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19-①
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「そろそろ帰るわ」
響騎さんがそう切り出したのは、洋嗣さんと悦司くんがしこたま飲んで、その場で雑魚寝してしまった十六時過ぎ。
「あら、帰るの? 泊まっていきなさいよ。久々に華恵ちゃんが来たんだから、女子トークさせてちょうだい」
おばさまが残念そうな顔をすると、実家ならではと言うべきなのだろう。誰が女子だよと疎ましそうに顔を歪め、響騎さんは砕けた口調で早く帰りたいんだと答える。
「空気読めよ」
ギュッと手を握られ、真っ赤に染まる顔を隠すために咄嗟に俯く。
「あらやだ、本性出したわね? 華恵ちゃん、こんなムッツリドスケベと一緒に居たら危険よ、送り狼よ」
「誰がムッツリドスケベだ」
「だってそうじゃない。どうせ華恵ちゃんの前だからって、カッコつけてるんでしょ」
「うるさいな」
面倒そうにあしらう息子と、負けじと喰らい付くおばさま。そんな親子同士の気の置けない軽口の叩き合いが暫く続くと、響騎さんは私の手を繋いだまま立ち上がった。
「もう良いって。そんなに会いたいならまた別の日に来る。俺もコイツも、仕事が変わって疲れも溜まってるんだ」
「だから泊まっていきなさいって言ってるのよ。お風呂も沸いてるわよ?」
「明日普通に仕事だし、なんの用意もしてきてねえよ」
「朝帰れば良いじゃない」
「またその件からやり直すのかよ」
「もう。本当に強情なんだから」
「お袋に言われたくない」
まだまだ続きそうな親子のやり取りを苦笑しながら傍観していると、響騎さんは突然なにかを思い出したように真面目な顔をした。
「あのオッサン、まだなにか言ってきてるんじゃないのか」
「大丈夫よ。こっちにはあの時の書類があるから」
「でもな……」
「大丈夫。お母さんを信じなさい」
おばさまはにっこり微笑むと、任せなさいと力強く答えて響騎さんの肩をしっかり掴んだ。
「すまないな、本当は関わりたくないだろうに」
「なに言ってるの。可愛い息子と、未来のお嫁さんのためだもの。浦野の血に縛られてはダメ。私が絶対許さないから安心しなさい」
「お袋」
「さあほら、早く帰りたいなら急ぎなさい。洋さんたちが起きたら厄介よ。華恵ちゃん、またゆっくり遊びにきてね」
「ありがとうございます、おばさま」
「もう、華恵ちゃんったら。おばさまだなんて他人行儀で寂しいから、すぐにでもお母さんって呼んでくれて良いのよ」
「いや、あの」
「おいお袋」
「ふふ。良いじゃないの。まあ、それは追々ね」
響騎さんに手を引かれて玄関先までおばさまに見送られると、ちらし寿司に唐揚げやコロッケ、今日のごちそうの残りを詰めたエコバッグを渡された。
「温め直して食べなさい。どうせ響騎の家じゃ、ろくなものないでしょうから」
「ありがとう、助かる」
おばさまは何気なく話しているけれど、これはもしかしなくても、今夜もまた響騎さんの家に連れて行かれるのだろうか。
そう思ったら急にまたドキドキと騒ぎ出した心臓を押さえると、そんな私の動きを不審に思ったのか顔を覗き込まれた。
「どうした? 冷房で体が冷えたか」
「い、いえ。大丈夫です。おばさま、今日はありがとうございました。洋嗣さんと悦司くんにも、宜しくお伝えください」
「寂しがるだろうけど、伝えとくわ。響騎が一緒じゃなくても、いつでも顔出してね」
響騎さんがそう切り出したのは、洋嗣さんと悦司くんがしこたま飲んで、その場で雑魚寝してしまった十六時過ぎ。
「あら、帰るの? 泊まっていきなさいよ。久々に華恵ちゃんが来たんだから、女子トークさせてちょうだい」
おばさまが残念そうな顔をすると、実家ならではと言うべきなのだろう。誰が女子だよと疎ましそうに顔を歪め、響騎さんは砕けた口調で早く帰りたいんだと答える。
「空気読めよ」
ギュッと手を握られ、真っ赤に染まる顔を隠すために咄嗟に俯く。
「あらやだ、本性出したわね? 華恵ちゃん、こんなムッツリドスケベと一緒に居たら危険よ、送り狼よ」
「誰がムッツリドスケベだ」
「だってそうじゃない。どうせ華恵ちゃんの前だからって、カッコつけてるんでしょ」
「うるさいな」
面倒そうにあしらう息子と、負けじと喰らい付くおばさま。そんな親子同士の気の置けない軽口の叩き合いが暫く続くと、響騎さんは私の手を繋いだまま立ち上がった。
「もう良いって。そんなに会いたいならまた別の日に来る。俺もコイツも、仕事が変わって疲れも溜まってるんだ」
「だから泊まっていきなさいって言ってるのよ。お風呂も沸いてるわよ?」
「明日普通に仕事だし、なんの用意もしてきてねえよ」
「朝帰れば良いじゃない」
「またその件からやり直すのかよ」
「もう。本当に強情なんだから」
「お袋に言われたくない」
まだまだ続きそうな親子のやり取りを苦笑しながら傍観していると、響騎さんは突然なにかを思い出したように真面目な顔をした。
「あのオッサン、まだなにか言ってきてるんじゃないのか」
「大丈夫よ。こっちにはあの時の書類があるから」
「でもな……」
「大丈夫。お母さんを信じなさい」
おばさまはにっこり微笑むと、任せなさいと力強く答えて響騎さんの肩をしっかり掴んだ。
「すまないな、本当は関わりたくないだろうに」
「なに言ってるの。可愛い息子と、未来のお嫁さんのためだもの。浦野の血に縛られてはダメ。私が絶対許さないから安心しなさい」
「お袋」
「さあほら、早く帰りたいなら急ぎなさい。洋さんたちが起きたら厄介よ。華恵ちゃん、またゆっくり遊びにきてね」
「ありがとうございます、おばさま」
「もう、華恵ちゃんったら。おばさまだなんて他人行儀で寂しいから、すぐにでもお母さんって呼んでくれて良いのよ」
「いや、あの」
「おいお袋」
「ふふ。良いじゃないの。まあ、それは追々ね」
響騎さんに手を引かれて玄関先までおばさまに見送られると、ちらし寿司に唐揚げやコロッケ、今日のごちそうの残りを詰めたエコバッグを渡された。
「温め直して食べなさい。どうせ響騎の家じゃ、ろくなものないでしょうから」
「ありがとう、助かる」
おばさまは何気なく話しているけれど、これはもしかしなくても、今夜もまた響騎さんの家に連れて行かれるのだろうか。
そう思ったら急にまたドキドキと騒ぎ出した心臓を押さえると、そんな私の動きを不審に思ったのか顔を覗き込まれた。
「どうした? 冷房で体が冷えたか」
「い、いえ。大丈夫です。おばさま、今日はありがとうございました。洋嗣さんと悦司くんにも、宜しくお伝えください」
「寂しがるだろうけど、伝えとくわ。響騎が一緒じゃなくても、いつでも顔出してね」
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