【完結】他の令嬢をひいきする婚約者と円満に別れる方法はありますか?

曽根原ツタ

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 デリウスはマノンと別れたあと、その足でルチミナに会いに行った。別れを告げるために。

 病弱で、友人も少なくいつも部屋でひとり過ごしている彼女。ルチミナの両親であるニジルツァ公爵夫妻は娘を溺愛しており、デリウスが見舞いに行くと手放しで喜ぶ。婚約者がいると彼らは分かっているが、家に通うのを許しているのは娘可愛さゆえの暗黙の了解だった。

 マノンの気を引くために利用することが目的だったが、なんだかんだ言いながら、ルチミナのことはそれなりに気に入っている。――遊び相手としては。

 エントランスまで出迎えてくれたルチミナ。

「デリウス様……! よくお越しくださいました……!」

 花が咲いたような笑顔で駆け寄ってくる彼女。抱きつく勢いの彼女を腕で軽く受け止める。

「体調はいかがですか?」
「……それなり、です」

 一瞬、彼女の表情が曇る。憂いを帯びた表情を見て直感する。恐らく、あまり良くないのだろう。しかし彼女は、デリウスの前だと気丈に振る舞おうとする。

「お庭のお花が綺麗に咲いているのです。もしよろしければ一緒に見に行きませんか?」
「ええ、もちろんですとも」

 ルチミナに連れられて、庭園に佇む大きなガゼボに行った。複数人の使用人たちが、横でせっせと紅茶やお菓子を用意している。さすがは公爵邸の庭園というだけあって、花壇は隅々まで手入れが行き届き、色調豊かな花が咲いている。

「とても綺麗ですね」
「ええ。本当に」
「でもどんな美しい花より、ルチミナ様が最も素敵です」
「ま、まぁ……」

 するりと口から出た賛辞。マノン以外の令嬢であれば、自然に褒めることができるのに。

 ルチミナは手を添えた頬を朱に染めた。ルチミナといると、イライラしていた気分も紛れていく。恋心がないからこそ安心感があるのだ。

 ルチミナの長い紫色の髪が、風に揺られてはためいている。デリウスはおもむろに、マノンから突き返されたプレゼントをテーブルに置いた。

「こちらは?」
「あなたに差し上げようと思って」
「まぁ……ありがとうございま――」

 しかし、箱を見下ろした彼女は不審そうに眉をひそめた。ラッピングを剥がして中身を確認し、今度はため息をつく。

「デリウス様は嘘が下手ですわね」
「え?」
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