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第二章
26.魔法適性検査
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「少しは緊張してる?」
「はい。とても…」
この国の行事のひとつ。
満6歳となった少年少女は魔力検査を受ける。
魔力量や、適性などを調べ、国に保管される。
魔力にも指紋と同じようにその人独自の魔法陣の広がり方や発動時の微妙なまでのタイミングや振動、誰一人として同じものは存在しない。
そのため、個人情報のひとつとして扱われ、魔力量は生命にも関わるため、健康診断要素も含まれている。
何故この年齢かと言うと、身体に魔力が安定して流れ始めるのが5歳半から6歳の間だからだ。
「ふふ。大丈夫よ。リリは私とルーイの子ですもの。きっと綺麗な魔法が使えるわ。」
誕生日会が終わった次の日、私は父様と母様と教会に来ていた。
この国には精霊王と目に見えない精霊達祀った教会がある。目には見えないことから精霊達に祈りを捧げる場所が欲しいと言う声を聞き教会が作られた。
「そうだといいのですが…」
母様はしゃがみ私に目線の高さを合わせてくれた。
「少し落ち着いた方がいいかしらね。母様の時もそうだったもの。部屋を出てくわね。」
教会で魔力検査を受ける時は必ず、白く清楚なドレスを身につける。その衣装は教会で保存されており、その着替えのための部屋にいた。
「姫さん。」
母様がいなくなると、感覚を開けずにどこからかノアがスっと私の後ろに現れた。
「ノア。」
「へぇ。中はこうなってんだ。」
「入ってきちゃダメだよって言ったのに…」
一応ここは女性専用の更衣室である。つまり男性は入ってはいけない。
「まぁ、でも姫さんしかいなかったし、いいんじゃねぇか?」
ケタケタと笑うノアを睨む。きっとそんなに怖くないだろうけれど。
「それと、そんなに緊張しなくていいと思うよ。姫さんの魔力は普通の人よりも大分ある。」
「そんなの分かるの?」
「あぁ、まぁ、一応な…相手の能力を瞬時に判断するのも癖がついてんだ。じゃなきゃ殺されるしな。まぁ、命懸けで得た術ってわけさ。……んなこたぁいいよ。だから、大丈夫さ。」
「ノアが言うなら間違いないかも…ね。」
ノアの笑いにつられて私も笑ってしまう。
「あとなんだけどよ、姫さんすまねぇ。」
「え?」
「あの、王太子との会話聞いちまった。聞くつもりじゃなかったんだけどさ、いきなり屋敷から出ていくから着いて行ったんだ。その時にちらっとな。」
ノアは手を合わせて頭を下げた。
「大丈夫だよ。元々私とアルとじゃ釣り合わないから。」
「はぁ、何言ってんだ。今のところ三公の家に女はいないし、侯爵の中でトップの姫さんが婚約者になるのは必然だと思うが…」
「そうじゃなくて……ううん。なんでもない。とりあえず、釣り合わないの!」
「よく分からねぇけど、姫さんが決めたことなら俺は従うし、ずっと着いてく。」
自信満々な顔で言うノアに少し緊張が解けたような気がする。
「リリ、そろそろよ。」
「はい。今行きます。」
ドアの向こうから母様の声がした。
「じゃあ、俺は教会の周りを見張りながら、色々してるよ。」
「うん。わかった。」
そう言い残して、スっと音もなく窓から外へと出ていった。
部屋を出て教会の身廊に出て祭壇へと進んでいく。
教会の内部は前世で見た教会によく似ている。柱の彫刻に色鮮やかなステンドグラス。祭壇には精霊王の像。幻想的な空間は街とはまた違った異世界のような空間だった。
「リリアナ様。それではこちらに。」
魔法適性検査を執り行ってくれるのは、この教会の司祭。前世ではいわゆる聖職者と呼ばれるものであるが、この世界では、聖職者の代わりに精霊守という職業がある。
今目の前にいるのはこの教会の最高位の司祭。大司教だ。
検査は親族のみ参加が可能であり、私の後ろには父様と母様が2人寄り添うように見ていてくれている。
大司教に言われ、ゆっくりと祭壇への階段を上がっていく。目の前に鎮座するのは魔晶石という水晶のようなものだった。
「ここに手を翳していただけますよう。」
大司教の言う通り手を翳す。透明度の高い魔晶石は翳されたのと同時に輝きを増す。
輝きに夢中になっているうちに翳すのを辞めるように言われ、手の位置を元に戻した。
「ありがとうございます。検査結果をご報告致しますので、皆様でこちらにおいでくださいますようお願い申し上げます。」
呼ばれた部屋には、対面になったソファーとその間に置かれる机のみ。室内の装飾は華美だが、置かれているのもが少ないため、それほど華美だとは感じない。きっと客間用の部屋だと思う。
「リリアナ様の検査結果についてお伝え致します。魔力量は平均よりも少し多く、質もとても綺麗にございます。」
大司教はゆっくりと話す。短い沈黙の後に付け加えた言葉は、私の一生忘れない記憶として刻まれる。
「魔法を使うのは難しいかと。」
「…何故ですか?どうして…」
母様は、慌てたように質問する。私の手に重ねられた父様の手に力が篭もる。父様の顔は見れない。
「簡単に言いますと、魔法を使うためには、魔力を解放する必要があるのです。魔力の解放はドアのようなものだとお考えいただくとわかりやすいかと思います。ドアを開けるには開けるためのドアノブが必要なのですが、リリアナ様にはそのドアノブがないのです。つまり魔力は開かずの間に閉じ込められている形とお考え下さい。ですので、今後魔法を使用するのは難しいかと申し上げました。しかし、魔力量は十分にございますので、生死の心配はないかと思います。」
魔力は生命力に直結し、この世界の全人類に備わっている。
魔力量が少ないと寿命もが短かったり、身体が弱かったりと様々な障害があるが、全くない人は存在しない。
しかし、魔法が使えない人はほとんど居ない。いるとすれば理由は2つ。
罪を犯し、国により魔力解放のドアノブを取られた者。この刑罰は魔法剥奪とそのまんまで、かなり重いものとされている。
そして、もう1つは…………
精霊に嫌われた者。
私は…精霊に愛されなかった。
それだけの事なのだ。ただ、それだけの事……
どんなに願おうとも
私は
______________________愛されなかった。
「はい。とても…」
この国の行事のひとつ。
満6歳となった少年少女は魔力検査を受ける。
魔力量や、適性などを調べ、国に保管される。
魔力にも指紋と同じようにその人独自の魔法陣の広がり方や発動時の微妙なまでのタイミングや振動、誰一人として同じものは存在しない。
そのため、個人情報のひとつとして扱われ、魔力量は生命にも関わるため、健康診断要素も含まれている。
何故この年齢かと言うと、身体に魔力が安定して流れ始めるのが5歳半から6歳の間だからだ。
「ふふ。大丈夫よ。リリは私とルーイの子ですもの。きっと綺麗な魔法が使えるわ。」
誕生日会が終わった次の日、私は父様と母様と教会に来ていた。
この国には精霊王と目に見えない精霊達祀った教会がある。目には見えないことから精霊達に祈りを捧げる場所が欲しいと言う声を聞き教会が作られた。
「そうだといいのですが…」
母様はしゃがみ私に目線の高さを合わせてくれた。
「少し落ち着いた方がいいかしらね。母様の時もそうだったもの。部屋を出てくわね。」
教会で魔力検査を受ける時は必ず、白く清楚なドレスを身につける。その衣装は教会で保存されており、その着替えのための部屋にいた。
「姫さん。」
母様がいなくなると、感覚を開けずにどこからかノアがスっと私の後ろに現れた。
「ノア。」
「へぇ。中はこうなってんだ。」
「入ってきちゃダメだよって言ったのに…」
一応ここは女性専用の更衣室である。つまり男性は入ってはいけない。
「まぁ、でも姫さんしかいなかったし、いいんじゃねぇか?」
ケタケタと笑うノアを睨む。きっとそんなに怖くないだろうけれど。
「それと、そんなに緊張しなくていいと思うよ。姫さんの魔力は普通の人よりも大分ある。」
「そんなの分かるの?」
「あぁ、まぁ、一応な…相手の能力を瞬時に判断するのも癖がついてんだ。じゃなきゃ殺されるしな。まぁ、命懸けで得た術ってわけさ。……んなこたぁいいよ。だから、大丈夫さ。」
「ノアが言うなら間違いないかも…ね。」
ノアの笑いにつられて私も笑ってしまう。
「あとなんだけどよ、姫さんすまねぇ。」
「え?」
「あの、王太子との会話聞いちまった。聞くつもりじゃなかったんだけどさ、いきなり屋敷から出ていくから着いて行ったんだ。その時にちらっとな。」
ノアは手を合わせて頭を下げた。
「大丈夫だよ。元々私とアルとじゃ釣り合わないから。」
「はぁ、何言ってんだ。今のところ三公の家に女はいないし、侯爵の中でトップの姫さんが婚約者になるのは必然だと思うが…」
「そうじゃなくて……ううん。なんでもない。とりあえず、釣り合わないの!」
「よく分からねぇけど、姫さんが決めたことなら俺は従うし、ずっと着いてく。」
自信満々な顔で言うノアに少し緊張が解けたような気がする。
「リリ、そろそろよ。」
「はい。今行きます。」
ドアの向こうから母様の声がした。
「じゃあ、俺は教会の周りを見張りながら、色々してるよ。」
「うん。わかった。」
そう言い残して、スっと音もなく窓から外へと出ていった。
部屋を出て教会の身廊に出て祭壇へと進んでいく。
教会の内部は前世で見た教会によく似ている。柱の彫刻に色鮮やかなステンドグラス。祭壇には精霊王の像。幻想的な空間は街とはまた違った異世界のような空間だった。
「リリアナ様。それではこちらに。」
魔法適性検査を執り行ってくれるのは、この教会の司祭。前世ではいわゆる聖職者と呼ばれるものであるが、この世界では、聖職者の代わりに精霊守という職業がある。
今目の前にいるのはこの教会の最高位の司祭。大司教だ。
検査は親族のみ参加が可能であり、私の後ろには父様と母様が2人寄り添うように見ていてくれている。
大司教に言われ、ゆっくりと祭壇への階段を上がっていく。目の前に鎮座するのは魔晶石という水晶のようなものだった。
「ここに手を翳していただけますよう。」
大司教の言う通り手を翳す。透明度の高い魔晶石は翳されたのと同時に輝きを増す。
輝きに夢中になっているうちに翳すのを辞めるように言われ、手の位置を元に戻した。
「ありがとうございます。検査結果をご報告致しますので、皆様でこちらにおいでくださいますようお願い申し上げます。」
呼ばれた部屋には、対面になったソファーとその間に置かれる机のみ。室内の装飾は華美だが、置かれているのもが少ないため、それほど華美だとは感じない。きっと客間用の部屋だと思う。
「リリアナ様の検査結果についてお伝え致します。魔力量は平均よりも少し多く、質もとても綺麗にございます。」
大司教はゆっくりと話す。短い沈黙の後に付け加えた言葉は、私の一生忘れない記憶として刻まれる。
「魔法を使うのは難しいかと。」
「…何故ですか?どうして…」
母様は、慌てたように質問する。私の手に重ねられた父様の手に力が篭もる。父様の顔は見れない。
「簡単に言いますと、魔法を使うためには、魔力を解放する必要があるのです。魔力の解放はドアのようなものだとお考えいただくとわかりやすいかと思います。ドアを開けるには開けるためのドアノブが必要なのですが、リリアナ様にはそのドアノブがないのです。つまり魔力は開かずの間に閉じ込められている形とお考え下さい。ですので、今後魔法を使用するのは難しいかと申し上げました。しかし、魔力量は十分にございますので、生死の心配はないかと思います。」
魔力は生命力に直結し、この世界の全人類に備わっている。
魔力量が少ないと寿命もが短かったり、身体が弱かったりと様々な障害があるが、全くない人は存在しない。
しかし、魔法が使えない人はほとんど居ない。いるとすれば理由は2つ。
罪を犯し、国により魔力解放のドアノブを取られた者。この刑罰は魔法剥奪とそのまんまで、かなり重いものとされている。
そして、もう1つは…………
精霊に嫌われた者。
私は…精霊に愛されなかった。
それだけの事なのだ。ただ、それだけの事……
どんなに願おうとも
私は
______________________愛されなかった。
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