DESTINY!!

藤原 秋

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アストレア編

紅の魔女

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 その神殿は、森を見下ろす小高い丘の上にたたずんでいた。

 太くて白い丸い柱がいくつも立ち並ぶ、美しいレリーフの施された大きな三角形の屋根が印象的な、白亜の外観―――荘厳そうごんな扉の左右には不死鳥のオブジェが飾られていて、金属製の門越しによく手入れのされた色とりどりの花や緑が見える。

 そこからのびた石畳の先に石造りの階段があって、それが神殿を見上げるあたし達の足元まで続いていた。

 これがハンヴルグ神殿……予想はしていたけど、何て立派な建物なんだろう。

 それに……何とも言えない、近寄りがたいこの雰囲気。聖域っていうのかな……辺り一帯の空気がピンと張り詰めたような感じがあって、自然と背筋が伸びてしまう。

「妙だな……いつもは階段の下にも、衛兵が立っているはずだが……」

 ラオス将軍がぽつりともらしたその言葉に、あたしは何だか嫌な予感を覚えた。空一面を覆いつくした、今にも雨を降らせそうな鉛色の雲が、より一層不安な気持ちをかきたてる。

「何をしているのです、ラオス。早く行きましょう」

 マーナ姫が待ちきれない様子で階段を駆け上がった。

「あっ、姫! お待ち下さい!」

 ラオス将軍が慌ててその後を追う。

 ずっと訪れたがっていたハンヴルグ神殿を目の前にして、マーナ姫ははやる心を抑えきれないようだった。

 ここへ来る道中の彼女の不可解な言動をあたしはパトロクロスに話したんだけど、詳しいことが分からない以上彼にもどうしようもなく、とりあえず彼女の様子に注意して、何かあったらすぐに彼かラオス将軍に知らせるようにという話にとどまっていた。

 マーナ姫達の後を追って階段を駆け上がっていくと、開放された門の前でラオス将軍と衛兵が何やら話し合っていた。

「今日はやけに警備の数が少ないのではないか」
「マーナ様のお見えになる頃を見計らって衛兵を退げるように、との大神官ギプター様のお達しがありまして……皆様の邪魔にならぬようにとの配慮です。つい先程までは、通常の警備体制を敷いておりました」
「ギプター様が? ……そうか」

 ラオス将軍は一瞬不審そうな顔をしたけれど、それ以上衛兵を問い詰めることはしなかった。

「係の者がご案内致します。どうぞ」

 ギィィ……と重々しい音を立てて荘厳な扉が開いた。扉の先には案内役の神官が待っていて、あたし達に向かってうやうやしく頭を下げた。

「お待ち申し上げておりましたマーナ様、そして皆様。ギプター大神官は“封印の間”にてお待ちです。私めがご案内させていただきます……どうぞ」
「封印の間? いきなりそこへ案内するのか? 今しがたこちらへ着いたばかりなのだぞ、姫はお疲れだ。本格的な調査は明日以降に―――」

 そう言いかけたラオス将軍を諭すように、マーナ姫が口を挟む。

「良いではありませんか、ラオス。わたくしは一刻も早く神殿内を調べたい……せっかくギプターが申し出てくれているのです―――参りましょう」
「しかし……封印の間は王家の者と大神官以外は立ち入れぬ場所。まだ神殿内の安全の確認が済んでいないのです、何かあっては……!」
「封印の間は、常に特別な結界によって守られているのですよ。その結界を解除することが出来る者は、王家の者と代々の大神官のみ……何者かが神殿内に入り込んでいたとしても、そこに侵入することは不可能なのです―――」
「しかし、万が一ということも……!」

 危険を唱えるラオス将軍に、案内役の神官がおそれながら、と申し出た。

「フォード王より、今回は特例措置として、ラオス将軍とパトロクロス王子、そして王子のお連れの方は封印の間にお通ししてよいと、お許しをいただいております」
「何と?」
「そのような話は、聞き及んでいないが―――」

 顔を見合わせるラオス将軍とパトロクロス―――神官はうやうやしく頭を下げた。

「ギプター様にも確認が取れております、間違いございません。他の騎士の方々には扉の前でお待ちいただくことになりますが―――」
「ラオス、ならば平気でしょう。―――さぁ、行きますよ」
「はっ……」

 ラオス将軍は気乗りしない様子だったけど、マーナ姫に押し切られるような形で、あたし達は封印の間というところへ向かうことになった。

 しん、と静まり返った神殿内―――壁の左右に灯された聖火が照らし出す石造りの回廊を、歩くあたし達の足音だけが響く。

 封印の間……って言っていたよね。ってコトは、多分あのフールウールが封印されているに違いない場所なワケで……。

 そんなことを考えていたら、今更ながら緊張してきた。

 掌がじっとりと汗ばみ、心なしか薄ら寒い感じがしてくる。

「最近何か変わったことはなかったか?」

 ラオス将軍が尋ねると、神官は振り返ってこう答えた。

「いいえ、特に……。いて言えば、今日皆様が見えられたことくらいでしょうか……」
「……そうか」

 しばらく歩くと、不死鳥の刻印の施された重厚な扉が目の前に現れた。

 不死鳥は、アストレア王家の紋章。焦土の中から立ち上がって、こんなにも立派な国に発展したアストレアにぴったりだよね。

「この先が封印の間です。普段は強力な結界によって守られており、何人たりともこの先には進めないようになっているのですが、今日はマーナ様がご視察に見えられるということで、特別にギプター大神官が結界を解除されています……私がご案内出来るのはここまでです。どうぞお通り下さい」

 ラオス将軍は配下の騎士達を振り返った。

「お前達はここで待機だ。何か変事があったら私に知らせろ」
「はッ」

 扉の前に立ったマーナ姫がゴクリ、と息を飲むのが分かった。つられてゴクリと息を飲むあたしの耳元で、パトロクロスがそっと囁く。

「用心しろよ」

 頷くあたしの目の前で、マーナ姫が重厚な扉をゆっくりと開け放った。まばゆい白い光が扉の隙間から差し込んで、その眩しさにあたしは思わず目を細めた。

「あぁ……」

 マーナ姫が感嘆の息をもらす。

 扉の隙間から覗く、普段は決して見ることの出来ない禁域の光景に、それを見つめる騎士達の間からどよめきのようなものが上がる。

 そして白い光の中に、彼女は消えていった。その後を追って、ラオス将軍、パトロクロス、あたしの順で封印の間に足を踏み入れていく。

 背後の扉が閉ざされると、そこには鳥肌が立つような神聖な空気が広がっていた。

 目の前に広がるのは、一面白い壁に囲まれた、天井高く吹き抜けとなった広大な空間―――その中央部には高く連なる階段があり、その先に祭壇があった。祭壇には聖火が灯されていて、その前に佇む人物を照らし出している。

「ギプター!」

 その名を呼んで歩み寄ろうとしたマーナ姫に向かって、白い法衣を身に纏った大神官は、意外な言葉を口にした。

「マーナ様!? 来てはいかん、早く逃げなされ!」
「えッ!?」

 驚いたマーナ姫が立ち止まる。瞬間、大神官の法衣の胸元がぐうっと膨らみ、次の刹那、そこから真っ赤な鮮血が吹き出したのだ!

 なッ……。

 絶句するあたし達の目の前で、白い法衣を真紅に染めた大神官の身体がぐらりと傾き、長い長い階段を転げ落ちていく。

「いっ……いやあぁぁーッ! ギプタァァーッ!!」

 マーナ姫が絶叫する!

「ギプター様!」

 ラオス将軍が駆け寄り、その身体を抱き起こしたけど、確かめるまでもなく絶命している。

 時同じくして、扉の向こうから剣戟けんげきの音が聞こえてきた。

「オーロラ、マーナ姫を守るぞ! 思った以上に敵の動きが早かった……このままでは不利だ、ここを脱出する!」

 パトロクロスの声で、突然の展開に茫然としていたあたしは我に返った。

「う、うん!」

 あたし達はマーナ姫を間に挟み、背を合わせるようにして、辺りを見渡した。胃の辺りがヒリヒリするような緊張感が込み上げてくる。

 どこ……!? 敵はどこにいるの!?

「将軍、この扉の他に脱出ルートは!?」

 問いかけるパトロクロスに、ラオス将軍が首を振る。

「分かりません! ハンヴルグ神殿の封印の間は最重要機密事項トップシークレットです、王家と大神官以外の者は……!」
「……マーナ姫! ご存知ではありませんか!?」

 パトロクロスがマーナ姫を振り返る。両手で顔を覆うようにして震えていた彼女は、青ざめた表情で祭壇を指差した。

「あそこに……隠し扉があると、父から聞きました。確か、その先に転移の魔法陣があったと……」

 あたし達は長い長い階段の先にあるそれを見上げた。そこに至るまでの道は、大神官の流した血によって紅く濡れそぼり、ぬらぬらとした光を湛えている。

「パトロクロス王子……ギプター様を殺害した何者かがその近くに潜んでいる恐れがあります。どのような方法で殺害したのかも定かではない……祭壇に近付くのは危険です。何らかの罠がある可能性が高い」

 ラオス将軍の進言にパトロクロスも頷いた。

「同感です。今我々は敵の監視下にあるとみて間違いない……危険を承知で最短ルートを取るか、後ろの扉へ引き返し何が待ち受けているか分からないルートを進むか……」

 むぅ、とラオス将軍がうなる。

「おのれ、私としたことがうかつであった……! 不審な点は幾つもあったというのにそれを見過ごし、姫をむざむざこのような目に合わせてしまうとは……! まさか、ここまで事が深刻になっていようとは……!」
「ラオス、そんなに自分を責めないで下さい。この状況を望んだのは、この私自身なのだから……!」

 マーナ姫のその言葉を受けて、ラオス将軍はぐっと唇をかみしめた。

「姫……!」

 その時、周囲の温度が急激に下がったような錯覚をあたしは覚えた。

 ドクンッ。

 心臓がそれに反応し、嫌な鼓動を打ち始める。

 ―――やだ……何、この感じ!?

 まるで封印の間いっぱいに、おぞましい邪気が満ち満ちていくかのような―――そんな、感覚。

 その恐ろしい感覚が、みるみる加速度を増して膨張していく……!


 ―――!!


 あたしの中の何かが、その元を捉えた。考えるより先に、あたしは叫んでいた。

「パトロクロス! 危ないッ!!」
「!?」

 反射的にパトロクロスが横へ飛び退いた。その首筋を、鋭利な白刃がかすめていく! 褐色の髪が数本、宙に舞った。

「なっ……」

 茫然として、目の前の襲撃者を見つめるパトロクロス。その首筋からは、赤い血がにじみ出ていた。


「―――姫!? 乱心されたか!?」


 動揺を隠さず、ラオス将軍が叫ぶ。

 血の付いた短刀を手に、別人のような表情のマーナ姫がそこにはいた。

 暗い輝きを放つ青玉色サファイアブルーの瞳。身に纏う邪気が、淀んだ陽炎のように揺らめいて彼女を彩っている。

 幾分血の気の増した紅い唇が、ゆっくりと動いた。

「この状況を望んだのは、この私自身―――お前達はここで死ぬのだ」

 氷のような冷気をはらんだその声に、ゾォッ、と全身が粟立った。

「……どういうことかお聞きしたい」

 片膝をつき、剣を杖に立ち上がりながら、厳しい表情でパトロクロスが問いかける。

「ほう……立ち上がれるのか。大したものだ。刃先には、強力な痺れ薬を仕込ませておいたものを」

 えぇッ!?

 パトロクロスは無言でマーナ姫をにらみつけている。けれどその足元はガクガクと震え、額には汗が光り始めていた。

 ど……どうしよう!

 そんな彼を品定めするかのように眺め、マーナ姫はちろりと自らの唇をなめた。

「……良い表情をする。さすがは一国の王子といったところか……。気品の高さを見ても、我がにえにふさわしい」

 贄……!?

 嫣然えんぜんと微笑み、パトロクロスに近付くマーナ姫の前に、ラオス将軍が進み出た。

「姫、おやめ下さい! いったいどういうおつもりか!?」

 マーナ姫は無言で、すぅ、と左腕を上げた。

「将軍! 逃げ……!」

 パトロクロスが叫び終わらぬうちに、ふわ、と彼女のとび色の髪が揺れたように―――見えた。

「!!?」

 ドウッ、と至近距離で凄まじい波動のようなものが放たれた! 避ける間もなくそれをもろに受けたラオス将軍は壁際まで吹き飛ばされ、大音響と共に壁を破壊した。

「きゃあぁ、将軍ッ!」

 青ざめるあたしの目に、粉塵の中でかすかに動く彼の姿が映った。

 良かった、生きてる!

「ほぅ、くたばらなかったか。肩書きばかりの将軍ではないようだな」

 マ、マーナ姫……!

 あたしはキッ、と彼女の顔をにらみつけた。

「何だ、小娘。私になんぞもの申す気か?」

 見下した態度でマーナ姫が冷笑する―――ううん、違う。

 マーナ姫じゃ、ない。

「貴女は誰……」

 震える声で、あたしは彼女に問いかけた。

 話し方、表情―――何よりも、その身に纏う空気がまるで違う。

「貴女、誰なの!?」

 彼女は可笑おかしそうに、くつくつと喉を鳴らした。

「今更何を言う……? 見ての通り、私はマーナ。お前達もよく知っているではないか―――そうであろう、オーロラ?」

 あの可愛らしいマーナ姫の顔と造作はまったく一緒なのに、ここまで違って見えるものなのかと思ってしまうほどに、怖ろしいその笑顔。

「ふっ……ふざけないで!!」

 叫ぶあたしの声を遮って、彼女の笑い声が広い空間にこだまする。

 その時、大きな音と共に後方の扉が開け放たれた。

「将軍ッ……!」

 傷を負った騎士が数名、こちらへと駆け込んでくる。その奥に見える通路には、折り重なるようにして倒れた騎士達と、おぞましい魔物モンスターの死体が転がっていた。

「ほぅ……あの魔物を倒して生き残るとは―――アストレアの精鋭も捨てたものではないな」

 駆け込んできた騎士達は、雰囲気の変わったマーナ姫と彼女を取り巻くあたし達の様子、そして負傷したラオス将軍を見て、戸惑いの表情を浮かべた。

「マーナ様!? 将軍……! これは……!?」

 事態を飲み込めず困惑する彼らに向かって、偽者のマーナ姫は紅い唇の端を上げた。

「くく……私が真に用があるのはパトロクロスとやらのみ―――雑魚ざこねい!」

 彼女の手から、薄暗い半透明の流動性の物質が放たれた!

「きゃあッ!?」

 悲鳴を上げたあたしの目の前で、それは何かの障壁に当たり、バチィッと音を立てて弾かれた。

「ほぅ……阻止レジストしたか」

 !? な……何だか良く分からないけど、助かった……の!?

 そっと薄目を開けたあたしの視界には、この世のものとは思えない怖ろしい光景が広がっていた。

「あ……あぁ、あ……!」

 うめき声を上げるのは、半透明の物質に囚われた騎士達―――その身体はみるみる痩せ細り、こけ落ち、ひび割れ―――砂となって、崩れ落ちていく。

「きゃ……きゃあぁぁぁッ!」

 そのあまりの光景に、あたしは思わず自分の口を手で覆ってしまった。

「これ、は……!」

 パトロクロスが目を見開く。

 その光景は、あたしにも見覚えがあった。

 そう―――アストレアで初めてマーナ姫と出会ったあの時―――彼女を追っていた黒装束の男達、あの時の光景に、それはとてもよく似ていた。

 思い返してみると、あれが今回の件の全ての始まりだった。

 騎士達の生気は、半透明の物質を通して彼女が吸い取っているようだった。白い頬に赤味が差し、彼らの生気を吸い尽くした彼女は、満足げに微笑んだ。

 ガラン、と無機質な音を立てて、持ち主を失った甲冑が床の上に転がる。

 何だかワケが分からなくなってきた。

 あたし達が知っていたマーナ姫は、もしかしたら始めから目の前の彼女だったのか……だとしたら、本物のマーナ姫は!?

 もしかして、もう……。

「貴様……何者だ」

 怒りを孕んだパトロクロスの声が響き渡る。

「本物の彼女をどこへやった!!」
「くく……いるぞ。目の前に……な」

 ゆったりと長い鳶色の髪をたなびかせ、偽者が笑う。

「ふざけるな!!」
「余興は終わりだ……私が必要なのは、熱い血のしたたる、お前の心の臓―――その為に、わざわざお前をここへ呼んだのだ……」

 ぞっとすることを言いながら、偽者がパトロクロスの元へと歩み寄る。

「!? 何だと……!?」

 パトロクロスの心臓を……!? 何故!?

「恨むならマーナを恨め。私は誰でも良かったのだ……お前だろうと、そこの小娘だろうとな」

 どういうこと……!?

 考えるべきことはたくさんあったけど、それは後回しにして、あたしは動いた。

 アキレウスも、ガーネットもいないんだ。あたしが何とかしなきゃ……!

「―――はぁッ!」

 あたしは精神を集中させ、偽者の側面めがけて、灼熱の炎の球を放った。

 よしっ、決まった!

 そう確信した次の瞬間、あたしは信じられないものを見た。

 彼女は何と、左手一本で、しかも素手で、あたしの放った炎の球を受け止めていたのだ!

 なっ……。

「……小娘。面白い技を見せるな……呪文を唱えずに炎を放つ、とは―――」

 言葉を失うあたしの目の前で、彼女はぐすぅっ、とそれを握りつぶした。

「だが、相手が悪かったな……! “くれないの魔女”と呼ばれたこの私に向かって、炎とは……!」

 紅い唇の端が歪んだ。

 ハッ、とした時には遅かった。偽者の掌には巨大な赤い炎を纏った竜が現れていた!

「“紅蓮牙龍焦滅クリムゾニア”!!」

 カァッ、ととぐろを巻いた火竜が牙を剥き、凄まじい勢いであたしに襲いかかる!

「きゃああぁーッ!!」

 凄まじい熱エネルギーに体当たりされ、あたしは後方の壁まで一気に弾き飛ばされた。

「オーロラ!」

 激しく壁に叩きつけられ、衝撃で息が止まった。もんどりうって床の上に崩れ落ちたあたしの上に、破損した壁の破片がパラパラと降り注ぐ。

「……耐火レジストしたか」

 眉根を寄せ、偽者が呟く。

「オーロラ! 大丈夫か!?」

 ぐわーん、と響く頭の中に、パトロクロスの声があっちこっちに反響して聞こえた。

 い……痛……全身がバラバラになっちゃったみたい……。

 でも―――焼け焦げては、いない……?

「先程といい……なかなかに強力な結界を持っているようだな」

 のろのろと身体を起こそうとするあたしに、偽者の声が飛ぶ。

 結界……? あの、ガーネットが張っているようなヤツ?

 無意識のうちにあたしも張っていたの? だから、助かった?

「……でも、痛い」

 声に出して呟きながら、あたしは“紅の魔女”と名乗った女を見つめた。

 傲然ごうぜんとした態度の、怖ろしいチカラを持つ、炎の魔法を操る女―――。

 ……まさか。

 確信めいた怖ろしい予感が、あたしの頭の中を駆け抜ける。

 まさか……!?

 パトロクロスも同じことを思ったらしく、厳しい口調で女に問いかけた。

「“紅の魔女”と言ったな……。貴様、まさか―――ルザン、か!?」

 一瞬の静寂が、フールウールの眠る封印の間を包み込む。

 やがて、くつ……と紅い唇から忍び笑いがもれた。


「その名で呼ばれるのは、何百年ぶりか……」


 妖しい笑みを浮かべ、“魔女”が呟く。

 アストレアの伝説の魔女―――ルザンの復活だった。







 アストレア城の回廊でルザンの絵画を見たのは、ほんの一昨日の話だ。

 その伝説の魔女が、今、目の前にいる。

 ―――何ていう、展開なんだろう……。

 全身の血の気が引いていくのを覚えながら、あたしは同時にあの時感じた違和感を思い出していた。

 はりつけにされ、業火にその身を包まれていたルザン。

 同じ絵を見たガーネットも、何かがおかしいって言っていた……。

「バカな……! 復活したというのか!?」

 パトロクロスの声で、あたしは現実に引き戻された。

「いったい、どうやって!? ……! リトアのほこらは……!?」

 そうだ、リトアの祠……! ルザンがここにいるということは、アキレウス達が向かったそこはいったいどうなってしまっているんだろう!?

「くく……他人の心配をしている暇があるのか? 全ては、これから死にゆくお前達の知るところではない」

 低い忍び笑いをもらすと、ルザンはようやく立ち上がったあたしの元へと歩み寄った。

「呪文を唱えずに魔法を発動する……私の時代では有り得なかったことだ。お前は、何者だ? それとも……数百年の時の間に、人類は進化を遂げたのか……?」

 彼女はよろめくあたしの胸倉を掴み上げ、暗い輝きを放つ青玉色サファイアブルーの瞳であたしの顔を覗き込んだ。

 恐怖が、身体の底からせり上がってくる。あたしは彼女の手を振り払おうとその手首を掴んだけど、その力は強く、先程のダメージで足元がまだおぼつかないせいもあって、息を詰めてただその顔を見つめることしかできなかった。

「オーロラッ!」

 パトロクロスが動かない身体を引きずるようにしてこちらへ向かおうとするのが視界の隅に映ったけど、より一層顔を近づけてきたルザンに視界を塞がれて、その姿も見えなくなってしまった。

「そういえば、お前にも小用があったのだった……答えろ。シヴァの地図に選ばれし者は―――お前か?」

 目を見開くあたしに、ルザンが更に問い重ねようと唇を動かしかけたその瞬間、音もなく背後から忍び寄った影が、彼女の身体を羽交い絞めにしてあたしから引き剥がした!

「!?」

 その反動であたしは倒れこみ、何が起こったのかと顔を上げたその先に映ったのは、不意を突かれ目を見開くルザンの上に馬乗りになり、白い喉元に長剣を突きつけたラオス将軍の姿だった。

「貴様……生気を吸い取られていなかったのか」

 驚いた様子のルザンに、荒い息をつきながら、ラオス将軍が言う。

「あいにくと……そんなやわな身体はしておらん。あの術は、ある程度生命値の低い者にしか効かぬようだな」

 彼の額は大きく割れ、赤い血がその頬を伝って流れ落ちていた。

「ラオス将軍……!」
「将軍……!」
「心配ご無用……かすり傷です。後は私にお任せ下さい」

 あたし達にそう告げると、彼はルザンを厳しく問いただした。

「今までの話は聞かせてもらった……言え! 貴様を甦らせたのは何者だ!? いったいどういう目的で甦らせたのだ!!」
「……」
「本物の姫……マーナ様をどこへやった! 答えろ!!」
「……ラオス。痛い……」

 苦痛に顔を歪め、弱々しい声でルザンが呟いた。

 ううん―――ルザンというよりは、むしろ……。

「乱暴にしないで……ラオス。痛い……」
「きっ……貴様! 姫の真似などして、私が騙されるとでも思っているのか!」

 ぐっ、とラオス将軍がルザンの喉元を押さえつける。

「ラオ……ス……」

 はぁっ……、と弱々しい呼吸いきが小さな唇からもれた。

 あたしの脳裏をマーナ姫の不可解な言動がよぎったのは、刹那のことだった。

「―――ま……待って! ラオス将軍!」

 反射的に、あたしは叫んでいた。

「オーロラ殿……!?」
「オーロラ!?」

 あの時―――マーナ姫は、何かを訴えているように見えなかった……?

 言葉は聞き取れなかったけど、切なげに涙を浮かべたあの表情―――震える指先を必死に伸ばし、何かを伝えようとしていたあの表情は、まるで助けを求めているようにも見えた。

 もし、そうだったのだとしたら……あれが、本物のマーナ姫だったとしたら―――……まさか!?

「その人は、本当のマーナ姫なのかもしれない……!」
「なっ……!?」
「何ですと!?」

 あたしの言葉に、パトロクロスとラオス将軍が目を見開く。

「どういうことだ、オーロラ!?」
「パトロクロス……お昼に、あたしが話したことを思い出して。マーナ姫の、不可解なあの言動……もし―――もしもよ。本物のマーナ姫の身体がルザンに乗っ取られていて、何かの拍子に表に出た彼女が助けを求めていたんだとしたら……!」

 その仮定に、パトロクロスは息を飲んだ。

「本物の姫かもしれぬと……!?」

 ふっ、とラオス将軍の腕から力が抜ける。

 その瞬間をルザンは見逃さなかった!

「うぉっ!?」

 バフォッ、とルザンの全身から気流のようなものが巻き起こった。それに煽られラオス将軍が怯んだ隙に、その腕の中から抜け出しざま呪文を唱える!

「“紅蓮牙龍焦滅クリムゾニア”!!」
「うおぉッ!」

 とっさに剣でガードしたものの防ぎきれず、ラオス将軍は白い床の上を滑るようにして転がった。

「くっ……炎の上級呪文……か……!」

 苦々しく呟きながら立ち上がった彼の髪や衣服の一部は焼け焦げ、その鎧はすすで黒く汚れてしまっている。

 ルザンの唱えた呪文が炎の上級呪文であることを知って、あたしは改めて相手が伝説の魔女であることを実感した。

 上級に属する呪文を、詠唱部分を省略して名称だけで発動できるなんて……。

 あたしがローズダウンの神官から習ったのは初級の呪文ばかりだったけど、それでも名称だけで呪文を発動できるようになるには、かなりの熟練が必要とされるのだという話を聞いた。

 上級の呪文ともなると、どれだけの熟練度を要することになるのか、想像もつかない。

 それを、目の前の魔女はやすやすとやってのけているのだ。

「くく……そこの小娘が申した通り。この肉体は、確かに“マーナ”のもの。今はこの私が支配しているがな……」

 ゆっくりと喉元をなでながらルザンが言う。その言葉は、あたし達に大きな衝撃を与えた。

「扱いずらい肉体だ……上級の呪文をもってしても、あの程度の炎しか出せぬ。まぁ所詮は仮初かりそめの肉体……目的さえ果たせば、無用のもの。憎きデュークの子孫―――バラバラに刻んで一族の血を根絶やしにしてくれる」

 あの程度……!? 本来の威力はいったいどれほどだっていうの!?

 それに、目的って!? マーナ姫の肉体でなければ果たせないもの、っていうこと!?

まことに……姫の肉体だというのか!? 姫に魔女の亡霊が乗り移っている、と!?」

 信じられない、という表情でラオス将軍がルザンを見つめる。

「信じる信じぬはお前達の勝手だ」

 そう言い捨てるルザンに、あたしは勇気を振りしぼって話しかけた。

「ひとつ聞かせて……いつから、マーナ姫に取り憑いていたの? あたし達と初めて会った時から、あんたはルザンだったの?」
「くく……さぁ、いつからだろうな。マーナ自身、私に浸食おかされていることには気付いていなかっただろう。肉体を乗っ取られる直前まで、ずぅっと……な」

 あたしはアストレア城の回廊でマーナ姫を見かけた時のことを思い出した。

 今にして思うと、あの時あたしが見かけたのはルザンだった……?

 声をかけた後で表に現れたのが、マーナ姫?

『あの夢を見るようになってから、なかなか寝付けなくて……ようやく眠れても、その間、ずっと浅い夢を見ているような、そんな感じがしていて。きっと、精神的に緊張した状態が続いているからなのでしょうね……。そのせいで、時々ぼんやりしたり、うとうとしてしまったりするようなのです。今も、オーロラさんに声をかけられるまで気が付きませんでしたし……もしかしたら、立ったまま眠ってしまっていたのかしら』

 あの時は、パトロクロスを見つめていたのをあたしに知られたくなくて、あんなことを言ったんだと思っていた。

 でも、それはきっと、違っていた。

 マーナ姫は、自分でも気がつかないうちに少しずつルザンの霊魂に浸食おかされて、夢とうつつの区別がつかなくなっていたんだ。

「彼女に取り憑いた目的は、フールウールか。我々をダシに使って、奴の封印を解く方法をまんまとフォード王から聞き出した―――そして、それを実行する為には、彼女の肉体と、何故か私の心臓が必要だったというわけだ」

 パトロクロスは皮肉げに唇を歪めると、こう吐き捨てた。

「冗談じゃない―――貴様らに踊らされたまま、おめおめとフールウールを復活されてなるものか! 我が名にかけて、必ず阻止する!!」
「ほぅ……威勢だけはいいようだが……この状況で、いったいどうするというのだ?」

 ルザンの冷ややかな瞳が、ゆっくりとあたし達を射る。

「身体が麻痺して動けぬ王子に、軽いとは言えない傷を負った将軍、そして炎を操る小娘……お前達に、この私を阻止することが出来るのか? マーナの肉体をお前達は傷つけることが出来ぬ―――私はお前達を何のためらいもなく傷つけることが出来るがな!」

 整った顔を歪めてそう言い放ったルザンの手に、再び火竜が降臨する!

「“紅蓮牙龍焦滅クリムゾニア”!!」

 目の前に巨大な紅蓮の炎が迫り、あたしとラオス将軍を灼熱の牙で飲み込む!

「きゃあーッ!」
「うおおッ!」
「オーロラ! 将軍!!」

 バチィィィンッ!

 凄まじい音を立てて火竜があたしの結界にぶつかり、炎の奔流そのままに、あたし達を押し流す!

 何とか黒焦げになるのだけは免れたものの、再び壁に叩きつけられ、あたしとラオス将軍は床の上に転がった。

「くく……さぁ、どうする?」

 挑発的にパトロクロスに問いかけたルザンの目が、意味ありげに扉の方へと向けられた。

 何……?

 ぼんやりとかすむ視界の中、その視線の先を追ったあたしは、驚愕きょうがくに目を見開いた。

 扉の向こう―――通路に折り重なるようにして倒れていた騎士達の遺体がぶるぶると震え始めたかと思うと、操り人形のような奇怪な動きを見せて起き上がり始めたのだ!

 う……嘘!

「なッ……」

 呟いたきり、パトロクロスとラオス将軍も絶句している。

 しっ、死体が……これもルザンの能力チカラなの!?

 手に手に血まみれの武器を携え、さっきまで生きていた人達が……共に行動していた人達が、あたし達に襲いかかってくる!

 嘘でしょう!?

「こういう状況を『絶望』というのではないか?」

 高らかなルザンの笑い声が、封印の間に響き渡る。

「―――おのれぇ、魔女めッ!」

 激昂げっこうの声を上げながら、立ち上がったラオス将軍が死者達を迎え撃つ!

 すぐに激しい剣戟の音が響き始めた。

 痛みをこらえてあたしも立ち上がり、心を鬼にして彼のサポートに回ったけど、ゾンビと化した死者達は、斬られても、貫かれても、身体が動く限り立ち向かってくる。炎に包まれ、火だるまと化しても、倒れない。ケシズミになるまで、動き続ける。

 まるで表情のない、ガラス玉のような瞳。

 それは、さながら地獄のような光景だった。

 ―――ルザン……! 何てひどいことを……!

 あたしでもこんなに胸が痛むのに、部下である彼らとの付き合いのあったラオス将軍の心を思うと、いたたまれない気持ちになった。

 その様子を楽しげに眺めながら、ゆっくりとルザンがパトロクロスに近付いていく。

 ―――いけないっ……どうしよう!?

「オーロラ殿、ここは私が引き受ける! パトロクロス王子を……!」

 それを見て取ったラオス将軍がそう言ってくれたけど、彼を取り巻く状況は、あまりにも多勢に無勢だ。あせる心とは裏腹に、すぐに動くことが出来そうにない。

 あまりにも不利な状況に、泣きたくなった。

 どうしよう……どうしたら、いい!?

 アキレウス、ガーネット! こんな時、二人がいてくれたら―――! 
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