【完結】小公爵様、死亡フラグが立っています。

曽根原ツタ

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二章

〈31〉アリーシャから見たロベリア(1)

 ロベリアは、貴族の娘らしく品のある佇まいの令嬢だった。ダークブロンドのストレートの髪に、同色の瞳。決して派手で人目を引く容貌ではないが、落ち着いた静かな雰囲気があって、アリーシャには好印象だった。

 遠慮がちにロベリアのことを見つめていると、彼女と視線がかち合った。アリーシャはびっくりして肩を跳ねさせる。ロベリアは挙動不審気味なアリーシャに嫌な顔一つせず、穏やかに言った。

「こんにちは、アリーシャさん。私はロベリア・アヴリーヌです。お姉さんにはいつもお世話になっているわ」
「は、はじめまして、ロベリア様……っ。わ、私はアリーシャ・エヴァンズと申しま―しゅ」

 アリーシャは慌てて立ち上がり、ドレスの裾を摘んで社交的にお辞儀をした。昨日まで散々挨拶の練習をしてきたのに、声は上擦り、所作はぎこちない。情けないやらみっともないやらで、アリーシャの目に涙が滲んだ。

 しかし、あたふたするアリーシャの心をつゆ知らず、ナターシャは親しげな様子でロベリアの元に駆け寄り、彼女の両手を握った。

「ロベリア様、来てくださってありがとうございます……!   お休みの日にも会えて嬉しいです!   さぁどうぞこちらへ!」
「ふふ、ナターシャったら喜びすぎよ。ありがとう」

 公爵令嬢に無断で触れるなど、不敬に値する。しかし、それが許される間柄なのだろう。

(……お姉様は人懐っこい人だから、得です)

 ロベリアは、大人しそうな見た目に反して、大口を開けて笑い、冗談を言ったりする親しみやすい人だった。彼女はソファに座り、アリーシャをしげしげと観察した。

「本当に、ナターシャにそっくりね」
「……双子、ですので」
「ふふ、そうね」
「こちらでも生活には慣れてきた?   何か不自由はない?」
「……はい、大丈夫……です」

 本当は、不満に思うことは多々ある。夕食のときの一日の出来事の報告会や、外出を禁じられていること。腫れ物に触るように接してくる両親も、退屈な日常も。――何も訴えられない臆病な自分も。

 しかし、こんな卑屈なことを口にして誰かを不快にさせるくらいならば――と、いつも喉元まで出かかった言葉を飲み込むのだ。

「ごめんなさい。質問を変えるわ。慣れないことも、不自由なことも多少あるのは当然だわ。言いづらいこともあるわよね。そうではなくて……何か、やってみたいことはある?   あとは、これをこうしたい……とか。些細なことで結構よ」
「…………!」

 ロベリアは、上手く本音を言えないアリーシャの心を見透かしたように、聞き直した。言葉に迷って言い淀んでいるアリーシャを、急かさずに待ってくれている。

 日常に対する不満は言えなくとも、やってみたいことなら、伝えてみてもいいかもしれない。アリーシャは考え、勇気を出した。それは、掠れた声を絞り出すような弱々しい声。

「…………そ、外に、お出かけしてみたいんです。ピクニック……とか」

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