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序章 転生、そして人外の美少女に。

第三話 死後の世界

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「危ない所を助けてくれてありがとうございます」

「うむ、気にせんでよい。見回りに出掛けていた者たちが誰かを助けたと聞いたが、まさか裸の少女が森のなかで襲われていたとはのぉ」


 素っ裸のなか狼の群れに襲われた俺は、危ない所をエルフの戦士達に助けられた。

 彼女達はは森の警備中で、叫び声が聞こえたのでその方角へ向かうと襲われている俺に出会ったのだそうだ。

 最初、言葉が通じるか心配だったがその心配はなく、普通に会話することができ、安心した。

 彼女達は裸の俺を酷く不憫に思い、エルフの村へ案内してくれたのだった。


 そして今、俺はエルフの方々から頂いた毛布を体に羽織りエルフの村の村長と対面、お礼を言っていた。村長は腰の曲がった老女だが、さすがエルフの村長。何処か威厳を感じずには要られない。

 回りには数人のエルフが控えている。多分護衛やちょっとした家政婦だろう。

「しかし、何故あの様な森のなかで裸で彷徨いていたのだ? あそこは魔獣が多く危険だと言うのに」

 村長はシワシワの顔で不思議そうな表情を作り、問いかける。

「いえ、その実は言いにくい事なんですが....分かってくれるかわからないと言うか....」

「なんじゃ、申してみよ」

 俺は少し躊躇ったが、正直に話すことにした。

「実は俺、異世界から転生してきたんです。前世で事故にあったんですけど、気がついたら森のなかにいて」

 そう伝えると村長と回りに控えるエルフ達が珍しいものを見るかのような反応をした。

「なんと、うぬは記憶を持ち、転生してきた者なのか」

 物珍しいものを見るかのようにじろじろと見てくる。回りにいるエルフたちも騒ぎ出してきた。

「あ、あの。どういうことなのか説明して貰ってもいいですか?」

「む、すまんの。一人気持ちが高ぶってしまったわ」

 回りにいるエルフさん達も高ぶってましたけどね。


 それから俺はこの世界については説明して貰った。

 どうやらこも世界は死後に皆が訪れる世界らしい。俺たちの世界で言うあの世、異世界転生。天国や地獄は存在しないらしい。

 前世の記憶、俺で言う夢千鶴として生きてきた世界で死ぬと皆、この世界へ転生されるようだ。

 だが、ほとんどの者は前世の記憶を持たず新生児、要するに赤ちゃんとして新たな生活を始めるらしい。

 しかし、時たまに前世の記憶を引き継ぎ、転生してくる者もいるらしい。パターンは様々で、新生児として生まれる者、前世の姿のまま自然発生する者、また新たな姿で自然発生する者など様々らしい。

 そのなかの一人が自分だった訳だ。

「成る程。それじゃあ俺はその珍しい、記憶を引き継いで新たな姿で転生してきたパターンなのか」

 ....内心スッゴくホッとしたぁーー!!

 記憶持ったまま赤ん坊からスタートとかどんな罰ゲームだよ!!

 そんな事を考えていると村長が気遣うように声をかけてくる。

「うぬよ。転生者と言うことは、お金も泊まる所も服も持っておらんのだろう?」

 その言葉に身体中に冷や汗が流れる。そうだ、今俺は美少女の肉体+無一文+放浪者+すっぽんぽんという危ない状況。

 このまま森に出れば今度こそ無事か分からない。....下手したら薄い本の様な展開に......。

「そ、村長さん!! しばらくの間この村で暮らさせてください!! ちゃんと働くので宜しくお願いします!!」

 俺は全力で村長に頭を下げる(頭を下げるってジェスチャー通じるのかな)。

 そんな俺の様子を見た村長は優しく微笑みながら頷いた。

「そんなに頭を下げんでもよいよい。好きなだけいるといい。儂等一同うぬを歓迎するぞ」

 ....やっばい、いい人....じゃなくていいエルフさん達だ。涙が出そう。

「ありがとうございます!!」


「そうそう、うぬよ。うぬの名と種族、魔力の所持している量などのステータスを聞き忘れておったな」

 ....え? 名前? 種族? 魔力の....なんて?

「....ええーと、俺はまだ自分名前が無くて..」

「そうか、なら今自分で決めるといい」

 決めるといい、て今から? ....ううーん....んーーーー....

「....クレイン·サウザンド....?」

「クレイン殿か。了解した」

 ....生前の名前の千鶴を英語にしただけの安直な名前だけど....まぁいいか.。

「ところで自分の種族って何? 何をすれば分かるの?

 自分は人の形を取っているけれど、腰まで届く青みがかった白髪(ボサボサ)、金色の瞳に僅かに尖った耳からして少なくとも普通の人間では無いことには気がついていた。
 そのため多様な種族が居るのだろうことには気がついていた。が、

「簡単なことよ。《幻書》から確認すればよい」

 村長はそう言うと空中に手をかざす。すると空中に薄い何かが生まれた。
それは例えるならパソコンやゲームなどののメニューウィンドウの様な見た目をしている。

村長のそれを見せてもらうと、そこには村長の名前、種族、生命力、魔力量と魔力の最大値、スキルスロットなどなど様々な情報がのっていた。

「これが幻書、ですか。なんだかアニメに出てくるVRMMOのメニューウィンドウみたいだなぁ」

「この幻書は自身の情報を知ることができると同時に、自身の証明になるのだ」

 ふーん、なるほどねぇ。これがあれば詐欺は出来ないと。

「どうしたら幻書をてに入れれるの?」

「幻書は一人一人に皆生まれたときから持っておる。手元に魔力を集中させ、自身が何者なのか知ろうとすればよい。一度出せば後は癖がついたかのように簡単に出せる様になる」

「スミマセン....魔力の概念が上手くわからないですが....」

「魔力と言うのはだな....いやこの話はまた今度にしようか。暮らしていくうちに感覚で分かるようになる。....手元に意識を集中させるイメージを浮かべるがよい」

「手元に意識を集中....」

 すると手元に先程の村長と同じ様なもの、幻書が出現した。

「おお、これが俺の幻書」

 はてさて、どんな種族なのかなぁ俺は?

 俺と村長は幻書を除きこむ。

 そこには....
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