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第21話 占師が夢ばかり見ていてはだめだよね!

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「聞こえますか!起きてください!」

私の耳元で男の人の声がした。

起きろと言われたので、起きるが、体を動かすとそこらの関節が軋むように音を鳴らした。それでも伸びをすれば幾分と楽に動くようなった。

「ようやく、起きましたね」

「私、そんなに寝てました?」

まだ、開き切らない目のまま、声の方を見る。

「いつから寝てたのかは分かりませんが、今はもう放課後ですよ」

私を起こした男は、時計を指差した。

私も時計を確認した後、今度はまだの外を見た。私の記憶だと、まだ青空が広がっているのだが、どうにもオレンジにしか見えない。まだ、寝ぼけているのかと目を擦るが、擦れば擦るほど夕焼けに見えてくる。

ーー本当に長く眠っていたようだ。

「あー、4、5限の記憶がない」

「本当に貴方って人は……」

「いやぁ、それほどでも~」

「褒めてないですよ」

「そんなぁ……って会長⁉︎」

どうりで聴き心地がよかったのか。生徒集会のとかかも思うけど、会長って声もいいよね。いやいや、感心している場合じゃない!

「で、なんでここに?」

「貴方が占いの結果を保留にすると言ったから、放課後にまた聴きにきた次第です」

「なるほど、なるほど」

そういえば、今日のお昼休み生徒会を占ったりしたんだった。そしたら、明らかに私が生徒会を手玉に取っているのが見えたのだ。しかし、私は弟ガチ恋である以上、この結果を生徒会に真似されれば、確実に障害になることがわかったから言うのやめたんだっけ?

「それで、結果を教えて頂けませんか」

「えー、でもー」
 
「大丈夫です、たとえどんなに悪い結果であっても受け止めて見せます!」

私はただ私的な利用で悩んでいるだけなのだが、相手の方が勝手に解釈を入れて補完してくれている。

「でもなぁ」

いくら会長でも、そこまでしてもらうと無碍にするのも引けてくる。本当に生徒会長ってなるべくしてなったんだ、という人間性を強く思った。

ーーここまでしつこく無ければの話なんだけど。

でも、この粘り強さも必要なんだろう。

「仕方ないですね、わかりました。ひとつだけ、貴方の質問に答えましょう。生徒会以外で」

「本当か!」

「もちろん!」

「では!生徒会で」

「おおおおいいいいい!話をきけえええええええ!」

躊躇わずに言い切った会長に勝てる人がいるはずもなく、そもそもここの教室唯一の生徒の私は、戦う前からの敗戦が確定したのであった。



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