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第四章
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中学校を卒業してからすぐ、バンド仲間の紹介で、小田北の隣の地区にある小園中学校に通っていた彼女と付き合うようになった。
ただ、どういう訳か、彼女は小田南中学校の卒業生達で出来ている、パタリロという暴走族の連中から言い寄られていた。
当然、その事でパタリロとは揉める事になった。
パタリロのたまり場は大物にあるユニチカだという事は判っていたので、私は鉄パイプ片手に殴り込んだ。
二十人ぐらいがたむろしているところに私は走ってつっこんでいった。
お約束通り、真ん中に立っている奴の頭に鉄パイプを振り下ろしてやった。
が、格好良かったのはここまでだった。
五、六発入れたところまでは覚えているけれど、あとは何をされたのかも判らなかった。
それこそ袋叩きだっただろう。
ボロ雑巾のようにされて、体中痛くて動く事も出来なかった。
だけど、不思議と気分は晴れていた。
何かのはけ口なんかじゃない。
つきまとう緊張感と息苦しさから逃れるための手段なんかでもない。
私は普通の喧嘩が出来た。
十五歳の夏、あれが青春だったんだろう。
平成二十四年
日本全国を震撼させた、尼崎大量殺人事件の実行犯とされた人物は小田南出身で、私よりも少し年上になる。
当時の彼の事を私はそれ程知らないのだが、もしかするとこの時、彼もユニチカにいてたのかも知れない。
そしてこれから二十年後、、、
尼崎大量殺人事件の実行犯として、全国ネットのニュースに彼の顔が流れる事になるなんて、この時の誰が思っただろうか、、、
私が付き合っていた彼女は特に不良という訳ではなく、どちらかと言えば普通の女の子だった。
ところが彼女のお母さんがとても気さくな人で、彼女の実家に私を住まわせてくれていた。
平成五年の春頃
彼女の妊娠が判った。
その事を私達は誰にも話す事なく、二人で駆け落ちをするように、豊中市の庄内に移り住んだ。
そこで私は大工の仕事に就いた。
誰かに話したところで、周りから堕ろせと言われるのは目に見えていたし、彼女が産みたいと願っていたからだ。
赤ちゃんが生まれるまで、尼崎には戻らないと決めた。
シンナーも暴走もやめて、とにかく一生懸命に働いた。
この時、彼女も私も十六歳だった。
勿論、十六歳なりにという事なんだけれど、それなりには楽しく過ごせていたと思う。
何より、ずっとつきまとっていたあの緊張感と息苦しさが消えていた、、、
ただ、どういう訳か、彼女は小田南中学校の卒業生達で出来ている、パタリロという暴走族の連中から言い寄られていた。
当然、その事でパタリロとは揉める事になった。
パタリロのたまり場は大物にあるユニチカだという事は判っていたので、私は鉄パイプ片手に殴り込んだ。
二十人ぐらいがたむろしているところに私は走ってつっこんでいった。
お約束通り、真ん中に立っている奴の頭に鉄パイプを振り下ろしてやった。
が、格好良かったのはここまでだった。
五、六発入れたところまでは覚えているけれど、あとは何をされたのかも判らなかった。
それこそ袋叩きだっただろう。
ボロ雑巾のようにされて、体中痛くて動く事も出来なかった。
だけど、不思議と気分は晴れていた。
何かのはけ口なんかじゃない。
つきまとう緊張感と息苦しさから逃れるための手段なんかでもない。
私は普通の喧嘩が出来た。
十五歳の夏、あれが青春だったんだろう。
平成二十四年
日本全国を震撼させた、尼崎大量殺人事件の実行犯とされた人物は小田南出身で、私よりも少し年上になる。
当時の彼の事を私はそれ程知らないのだが、もしかするとこの時、彼もユニチカにいてたのかも知れない。
そしてこれから二十年後、、、
尼崎大量殺人事件の実行犯として、全国ネットのニュースに彼の顔が流れる事になるなんて、この時の誰が思っただろうか、、、
私が付き合っていた彼女は特に不良という訳ではなく、どちらかと言えば普通の女の子だった。
ところが彼女のお母さんがとても気さくな人で、彼女の実家に私を住まわせてくれていた。
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彼女の妊娠が判った。
その事を私達は誰にも話す事なく、二人で駆け落ちをするように、豊中市の庄内に移り住んだ。
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この時、彼女も私も十六歳だった。
勿論、十六歳なりにという事なんだけれど、それなりには楽しく過ごせていたと思う。
何より、ずっとつきまとっていたあの緊張感と息苦しさが消えていた、、、
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