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第二章
28.光の正体
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「暫くこちらでお待ちください。」
今日もいつもと変わらない客人用の庭園に通される。
ここでアルと会うのはもう何回目になるだろうか。
アルにどう切り出そうか悩みながら椅子に座らず庭園の花を見つめていた。
「姫さん。何してんの?」
相変わらず、足音はさせずにいきなり私の隣に現れる。この警備の厳しい王宮をどうやって入ってきているのだろうか。
「何もしてないよ…」
「ふーん。」
きっと、ノアには考えていること全てわかっているのだろうけど、あまり詮索せずにいてくれるのは正直助かっている。
『おんなのこだ。』
可愛らしい少女の声が私の耳を掠めた。
「え?」
周りを見渡してみても声の主らしき少女はいない。
「どうしたんだ?」
ノアがピクリと反応し、すぐにでも動けるように体制を整える。
「声…」
「声?」
「そう。聞こえなかった…?」
そう問いかけるもノアは首を横に振る。
気のせいかと思い、元にあった花壇に視線に戻すと、咲いていた花の花弁の下から小さな光が2つほど目の前に出てきた。2つの光は私の周り回ると庭園の廊下を出てどこかに向う。
私は衝動ままに、光の後について行った。
「ま、待って!」
「あ、おい。姫さん!どこ行くんだ!!」
光を追いかけて行くと着いたのは、今まで見た場所と比べ物にならないくらいの先程とは別の美しい庭園だった。
光が止まり、その場で息を切らす。
『だれー?』
『おんなのこー』
『おんなのこだー』
『いいにおいするよー』
『するする』
光はどんどん増えていき、声とともに形を宿す。
その姿はまるで小さな小さな幼子のようだった。
それは文献の隅に描かれていた、精霊の姿だった。
『あー!!おんなのこー!』
たくさん集まってきた精霊のひとつが声を大きくする。
『あのこ?ねぇ?あのこでしょ?』
『あのこだあのこ』
それにつられ、連鎖するように続く。
『なまえはー?』
『なんていうのー』
『のー?』
精霊は私の近くに寄ってきた。
「あ、私はリリアナと申します。リリアナ・ペトラ・ヴァランガです。」
精霊たちの勢いに押されタジタジになりながら答える。
『りり…あな…?』
『りりー?』
『りりー』
精霊達は一斉に騒ぎ出す。
「あの。もしかして、精霊…様……ですか?」
私の質問によって騒いでた精霊達は話すのをやめ、こちらを見た。
その表情は、何かを自慢するように瞳を輝かせていた。
『せいれい!!』
『ぼくたちせいれいなの!』
『えらい?』
『すごい?』
『すごいでしょ』
『ほめてー』
精霊達が口々にいうが、あまりの数の多さとマシンガンのような速さで繰り出される言葉の数々に反応しきれない。
「す、すごい……です…!だって、精霊様に会えるなんて、それこそ…この国ではすごく奇跡に近いのに…」
「姫さん!」
後ろを見ると、ノアが丁度追いついたようだった。
私を追いかけてる最中にたくさんの女官や近衛兵とすれ違ったため、姿を隠しながら、私を追いかけるのに少し苦労したらしい。
『あー、うそつきー』
『うそつきがきたー』
「おいおい、嘘はついてないだろ。」
『ついたよー』
『やくそくやぶったもん』
ノアは精霊に驚くことなく精霊達と話している。
「え、ノアは精霊様達とお話したことがあるの?」
「んー、まぁ、ちょっとあってな。姿は見たことはないが…声と同様幼い姿してんだな。」
ノアは飛んでいる精霊を目で追っている。
「そうなんだね…約束ってなにを約束したの?…あ、別に言いたくないならいいんだけど……」
「いや、別に言えないことじゃないよ。それに、姫さんはある意味当事者だしなー」
「当事者?」
「約束ってのは、姫さんを守ることだよ。」
「私を…守る?…そ、そんな…私…そんなに守ってもらうような人じゃない…!」
ノアの言葉に必死に首を横に振る。
会話をしている私達を精霊達はキョトンとした顔で見ている。
「姫さんこの国の侯爵閣下の娘だろ。守られるには十分だと思うが…けど、正直言って、何から守れとか何も言われてないんだよなー。けどまぁ、姫さんは今は俺の主だし、何からでも守るんだけどさ。」
それはありがたいけど、申し訳ない。
けれど守るってなんだろう。さっきからものすごく引っかかる。
私は精霊から愛されなかった子。
精霊から守ってほしいと言われるなんて、余程精霊に愛されているんだろう。魔法がつかえない私じゃない。きっとそれは、人違い。
「けど…私は…精霊から愛されてない……」
「んー、それが不思議なんだよな。こいつらは確かに姫さんを指定たんだ。間違いない。だから最初、姫さんが魔法を使えないって聞いた時驚いたんだ。」
ノアは左手も顎に添え、首を傾げた。
「なぁ…お前らは何か知らないか?」
精霊は問いかけにノアと同じように首を傾げた。
精霊全員で首を傾でける姿は、言葉に表せない程可愛かった。
「リリアナ様!どこにいらっしゃいますか?」
後ろに位置する扉の奥から男性の声が聞こえて来た。振り向くとその扉が空き、近衛兵と思われる男性が小走りでこちらに向かってきた。
「リリアナ様お怪我はございませんか?」
そういえば、待っていてくれと言われた場所から誰にも言わずにこの場所に来てしまっていた。
「あ、すみません。私…」
「いえ、ご無事でしたのなら大丈夫です。戻りましょう。」
近衛兵に促され、その場を離れるために精霊達に声をかけようと精霊達がいた場所に視線を向けたが、もうそこに精霊達もノアもいなかった。
連れられた場所は元の庭園ではなく、客室用の部屋だった。その部屋に入ったと同時に、アルが私の元に走ってきた。
「リリ!!どこにいたの?無事だった?怪我していない?」
息を切らしながら、早口でいうアルにものすごく心配をかけてしまったことを実感した。
「大丈夫です。すみません……ご心配を…」
謝ろうと言いかけた時には、私の体はアルの腕の中にいた。
「本当に…心配したよ。もう、勝手に居なくならないで。リリがいなくなったと聞いた時どうにかなりそうだったから。」
アルは少し震えていた。
「ごめんなさい…」
「何も無くて良かったよ。……座ろうか。」
2人で部屋のソファーに横並びに座る。
「リリはどうしてあそこにいたの?」
そう問われ、私は精霊達に会ったことをアルに話した。
「精霊に会ったの?!」
「はい…」
「そうか…ふふ。リリは精霊に愛されてるんだね。」
アルは私の頭にそっと自身の手を置いた。
「それは……」
私はアルから目線を外し、俯くしか無かった。
今日父様が陛下に私が魔法を使えないことを話している。きっと、アルは陛下からこのことを聞いて知っているのだろう。
だから、愛されてると言うのは可笑しいということに気づいているはずなのに……
アルの気遣いに胸が痛い。
「私は…愛されて……いるんでしょうか?」
「リリ…」
「では、なぜ!!私は!!魔法が使えないのですか?私は、愛されてないから…」
もう、自分でも訳が分からない。
何をしたいのか、アルになんて声をかけて欲しいのか、なんて思われないのか。もう私には分からない。自分のことなのに。
わかんないよ……
視界が涙で歪んでいく。
「リリ…今日はもう帰ろうか。本当は、まだ一緒にいたいし、リリを離したくないけれど、私が今ここにいない方が、リリも色々考えられるだろう?……それと言いたく無いかもしれないけれど、リリが考えて決めたことは私に話して。お願い。リリの力になるから。もし考えて、何も浮かばなかったり行き詰まったりしても私に話して。……リリ、好きだよ。貴方がどんなことを決めても、私は貴方しかいらない。覚えておいて。」
アルの言葉に返事をすることができなかった。
そのままアルは侯爵家の馬車まで見送ってくれる。
「アル…今日はすみません。あと……あり…がとう……ございま…す。」
「ううん。私にとってリリより大切なものはないから。」
アルは私の目をしっかりと見据えて優しく微笑む。
本当に大切にしてくれているように思えてくる。
そう錯覚すらしてしまう。これが錯覚でないことを多分心のどこかで願ってしまっている。
「今日は私の渡したブレスレットをつけてないの?」
馬車に着くまでに繋いでいた手を離し、指先つなぎをするようにアルは自分の掌で私の左の手を掬った。
「え、あ、はい。忘れて…」
実は、ブレスレットはつけていこうとした。
けれど勇気がなかったのだ。やはり私に相応しくないと思ってしまった。それと、綺麗な青色の宝石がとても綺麗でつけるのは勿体ないとも思ってしまったから。
「ひとつだけ、私からお願いしてもいい?」
「……はい。」
「どんなことがあってもあのブレスレットはいつも身につけていて。」
あまりに真剣にいうものだから、思わず目尻が下がる。
私は頷いて、馬車に乗り込んだ。
_____________________________________________
後書き
今回もお読みいただきありがとうございます。
時間がかかってしまい申し訳ないございませんm(_ _)m
今後ともよろしくお願い致します。
今日もいつもと変わらない客人用の庭園に通される。
ここでアルと会うのはもう何回目になるだろうか。
アルにどう切り出そうか悩みながら椅子に座らず庭園の花を見つめていた。
「姫さん。何してんの?」
相変わらず、足音はさせずにいきなり私の隣に現れる。この警備の厳しい王宮をどうやって入ってきているのだろうか。
「何もしてないよ…」
「ふーん。」
きっと、ノアには考えていること全てわかっているのだろうけど、あまり詮索せずにいてくれるのは正直助かっている。
『おんなのこだ。』
可愛らしい少女の声が私の耳を掠めた。
「え?」
周りを見渡してみても声の主らしき少女はいない。
「どうしたんだ?」
ノアがピクリと反応し、すぐにでも動けるように体制を整える。
「声…」
「声?」
「そう。聞こえなかった…?」
そう問いかけるもノアは首を横に振る。
気のせいかと思い、元にあった花壇に視線に戻すと、咲いていた花の花弁の下から小さな光が2つほど目の前に出てきた。2つの光は私の周り回ると庭園の廊下を出てどこかに向う。
私は衝動ままに、光の後について行った。
「ま、待って!」
「あ、おい。姫さん!どこ行くんだ!!」
光を追いかけて行くと着いたのは、今まで見た場所と比べ物にならないくらいの先程とは別の美しい庭園だった。
光が止まり、その場で息を切らす。
『だれー?』
『おんなのこー』
『おんなのこだー』
『いいにおいするよー』
『するする』
光はどんどん増えていき、声とともに形を宿す。
その姿はまるで小さな小さな幼子のようだった。
それは文献の隅に描かれていた、精霊の姿だった。
『あー!!おんなのこー!』
たくさん集まってきた精霊のひとつが声を大きくする。
『あのこ?ねぇ?あのこでしょ?』
『あのこだあのこ』
それにつられ、連鎖するように続く。
『なまえはー?』
『なんていうのー』
『のー?』
精霊は私の近くに寄ってきた。
「あ、私はリリアナと申します。リリアナ・ペトラ・ヴァランガです。」
精霊たちの勢いに押されタジタジになりながら答える。
『りり…あな…?』
『りりー?』
『りりー』
精霊達は一斉に騒ぎ出す。
「あの。もしかして、精霊…様……ですか?」
私の質問によって騒いでた精霊達は話すのをやめ、こちらを見た。
その表情は、何かを自慢するように瞳を輝かせていた。
『せいれい!!』
『ぼくたちせいれいなの!』
『えらい?』
『すごい?』
『すごいでしょ』
『ほめてー』
精霊達が口々にいうが、あまりの数の多さとマシンガンのような速さで繰り出される言葉の数々に反応しきれない。
「す、すごい……です…!だって、精霊様に会えるなんて、それこそ…この国ではすごく奇跡に近いのに…」
「姫さん!」
後ろを見ると、ノアが丁度追いついたようだった。
私を追いかけてる最中にたくさんの女官や近衛兵とすれ違ったため、姿を隠しながら、私を追いかけるのに少し苦労したらしい。
『あー、うそつきー』
『うそつきがきたー』
「おいおい、嘘はついてないだろ。」
『ついたよー』
『やくそくやぶったもん』
ノアは精霊に驚くことなく精霊達と話している。
「え、ノアは精霊様達とお話したことがあるの?」
「んー、まぁ、ちょっとあってな。姿は見たことはないが…声と同様幼い姿してんだな。」
ノアは飛んでいる精霊を目で追っている。
「そうなんだね…約束ってなにを約束したの?…あ、別に言いたくないならいいんだけど……」
「いや、別に言えないことじゃないよ。それに、姫さんはある意味当事者だしなー」
「当事者?」
「約束ってのは、姫さんを守ることだよ。」
「私を…守る?…そ、そんな…私…そんなに守ってもらうような人じゃない…!」
ノアの言葉に必死に首を横に振る。
会話をしている私達を精霊達はキョトンとした顔で見ている。
「姫さんこの国の侯爵閣下の娘だろ。守られるには十分だと思うが…けど、正直言って、何から守れとか何も言われてないんだよなー。けどまぁ、姫さんは今は俺の主だし、何からでも守るんだけどさ。」
それはありがたいけど、申し訳ない。
けれど守るってなんだろう。さっきからものすごく引っかかる。
私は精霊から愛されなかった子。
精霊から守ってほしいと言われるなんて、余程精霊に愛されているんだろう。魔法がつかえない私じゃない。きっとそれは、人違い。
「けど…私は…精霊から愛されてない……」
「んー、それが不思議なんだよな。こいつらは確かに姫さんを指定たんだ。間違いない。だから最初、姫さんが魔法を使えないって聞いた時驚いたんだ。」
ノアは左手も顎に添え、首を傾げた。
「なぁ…お前らは何か知らないか?」
精霊は問いかけにノアと同じように首を傾げた。
精霊全員で首を傾でける姿は、言葉に表せない程可愛かった。
「リリアナ様!どこにいらっしゃいますか?」
後ろに位置する扉の奥から男性の声が聞こえて来た。振り向くとその扉が空き、近衛兵と思われる男性が小走りでこちらに向かってきた。
「リリアナ様お怪我はございませんか?」
そういえば、待っていてくれと言われた場所から誰にも言わずにこの場所に来てしまっていた。
「あ、すみません。私…」
「いえ、ご無事でしたのなら大丈夫です。戻りましょう。」
近衛兵に促され、その場を離れるために精霊達に声をかけようと精霊達がいた場所に視線を向けたが、もうそこに精霊達もノアもいなかった。
連れられた場所は元の庭園ではなく、客室用の部屋だった。その部屋に入ったと同時に、アルが私の元に走ってきた。
「リリ!!どこにいたの?無事だった?怪我していない?」
息を切らしながら、早口でいうアルにものすごく心配をかけてしまったことを実感した。
「大丈夫です。すみません……ご心配を…」
謝ろうと言いかけた時には、私の体はアルの腕の中にいた。
「本当に…心配したよ。もう、勝手に居なくならないで。リリがいなくなったと聞いた時どうにかなりそうだったから。」
アルは少し震えていた。
「ごめんなさい…」
「何も無くて良かったよ。……座ろうか。」
2人で部屋のソファーに横並びに座る。
「リリはどうしてあそこにいたの?」
そう問われ、私は精霊達に会ったことをアルに話した。
「精霊に会ったの?!」
「はい…」
「そうか…ふふ。リリは精霊に愛されてるんだね。」
アルは私の頭にそっと自身の手を置いた。
「それは……」
私はアルから目線を外し、俯くしか無かった。
今日父様が陛下に私が魔法を使えないことを話している。きっと、アルは陛下からこのことを聞いて知っているのだろう。
だから、愛されてると言うのは可笑しいということに気づいているはずなのに……
アルの気遣いに胸が痛い。
「私は…愛されて……いるんでしょうか?」
「リリ…」
「では、なぜ!!私は!!魔法が使えないのですか?私は、愛されてないから…」
もう、自分でも訳が分からない。
何をしたいのか、アルになんて声をかけて欲しいのか、なんて思われないのか。もう私には分からない。自分のことなのに。
わかんないよ……
視界が涙で歪んでいく。
「リリ…今日はもう帰ろうか。本当は、まだ一緒にいたいし、リリを離したくないけれど、私が今ここにいない方が、リリも色々考えられるだろう?……それと言いたく無いかもしれないけれど、リリが考えて決めたことは私に話して。お願い。リリの力になるから。もし考えて、何も浮かばなかったり行き詰まったりしても私に話して。……リリ、好きだよ。貴方がどんなことを決めても、私は貴方しかいらない。覚えておいて。」
アルの言葉に返事をすることができなかった。
そのままアルは侯爵家の馬車まで見送ってくれる。
「アル…今日はすみません。あと……あり…がとう……ございま…す。」
「ううん。私にとってリリより大切なものはないから。」
アルは私の目をしっかりと見据えて優しく微笑む。
本当に大切にしてくれているように思えてくる。
そう錯覚すらしてしまう。これが錯覚でないことを多分心のどこかで願ってしまっている。
「今日は私の渡したブレスレットをつけてないの?」
馬車に着くまでに繋いでいた手を離し、指先つなぎをするようにアルは自分の掌で私の左の手を掬った。
「え、あ、はい。忘れて…」
実は、ブレスレットはつけていこうとした。
けれど勇気がなかったのだ。やはり私に相応しくないと思ってしまった。それと、綺麗な青色の宝石がとても綺麗でつけるのは勿体ないとも思ってしまったから。
「ひとつだけ、私からお願いしてもいい?」
「……はい。」
「どんなことがあってもあのブレスレットはいつも身につけていて。」
あまりに真剣にいうものだから、思わず目尻が下がる。
私は頷いて、馬車に乗り込んだ。
_____________________________________________
後書き
今回もお読みいただきありがとうございます。
時間がかかってしまい申し訳ないございませんm(_ _)m
今後ともよろしくお願い致します。
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