愛されなかった少女は溺愛王太子についていけない

小端咲葉

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第二章

46. 光彩の行方 -王太子視点-

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※グロいと思われる表現が出てきます。

______________________________



「リリ!!!!!!!!」

目の前にいたのはずっと探し求めていた大切な人だった。
無事なのに安堵したが、リリの腕を大柄な男が掴んでおり、怒りを覚えた。

私の声に反応したリリは目にいっぱいの涙を溜めていた。



あぁ。また君を泣かせてしまった________



こんな光景を見たことがないのに、1度見たことがあるような…そんな気がした。

デジャブを感じた瞬間に愛しい人は意識を無くし、その場に倒れ込んだ。

もう二度と君を失ってたまるものか。

心のどこかで声がした。

一瞬でリリの元へと駆け寄り、リリの姿を男から隠すように抱きかかえた。

「誰だ…てめぇは?」

男は、私を睨むように見下したが、それに対するように私は力強く、且つ冷徹に相手を見つめる。

抱きかかえたリリを落とさないように安定させた。

男の問に答える気はサラサラなく、リリを傷つけられた今は、そんなことを考えている余裕さえもなかった。

リリを抱えたまま、私は男を地面から薔薇の蔦を生やし拘束する。
蔦に生えた棘が男の皮膚にくい込んだ。

「ぐぁっ」

男の声と蔦で刺激されたのか、周りにいる男達は先程のニヤニヤと笑っていた表情とは一転し、こちらへと刃を向けた。

「誰だか知らねぇがよ…そいつは俺らの獲物なんだわ。返してもらおうか。」

男達は、懐からナイフを出し、こちらへと向かってきた。瞬時にリリを片手で抱え直し、腰に据えてあった剣を抜く。それと同時に目の前にまで迫った相手のナイフを弾き返した。男の目線は弾き飛ばされたナイフへと向き、その隙に容赦なく相手を切りつける。

殺そうとすると言うことは、殺される覚悟も持っているのだろう。一瞬の隙が命取りになるということを相手の身なりからして、よく知っているはずだ。

たとえ私の目の前が血の海に染まろうとも意識を失っているリリの視界に入らなければ、どうでも良かった。

気がついた時には、立っているのは私と3人の男達だけだった。

息切れしてる男たちと対照的に、私はゆっくりと息を吐く。

「なぁ、、そのガキ、大切そうに持ってるけどよお。大切にする価値なんて本当にあんのかねぇ?」

ひとりの男が口を開いた。

「貴様には関係ないだろう」

「どうだかなぁ…あぁ、知らねぇってのも可哀想だからよ。教えてやるよ。」

仲間の意図が伝わったのか、私が蔦で拘束していた男が言葉を続けた。

「そいつは、もう穢れてんだよ。どっかの金持ちの嬢ちゃんだろ?俺らに穢された時点でもう価値なんてないんだよ。だからさっさと置いて…」

ブチッと何かが切れた気がした。

魔力の制御は、幼い頃に身につけたはずで、魔力の暴走などはもう何年も起きてなかった。

青白い光は男達を包み込み、身体をヅダヅダに切り裂いていく。
悲鳴のような絶叫が、静かな森に響き渡った。
蔦で拘束されていた男は息も絶え絶えになり、こちらを睨んでいた。
その男の元にゆっくりと近づき、剣を振り下ろす。

ビシャッと血が飛び散り、ゴトッと何かが地面に落ちた。
気をつけてはいたが、男の返り血がリリの頬に1滴付着する。

それに眉を顰め、服の袖で優しく拭った。

魔力の暴走は収まらず、未だに青白い光が辺りを包んでいる。

「ひぃ…」

残された男は地面に転がった何かを見て、引きつった声を零す。
声を零した男に目をやる。

「すまなかった…こ、殺さないでく…」

ザシュッ

剣が皮膚に触れ、引き裂き、ゴトリとまたひとつ、何かが床に落ちた。

最後のひとりは、呼吸さえすることが苦痛のようだった。魔力に圧迫されれば、ほぼ真空のような状態であろう。空気なんてないも同然なのだ。

男が最後に目にしたものは地獄よりも残酷なものであった。

その場に大切な人以外がいなくなり、魔力の暴走も落ち着いていく。

「殿下っ!!!!!!」

後ろから聞き慣れた声がし、数十の馬の足音が聞こえた。第三魔法騎士団が到着したらしい。

緑豊かな森林は、一夜にして荒地となり、紅く染まっていた。
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