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20.二つ目の案
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僕は報告書をローランド兄上に手渡し、兼ねてから考えていた案を口にした。
「魔導車を売ったおかげで、随分と利益金が集まりました。この資金を使って魔道具の高騰の抑制に使ってください」
「いきなり言われてもわからないぞ。詳しく話してくれ」
「魔導車を作ることになったのは、エルファスト魔法王国から流れてくる魔道具の値段を何とかしたいと、ローランド兄上が僕に話したことがキッカケでした」
「そうだな。そのことは覚えている。しかし値段を吊り上げているのは、他国と商会や商人達だ。だから王宮としても手をこまねいているのだが」
「イアン殿下のアイデアで魔導車を作り、私達がエルファスト魔法王国の外交官に交渉を持ちかけたわけですが、その話は外交官に拒否されて頓挫したはず」
シルベルク宰相も僕の意図を読めていないようだ。
僕は二人に見回し、大きく頷いて話を続ける。
「はい。エルファスト魔法王国には交渉を拒否されました。交渉が決裂したことによって、僕は考え方を二つ目の案へ移しました。それが魔導車を売った後の利益金を、魔道具の値段の抑制に使うことです」
「なるほど、そういうことか。魔導車を売った利益で、庶民が魔道具を買う代金の一部を補填をしようというわけか」
さすがローランド兄上、察しがいい。
僕の提案を聞いて、シルベルク宰相はアゴに手を持っていき、難しい表情をする。
「しかし、魔道具を買った時に補填すると言われましても、庶民に資金を撒くわけにもいきますまい。そんなことをすれば、庶民が資金を何に使うかわかりませんからな」
「うん。僕もそう思うし、王国にいる庶民の全てに資金を渡すなんて無理だよ」
「では、どのようになされるおつもりで?」
「魔道具を売っている王国内の商会や商人の全てに資金を提供して、魔道具の値段を下げてくれるように交渉することも考えたけど、数が多すぎるし、信用できるかもわからないから無理。だから数を絞ろうと思うだ」
「それで?」
「魔導車の販売に協力してくれたカッセル商会、メルトン商会、ランクル商会で魔道具を買った時のみ、魔道具の値段が安くなるように、安くした分の値段との差異を魔導車を売った利益で補填すればいいんだよ」
「三商会であれば、王国内に大きな販路を持っているな。しかし、そうなれば三商会に魔道具が欲しい庶民達が集まるだろう。王宮が一部の商会だけに肩入れすると受け取られかねんぞ」
そう言って、ローランド兄上は眉間にシワを寄せる。
腹黒い貴族なら、自分のお抱えの商会が有利にしそうだけど。
誰にでも優しくて平和主義で、民を平等に扱いたいローランド兄上らしい考えだよね。
「たぶん、そうなると魔道具が安く買える三商会に庶民が集中すると思う。他の商会や商人達は、三商会のことを羨むと思う。でも三商会は王宮御用達の商会だから、王宮が三商会と商談を持つことは不思議なことじゃない。もし三商会が羨ましければ、他の商会や商人達も王宮御用達になれるように頑張ればいいよね」
「そうか……王宮御用達になれば、自分達も利益が生まれると今以上に商会や商人達が知れば、三商会を追い抜いて王宮御用達を目指して発奮するというわけか。そうなれば王宮からの心証をよくする必要がある……となると在庫を売り渋り、魔道具の価格を無理矢理あげている商会や商人達も、これ以上の値段の吊り上げを止めるというわけか。しかし、予想通りに上手くいくのか?」
「魔道具を高値で売っていれば三商会が得をするだけだよ。庶民達は三商会から魔道具を買えばいいから困ることはないでしょ」
そこまでの説明を聞いて、ローランド兄上は納得したようだ。
しかし、その隣でシルベルク宰相は難しい表情をしたままだ。
「全ての商会や商人達が同じ動きをするとは思えませんな。三商会を妬んで邪魔をしたり、妨害をする者達も出てくるでしょう。その点はどうお考えなのですかな?」
「王宮としては特に何もする必要はないと思う。王宮御用達をかかげる三商会の邪魔や妨害をするということは、王宮に楯突くことになるよね。そういう商会や商人は段々と王国内で商売が難しくなるだろうね」
商人は利に敏いから、付き合って利のない者達とは疎遠になっていくはずだよね。
「それに三商会も王宮御用達の大商会なんだから、少しぐらいの邪魔や妨害で倒れることなんてないよ。それぐらいのことは三商会自身で対処してもらわないと。それだけの利益を渡すんだからね」
「言いたいことはわかった。シルベルク宰相、カッセル商会、メルトン商会、ランクル商会の三商会を王城へ呼び出してくれ。私が国王代理として、三商会に言い含めよう」
「畏まりました。その後の詳細な交渉については、私にお任せください」
シルベルク宰相は姿勢を正して一礼すると、玉座の間から去っていった。
その後ろ姿を見送った後、ローランド兄上は体を力を抜く。
「昔から頭のいい子だとは思っていたが、本当に十歳か? 自分の弟ながら、最近は驚かされてばかりだ。こんな発想は普通の子供は無理だぞ」
うーん、前世の日本の記憶があるからね。
たぶん前世と合わせると、十分に大人だと思う。
このことはローランド兄上に説明しても信じてもらえそうにないから言わないけどね。
この一件が終わったら、もう少し子供の振りをしようかな。
「魔導車を売ったおかげで、随分と利益金が集まりました。この資金を使って魔道具の高騰の抑制に使ってください」
「いきなり言われてもわからないぞ。詳しく話してくれ」
「魔導車を作ることになったのは、エルファスト魔法王国から流れてくる魔道具の値段を何とかしたいと、ローランド兄上が僕に話したことがキッカケでした」
「そうだな。そのことは覚えている。しかし値段を吊り上げているのは、他国と商会や商人達だ。だから王宮としても手をこまねいているのだが」
「イアン殿下のアイデアで魔導車を作り、私達がエルファスト魔法王国の外交官に交渉を持ちかけたわけですが、その話は外交官に拒否されて頓挫したはず」
シルベルク宰相も僕の意図を読めていないようだ。
僕は二人に見回し、大きく頷いて話を続ける。
「はい。エルファスト魔法王国には交渉を拒否されました。交渉が決裂したことによって、僕は考え方を二つ目の案へ移しました。それが魔導車を売った後の利益金を、魔道具の値段の抑制に使うことです」
「なるほど、そういうことか。魔導車を売った利益で、庶民が魔道具を買う代金の一部を補填をしようというわけか」
さすがローランド兄上、察しがいい。
僕の提案を聞いて、シルベルク宰相はアゴに手を持っていき、難しい表情をする。
「しかし、魔道具を買った時に補填すると言われましても、庶民に資金を撒くわけにもいきますまい。そんなことをすれば、庶民が資金を何に使うかわかりませんからな」
「うん。僕もそう思うし、王国にいる庶民の全てに資金を渡すなんて無理だよ」
「では、どのようになされるおつもりで?」
「魔道具を売っている王国内の商会や商人の全てに資金を提供して、魔道具の値段を下げてくれるように交渉することも考えたけど、数が多すぎるし、信用できるかもわからないから無理。だから数を絞ろうと思うだ」
「それで?」
「魔導車の販売に協力してくれたカッセル商会、メルトン商会、ランクル商会で魔道具を買った時のみ、魔道具の値段が安くなるように、安くした分の値段との差異を魔導車を売った利益で補填すればいいんだよ」
「三商会であれば、王国内に大きな販路を持っているな。しかし、そうなれば三商会に魔道具が欲しい庶民達が集まるだろう。王宮が一部の商会だけに肩入れすると受け取られかねんぞ」
そう言って、ローランド兄上は眉間にシワを寄せる。
腹黒い貴族なら、自分のお抱えの商会が有利にしそうだけど。
誰にでも優しくて平和主義で、民を平等に扱いたいローランド兄上らしい考えだよね。
「たぶん、そうなると魔道具が安く買える三商会に庶民が集中すると思う。他の商会や商人達は、三商会のことを羨むと思う。でも三商会は王宮御用達の商会だから、王宮が三商会と商談を持つことは不思議なことじゃない。もし三商会が羨ましければ、他の商会や商人達も王宮御用達になれるように頑張ればいいよね」
「そうか……王宮御用達になれば、自分達も利益が生まれると今以上に商会や商人達が知れば、三商会を追い抜いて王宮御用達を目指して発奮するというわけか。そうなれば王宮からの心証をよくする必要がある……となると在庫を売り渋り、魔道具の価格を無理矢理あげている商会や商人達も、これ以上の値段の吊り上げを止めるというわけか。しかし、予想通りに上手くいくのか?」
「魔道具を高値で売っていれば三商会が得をするだけだよ。庶民達は三商会から魔道具を買えばいいから困ることはないでしょ」
そこまでの説明を聞いて、ローランド兄上は納得したようだ。
しかし、その隣でシルベルク宰相は難しい表情をしたままだ。
「全ての商会や商人達が同じ動きをするとは思えませんな。三商会を妬んで邪魔をしたり、妨害をする者達も出てくるでしょう。その点はどうお考えなのですかな?」
「王宮としては特に何もする必要はないと思う。王宮御用達をかかげる三商会の邪魔や妨害をするということは、王宮に楯突くことになるよね。そういう商会や商人は段々と王国内で商売が難しくなるだろうね」
商人は利に敏いから、付き合って利のない者達とは疎遠になっていくはずだよね。
「それに三商会も王宮御用達の大商会なんだから、少しぐらいの邪魔や妨害で倒れることなんてないよ。それぐらいのことは三商会自身で対処してもらわないと。それだけの利益を渡すんだからね」
「言いたいことはわかった。シルベルク宰相、カッセル商会、メルトン商会、ランクル商会の三商会を王城へ呼び出してくれ。私が国王代理として、三商会に言い含めよう」
「畏まりました。その後の詳細な交渉については、私にお任せください」
シルベルク宰相は姿勢を正して一礼すると、玉座の間から去っていった。
その後ろ姿を見送った後、ローランド兄上は体を力を抜く。
「昔から頭のいい子だとは思っていたが、本当に十歳か? 自分の弟ながら、最近は驚かされてばかりだ。こんな発想は普通の子供は無理だぞ」
うーん、前世の日本の記憶があるからね。
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