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第三部 小さな国の人質王子は大陸の英雄になる
第405話 フュンが主導の平和会議
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フュンの片腕。
英雄の頭脳から会議が始まる。
「皆様。我らの主君であるアーリア王の体がまだ本調子じゃない為に、わざわざこちらのアーリアまで、ご足労いただきありがとうございます」
クリスが頭を下げると、各国の首脳陣も軽く会釈をした。
「それでは、世界会議を行います。今回の議題は、フュン様が提案します。平和条約と、平和会議の今後についてです。皆様からの質問はありますでしょうか。事前にお渡しした資料に疑問点などありますでしょうか?」
会議をスムーズに進めるためにフュンは、皆に資料を先に出していた。
疑問点がない皆が頷く中で、ただ一人手を挙げる。
「ん? シュルツ皇子。何かありますか」
「ええ。少しお時間を宜しいでしょうか」
クリスは、フュンを見た。
彼は、笑顔で頷く。
「はい。どうぞ。皇子。ご自由に発言してください」
「わかりました。ではアーリア王。こちらの意図をお聞きしたい」
シュルツの疑問点。
それが。
「この停戦は三年が限度。こちらの意図は何でしょうか。平和条約が七年となっているのに。これに対してだと、変ですよ。計算が合いません」
フュンが提案した停戦の最大期間が三年。
それに対して、平和友好条約の最大期間が七年。
これだと、平和条約があっても停戦が三年ではズレが生じている。
四年目以降に戦争が出来てしまう計算だ。
「ええ。シュルツ皇子の疑問は正しい。僕もそう思っています」
「ならばなぜ、そのような」
条件を提示するのか。
フュンの考えの中でも特殊であるとシュルツは感じた。
彼の大体の意図が分かって来たシュルツでも、この考えはよく分からない。
「はい。これはですね。七年の平和条約の間に話し合いをする機会を設ける事が目的です。停戦条約。平和条約は重いです。国を左右する条約だと思います。そうなると、相手と実際に会わないと延長なんて出来ません」
片手間に文書のやり取りだけで延長する判断は取れないはず。
フュンはだから三年の期間と七年の期間に分けた。
「しかし、そうなると。三年と六年の方がいいのでは?」
「そこもそうです。ズレていきますからね」
「はい。わかっていて、アーリア王はこのような提案を?」
「でもですね。そのズレがちょうどいい。三と七。重なる部分は二十一年後。ここで大きな転換期を迎えます。平和の道を進むのか。はたまた戦争の道を歩むのか。各国は頭を悩ませるべきです」
重なるまでに二十一年。
それまでは何も考えずに延長をするはず。
どちらかの条約が継続となれば、どちらも継続したいと各国が思う。
でもそのままいって二十一年後には両方の見直しが必要となる。
ここが重要。
代が替わる。もしくは、代が替わる者と共にこの問題に取り組める。
つまり、その時の王と、次世代の王が平和について深く考える時がやって来るのだ。
フュンは、未来を繋げる話し合いが欲しかった。
それは戦争の抑制にもつながるが、必ずしも戦争をするなとは言っていない事。
これが、フュンの大切な部分だった。
「僕は、その都度の人々に忘れないで考えて欲しいのです。他国を尊重して戦わず、平和を選ぶのか。それは各個人。民や大臣。そして為政者の。それぞれの考えが、そこに存在しなければならないと思います。だから選んでほしい。自分たちの手で、平和を・・・まあここは別に戦いでもいいです。それで、僕らが決めた平和じゃなくて、その都度、未来の人々が平和について考えて欲しいのです」
勝手に決める平和じゃなくて、話し合いによる継続した平和を目指して欲しい。
フュンたちの世代が勝手に物事を決めて、戦争をするなとしたら。
約五十年後くらいには、この平和条約について、何も考えない世代が生まれるだろう。
それが嫌なのだ。
フュンは、未来の人にも、最初に話し合いをしてほしいのである。
イスカルやアーリアのように、いきなり攻撃されるのではなく、話し合いの末のもつれであったのならば、まだ戦う事に納得ができる。
実の所、フュンは、あのワルベント大陸との戦いに納得がいっていなかった。
戦争主導者のミルスの考えを心底憎んでいる。
今となったらそんな事は起きないだろう。
ウーゴが王となっているので、レガイア王国には一切悪感情がない。
彼が素晴らしき王になる事を信じているからだ。
だから、フュンは、勝手にのさばるな。
大国に対して、釘を刺す意味を持って、この条約期限にした。
「なるほど・・・効率的じゃないことが、逆に効果的だと言う事ですか」
シュルツは頷いた。
「そうです。遠回りのように見えて、これが最善だと。僕は思っています。僕らの次の・・・例えば君のような若い力も考えてくれるようになります。人は常に想いが必要。この想いを作るのに、二十一年はちょうどいいはずです」
成人してまもないか。それとも、もう少しで成人といった頃にこの問題が来る。
そして、これを過ぎても、三十代と五十代が共に考える事になるはず。
そうなったら、常に人は、平和について考えるだろう。
根付いてほしい。
人々の心に。
平和が大切なのだと。
感じて欲しい。
親の世代が頑張って交渉している姿も。
分かって欲しい。
人は人の為に頑張るのだと。
人は自分だけじゃなく、次の為にも頑張っているのだと。
この条約期間設定に、繋がりという部分を大切にしていたのだ。
「なるほど・・・たしかに。二十一年後・・レオナが五十代となり。もし子供を生めば、二十代付近。たしかに、繋がるか。それに」
ジャックスは、ウーゴを見た。
彼も二十代。
ここから子供が出来れば、四十代と十代で、この話し合いをする。
「うむ。たしかに。次なる世代に問題を渡せる」
「そうです。陛下。僕は、次世代に常に問題を投げかけたい。しかもこれは、答えのない問題です。だから常に考えて欲しいんですよ」
世界には、自分たちの国以外にも国がある。
その中で、自分たちがどうやって生きていくのか。
それを常に各国が考えて欲しい。
もちろん。協力していくのが一番だ。
でもそれだけでは終わらないだろう。
未来は不確定だ。
人質だった王子が、大陸の王になるくらいに。
何が起きるか分からないのがこの世の中。
だから考えて、悩んで、進んでほしい。
未来の人たちには、希望ある未来を描いてほしい。
自分たちの手で・・・。
「私は賛成です」
ウーゴが手を挙げた。
「ええ。ありがとう。ウーゴ王」
フュンは笑顔で答えた。
「はい。私も次へ渡す気持ちを持って、王をやり遂げます」
「ええ。お願いしますよ。立派な王から、立派な方が出て欲しいですもんね」
「い。いえ。私は立派では・・・」
「すでに立派な王なはず。グロッソ。あなたはそう思うでしょ。あなたならね」
フュンはウーゴの右後ろに立っている人に聞いた。
「もちろんです。ウーゴ王は、既に風格をお持ちです。儂を拾うなど・・・他の王ならばありえない」
グロッソは、フュンと話す時よりも丁寧に返事を返した。
この場にいるのが各国の王だからである。
「はい。そうですよね。だから、ウーゴ君には未来を託しましょう。僕は、アインと同じように託しますよ」
息子に託すように。
ウーゴにも思いを託す。
フュンは想いについては、人を区別しなかった。
「はい。頑張ります」
「ええ。頑張りましょう」
二人の間に、ライブックが入る。
「アーリア王」
「はい。ライブックさん、なんでしょう?」
「こちらの三年の停戦は各国でとなっていますが。平和条約の方はどのように? それがこちらには書いていません」
ライブックは資料を読み込んでいた。
この点をしっかり見極めていたのだ。
「ええ。そこをここで話し合いにしようかと思っていました。各国がいいのか。全体がいいのか。これは皆で考えるべき事柄でしょう」
「そうですか。なるほど」
フュンの提案部分で、詳細がない箇所がいくつかあったのは、勝手に一人で決める事をしなかったからだ。
皆で考えて、皆で結論を出そうとする部分には、詳細がない。
「僕は、各国が良いと思っています。全体では胡散臭くなる可能性があります」
「ん? どういうことだ。アーリア王?」
ジャックスが聞いた。
「はい。全体でここまでは戦争をしませんよ。と決めるのは、なんだかね。口だけの嘘を言えそうですし、圧力もかかりそうです」
「フュン様・・・あ、アーリア王。どういう事でしょうか」
ジェシカが発言の訂正をしながら聞いた。
ついつい自分が王だという事を忘れていた。
「ええ。例えば、レガイアとオスロ間では平和でいきたいとなったとします。そこにアーリアやアスタリスクが反対をしようとした時に、意見を封じる事が可能になります。こちらは二つの国家に比べても小国ですからね。強引に意見を捻じ曲げる事は可能だ。でも二か国間の協議なら、そういう事が出来ません。国の意思表示に介入できません」
「余らはせんぞ。例え、力があってもな」
「ええ。ジャックス陛下は、絶対にしません。レオナ姫もです。ですが、後の人は? 大国の中で育った人間で、そういう風な人間が出て来ないとは限らない」
傲慢な王が生まれる可能性は大いにある。
それは各国にもあるが、超大国であればあるほど可能性は高い。
フュンは懸念すべき部分はとことん考えていた。
「なるほど・・・たしかに余らが一生懸命育てても、いずれはそうなる可能性はあるか・・・」
自分たちの国が超大国だから、相手の国を見くびる可能性は捨てがたい。
それに今はそのような事は起きない。
だって、フュン・メイダルフィアがアーリアに君臨しているからだ。
彼がいる国には、誰だって戦争を仕掛けたいとは思わない。
あれほどの計略を世界に仕掛けた手腕を持つ男と、知恵比べをして、しかもその家臣団の勇猛さを知る。
今の王陣営は、決してアーリアにだけは手を出さないだろう。
それは、オスロも。レガイアも。アスタリスクも思う所だ。
皆が小大陸の王を恐れる。
この時代の構図は、少々不可思議な構図であるが、しかし気持ちは分かる。
あのフュン・メイダルフィアが存在している場所を攻めるなんて考えられない。
それだけは、今の時代の人間でも理解できる。
眠れる獅子は、出来れば眠っていて欲しい。
それが各国の本音だ。
特にワルベント大陸は痛い目を見た。
彼らを叩き起こしてしまったことが、国が二つに割れた結果となったのだから、ここは慎重になるだろう。
「はい。ですから、僕の意見としては、各国で平和条約を結び。それを各国に連絡をすることを義務付ける。これはたとえば、アーリアとオスロ間で結ぶとすると、その結んだよという情報だけを他の国に知らせます。条約の中身は要りません。条約を結んだという情報だけでいい。そしてこの場合は、レガイアとアスタリスクにします」
中身は要らないが、結んだという情報は世界に知らせないといけない。
この意図は。
「なるほど。わかりました。その意図は、平和条約を反故にしたような国ですぞ・・・ですね」
シュルツだけが唯一隠された意図を理解した。
平和条約という、平和を重んじるものを反故にする。これには重いペナルティがなければならない。
「そうです。よくお分かりに」
「ええ。あなた様の思考は面白い。観察するに最高の人ですよ」
「ははは。それは・・・まあ。そうですかね」
苦笑いでフュンが答えた。
「シュルツ。どういう事だ」
「はい陛下。アーリア王が、平和条約を結ぶのを各国にして、しかも全体に周知させる意図は、こうです。平和条約を結んだあとに、条約破りをして、戦争を仕掛ける。こうなった場合。各国の非難を必ず受けろ。という制裁のような形にしたいのですよ」
「ん?・・・ああ、そうか。連合を作りやすくするのか」
「そうです」
いち早く理解したシュルツの言葉で、フュンの狙いを各国の王たちが理解した。
「例えばだと、私たちがいいかな。ここでオスロが、アーリアとの条約を破棄して攻める。こうなれば、レガイアとアスタリスクが黙っちゃいないとなります。平和条約を無視しながら攻撃をすることは、つまり、他の平和条約にも影響を与えるという事になりますから」
「うむ。よく考えられている。それで、お仕置きとして、連合が組めるという仕組みか」
フュンが答える。
「そうです。それぞれで結ぶ方が、手間が掛かりますが。全体で守ろうとする平和条約の曖昧さよりも良いはずです。厳しい目があちらこちらにある事になります」
温い方を選択しないフュン。
面倒でも各国で結んでいく方が、世界の安定に繋がるだろう。
フュンの思い付きであるが、この考えが世界のスタンダードになっていく。
新たな人の考えの基礎となるフュンは、世界の父と呼んでも過言じゃない。
「わかりました。私はアーリア王に賛成します」
ここでジェシカが意見を表に出すと。
「私もです」
続いてウーゴも了承し、そして当然ジャックスも。
「うむ。それでいこう。我らの次にも、平和を考えてもらおうとしよう」
皆がこれにて賛成となり。
世界初の平和会議でフュンの考えの全てが通る事になった。
「ええ。そうしましょう。皆さんと、そして次の子たちへ・・・思いを繋げましょう」
「うむ」「「はい」」
王たちは、世界を平和にしただけでなく、世界の平和の維持を願ったのだった。
初会議は、穏やかに終了した。
この後は各国が細かく条約を結ぶフェーズに入っていく・・・。
英雄の頭脳から会議が始まる。
「皆様。我らの主君であるアーリア王の体がまだ本調子じゃない為に、わざわざこちらのアーリアまで、ご足労いただきありがとうございます」
クリスが頭を下げると、各国の首脳陣も軽く会釈をした。
「それでは、世界会議を行います。今回の議題は、フュン様が提案します。平和条約と、平和会議の今後についてです。皆様からの質問はありますでしょうか。事前にお渡しした資料に疑問点などありますでしょうか?」
会議をスムーズに進めるためにフュンは、皆に資料を先に出していた。
疑問点がない皆が頷く中で、ただ一人手を挙げる。
「ん? シュルツ皇子。何かありますか」
「ええ。少しお時間を宜しいでしょうか」
クリスは、フュンを見た。
彼は、笑顔で頷く。
「はい。どうぞ。皇子。ご自由に発言してください」
「わかりました。ではアーリア王。こちらの意図をお聞きしたい」
シュルツの疑問点。
それが。
「この停戦は三年が限度。こちらの意図は何でしょうか。平和条約が七年となっているのに。これに対してだと、変ですよ。計算が合いません」
フュンが提案した停戦の最大期間が三年。
それに対して、平和友好条約の最大期間が七年。
これだと、平和条約があっても停戦が三年ではズレが生じている。
四年目以降に戦争が出来てしまう計算だ。
「ええ。シュルツ皇子の疑問は正しい。僕もそう思っています」
「ならばなぜ、そのような」
条件を提示するのか。
フュンの考えの中でも特殊であるとシュルツは感じた。
彼の大体の意図が分かって来たシュルツでも、この考えはよく分からない。
「はい。これはですね。七年の平和条約の間に話し合いをする機会を設ける事が目的です。停戦条約。平和条約は重いです。国を左右する条約だと思います。そうなると、相手と実際に会わないと延長なんて出来ません」
片手間に文書のやり取りだけで延長する判断は取れないはず。
フュンはだから三年の期間と七年の期間に分けた。
「しかし、そうなると。三年と六年の方がいいのでは?」
「そこもそうです。ズレていきますからね」
「はい。わかっていて、アーリア王はこのような提案を?」
「でもですね。そのズレがちょうどいい。三と七。重なる部分は二十一年後。ここで大きな転換期を迎えます。平和の道を進むのか。はたまた戦争の道を歩むのか。各国は頭を悩ませるべきです」
重なるまでに二十一年。
それまでは何も考えずに延長をするはず。
どちらかの条約が継続となれば、どちらも継続したいと各国が思う。
でもそのままいって二十一年後には両方の見直しが必要となる。
ここが重要。
代が替わる。もしくは、代が替わる者と共にこの問題に取り組める。
つまり、その時の王と、次世代の王が平和について深く考える時がやって来るのだ。
フュンは、未来を繋げる話し合いが欲しかった。
それは戦争の抑制にもつながるが、必ずしも戦争をするなとは言っていない事。
これが、フュンの大切な部分だった。
「僕は、その都度の人々に忘れないで考えて欲しいのです。他国を尊重して戦わず、平和を選ぶのか。それは各個人。民や大臣。そして為政者の。それぞれの考えが、そこに存在しなければならないと思います。だから選んでほしい。自分たちの手で、平和を・・・まあここは別に戦いでもいいです。それで、僕らが決めた平和じゃなくて、その都度、未来の人々が平和について考えて欲しいのです」
勝手に決める平和じゃなくて、話し合いによる継続した平和を目指して欲しい。
フュンたちの世代が勝手に物事を決めて、戦争をするなとしたら。
約五十年後くらいには、この平和条約について、何も考えない世代が生まれるだろう。
それが嫌なのだ。
フュンは、未来の人にも、最初に話し合いをしてほしいのである。
イスカルやアーリアのように、いきなり攻撃されるのではなく、話し合いの末のもつれであったのならば、まだ戦う事に納得ができる。
実の所、フュンは、あのワルベント大陸との戦いに納得がいっていなかった。
戦争主導者のミルスの考えを心底憎んでいる。
今となったらそんな事は起きないだろう。
ウーゴが王となっているので、レガイア王国には一切悪感情がない。
彼が素晴らしき王になる事を信じているからだ。
だから、フュンは、勝手にのさばるな。
大国に対して、釘を刺す意味を持って、この条約期限にした。
「なるほど・・・効率的じゃないことが、逆に効果的だと言う事ですか」
シュルツは頷いた。
「そうです。遠回りのように見えて、これが最善だと。僕は思っています。僕らの次の・・・例えば君のような若い力も考えてくれるようになります。人は常に想いが必要。この想いを作るのに、二十一年はちょうどいいはずです」
成人してまもないか。それとも、もう少しで成人といった頃にこの問題が来る。
そして、これを過ぎても、三十代と五十代が共に考える事になるはず。
そうなったら、常に人は、平和について考えるだろう。
根付いてほしい。
人々の心に。
平和が大切なのだと。
感じて欲しい。
親の世代が頑張って交渉している姿も。
分かって欲しい。
人は人の為に頑張るのだと。
人は自分だけじゃなく、次の為にも頑張っているのだと。
この条約期間設定に、繋がりという部分を大切にしていたのだ。
「なるほど・・・たしかに。二十一年後・・レオナが五十代となり。もし子供を生めば、二十代付近。たしかに、繋がるか。それに」
ジャックスは、ウーゴを見た。
彼も二十代。
ここから子供が出来れば、四十代と十代で、この話し合いをする。
「うむ。たしかに。次なる世代に問題を渡せる」
「そうです。陛下。僕は、次世代に常に問題を投げかけたい。しかもこれは、答えのない問題です。だから常に考えて欲しいんですよ」
世界には、自分たちの国以外にも国がある。
その中で、自分たちがどうやって生きていくのか。
それを常に各国が考えて欲しい。
もちろん。協力していくのが一番だ。
でもそれだけでは終わらないだろう。
未来は不確定だ。
人質だった王子が、大陸の王になるくらいに。
何が起きるか分からないのがこの世の中。
だから考えて、悩んで、進んでほしい。
未来の人たちには、希望ある未来を描いてほしい。
自分たちの手で・・・。
「私は賛成です」
ウーゴが手を挙げた。
「ええ。ありがとう。ウーゴ王」
フュンは笑顔で答えた。
「はい。私も次へ渡す気持ちを持って、王をやり遂げます」
「ええ。お願いしますよ。立派な王から、立派な方が出て欲しいですもんね」
「い。いえ。私は立派では・・・」
「すでに立派な王なはず。グロッソ。あなたはそう思うでしょ。あなたならね」
フュンはウーゴの右後ろに立っている人に聞いた。
「もちろんです。ウーゴ王は、既に風格をお持ちです。儂を拾うなど・・・他の王ならばありえない」
グロッソは、フュンと話す時よりも丁寧に返事を返した。
この場にいるのが各国の王だからである。
「はい。そうですよね。だから、ウーゴ君には未来を託しましょう。僕は、アインと同じように託しますよ」
息子に託すように。
ウーゴにも思いを託す。
フュンは想いについては、人を区別しなかった。
「はい。頑張ります」
「ええ。頑張りましょう」
二人の間に、ライブックが入る。
「アーリア王」
「はい。ライブックさん、なんでしょう?」
「こちらの三年の停戦は各国でとなっていますが。平和条約の方はどのように? それがこちらには書いていません」
ライブックは資料を読み込んでいた。
この点をしっかり見極めていたのだ。
「ええ。そこをここで話し合いにしようかと思っていました。各国がいいのか。全体がいいのか。これは皆で考えるべき事柄でしょう」
「そうですか。なるほど」
フュンの提案部分で、詳細がない箇所がいくつかあったのは、勝手に一人で決める事をしなかったからだ。
皆で考えて、皆で結論を出そうとする部分には、詳細がない。
「僕は、各国が良いと思っています。全体では胡散臭くなる可能性があります」
「ん? どういうことだ。アーリア王?」
ジャックスが聞いた。
「はい。全体でここまでは戦争をしませんよ。と決めるのは、なんだかね。口だけの嘘を言えそうですし、圧力もかかりそうです」
「フュン様・・・あ、アーリア王。どういう事でしょうか」
ジェシカが発言の訂正をしながら聞いた。
ついつい自分が王だという事を忘れていた。
「ええ。例えば、レガイアとオスロ間では平和でいきたいとなったとします。そこにアーリアやアスタリスクが反対をしようとした時に、意見を封じる事が可能になります。こちらは二つの国家に比べても小国ですからね。強引に意見を捻じ曲げる事は可能だ。でも二か国間の協議なら、そういう事が出来ません。国の意思表示に介入できません」
「余らはせんぞ。例え、力があってもな」
「ええ。ジャックス陛下は、絶対にしません。レオナ姫もです。ですが、後の人は? 大国の中で育った人間で、そういう風な人間が出て来ないとは限らない」
傲慢な王が生まれる可能性は大いにある。
それは各国にもあるが、超大国であればあるほど可能性は高い。
フュンは懸念すべき部分はとことん考えていた。
「なるほど・・・たしかに余らが一生懸命育てても、いずれはそうなる可能性はあるか・・・」
自分たちの国が超大国だから、相手の国を見くびる可能性は捨てがたい。
それに今はそのような事は起きない。
だって、フュン・メイダルフィアがアーリアに君臨しているからだ。
彼がいる国には、誰だって戦争を仕掛けたいとは思わない。
あれほどの計略を世界に仕掛けた手腕を持つ男と、知恵比べをして、しかもその家臣団の勇猛さを知る。
今の王陣営は、決してアーリアにだけは手を出さないだろう。
それは、オスロも。レガイアも。アスタリスクも思う所だ。
皆が小大陸の王を恐れる。
この時代の構図は、少々不可思議な構図であるが、しかし気持ちは分かる。
あのフュン・メイダルフィアが存在している場所を攻めるなんて考えられない。
それだけは、今の時代の人間でも理解できる。
眠れる獅子は、出来れば眠っていて欲しい。
それが各国の本音だ。
特にワルベント大陸は痛い目を見た。
彼らを叩き起こしてしまったことが、国が二つに割れた結果となったのだから、ここは慎重になるだろう。
「はい。ですから、僕の意見としては、各国で平和条約を結び。それを各国に連絡をすることを義務付ける。これはたとえば、アーリアとオスロ間で結ぶとすると、その結んだよという情報だけを他の国に知らせます。条約の中身は要りません。条約を結んだという情報だけでいい。そしてこの場合は、レガイアとアスタリスクにします」
中身は要らないが、結んだという情報は世界に知らせないといけない。
この意図は。
「なるほど。わかりました。その意図は、平和条約を反故にしたような国ですぞ・・・ですね」
シュルツだけが唯一隠された意図を理解した。
平和条約という、平和を重んじるものを反故にする。これには重いペナルティがなければならない。
「そうです。よくお分かりに」
「ええ。あなた様の思考は面白い。観察するに最高の人ですよ」
「ははは。それは・・・まあ。そうですかね」
苦笑いでフュンが答えた。
「シュルツ。どういう事だ」
「はい陛下。アーリア王が、平和条約を結ぶのを各国にして、しかも全体に周知させる意図は、こうです。平和条約を結んだあとに、条約破りをして、戦争を仕掛ける。こうなった場合。各国の非難を必ず受けろ。という制裁のような形にしたいのですよ」
「ん?・・・ああ、そうか。連合を作りやすくするのか」
「そうです」
いち早く理解したシュルツの言葉で、フュンの狙いを各国の王たちが理解した。
「例えばだと、私たちがいいかな。ここでオスロが、アーリアとの条約を破棄して攻める。こうなれば、レガイアとアスタリスクが黙っちゃいないとなります。平和条約を無視しながら攻撃をすることは、つまり、他の平和条約にも影響を与えるという事になりますから」
「うむ。よく考えられている。それで、お仕置きとして、連合が組めるという仕組みか」
フュンが答える。
「そうです。それぞれで結ぶ方が、手間が掛かりますが。全体で守ろうとする平和条約の曖昧さよりも良いはずです。厳しい目があちらこちらにある事になります」
温い方を選択しないフュン。
面倒でも各国で結んでいく方が、世界の安定に繋がるだろう。
フュンの思い付きであるが、この考えが世界のスタンダードになっていく。
新たな人の考えの基礎となるフュンは、世界の父と呼んでも過言じゃない。
「わかりました。私はアーリア王に賛成します」
ここでジェシカが意見を表に出すと。
「私もです」
続いてウーゴも了承し、そして当然ジャックスも。
「うむ。それでいこう。我らの次にも、平和を考えてもらおうとしよう」
皆がこれにて賛成となり。
世界初の平和会議でフュンの考えの全てが通る事になった。
「ええ。そうしましょう。皆さんと、そして次の子たちへ・・・思いを繋げましょう」
「うむ」「「はい」」
王たちは、世界を平和にしただけでなく、世界の平和の維持を願ったのだった。
初会議は、穏やかに終了した。
この後は各国が細かく条約を結ぶフェーズに入っていく・・・。
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家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
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都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
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