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51.戦に向けて
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僕が魔導戦車を率いると言ったことで、ローランド兄上、エミリア姉上、アデル兄上の三人は反対し、それでも尚、僕が意見を曲げずに押し通したことで、会議は紛糾した。
僕は会議場にいるみんなを見回し、ペコリと頭を下げた。
「みんなは心配してくれるけど、さっきも言ったように魔導戦車の中は安全なんだよ。だから僕に任せてほしい」
「魔導戦車が安全と言っても、戦場で故障して動かなくなる可能性もあります。それでしたら私がイアン殿下の魔導戦車に同乗します。近衛兵団の役割は王家を守ることにあります。私が護衛するのが適任でしょう」
リシリアが立ち上がって、皆を説得する。
兄姉三人は、今回の戦で担うべき役割があるので、魔導戦車を率いることができるのは、その性能をよく知る僕しかいない。
ローランド兄上は考えた末に、リシリアに向けて頭を下げた。
「イアンのことを頼む。必ず戦場から無事に連れ帰ってくれ」
「この命に代えましても」
リシリアは胸に片手の拳を当て、キリリと礼をした。
僕の問題が片付いたところで、次の議題に移り、どこを戦場として選ぶかという話になった。
ローランド兄上に視線を向けられ、シルベルク宰相は席から立ち上がり、ゴホンと一つ咳払いをする。
「あくまで予測だが、エルファスト魔法王国の軍は西の街道を通って、クリトニア王国を目指してくると思われる。その時には西の国境沿いの丘陵地帯が戦場となりますな」
「どうしてそう思われる? 可能性は薄いが、エルファスト魔法王国の軍が山岳地帯に陣を張った場合はどうする? 高所に陣取られれば、こちらの騎馬隊、歩兵の動きが鈍り、敵軍の魔法兵団の魔法の餌食になってしまうが?」
バンベルク王宮騎士団長は無表情に問う。
クリトニア王国の王宮騎士団は、騎馬兵と歩兵で構成されていて魔法兵が少ない。魔法の撃ち合いとなれば、こちら側が不利になる。
バンベルク王宮騎士団長が懸念するのもわかるよね。
その問いを予想していたかのように、シルベルク宰相は応えた。
「もし、エルファスト魔法王国が山岳地帯を戦場と選んだ時には相手にしなければよろしいですな。さすれば焦れた敵軍が、山岳地帯からこちら側の領土におりてくるでしょう。それを迎え撃てばいいことですな」
「わざわざ不利になる地形で、敵軍の思惑に乗って戦う必要はない。となると魔法王国もバカではなし、そのことを予期して山岳地帯での戦いは避けるか」
「左様。となればエルファスト魔法王国は必ず物資の運搬に便利な街道を利用するはず。そして戦場に選ぶのは遠距離で魔法攻撃のできる丘陵地帯でしょうな」
「草原地帯であれば、騎馬兵の速度を十分に発揮できるが、丘陵地帯では丘を登ることで騎馬兵を速度を削ぐことができる。もし丘の頂上に陣を張れば、登ってくる兵達を魔方攻撃で撃ち放題か。なるほど敵軍は丘陵地帯を戦場に選ぶだろうな」
協議の結果、エルファスト魔法王国の軍は街道沿いの丘陵地帯を戦場に選び、丘の頂上に陣を張る予想となった。
それから以降は、敵軍をどのように追い詰めるかの戦略を練ることになった。
しばらく会議は続き、戦略と作戦が決まった。
その日の真夜中、僕は城を抜け出して、カーネルさんと合流して「黒鴉」のアジトへと向かった。
そしてサイラス組長に会い、クリトニア王国とエルファスト魔法王国とが衝突し、戦へと発展したことを伝え、王宮が戦に専念している間、王国内で「蜘蛛」が暗躍するのを、なるべく阻止してほしいと頼んだ。
サイラス組長は既に噂で両国の戦争のことを知っていて、快く引き受けてくれた。
次の日の昼、城内のアーリアの部屋に赴き、戦争になることを話し、今まで彼女の護衛をしていたバンベルク王宮騎士団長とリシリア近衛兵団長が不在になることを伝えた。
そして彼女と一緒にいるオーランへ、警護を強化してもらうようにお願いした。
それから五日後、バルドハイン帝国から外交官が王宮を訪れた。
交渉した王国側の外交官の話では、此度のエルファスト魔法王国とクリトニア王国との衝突を知った帝国から、援軍を派兵してもいいという提案だった。
王国側の外交官は、その提案を丁寧に断った。
すると帝国の外交官は城を去る間際、城の来賓室に宿泊しているアドルフ第七皇子を、強引に帝国へと連れて帰ったという。
どう考えても、帝国軍を派兵し、共同戦線ということで王国内の状況を把握して、もし魔法王国が優勢に戦を進めれば、援軍である帝国軍が寝返らせて、王国内の領土を侵略するつもりにしか思えない。
アドルフ第七皇子を帝国に連れ戻したのも、もしクリトニア王国とバルドハイン帝国が交戦に入った時、人質に取られることを恐れたからだろうな。
帝国の使者が去って二日後、ローランド兄上の命により、魔導車二十台はバルドハイン帝国を牽制するため、王国の東の国境へ向けて出発した。
そして一週間が経ち、エルファスト魔法王国の王都に潜ませた諜報員から情報が入った。
どうやら戦準備を完了させたエルファスト魔法王国軍を出発したという。
魔法王国軍の兵数はおおよそで一万らしい。
その報せを受けて二日後、王宮騎士団の兵一万と魔導戦車四十台はアデル兄上を総大将として、王国の西に国境へ向けて出発した。
僕は会議場にいるみんなを見回し、ペコリと頭を下げた。
「みんなは心配してくれるけど、さっきも言ったように魔導戦車の中は安全なんだよ。だから僕に任せてほしい」
「魔導戦車が安全と言っても、戦場で故障して動かなくなる可能性もあります。それでしたら私がイアン殿下の魔導戦車に同乗します。近衛兵団の役割は王家を守ることにあります。私が護衛するのが適任でしょう」
リシリアが立ち上がって、皆を説得する。
兄姉三人は、今回の戦で担うべき役割があるので、魔導戦車を率いることができるのは、その性能をよく知る僕しかいない。
ローランド兄上は考えた末に、リシリアに向けて頭を下げた。
「イアンのことを頼む。必ず戦場から無事に連れ帰ってくれ」
「この命に代えましても」
リシリアは胸に片手の拳を当て、キリリと礼をした。
僕の問題が片付いたところで、次の議題に移り、どこを戦場として選ぶかという話になった。
ローランド兄上に視線を向けられ、シルベルク宰相は席から立ち上がり、ゴホンと一つ咳払いをする。
「あくまで予測だが、エルファスト魔法王国の軍は西の街道を通って、クリトニア王国を目指してくると思われる。その時には西の国境沿いの丘陵地帯が戦場となりますな」
「どうしてそう思われる? 可能性は薄いが、エルファスト魔法王国の軍が山岳地帯に陣を張った場合はどうする? 高所に陣取られれば、こちらの騎馬隊、歩兵の動きが鈍り、敵軍の魔法兵団の魔法の餌食になってしまうが?」
バンベルク王宮騎士団長は無表情に問う。
クリトニア王国の王宮騎士団は、騎馬兵と歩兵で構成されていて魔法兵が少ない。魔法の撃ち合いとなれば、こちら側が不利になる。
バンベルク王宮騎士団長が懸念するのもわかるよね。
その問いを予想していたかのように、シルベルク宰相は応えた。
「もし、エルファスト魔法王国が山岳地帯を戦場と選んだ時には相手にしなければよろしいですな。さすれば焦れた敵軍が、山岳地帯からこちら側の領土におりてくるでしょう。それを迎え撃てばいいことですな」
「わざわざ不利になる地形で、敵軍の思惑に乗って戦う必要はない。となると魔法王国もバカではなし、そのことを予期して山岳地帯での戦いは避けるか」
「左様。となればエルファスト魔法王国は必ず物資の運搬に便利な街道を利用するはず。そして戦場に選ぶのは遠距離で魔法攻撃のできる丘陵地帯でしょうな」
「草原地帯であれば、騎馬兵の速度を十分に発揮できるが、丘陵地帯では丘を登ることで騎馬兵を速度を削ぐことができる。もし丘の頂上に陣を張れば、登ってくる兵達を魔方攻撃で撃ち放題か。なるほど敵軍は丘陵地帯を戦場に選ぶだろうな」
協議の結果、エルファスト魔法王国の軍は街道沿いの丘陵地帯を戦場に選び、丘の頂上に陣を張る予想となった。
それから以降は、敵軍をどのように追い詰めるかの戦略を練ることになった。
しばらく会議は続き、戦略と作戦が決まった。
その日の真夜中、僕は城を抜け出して、カーネルさんと合流して「黒鴉」のアジトへと向かった。
そしてサイラス組長に会い、クリトニア王国とエルファスト魔法王国とが衝突し、戦へと発展したことを伝え、王宮が戦に専念している間、王国内で「蜘蛛」が暗躍するのを、なるべく阻止してほしいと頼んだ。
サイラス組長は既に噂で両国の戦争のことを知っていて、快く引き受けてくれた。
次の日の昼、城内のアーリアの部屋に赴き、戦争になることを話し、今まで彼女の護衛をしていたバンベルク王宮騎士団長とリシリア近衛兵団長が不在になることを伝えた。
そして彼女と一緒にいるオーランへ、警護を強化してもらうようにお願いした。
それから五日後、バルドハイン帝国から外交官が王宮を訪れた。
交渉した王国側の外交官の話では、此度のエルファスト魔法王国とクリトニア王国との衝突を知った帝国から、援軍を派兵してもいいという提案だった。
王国側の外交官は、その提案を丁寧に断った。
すると帝国の外交官は城を去る間際、城の来賓室に宿泊しているアドルフ第七皇子を、強引に帝国へと連れて帰ったという。
どう考えても、帝国軍を派兵し、共同戦線ということで王国内の状況を把握して、もし魔法王国が優勢に戦を進めれば、援軍である帝国軍が寝返らせて、王国内の領土を侵略するつもりにしか思えない。
アドルフ第七皇子を帝国に連れ戻したのも、もしクリトニア王国とバルドハイン帝国が交戦に入った時、人質に取られることを恐れたからだろうな。
帝国の使者が去って二日後、ローランド兄上の命により、魔導車二十台はバルドハイン帝国を牽制するため、王国の東の国境へ向けて出発した。
そして一週間が経ち、エルファスト魔法王国の王都に潜ませた諜報員から情報が入った。
どうやら戦準備を完了させたエルファスト魔法王国軍を出発したという。
魔法王国軍の兵数はおおよそで一万らしい。
その報せを受けて二日後、王宮騎士団の兵一万と魔導戦車四十台はアデル兄上を総大将として、王国の西に国境へ向けて出発した。
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この王家一家が大好きです
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感想ありがとうございます。
アデル兄上がお気に入りなのですね。
これからも兄弟姉妹たちを楽しんでいただけたら幸いです。
読んでいただき感謝いたします。
ありがとうございます。
兄弟姉妹の関係が、とても楽しいですね
このままなのか、変化していくのか、楽しみに読ませていただきます
あ 王族には失礼だったかな…
感想ありがとうございます。
兄弟姉妹関係のことを楽しいと読んでいただき嬉しいです。
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ありがとうございます。
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※他サイトですが参考までに
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12256024372
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知りませんでした。
クローラーに変更したいと思います。
教えていただき、ありがとうございます
読んでいただき感謝いたします。
ありがとうございます。