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1巻
1-2
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エルナから二週間の猶予を貰った俺とクレトは、領都フレンスへ向けて馬車を走らせる。
そして、その途中にある街々に立ち寄り、街の警備隊に話をして回った。
警備隊の面々は、当然敵の動きを知っていて、戦うつもりの者も多かった。
だが、戦う意思がある者は領都へ移るように言い、街に残る者には、武装を解き、敵軍に従うように促した。
あの姫なら敵対しなければ、街の住人に酷い仕打ちはしないだろうと判断したからだ。
そして人族ではない亜人や獣人には、このままでは殺されることになるため、森へ戻るか、領都フレンスへ向かうか、子爵領から離れるか、どれかを選択するように伝えさせた。
近隣にも伝令兵を送り、同じ内容を伝えさせる。
領都へと戻るために揺れる馬車の中、クレトは憂鬱そうな表情で俺を見た。
「本当に戦うのか? 素直に降伏して領地を明け渡したほうがいいんじゃないか」
しかし俺は首を横に振る。
無条件で領地から逃げ出せば、貴族として誇りを失ったと言われるだろう。
そうなれば、リンバインズ王国の中に身を寄せる場所はない。
争いから逃げ出せたとしても、俺の人生が詰む。
それではダメだ。
「無条件降伏はしない。できるだけのことはするさ。だが、フレンハイム家に残っている兵は百人ほどだから、領地の全てを守ることなんて無理だ。領地にある街を守れないなら、まずは街の住人達へ避難の指示を出すのは当主としての義務だろ。殺されると分かっている亜人や獣人達を逃がすのもな」
「二週間の猶予は貰ったけど、何か考えはあるのか?」
「一応はある。とにかく領都へ急ぎで戻るぞ。クレトもしっかりと働いてくれよ」
「それで死なないで済むなら頑張るよ。いったい今度は何を思いついたんだ?」
「それはな――」
俺は父上が殺されたと聞いた時から、どうやってこの窮地を脱するかを考えていた。
トルーデント帝国軍の兵士は屈強で、兵数も約十倍。
たかだか百人ほどの兵で立ち向かっても敵う相手ではない。
だから色々とあの手この手を考えた。
一応の計画は頭の中にある。
上手くいくといいんだが。
◇ ◆ ◇
エルナと出会った翌日には、領都の邸に戻ってくることができた。
すぐにクレトに走ってもらい、フレンハイム家の主要な者達を執務室へ集める。
今、部屋にいるのは軍団長のジェシカ、執政官のオルバート、警備隊長のボルド、それとクレトだ。
クレト以外の三人は、父上の忠実な僕だ。
ちなみに、軍事行動を主な任務とする軍と、領都を含め大きい街の治安維持を担う警備隊は、それぞれ指揮系統が独立している。
俺は前屈みの姿勢でソファに座る。
「実は昨日、クレトと二人で敵軍の総大将と会ってきた。そして二週間の猶予期間を貰った。三日後には、敵軍の侵攻が再開される」
「はぁ? セバスから偵察に出たとは聞いていたが、敵将と会っただと? では、その時に敵将の首をはねればよかっただろうが!」
軍団長のジェシカが鼻息も荒く、俺に近づく。
ジェシカは白虎族の獣人だ。
獣人らしく、闘争に対するプライドが高い。
俺は両手の平を見せてジェシカを落ち着かせる仕草をする。
「俺とクレトだけで戦っても勝てるわけないだろ。どれだけ向こうに人数がいると思ってるんだ」
「この意気地なしめ。バルトハイド様なら敵将の命はなかっただろうに」
確かに父上は剣術の達人だった。
ジェシカは父上の部下であることを誇っていたからな。
今回の砦での戦いでは、父上が直接指揮をとるということで、ジェシカは領都で待機していたのだが……それで結局父上が戦死してしまったから、かなり気が立っているようだ。
俺はジェシカを見つめながら、大きく息を吐く。
「皆が武の達人になれるわけじゃないんだ。俺は父上と違って武術が苦手だし、俺は俺にできる方法をとるだけだ」
そんな俺の言葉に、ジェシカはむすっとしながら言葉を返してくる。
「それではどうする? 敵軍が迫ってくるのだろう?」
「数を揃えるしかない。もう手は打ってきた。期日までの間に、亜人や獣人達がこの領都に大挙して押し寄せてくるはずだ」
「はぁ? どういうことだ?」
怪訝な表情を浮かべる皆に向けて、俺は人差し指を立て、馬車の中でクレトに話した計画を説明する。
戦いに必要なのは、人を集めること。
それも同じ一つの目的に向け、強い意志を持っている者達だ。
トルーデント帝国軍に対して強い敵意を持っている者達であればなおいい。
今回の帝国軍の侵攻で、亜人や獣人達は住んでいた街を追われることになる。
彼らには、森か領都か他領か、三つの選択肢を残した。そして俺の見立てでは、領都に来て、一緒に帝国と戦ってくれる者が多いだろう。
なぜならば、森に戻っても、このフレンハイム領が帝国の手に落ちれば森から出られなくなるし、他領に行っても、またそこが帝国に攻められるかもしれないしな。
それに、街を離れないといけないというのは、生活を基盤ごと捨てなければならないということ。
そうなれば当然、トルーデント帝国軍に対して強い敵意を持つことになるはずだ。
そして領都に来れば、まだ帝国と戦うことができる。
獣人達は闘争本能が強く、武に対しての誇りも高い。
亜人達は、それぞれの種族で、それぞれに長けた技能を持っている。
この者達で組織を構成すれば、きっと戦力になってくれるはずだ。
俺の計画を聞いて、オルバートはフーッと長い息を吐いた。
「アクス様は当主というより、軍略家の素質がありそうですね。人族を短期間で兵士として鍛えるには限界がありますが、体も屈強で武に秀でた獣人であれば、すぐにでも兵士として登用できます。亜人達もまた然りですね」
その言葉に俺が頷くと、ボルドがニヤリと笑った。
「では、私は警備隊に指示を出し、外壁の大門で避難してくる亜人や獣人を受け入れる準備をしよう。その時に戦う意志、特技などを聞き出せばいいのだな」
「書類にまとめるのは文官の仕事です。私も共に行きますよ」
ボルドとオルバートの二人は亜人、獣人達の組織作りについて話を進めていく。
詳細まで説明する必要がなくて助かるよ。
さすが父上の部下達だ。
俺の見込みでは、領都へ逃げてくる亜人、獣人達の数は千人ほど。
その中でも戦える者達は二百人ほどだろう。
しかし敵兵の数は千人強。
こちらの元々の兵士は百人くらいだから、亜人と獣人を合わせてもまだまだ戦力としては足りない。
辺境伯家に増援を頼んでもいいが、二週間程度じゃ準備も間に合わないだろう。
それでは辺境伯ではなく近辺の貴族はどうかというと……このあたりで一番名のある武人である父上が敗れた以上、積極的に兵を貸してくれるとは思えない。それに、俺達が敗れた後に備えて、自領の守りを固めたいだろうから、増援は絶望的だ。
つまり、自分達でどうにかしないといけないということだ。
俺はゴホンと咳払いを一つして、ボルドへ目を向ける。
「避難民達の出迎えの他にも仕事を頼みたい。至急、街にいる土魔法士を集めてくれ。人族、亜人、獣人、誰でもいい」
「分かった」
次に俺はクレトへ向き直る。
「クレトは土魔法士が集まったら、そのうち二十人ほど連れて、馬車で説明した手筈通りに動いてくれ。お前の一手で勝敗が決まることになる。まあ、気軽にやってくれ」
「そんなこと言われたら緊張するよ」
俺の言葉を聞いてクレトはゲンナリした表情で言う。
簡単な仕事だし、クレトには馬車の中で計画の詳細を丁寧に説明してある。まず失敗することはないだろう。
一応、情報共有として、ジェシカ、ボルド、オルバートにも、その作戦の内容について伝えておく。
するとジェシカが、苛立つように長い尻尾をユラユラと動かす。
「作戦は分かったけど、アタシへの指示は何もないのかい?」
「もちろんあるとも。敵軍との戦場は、領都から少し離れた場所にしたい。国境方面に少し進むと、トマム河があるだろう。あの近く、少し高くなっている場所に陣を敷いてくれ」
トマム河は、川幅が一キロほどある大河で、数キロおきに幅八メートルほどの木造の橋がかかっている。今回はそのうち、領都に最も近い橋のあたりを使うつもりだ。
ちなみに、川を挟んで国境側には森があり、その橋から伸びる街道があるだけで、近くに村もない。
「分かった。一人でも多くトルーデント帝国軍の兵士を血祭りにしてやる」
まったく、ジェシカは物騒なことを言う。
だが、彼女は父上をすごく尊敬していたからな。
その父上を殺されたのだから、憤る気持ちは分かるけどさ。
俺の計画を聞き終わった四人は、それぞれの配置へと向かっていった。
さて、これで二週間のうちにやるべきことは決まった。
全ての手筈が上手くいけば、こちら側へいい風が吹くはずだ。
◇ ◆ ◇
エルナから貰った猶予期間の二週間は、あっという間に過ぎた。
そろそろ帝国軍の進行が再開されただろう。
この前遭遇した場所から、帝国軍は近隣の村や街に兵をやりながら侵攻してきているはず。なので、俺が戦いの準備を仕込んでいるトマム河までは、おおよそ三日程度で着くだろうか。
この二週間の間に領都フレンスへ避難してきた獣人や亜人の数は、予想通り千人を超えた。
絶望的な状況にある戦いに敗れれば元の村や街には戻れないこともあって、家財道具なども運び出し、これまでの生活を完全に捨ててきた者ばかりだ。
そんな避難民達の中から、オルバートとボルドの働きによって、戦える者達を選別することができた。
敵軍と戦う意志を持った者達の人数は、予想を上回る三百人。
その中で土魔法を使える者は三十人もいた。
元々領都にいた土魔法士も含め、その中から能力の高い土魔法士を二十人選抜して、一週間ほど前からクレトに預けてある。
クレトは事前の話し合い通り、その者達を連れて任務へと向かった。
残りの土魔法士達は、トマム河近くに作った陣の補強に回ってもらった。
そんなわけで今俺は、その陣にやってきている。
河からは百メートルほど離れていて、少し高さもある場所だ。
陣の周囲の外壁を見ながら、ジェシカが声をかけてくる。
「通常のものと比べても、かなり厚めに壁を作ったぞ。作戦は聞いてるけど、ちょっとやりすぎじゃないか?」
「それは俺が臆病だからさ。なるべく防備は堅いほうがいいだろ」
俺は肩を竦めて手の平をヒラヒラと振る。
その姿を見て、ジェシカは眉をひそめた。
「やはりアクス、お前は武人ではないな。少しは亡きバルトハイド様を見習え。あの方は実に立派だったぞ」
父上は個人の武に秀でた脳筋タイプだったからな。
インドア派の俺とはタイプが違う。
幼少の頃は父上に憧れて武人を目指したこともあった。
でも父上との厳しい訓練で、俺には才能がないと悟ったよ。
今更、武人を気取るつもりはない。
ジェシカは目を細める。
「軍は勝手にやらせてもらうからな」
「それはダメだ。今回は俺の指示に従ってもらう。これは当主命令だ」
「何を偉そうに。今まで何もできなかった坊ちゃん風情が」
ジェシカは歯をギリギリと噛んで、俺を威嚇する。
険悪な雰囲気になっている俺とジェシカのほうに、ボルドが歩いてきた。
「ジェシカ、今はアクス様が当主だ。控えろ。お前達を自由にすれば統率が取れなくなる。勝手なことをするな」
ボルドの言葉に、ジェシカは苦々しい表情を浮かべて両手の拳を握り込む。
ボルドは今は警備隊長を務めているが、かつては軍にいたことがあり、またジェシカよりも彼のほうが家臣として仕えた年数は長い。
だから勝気な彼女も、ボルドには頭が上がらない。
ジェシカから視線を外して、ボルドは俺のほうへ顔を向ける。
「亜人、獣人の編制が終わった。それぞれの種族別に編制してある。アクス様の号令でいつでも戦えるぞ」
「分かった、ありがとう」
さて、これで戦を始める準備は全て整った。
あとはルーデント帝国軍に泡を吹かせるだけだ。
◇ ◆ ◇
それから三日後に、敵軍が河の反対側に姿を現した。
敵軍はおよそ千人。騎馬隊が二百、歩兵部隊が五百、重歩兵部隊が百、魔法部隊が百、指揮官の護衛部隊らしき面々が百である。
敵軍は橋の手前で、陣を張り始める。
もし、この橋を通らなければ、川沿いに進んで別の橋を渡るしかない。
さすがに簡単に渡れる深さの河ではないし、流れもそこそこあるからな。
必然的に、敵はこの橋を渡るしかなく、橋の上で食い止めさえすれば、寡兵であるこちらが囲まれる心配はなくなる。
それが、この河の近くに陣を張った理由の一つだ。
俺はクレトを連れて、橋の中央まで歩いていく。
すると反対側から、白馬に乗ったエルナが兵士達に護衛されながら近づいてきた。
そして彼女はクレトにちらと目をやると、すぐに俺を見て、ニヤリと微笑む。
「クレト……ではなく、お前がアクスなのだろう? この二週間で逃げ出したと思ったぞ。少しは気概があるらしい」
やはり俺とクレトが入れ替わっていたことは、姫様にはバレていたか。
俺はなるべく胸を張り、腰に手を当てて余裕そうに見せる。
「戦力差を埋めることはできなかったけど、せいぜい足掻いてみせるさ」
「その意気や良し。どんな罠でも打ち砕いてみせよう。戦の開始は明朝、戦場で相まみえることとしようではないか」
エルナはそう言うと、馬を翻して颯爽と去っていった。
まったく、絵に描いたように脳筋な姫様だ。
次の日の早朝、戦の準備を整え終えたところで、法螺貝の音が鳴り響いた。
敵軍が出陣した合図だ。
ジェシカ率いる軍と獣人、亜人の混成部隊は、手筈通りにこちら側の橋の入口近くに陣取り、向かってくる敵兵を迎え撃つ構えをとる。
俺がボルドに指示を出すと、空へ火薬玉が三つ打ち上げられる。
信号弾の代わりだ。
これで、昨日の夜から川上に移動していたクレトにも意図が伝わっただろう。
そうこうしているうちに、敵軍は歩兵をゆっくりと進め、確実に橋を占拠する作戦に出た。
騎兵を駆けさせても、構えるこちらの兵に突っ込むだけになってしまうからな。
敵軍の歩兵と我が軍が交戦する。
あたりに怒号が響き、剣戟の音が鳴り響く。
こちらには獣人や亜人という、膂力に優れた兵が多いこともあって、数こそ向こうが多いが、持ちこたえているようだ。
すると川上の空に一つの火薬玉が放たれ、煙を上げてパンと破裂した。
それを見た俺は、空へ向けて大きく剣をかかげる。
そして陣の壁の上に立っていたボルドが、近くにいた兵士に指示を出した。
三人の兵士が大きな赤い旗を振り、ジェシカへ合図を送る。
それに気付いたジェシカが、大声で兵達へ号令を出した。
「撤退だー! 急いで陣まで撤退しろー!」
兵達はジェシカを先頭にして、我先に自陣へ向けて走る。
それを好機と考えたのか、敵軍は追撃を開始した。
味方の兵達の全員が陣に入ったことを確かめて、急いで陣の大門を閉じる。
そして、陣の中から土魔法士が土を放って大門を補強した。
それを確認した俺は、急いで陣の壁の上へと駆け登る。
外壁の外には、大勢の敵軍が攻め入ろうと押し寄せているが……その直後、ドドドドドドという音が川上から鳴り響いてきた。
俺は大声で味方に指示を出す。
「土石流が来たぞ! 何かに掴まっていろ!」
これこそが、俺が計画し、クレトに任せていた作戦だ。
河の上流側、もう一つの橋があるあたりに、土魔法士を使って、簡易的なダムを作っておいたのである。
ここで一週間水をため、一気に流すという作戦だった。
もちろん、川は蛇行しているので、ダムを作る以外にも、土手の補強なども行っている。また、下流域も被害が出ないよう、新しい土手を作るなどの対策はしてある。おかげでかなりギリギリなスケジュールになってしまった。
しかし、国境側からは、森が上手く目隠しになっていたおかげで、事前の準備に気付かれることもなかった。
そして先ほどの信号弾で、水をせき止めていたダムを魔法で崩し、一気に流したというわけだ。
川上から一気に流れ込んだ水とダムの残骸、そして土手の土などを巻き込みながら、凄まじい勢いで襲いかかってくる。
その濁流は未だ橋の上に残っていた敵兵ごと橋を壊し、そして川から溢れた水はこちらの陣の外壁に迫っていた敵兵の足元をすくい、呑み込んでいく。
陣の外壁もその水流に削られていくが、そこは事前の備えと土魔法士の補強のおかげで、致命的なことにはならなかった。
やや遠くて見えないが、向こう岸も濁流に巻き込まれているようだ。
……予想していたよりも被害が大きそうだな。
濁流が落ち着いたのを見計らって、俺は隣に来ていたボルドとジェシカへ指示を出す。
「さて、救助作業を始めるとするか」
◇ ◆ ◇
トマム河での戦いから三日が過ぎた。
敵を流したからハイ終わり、というわけにはいかない。
ちゃんと橋を作り直さないといけないし、辺境伯や王都に、事の顛末を報告しないといけない。
それに敵将であるエルナの生死を確認する必要があるし、もし生きているなら、捕まえる必要がある。
それ以外にも生きている兵士がいれば、捕まえておかないといけない。
というわけで俺達は、敵兵の救助をしたのだが……
自分でしでかしたことだが、めちゃくちゃ大変だった。
しかし土魔法士が多くいたおかげで、思っていたよりも簡単に作業は進んでいった。河の向こうへ渡る橋も、土魔法で簡易的なものだったら作れたからね。
この三日間で、敵兵の多くを見つけることができた。
その数、およそ五百人。元々千人ほどの敵軍だったため、おおよそ半分ほどが見つからなかったことになる。
おそらく、橋を渡ろうとしていた兵は全滅だろう。
岸のほうにいた兵は、土石流に呑まれた者もいたが、命を落とした者はほとんどいなかったと思う。
まぁ、戦なわけだし、全員が無傷で終わることなんてない。
そもそも、国境では俺達の軍の被害のほうが甚大だったわけで……
そして肝心のエルナも、割と早い段階で見つけることができた。
発見した時には鎧はボコボコ、全身泥まみれで、意識がなかったそうだ。
俺の指示により、エルナはフレンハイムの邸へ運ばせている。他の兵士達は、領都の外れの訓練場を一時的に捕虜宿舎にして、そこに閉じ込めていた。
エルナはただ気絶しているだけで重傷ではないという話だったが、なかなか目覚めなかった。
ただ、つい先ほど目覚めたと聞いて、俺は彼女のもとへ向かった。
扉を開けるなり、ベッドの上で起き上がっているエルナと目が合った。
そして、その途中にある街々に立ち寄り、街の警備隊に話をして回った。
警備隊の面々は、当然敵の動きを知っていて、戦うつもりの者も多かった。
だが、戦う意思がある者は領都へ移るように言い、街に残る者には、武装を解き、敵軍に従うように促した。
あの姫なら敵対しなければ、街の住人に酷い仕打ちはしないだろうと判断したからだ。
そして人族ではない亜人や獣人には、このままでは殺されることになるため、森へ戻るか、領都フレンスへ向かうか、子爵領から離れるか、どれかを選択するように伝えさせた。
近隣にも伝令兵を送り、同じ内容を伝えさせる。
領都へと戻るために揺れる馬車の中、クレトは憂鬱そうな表情で俺を見た。
「本当に戦うのか? 素直に降伏して領地を明け渡したほうがいいんじゃないか」
しかし俺は首を横に振る。
無条件で領地から逃げ出せば、貴族として誇りを失ったと言われるだろう。
そうなれば、リンバインズ王国の中に身を寄せる場所はない。
争いから逃げ出せたとしても、俺の人生が詰む。
それではダメだ。
「無条件降伏はしない。できるだけのことはするさ。だが、フレンハイム家に残っている兵は百人ほどだから、領地の全てを守ることなんて無理だ。領地にある街を守れないなら、まずは街の住人達へ避難の指示を出すのは当主としての義務だろ。殺されると分かっている亜人や獣人達を逃がすのもな」
「二週間の猶予は貰ったけど、何か考えはあるのか?」
「一応はある。とにかく領都へ急ぎで戻るぞ。クレトもしっかりと働いてくれよ」
「それで死なないで済むなら頑張るよ。いったい今度は何を思いついたんだ?」
「それはな――」
俺は父上が殺されたと聞いた時から、どうやってこの窮地を脱するかを考えていた。
トルーデント帝国軍の兵士は屈強で、兵数も約十倍。
たかだか百人ほどの兵で立ち向かっても敵う相手ではない。
だから色々とあの手この手を考えた。
一応の計画は頭の中にある。
上手くいくといいんだが。
◇ ◆ ◇
エルナと出会った翌日には、領都の邸に戻ってくることができた。
すぐにクレトに走ってもらい、フレンハイム家の主要な者達を執務室へ集める。
今、部屋にいるのは軍団長のジェシカ、執政官のオルバート、警備隊長のボルド、それとクレトだ。
クレト以外の三人は、父上の忠実な僕だ。
ちなみに、軍事行動を主な任務とする軍と、領都を含め大きい街の治安維持を担う警備隊は、それぞれ指揮系統が独立している。
俺は前屈みの姿勢でソファに座る。
「実は昨日、クレトと二人で敵軍の総大将と会ってきた。そして二週間の猶予期間を貰った。三日後には、敵軍の侵攻が再開される」
「はぁ? セバスから偵察に出たとは聞いていたが、敵将と会っただと? では、その時に敵将の首をはねればよかっただろうが!」
軍団長のジェシカが鼻息も荒く、俺に近づく。
ジェシカは白虎族の獣人だ。
獣人らしく、闘争に対するプライドが高い。
俺は両手の平を見せてジェシカを落ち着かせる仕草をする。
「俺とクレトだけで戦っても勝てるわけないだろ。どれだけ向こうに人数がいると思ってるんだ」
「この意気地なしめ。バルトハイド様なら敵将の命はなかっただろうに」
確かに父上は剣術の達人だった。
ジェシカは父上の部下であることを誇っていたからな。
今回の砦での戦いでは、父上が直接指揮をとるということで、ジェシカは領都で待機していたのだが……それで結局父上が戦死してしまったから、かなり気が立っているようだ。
俺はジェシカを見つめながら、大きく息を吐く。
「皆が武の達人になれるわけじゃないんだ。俺は父上と違って武術が苦手だし、俺は俺にできる方法をとるだけだ」
そんな俺の言葉に、ジェシカはむすっとしながら言葉を返してくる。
「それではどうする? 敵軍が迫ってくるのだろう?」
「数を揃えるしかない。もう手は打ってきた。期日までの間に、亜人や獣人達がこの領都に大挙して押し寄せてくるはずだ」
「はぁ? どういうことだ?」
怪訝な表情を浮かべる皆に向けて、俺は人差し指を立て、馬車の中でクレトに話した計画を説明する。
戦いに必要なのは、人を集めること。
それも同じ一つの目的に向け、強い意志を持っている者達だ。
トルーデント帝国軍に対して強い敵意を持っている者達であればなおいい。
今回の帝国軍の侵攻で、亜人や獣人達は住んでいた街を追われることになる。
彼らには、森か領都か他領か、三つの選択肢を残した。そして俺の見立てでは、領都に来て、一緒に帝国と戦ってくれる者が多いだろう。
なぜならば、森に戻っても、このフレンハイム領が帝国の手に落ちれば森から出られなくなるし、他領に行っても、またそこが帝国に攻められるかもしれないしな。
それに、街を離れないといけないというのは、生活を基盤ごと捨てなければならないということ。
そうなれば当然、トルーデント帝国軍に対して強い敵意を持つことになるはずだ。
そして領都に来れば、まだ帝国と戦うことができる。
獣人達は闘争本能が強く、武に対しての誇りも高い。
亜人達は、それぞれの種族で、それぞれに長けた技能を持っている。
この者達で組織を構成すれば、きっと戦力になってくれるはずだ。
俺の計画を聞いて、オルバートはフーッと長い息を吐いた。
「アクス様は当主というより、軍略家の素質がありそうですね。人族を短期間で兵士として鍛えるには限界がありますが、体も屈強で武に秀でた獣人であれば、すぐにでも兵士として登用できます。亜人達もまた然りですね」
その言葉に俺が頷くと、ボルドがニヤリと笑った。
「では、私は警備隊に指示を出し、外壁の大門で避難してくる亜人や獣人を受け入れる準備をしよう。その時に戦う意志、特技などを聞き出せばいいのだな」
「書類にまとめるのは文官の仕事です。私も共に行きますよ」
ボルドとオルバートの二人は亜人、獣人達の組織作りについて話を進めていく。
詳細まで説明する必要がなくて助かるよ。
さすが父上の部下達だ。
俺の見込みでは、領都へ逃げてくる亜人、獣人達の数は千人ほど。
その中でも戦える者達は二百人ほどだろう。
しかし敵兵の数は千人強。
こちらの元々の兵士は百人くらいだから、亜人と獣人を合わせてもまだまだ戦力としては足りない。
辺境伯家に増援を頼んでもいいが、二週間程度じゃ準備も間に合わないだろう。
それでは辺境伯ではなく近辺の貴族はどうかというと……このあたりで一番名のある武人である父上が敗れた以上、積極的に兵を貸してくれるとは思えない。それに、俺達が敗れた後に備えて、自領の守りを固めたいだろうから、増援は絶望的だ。
つまり、自分達でどうにかしないといけないということだ。
俺はゴホンと咳払いを一つして、ボルドへ目を向ける。
「避難民達の出迎えの他にも仕事を頼みたい。至急、街にいる土魔法士を集めてくれ。人族、亜人、獣人、誰でもいい」
「分かった」
次に俺はクレトへ向き直る。
「クレトは土魔法士が集まったら、そのうち二十人ほど連れて、馬車で説明した手筈通りに動いてくれ。お前の一手で勝敗が決まることになる。まあ、気軽にやってくれ」
「そんなこと言われたら緊張するよ」
俺の言葉を聞いてクレトはゲンナリした表情で言う。
簡単な仕事だし、クレトには馬車の中で計画の詳細を丁寧に説明してある。まず失敗することはないだろう。
一応、情報共有として、ジェシカ、ボルド、オルバートにも、その作戦の内容について伝えておく。
するとジェシカが、苛立つように長い尻尾をユラユラと動かす。
「作戦は分かったけど、アタシへの指示は何もないのかい?」
「もちろんあるとも。敵軍との戦場は、領都から少し離れた場所にしたい。国境方面に少し進むと、トマム河があるだろう。あの近く、少し高くなっている場所に陣を敷いてくれ」
トマム河は、川幅が一キロほどある大河で、数キロおきに幅八メートルほどの木造の橋がかかっている。今回はそのうち、領都に最も近い橋のあたりを使うつもりだ。
ちなみに、川を挟んで国境側には森があり、その橋から伸びる街道があるだけで、近くに村もない。
「分かった。一人でも多くトルーデント帝国軍の兵士を血祭りにしてやる」
まったく、ジェシカは物騒なことを言う。
だが、彼女は父上をすごく尊敬していたからな。
その父上を殺されたのだから、憤る気持ちは分かるけどさ。
俺の計画を聞き終わった四人は、それぞれの配置へと向かっていった。
さて、これで二週間のうちにやるべきことは決まった。
全ての手筈が上手くいけば、こちら側へいい風が吹くはずだ。
◇ ◆ ◇
エルナから貰った猶予期間の二週間は、あっという間に過ぎた。
そろそろ帝国軍の進行が再開されただろう。
この前遭遇した場所から、帝国軍は近隣の村や街に兵をやりながら侵攻してきているはず。なので、俺が戦いの準備を仕込んでいるトマム河までは、おおよそ三日程度で着くだろうか。
この二週間の間に領都フレンスへ避難してきた獣人や亜人の数は、予想通り千人を超えた。
絶望的な状況にある戦いに敗れれば元の村や街には戻れないこともあって、家財道具なども運び出し、これまでの生活を完全に捨ててきた者ばかりだ。
そんな避難民達の中から、オルバートとボルドの働きによって、戦える者達を選別することができた。
敵軍と戦う意志を持った者達の人数は、予想を上回る三百人。
その中で土魔法を使える者は三十人もいた。
元々領都にいた土魔法士も含め、その中から能力の高い土魔法士を二十人選抜して、一週間ほど前からクレトに預けてある。
クレトは事前の話し合い通り、その者達を連れて任務へと向かった。
残りの土魔法士達は、トマム河近くに作った陣の補強に回ってもらった。
そんなわけで今俺は、その陣にやってきている。
河からは百メートルほど離れていて、少し高さもある場所だ。
陣の周囲の外壁を見ながら、ジェシカが声をかけてくる。
「通常のものと比べても、かなり厚めに壁を作ったぞ。作戦は聞いてるけど、ちょっとやりすぎじゃないか?」
「それは俺が臆病だからさ。なるべく防備は堅いほうがいいだろ」
俺は肩を竦めて手の平をヒラヒラと振る。
その姿を見て、ジェシカは眉をひそめた。
「やはりアクス、お前は武人ではないな。少しは亡きバルトハイド様を見習え。あの方は実に立派だったぞ」
父上は個人の武に秀でた脳筋タイプだったからな。
インドア派の俺とはタイプが違う。
幼少の頃は父上に憧れて武人を目指したこともあった。
でも父上との厳しい訓練で、俺には才能がないと悟ったよ。
今更、武人を気取るつもりはない。
ジェシカは目を細める。
「軍は勝手にやらせてもらうからな」
「それはダメだ。今回は俺の指示に従ってもらう。これは当主命令だ」
「何を偉そうに。今まで何もできなかった坊ちゃん風情が」
ジェシカは歯をギリギリと噛んで、俺を威嚇する。
険悪な雰囲気になっている俺とジェシカのほうに、ボルドが歩いてきた。
「ジェシカ、今はアクス様が当主だ。控えろ。お前達を自由にすれば統率が取れなくなる。勝手なことをするな」
ボルドの言葉に、ジェシカは苦々しい表情を浮かべて両手の拳を握り込む。
ボルドは今は警備隊長を務めているが、かつては軍にいたことがあり、またジェシカよりも彼のほうが家臣として仕えた年数は長い。
だから勝気な彼女も、ボルドには頭が上がらない。
ジェシカから視線を外して、ボルドは俺のほうへ顔を向ける。
「亜人、獣人の編制が終わった。それぞれの種族別に編制してある。アクス様の号令でいつでも戦えるぞ」
「分かった、ありがとう」
さて、これで戦を始める準備は全て整った。
あとはルーデント帝国軍に泡を吹かせるだけだ。
◇ ◆ ◇
それから三日後に、敵軍が河の反対側に姿を現した。
敵軍はおよそ千人。騎馬隊が二百、歩兵部隊が五百、重歩兵部隊が百、魔法部隊が百、指揮官の護衛部隊らしき面々が百である。
敵軍は橋の手前で、陣を張り始める。
もし、この橋を通らなければ、川沿いに進んで別の橋を渡るしかない。
さすがに簡単に渡れる深さの河ではないし、流れもそこそこあるからな。
必然的に、敵はこの橋を渡るしかなく、橋の上で食い止めさえすれば、寡兵であるこちらが囲まれる心配はなくなる。
それが、この河の近くに陣を張った理由の一つだ。
俺はクレトを連れて、橋の中央まで歩いていく。
すると反対側から、白馬に乗ったエルナが兵士達に護衛されながら近づいてきた。
そして彼女はクレトにちらと目をやると、すぐに俺を見て、ニヤリと微笑む。
「クレト……ではなく、お前がアクスなのだろう? この二週間で逃げ出したと思ったぞ。少しは気概があるらしい」
やはり俺とクレトが入れ替わっていたことは、姫様にはバレていたか。
俺はなるべく胸を張り、腰に手を当てて余裕そうに見せる。
「戦力差を埋めることはできなかったけど、せいぜい足掻いてみせるさ」
「その意気や良し。どんな罠でも打ち砕いてみせよう。戦の開始は明朝、戦場で相まみえることとしようではないか」
エルナはそう言うと、馬を翻して颯爽と去っていった。
まったく、絵に描いたように脳筋な姫様だ。
次の日の早朝、戦の準備を整え終えたところで、法螺貝の音が鳴り響いた。
敵軍が出陣した合図だ。
ジェシカ率いる軍と獣人、亜人の混成部隊は、手筈通りにこちら側の橋の入口近くに陣取り、向かってくる敵兵を迎え撃つ構えをとる。
俺がボルドに指示を出すと、空へ火薬玉が三つ打ち上げられる。
信号弾の代わりだ。
これで、昨日の夜から川上に移動していたクレトにも意図が伝わっただろう。
そうこうしているうちに、敵軍は歩兵をゆっくりと進め、確実に橋を占拠する作戦に出た。
騎兵を駆けさせても、構えるこちらの兵に突っ込むだけになってしまうからな。
敵軍の歩兵と我が軍が交戦する。
あたりに怒号が響き、剣戟の音が鳴り響く。
こちらには獣人や亜人という、膂力に優れた兵が多いこともあって、数こそ向こうが多いが、持ちこたえているようだ。
すると川上の空に一つの火薬玉が放たれ、煙を上げてパンと破裂した。
それを見た俺は、空へ向けて大きく剣をかかげる。
そして陣の壁の上に立っていたボルドが、近くにいた兵士に指示を出した。
三人の兵士が大きな赤い旗を振り、ジェシカへ合図を送る。
それに気付いたジェシカが、大声で兵達へ号令を出した。
「撤退だー! 急いで陣まで撤退しろー!」
兵達はジェシカを先頭にして、我先に自陣へ向けて走る。
それを好機と考えたのか、敵軍は追撃を開始した。
味方の兵達の全員が陣に入ったことを確かめて、急いで陣の大門を閉じる。
そして、陣の中から土魔法士が土を放って大門を補強した。
それを確認した俺は、急いで陣の壁の上へと駆け登る。
外壁の外には、大勢の敵軍が攻め入ろうと押し寄せているが……その直後、ドドドドドドという音が川上から鳴り響いてきた。
俺は大声で味方に指示を出す。
「土石流が来たぞ! 何かに掴まっていろ!」
これこそが、俺が計画し、クレトに任せていた作戦だ。
河の上流側、もう一つの橋があるあたりに、土魔法士を使って、簡易的なダムを作っておいたのである。
ここで一週間水をため、一気に流すという作戦だった。
もちろん、川は蛇行しているので、ダムを作る以外にも、土手の補強なども行っている。また、下流域も被害が出ないよう、新しい土手を作るなどの対策はしてある。おかげでかなりギリギリなスケジュールになってしまった。
しかし、国境側からは、森が上手く目隠しになっていたおかげで、事前の準備に気付かれることもなかった。
そして先ほどの信号弾で、水をせき止めていたダムを魔法で崩し、一気に流したというわけだ。
川上から一気に流れ込んだ水とダムの残骸、そして土手の土などを巻き込みながら、凄まじい勢いで襲いかかってくる。
その濁流は未だ橋の上に残っていた敵兵ごと橋を壊し、そして川から溢れた水はこちらの陣の外壁に迫っていた敵兵の足元をすくい、呑み込んでいく。
陣の外壁もその水流に削られていくが、そこは事前の備えと土魔法士の補強のおかげで、致命的なことにはならなかった。
やや遠くて見えないが、向こう岸も濁流に巻き込まれているようだ。
……予想していたよりも被害が大きそうだな。
濁流が落ち着いたのを見計らって、俺は隣に来ていたボルドとジェシカへ指示を出す。
「さて、救助作業を始めるとするか」
◇ ◆ ◇
トマム河での戦いから三日が過ぎた。
敵を流したからハイ終わり、というわけにはいかない。
ちゃんと橋を作り直さないといけないし、辺境伯や王都に、事の顛末を報告しないといけない。
それに敵将であるエルナの生死を確認する必要があるし、もし生きているなら、捕まえる必要がある。
それ以外にも生きている兵士がいれば、捕まえておかないといけない。
というわけで俺達は、敵兵の救助をしたのだが……
自分でしでかしたことだが、めちゃくちゃ大変だった。
しかし土魔法士が多くいたおかげで、思っていたよりも簡単に作業は進んでいった。河の向こうへ渡る橋も、土魔法で簡易的なものだったら作れたからね。
この三日間で、敵兵の多くを見つけることができた。
その数、およそ五百人。元々千人ほどの敵軍だったため、おおよそ半分ほどが見つからなかったことになる。
おそらく、橋を渡ろうとしていた兵は全滅だろう。
岸のほうにいた兵は、土石流に呑まれた者もいたが、命を落とした者はほとんどいなかったと思う。
まぁ、戦なわけだし、全員が無傷で終わることなんてない。
そもそも、国境では俺達の軍の被害のほうが甚大だったわけで……
そして肝心のエルナも、割と早い段階で見つけることができた。
発見した時には鎧はボコボコ、全身泥まみれで、意識がなかったそうだ。
俺の指示により、エルナはフレンハイムの邸へ運ばせている。他の兵士達は、領都の外れの訓練場を一時的に捕虜宿舎にして、そこに閉じ込めていた。
エルナはただ気絶しているだけで重傷ではないという話だったが、なかなか目覚めなかった。
ただ、つい先ほど目覚めたと聞いて、俺は彼女のもとへ向かった。
扉を開けるなり、ベッドの上で起き上がっているエルナと目が合った。
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