53 / 55
第二章
46. 光彩の行方 -王太子視点-
しおりを挟む
※グロいと思われる表現が出てきます。
______________________________
「リリ!!!!!!!!」
目の前にいたのはずっと探し求めていた大切な人だった。
無事なのに安堵したが、リリの腕を大柄な男が掴んでおり、怒りを覚えた。
私の声に反応したリリは目にいっぱいの涙を溜めていた。
あぁ。また君を泣かせてしまった________
こんな光景を見たことがないのに、1度見たことがあるような…そんな気がした。
デジャブを感じた瞬間に愛しい人は意識を無くし、その場に倒れ込んだ。
もう二度と君を失ってたまるものか。
心のどこかで声がした。
一瞬でリリの元へと駆け寄り、リリの姿を男から隠すように抱きかかえた。
「誰だ…てめぇは?」
男は、私を睨むように見下したが、それに対するように私は力強く、且つ冷徹に相手を見つめる。
抱きかかえたリリを落とさないように安定させた。
男の問に答える気はサラサラなく、リリを傷つけられた今は、そんなことを考えている余裕さえもなかった。
リリを抱えたまま、私は男を地面から薔薇の蔦を生やし拘束する。
蔦に生えた棘が男の皮膚にくい込んだ。
「ぐぁっ」
男の声と蔦で刺激されたのか、周りにいる男達は先程のニヤニヤと笑っていた表情とは一転し、こちらへと刃を向けた。
「誰だか知らねぇがよ…そいつは俺らの獲物なんだわ。返してもらおうか。」
男達は、懐からナイフを出し、こちらへと向かってきた。瞬時にリリを片手で抱え直し、腰に据えてあった剣を抜く。それと同時に目の前にまで迫った相手のナイフを弾き返した。男の目線は弾き飛ばされたナイフへと向き、その隙に容赦なく相手を切りつける。
殺そうとすると言うことは、殺される覚悟も持っているのだろう。一瞬の隙が命取りになるということを相手の身なりからして、よく知っているはずだ。
たとえ私の目の前が血の海に染まろうとも意識を失っているリリの視界に入らなければ、どうでも良かった。
気がついた時には、立っているのは私と3人の男達だけだった。
息切れしてる男たちと対照的に、私はゆっくりと息を吐く。
「なぁ、、そのガキ、大切そうに持ってるけどよお。大切にする価値なんて本当にあんのかねぇ?」
ひとりの男が口を開いた。
「貴様には関係ないだろう」
「どうだかなぁ…あぁ、知らねぇってのも可哀想だからよ。教えてやるよ。」
仲間の意図が伝わったのか、私が蔦で拘束していた男が言葉を続けた。
「そいつは、もう穢れてんだよ。どっかの金持ちの嬢ちゃんだろ?俺らに穢された時点でもう価値なんてないんだよ。だからさっさと置いて…」
ブチッと何かが切れた気がした。
魔力の制御は、幼い頃に身につけたはずで、魔力の暴走などはもう何年も起きてなかった。
青白い光は男達を包み込み、身体をヅダヅダに切り裂いていく。
悲鳴のような絶叫が、静かな森に響き渡った。
蔦で拘束されていた男は息も絶え絶えになり、こちらを睨んでいた。
その男の元にゆっくりと近づき、剣を振り下ろす。
ビシャッと血が飛び散り、ゴトッと何かが地面に落ちた。
気をつけてはいたが、男の返り血がリリの頬に1滴付着する。
それに眉を顰め、服の袖で優しく拭った。
魔力の暴走は収まらず、未だに青白い光が辺りを包んでいる。
「ひぃ…」
残された男は地面に転がった何かを見て、引きつった声を零す。
声を零した男に目をやる。
「すまなかった…こ、殺さないでく…」
ザシュッ
剣が皮膚に触れ、引き裂き、ゴトリとまたひとつ、何かが床に落ちた。
最後のひとりは、呼吸さえすることが苦痛のようだった。魔力に圧迫されれば、ほぼ真空のような状態であろう。空気なんてないも同然なのだ。
男が最後に目にしたものは地獄よりも残酷なものであった。
その場に大切な人以外がいなくなり、魔力の暴走も落ち着いていく。
「殿下っ!!!!!!」
後ろから聞き慣れた声がし、数十の馬の足音が聞こえた。第三魔法騎士団が到着したらしい。
緑豊かな森林は、一夜にして荒地となり、紅く染まっていた。
______________________________
「リリ!!!!!!!!」
目の前にいたのはずっと探し求めていた大切な人だった。
無事なのに安堵したが、リリの腕を大柄な男が掴んでおり、怒りを覚えた。
私の声に反応したリリは目にいっぱいの涙を溜めていた。
あぁ。また君を泣かせてしまった________
こんな光景を見たことがないのに、1度見たことがあるような…そんな気がした。
デジャブを感じた瞬間に愛しい人は意識を無くし、その場に倒れ込んだ。
もう二度と君を失ってたまるものか。
心のどこかで声がした。
一瞬でリリの元へと駆け寄り、リリの姿を男から隠すように抱きかかえた。
「誰だ…てめぇは?」
男は、私を睨むように見下したが、それに対するように私は力強く、且つ冷徹に相手を見つめる。
抱きかかえたリリを落とさないように安定させた。
男の問に答える気はサラサラなく、リリを傷つけられた今は、そんなことを考えている余裕さえもなかった。
リリを抱えたまま、私は男を地面から薔薇の蔦を生やし拘束する。
蔦に生えた棘が男の皮膚にくい込んだ。
「ぐぁっ」
男の声と蔦で刺激されたのか、周りにいる男達は先程のニヤニヤと笑っていた表情とは一転し、こちらへと刃を向けた。
「誰だか知らねぇがよ…そいつは俺らの獲物なんだわ。返してもらおうか。」
男達は、懐からナイフを出し、こちらへと向かってきた。瞬時にリリを片手で抱え直し、腰に据えてあった剣を抜く。それと同時に目の前にまで迫った相手のナイフを弾き返した。男の目線は弾き飛ばされたナイフへと向き、その隙に容赦なく相手を切りつける。
殺そうとすると言うことは、殺される覚悟も持っているのだろう。一瞬の隙が命取りになるということを相手の身なりからして、よく知っているはずだ。
たとえ私の目の前が血の海に染まろうとも意識を失っているリリの視界に入らなければ、どうでも良かった。
気がついた時には、立っているのは私と3人の男達だけだった。
息切れしてる男たちと対照的に、私はゆっくりと息を吐く。
「なぁ、、そのガキ、大切そうに持ってるけどよお。大切にする価値なんて本当にあんのかねぇ?」
ひとりの男が口を開いた。
「貴様には関係ないだろう」
「どうだかなぁ…あぁ、知らねぇってのも可哀想だからよ。教えてやるよ。」
仲間の意図が伝わったのか、私が蔦で拘束していた男が言葉を続けた。
「そいつは、もう穢れてんだよ。どっかの金持ちの嬢ちゃんだろ?俺らに穢された時点でもう価値なんてないんだよ。だからさっさと置いて…」
ブチッと何かが切れた気がした。
魔力の制御は、幼い頃に身につけたはずで、魔力の暴走などはもう何年も起きてなかった。
青白い光は男達を包み込み、身体をヅダヅダに切り裂いていく。
悲鳴のような絶叫が、静かな森に響き渡った。
蔦で拘束されていた男は息も絶え絶えになり、こちらを睨んでいた。
その男の元にゆっくりと近づき、剣を振り下ろす。
ビシャッと血が飛び散り、ゴトッと何かが地面に落ちた。
気をつけてはいたが、男の返り血がリリの頬に1滴付着する。
それに眉を顰め、服の袖で優しく拭った。
魔力の暴走は収まらず、未だに青白い光が辺りを包んでいる。
「ひぃ…」
残された男は地面に転がった何かを見て、引きつった声を零す。
声を零した男に目をやる。
「すまなかった…こ、殺さないでく…」
ザシュッ
剣が皮膚に触れ、引き裂き、ゴトリとまたひとつ、何かが床に落ちた。
最後のひとりは、呼吸さえすることが苦痛のようだった。魔力に圧迫されれば、ほぼ真空のような状態であろう。空気なんてないも同然なのだ。
男が最後に目にしたものは地獄よりも残酷なものであった。
その場に大切な人以外がいなくなり、魔力の暴走も落ち着いていく。
「殿下っ!!!!!!」
後ろから聞き慣れた声がし、数十の馬の足音が聞こえた。第三魔法騎士団が到着したらしい。
緑豊かな森林は、一夜にして荒地となり、紅く染まっていた。
1
あなたにおすすめの小説
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
愛されない王妃は、お飾りでいたい
夕立悠理
恋愛
──私が君を愛することは、ない。
クロアには前世の記憶がある。前世の記憶によると、ここはロマンス小説の世界でクロアは悪役令嬢だった。けれど、クロアが敗戦国の王に嫁がされたことにより、物語は終わった。
そして迎えた初夜。夫はクロアを愛せず、抱くつもりもないといった。
「イエーイ、これで自由の身だわ!!!」
クロアが喜びながらスローライフを送っていると、なんだか、夫の態度が急変し──!?
「初夜にいった言葉を忘れたんですか!?」
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。
iBuKi
恋愛
サフィリーン・ル・オルペウスである私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた既定路線。
クロード・レイ・インフェリア、大国インフェリア皇国の第一皇子といずれ婚約が結ばれること。
皇妃で将来の皇后でなんて、めっちゃくちゃ荷が重い。
こういう幼い頃に結ばれた物語にありがちなトラブル……ありそう。
私のこと気に入らないとか……ありそう?
ところが、完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど――
絆されていたのに。
ミイラ取りはミイラなの? 気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。
――魅了魔法ですか…。
国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね?
いろいろ探ってましたけど、どうなったのでしょう。
――考えることに、何だか疲れちゃったサフィリーン。
第一皇子とその方が相思相愛なら、魅了でも何でもいいんじゃないんですか?
サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。
✂----------------------------
不定期更新です。
他サイトさまでも投稿しています。
10/09 あらすじを書き直し、付け足し?しました。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
【完結】愛されないと知った時、私は
yanako
恋愛
私は聞いてしまった。
彼の本心を。
私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。
父が私の結婚相手を見つけてきた。
隣の領地の次男の彼。
幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。
そう、思っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる