはまるで世界に二人だけみたいに、しばらくの間ただ見つめ合ってた。
「なーたん今日は情熱的だね。あーベッドに押し倒したい」
「なに言ってんの。て言うか放してよ、ここ外だよ」
ようやく冷静になって確認するように周りに視線を配ると、気まずそうに目を逸らす人たちが足速に通り過ぎていく。
「久々に会ってあんな情熱的なキスしといて、随分酷くない?」
またキスしようとする一稀さんを押し退けると、大きく咳払いをしてその腕の中から逃げ出す。
「それより本当にどうして来たの。まさか本当に心配で来てくれたの」
「当たり前でしょ。なーたんに俺っていう婚約者が居るのハッタリだと思われてそうだったし、来ないはずの元彼も来るかもしれないし、慌てて飛行機で飛んで来ちゃった」
「飛んで来ちゃったって、またそんな簡単に」
「会いたかったの俺だけ?」
「会いたかったに決まってるでしょ」
「あーもー。なーたんかわいー。押し倒したいー」
「バカ!うるさいよ」
ファミレスから最寄り駅までの道を、くだらないやり取りをして、怒ったり笑ったり騒がしく二人で歩く。
よくよく聞いてみれば、一稀さんは坂牧さんが来る前に私たちのすぐ隣の座席に座って、最初からやり取りを聞いてたらしい。
私は入り口側を向いて座ってたのに、一稀さんが私の後に店に入って来ていたことに気が付かなかった。
「ねえなーたん」
「ん?どした。ICカード忘れた?」
切符を買うのかと思って、券売機の使い方は分かるのかと揶揄うように振り返ると、ゾッとするくらい色っぽい顔をした一稀さんが耳元に囁く。
「家帰ったらエグいくらい、えっろいエッチしよ」
「ちょ、バカ!」
残念ながら、こんな彼が私の選んだ婚約者です。
突然現れた一稀さんは、奥に詰めてと私を押し退けてソファーに座ると、私の左手を手に取っておもむろにキスをする。
「なんでって、話聞いてたから心配だからに決まってるでしょ」
「いやいや、ここ日本だよ。仕事はどうしたのよ」
「俺が奏多のためならなんでもするの知ってるでしょ」
私と一稀さんがいつもの調子でやり取りしてると、その様子、と言うか一稀さんに見惚れてた坂牧さんがスプーンを落とした音で我に返る。
「ちょっと大丈夫?」
「ご、ごめんなさい。梅原さん、この方は」
「耳悪いの?それとも目が悪いのかな」
「ちょっと、一稀さん!ごめんなさいね、この人が私の婚約者なの」
一稀さんが離してくれない左手を持ち上げると、右手で指差してエンゲージリングを見せる。
婚約者なんてでっち上げの嘘だと思われてたのか、一稀さんのセクシーでワイルドな見た目に動揺したのか、坂牧さんは頬を染めて私たちを見つめたまま固まってしまった。
もっと上モノの男が欲しくなったのか、純粋に一稀さんに見惚れているだけなのか。
だけどさっきの話が嘘だとは思えなくて、私は大きめの咳払いをすると、カバンから封筒を取り出して坂牧さんの前に置いた。
「まあそういう訳で、私は貴方たちのせいで不幸になんてなってないし、今の話も信じてる。だからこれは貴方と吉澤へのご祝儀ってことで」
受け取るように目で促すと、坂牧さんは中身を見て驚いて顔を上げる。
「これって」
「全額下ろしてきて口座も解約したの。これで清算ってことです。だから幸せになるのよ」
「梅原さん」
困惑する坂牧さんに連絡先を削除してもらうと、これで本当に最後だからと釘を刺して伝票を掴む。
「じゃあ行きましょうかプリンセス」
「何ふざけてんの。じゃあね、坂牧さん。吉澤にも二度と会社周りや家に近付くなって釘刺しといてね」
一稀さんと一緒に席を立つと、元気な子どもを産んでねと最後に伝えて、振り返らずに会計に向かう。
「なーたんはやっぱり良い女だね」
「そんなことより、本当になんで居るの」
「俺の彼女最高じゃない?浮気相手に400万近いお金、ご祝儀って渡しちゃうんだよ?俺はそれを見学に来たんだよ。あんまり心配させないで」
会計を済ませて店を出てコートを羽織りながら、冷えるねって何気なく顔を見つめると、人目も憚らずに力強く抱き締められて、会いたかったよと呟いた一稀さんに唇を奪われる。
「ふぅ、んっ」
喧騒が掻き消えるこの感覚は久しぶりで、外にいることも忘れて一稀さんのキスを貪ると、唇を離した時にはまるで世界に二人だけみたいに、しばらくの間ただ見つめ合ってた。
「なーたん今日は情熱的だね。あーベッドに押し倒したい」
「なに言ってんの。て言うか放してよ、ここ外だよ」
ようやく冷静になって確認するように周りに視線を配ると、気まずそうに目を逸らす人たちが足速に通り過ぎていく。
「久々に会ってあんな情熱的なキスしといて、随分酷くない?」
またキスしようとする一稀さんを押し退けると、大きく咳払いをしてその腕の中から逃げ出す。
「それより本当にどうして来たの。まさか本当に心配で来てくれたの」
「当たり前でしょ。なーたんに俺っていう婚約者が居るのハッタリだと思われてそうだったし、来ないはずの元彼も来るかもしれないし、慌てて飛行機で飛んで来ちゃった」
「飛んで来ちゃったって、またそんな簡単に」
「会いたかったの俺だけ?」
「会いたかったに決まってるでしょ」
「あーもー。なーたんかわいー。押し倒したいー」
「バカ!うるさいよ」
ファミレスから最寄り駅までの道を、くだらないやり取りをして、怒ったり笑ったり騒がしく二人で歩く。
よくよく聞いてみれば、一稀さんは坂牧さんが来る前に私たちのすぐ隣の座席に座って、最初からやり取りを聞いてたらしい。
私は入り口側を向いて座ってたのに、一稀さんが私の後に店に入って来ていたことに気が付かなかった。
「ねえなーたん」
「ん?どした。ICカード忘れた?」
切符を買うのかと思って、券売機の使い方は分かるのかと揶揄うように振り返ると、ゾッとするくらい色っぽい顔をした一稀さんが耳元に囁く。
「家帰ったらエグいくらい、えっろいエッチしよ」
「ちょ、バカ!」
残念ながら、こんな彼が私の選んだ婚約者です。
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