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さっきの会話でどれくらい伝わったのか分からないけど、久々に知り合いに再会出来て嬉しいとは伝わってないようで、気に掛けてくれる優しさが嬉しかった。
前園さんに視線で大丈夫と返すと、そのまま改めて柳川事業部長に挨拶をして、浦野さんと一緒に部屋を出た。
来た時同様に刺すような視線を感じながら、浦野さんの後ろに控えてフロアを抜けると、エレベーターホールに到着したところで、胃痛を堪えて声を掛ける。
「お疲れ様です。この後のご予定の確認がまだ出来ておりませんでした。着任のご挨拶以外に、社内でのご予定はございますか」
「なにもないよ」
「では、明日以降のスケジュール確認をさせてください。役員フロアのミーティングルームを押さえておりますので、そちらにご移動願います」
「分かった」
どうしても目線を合わせることが出来ず、失礼なのは承知の上で、手帳を開いてさも何かを確認しながらのように対応して逃げ腰になってしまう。
到着したエレベーターに乗り込んで、気まずい沈黙に耐えながら役員フロアに移動すると、ミーティングルームに浦野さんを案内してから、一度部屋を離れて秘書室に戻る。
「お疲れ様です。浦野事業部長の着任のご挨拶を終えましたので、明日以降のスケジュール確認のために、ミーティングルームにご移動いただいてます」
「お疲れ様。では倉本さん、念のために補佐でついてあげてください」
「承知しました。じゃあ行こっか槇村さん。浦野事業部長をお待たせしてもいけないから」
「はい。よろしくお願いします」
ちょうどデスクの近くに居た青木室長と倉本さんに声を掛けると、室長の配慮で倉本さんがサポートに入ってくれることになって正直ホッとする。
秘書室を出ると、前園さんと共有したデータをタブレットで確認して、社外への挨拶回りの調整について、倉本さんに色々とアドバイスをもらう。
そしてペットボトルのお茶を用意すると、浦野さんが待つミーティングルームのドアをノックした。
「失礼します」
部屋に入ると浦野さんは立ち上がって窓の外を眺めていて、倉本さんを引き連れて来たことに少し驚いているようにも見えたけど、それはほんの一瞬のことで、すぐに笑みを浮かべた。
「浦野さん、お疲れ様です。槇村さんには一通り業務の説明を行なっておりますが、指導担当として同席させていただきます」
倉本さんが挨拶を済ませると、了承した浦野さんが席についてから私たちも腰を下ろす。
スケジュールの大まかな流れについては、これといった問題もなく、柳川事業部長の秘書である前園さんと共有した内容を確認して、浦野さんに把握してもらうことがほとんどだ。
だから時間はそう掛からず、倉本さんにサポートに付いてもらったけど、大きな問題も起こらずに打ち合わせは終わるはずだった。
「じゃあ今日はこのまま帰って構わないね」
「はい。明日からどうぞ宜しくお願いします」
ようやくこの緊張状態から解放されたと油断した瞬間、少し良いかなと浦野さんが口を開いた。
「倉本さん、槇村さんはまだ業務が残っているのかな」
浦野さんの突然の質問に、私の鼓動は急激に跳ね上がる。
倉本さんは少しだけ不思議そうにしつつも、聞かれるままに浦野さんに返答する。
「いいえ。ご承知の通り浦野さんの担当となりましたので、お見えになる前に切り上げた業務も急ぎませんし、彼女も今日は定時で上がります」
「そうか。なら槇村さん、これからお世話になるんだから、少し話がしたい。時間を取ってもらって構わないだろうか」
浦野さんの言葉の意図が分からずに、困惑して倉本さんに助けを求める視線を投げるけど、彼女はどこか面白そうに口角を静かに上げるだけで助けてくれない。
「駄目だろうか、槇村さん」
「いえ、こちらこそ、お時間を割いていただいてありがとうございます」
「良かった。この部屋はいつまで使えるんだろうか」
「以降に利用予定はありませんので、彼女の支度が済むまで、こちらでお待ちいただいて問題ありません」
「そうか。ありがとう」
前園さんに視線で大丈夫と返すと、そのまま改めて柳川事業部長に挨拶をして、浦野さんと一緒に部屋を出た。
来た時同様に刺すような視線を感じながら、浦野さんの後ろに控えてフロアを抜けると、エレベーターホールに到着したところで、胃痛を堪えて声を掛ける。
「お疲れ様です。この後のご予定の確認がまだ出来ておりませんでした。着任のご挨拶以外に、社内でのご予定はございますか」
「なにもないよ」
「では、明日以降のスケジュール確認をさせてください。役員フロアのミーティングルームを押さえておりますので、そちらにご移動願います」
「分かった」
どうしても目線を合わせることが出来ず、失礼なのは承知の上で、手帳を開いてさも何かを確認しながらのように対応して逃げ腰になってしまう。
到着したエレベーターに乗り込んで、気まずい沈黙に耐えながら役員フロアに移動すると、ミーティングルームに浦野さんを案内してから、一度部屋を離れて秘書室に戻る。
「お疲れ様です。浦野事業部長の着任のご挨拶を終えましたので、明日以降のスケジュール確認のために、ミーティングルームにご移動いただいてます」
「お疲れ様。では倉本さん、念のために補佐でついてあげてください」
「承知しました。じゃあ行こっか槇村さん。浦野事業部長をお待たせしてもいけないから」
「はい。よろしくお願いします」
ちょうどデスクの近くに居た青木室長と倉本さんに声を掛けると、室長の配慮で倉本さんがサポートに入ってくれることになって正直ホッとする。
秘書室を出ると、前園さんと共有したデータをタブレットで確認して、社外への挨拶回りの調整について、倉本さんに色々とアドバイスをもらう。
そしてペットボトルのお茶を用意すると、浦野さんが待つミーティングルームのドアをノックした。
「失礼します」
部屋に入ると浦野さんは立ち上がって窓の外を眺めていて、倉本さんを引き連れて来たことに少し驚いているようにも見えたけど、それはほんの一瞬のことで、すぐに笑みを浮かべた。
「浦野さん、お疲れ様です。槇村さんには一通り業務の説明を行なっておりますが、指導担当として同席させていただきます」
倉本さんが挨拶を済ませると、了承した浦野さんが席についてから私たちも腰を下ろす。
スケジュールの大まかな流れについては、これといった問題もなく、柳川事業部長の秘書である前園さんと共有した内容を確認して、浦野さんに把握してもらうことがほとんどだ。
だから時間はそう掛からず、倉本さんにサポートに付いてもらったけど、大きな問題も起こらずに打ち合わせは終わるはずだった。
「じゃあ今日はこのまま帰って構わないね」
「はい。明日からどうぞ宜しくお願いします」
ようやくこの緊張状態から解放されたと油断した瞬間、少し良いかなと浦野さんが口を開いた。
「倉本さん、槇村さんはまだ業務が残っているのかな」
浦野さんの突然の質問に、私の鼓動は急激に跳ね上がる。
倉本さんは少しだけ不思議そうにしつつも、聞かれるままに浦野さんに返答する。
「いいえ。ご承知の通り浦野さんの担当となりましたので、お見えになる前に切り上げた業務も急ぎませんし、彼女も今日は定時で上がります」
「そうか。なら槇村さん、これからお世話になるんだから、少し話がしたい。時間を取ってもらって構わないだろうか」
浦野さんの言葉の意図が分からずに、困惑して倉本さんに助けを求める視線を投げるけど、彼女はどこか面白そうに口角を静かに上げるだけで助けてくれない。
「駄目だろうか、槇村さん」
「いえ、こちらこそ、お時間を割いていただいてありがとうございます」
「良かった。この部屋はいつまで使えるんだろうか」
「以降に利用予定はありませんので、彼女の支度が済むまで、こちらでお待ちいただいて問題ありません」
「そうか。ありがとう」
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