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3話は東雲(攻め)視点です。
しばらく続きます。
---
俺は男アルファの父と、男オメガの母の間に生まれた。
父も母も穏やかな性格の持ち主で、滅多なことじゃ怒らないし表情を崩したりもしない。そりゃ、悪いことをしたら怒られたり厳しくされたりもしたけれど、俺に対しては基本的に優しく、愛情を持って接し育ててくれた。そして幼い頃からしっかりと物事の善し悪しも教えてくれて、そのおかげで、良識や一般常識も割と早く身につけることができたと思う。
家族仲も至って良好。父も母もいつもラブラブで仲良し。親戚同士も仲が良いからトラブルなんてのも滅多にない。そんなごくごく普通の、平和で幸せな一般家庭。それが我が家であると、俺はなんとなく思っていた。
しかし自分の両親と、「東雲」という名前が持つ力が周りと一線を画していると気付いたのは、俺が小学生になってしばらく経ってからだった。
とある日。当時仲良くしていたクラスメイトの一人、友人Aに、両親と一緒に家に遊びにこないかと誘われたことがあった。
俺はこの頃は外で体を動かして遊ぶばかりで、誰かの家で遊んだことなんかなかった。友人Aも、どちらかというと外で遊んでばかりの子だったように思う。そのため不思議に感じつつも単純に「新鮮で楽しそうだな」と思い、父は仕事だったため母だけを伴って遊びに行くことになった。
集まったのは、仲良くしていたクラスメイト数人とその両親、そして俺と母。結構な人数だったが、全員が入ってもまだ余裕があるくらい、友人A家は大きなものだった。
正直家の中でなにをして遊ぶのかわからなかったが、内容的にはホームパーティーのような感じで、友人Aの両親が用意してくれた料理をみんなで食べたり、みんなで持ち寄ったお菓子を食べたり、その後は大人同士はただただ話をして、子どもたちは別の部屋でボードゲームやテレビゲームをして遊んだ。
が、俺は正直飽きてきていた。ゲームは好きだが普段からそこまで長時間やらないし、ボードゲームも面白みを感じない。何せこの時期はとにかく外で遊びたい盛りだったので、じっとしているのが落ち着かなかったのだ。
しかしみんなはゲームを楽しそうにやっているから外に遊びに行こうなんか誘えるわけもなく、俺はみんなのプレイを見ながら早く帰りたいなぁなんて思っていた。
そんなときだった。友人Aが俺に質問してきたのだ。
「東雲のお母さん、オメガって本当?」
突然、なぜそんなことを聞いてくるのか。意図が汲み取れず怪訝に思いながらも、母自身も隠していないようだったのでそうだと頷いた。すると友人Aが、俺と同じく招待されていた友人Bとにやにやと顔を見合わせた。
「オメガって、発情期っていうのがあるんだろ?すっげーいい匂いがして、エロくなるって父さんに聞いた!」
「東雲のお母さんもそうなんの?見たことある?」
「え、なになに、オメガの話?」
先程までゲームで対戦をしていた友人Cと友人Dも、話題に興味があるのか会話に参加してくる。
「東雲のお母さん、やっぱりオメガなんだって」
「えーっ、まじで?」
「うちの父さん、東雲のお母さんすげぇきれいって褒めてたよ。あいじんにするのもいいかもなぁって言ってた」
「あいじんってなに?」
「えーっとたしか、もう一人のお嫁さんにする、みたいな意味」
「あ、それ、俺の父さんも言ってた。東雲のお父さんが羨ましいーって」
「東雲のお母さん、モテモテじゃーん」
「たしかに東雲のお母さん、美人だよなぁ」
「でもさぁ、オメガってなにもできないんだろ?うちの母さんが言ってたよ。発情期があるからなんとかーって」
「発情期ってエロくなるだけじゃないの?」
「人に迷惑かかるんだってー。れっとうしゅ?らしいよ」
「オメガとは仲良くするなってみんな言ってるよなー」
「じゃあ東雲のお母さんとも仲良くしたらだめなの?」
「でも父さんたちは普通にしてるよなー。俺も東雲のお母さんをあいじんにしたらいいのかな」
「えぇ!俺もあいじんにしたい!」
「俺も!」
「……なにそれ」
黙って聞いていたが、我慢ならず俺は立ち上がった。友人たちがぽかんとこちらを見上げている。
「最低だな、お前らも、お前らの親も」
「え?」
「ど、どうしたんだよ。なに怒ってるんだよ」
俺が友人たちを見下ろし声を低くして言えば、みんな困惑気味に互いの顔を見合わせる。
怒っている理由がわからないだなんて。こいつらは一体、どういう教育を受けているんだ。あぁ、いや、子どもに向かって聞くに堪えない下世話な話ができるくらいだから、たかがしれているか。
俺は両親から、この世の第二次性に関しての教育は一通りしてもらったことがある。
アルファは容姿、体格、能力共に優れている者が多いヒエラルキー最上位の性別。ベータはごくごく普通の一般人で人口の殆どを占める性別。そしてオメガは男女共に子どもが産めて、特にアルファを誘惑するフェロモンを有し定期的に発情期が訪れる性別だ。
見てわかる通り、オメガはこの三つの性別の中で一番特殊な性別だ。そのためか、一昔前はオメガを下に見て虐げる等の差別的な思想が横行し、犯罪に巻き込まれるオメガが後を絶たなかったらしい。しかし現在はそんな差別的な思考は淘汰されつつあり、オメガの人も社会的に生きやすくなっているそうだ。
とは言え、その考えはまだまだ根付いていない。特に代々アルファの家系に生まれた人は、そういう古い考えのままアップデートされず、オメガを下に見続けている。
きっと、この友人たちの親もそういう考えの人たちなのだろう。それに影響を受け友人たちもオメガを――母を、人として見ていない。
それを汲み取った途端、今目の前にいる友人たちが自分と同じ人間だとは思えなくなった。これまでこんなのと仲良くしていた自分が信じられない。どうしようもない嫌悪感が湧き上がる。
この場にいるのも不愉快で、俺は子どもだけでゲームをしていた部屋を出て大人たちがいるであろうリビングに向かった。話し声がしたがそんなのも構わずドアを開け放つと、大人たちが長机を挟んで談笑していた。その中には当然母もいて愛想のいい笑みを浮かべている。しかしその隣りには、愛人にするとかなんとか言っていたやつ、友人Aの父親が座っていた。しかもちらちら母を盗み見ているし、その視線がなんだかじっとりとした嫌なもので、不快感と怒りが一気にこみ上げる。
「母さん!」
「え、陽?どうしたの?」
「もう帰ろう」
咄嗟に母に駆け寄り、腕を引っ張って立ち上がらせた。母は目を丸くして困惑し、周りの大人たちもざわついて俺にどうかしたのかと問いかけてくるが、俺はそれを無視して母をぐいぐい引っ張る。
隅っこに置いてあった母と俺の荷物を拾い上げ、そのまま玄関まで行こうとしたのだが、その行く手を友人Aの父親と母親が阻んだ。
「陽くんどうしたんだ?」
「子どもたちがなにか粗相をしてしまったかしら」
「もしよかったら何があったか話してくれないか?問題があったなら謝らせてほしい」
「……どいてください」
なにやらごちゃごちゃ言っている二人を睨め上げる。二人は少しびくっと肩を震わせたが、父親の方が早く立ち直り引き攣った笑みを浮かべた。
「ま、まぁまぁ、一旦冷静になろう、な?陽くんも一緒にそこに座って、お話しよう。さぁ、東雲さんも――」
「ッ!母さんに触るな!」
友人Aの父親が俺たちを席に促すため、俺と母の肩に触れようとした。咄嗟にその腕を掴み、自分でもびっくりするくらいの怒声が喉から飛び出る。
俺が手を掴んだ父親は目を見開いたあとその場に尻もちをつき、なぜか母親の方も床にへたり込んでこちらを畏怖の目で見上げていた。
なぜ二人の大人が情けなくも床に尻をつけて子どもの自分に怯えた目を向けているのか。頭の中が怒りでいっぱいになりながらも、その光景をほんの少し不審に感じた。
「陽……!」
すると俺の後ろにいた母が俺の肩を掴み俺と目線を合わせるよう床に膝をついた。
「お母さんは大丈夫。なんともないよ」
「母さん……」
「陽、深呼吸できる?心を落ち着けないと、みんな怖がって動けないから」
「怖がる、って……」
母にそう言われてから、後ろの方からも自分を見ている視線があることに気が付いた。振り向けばそこにはいつの間にかリビングにやってきていた友人たちと他の大人たちがいて、みんな友人Aの両親と同じような目を俺に向けていた。
初めて向けられる種類の視線に、怒りよりも怪訝が勝る。それと同時に怯えていた人たちがどこかほっとした表情を浮かべ、母もなぜか俺の頭をよしよしと撫でた。その手に、不思議とふっと心が軽くなる。
「陽、一体なにがあったのか話せる?」
「……言いたくない。言葉にもしたくない」
母から優しく言葉をかけられたが、俺はゆるゆると首を振った。
先程の友人たちのオメガを下に見たような言葉や、聞き及んだ彼らの両親のオメガに対する印象を思い出し、またふつふつと怒りが湧き上がる。しかし母が俺を抱き寄せ背中をゆっくり撫でてくれたおかげで、またすぐに気持ちが落ち着いた。
「……お騒がせして申し訳ありません。今日のところはお暇させていただきます。後日また、ご連絡させてください」
少ししておもむろに立ち上がった母は、リビングにいるみんなに向かってそう言って会釈をしたあと俺と自分の荷物を持って二人でそそくさと友人A宅をあとにした。
我が家までの帰り道、母になにがあったのか改めて事情を聞かれた。しかし俺は、オメガである母に自分の意思や言動じゃないにしても、あんな人とも思えない言葉はとてもじゃないが言えなかった。
しばらく続きます。
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俺は男アルファの父と、男オメガの母の間に生まれた。
父も母も穏やかな性格の持ち主で、滅多なことじゃ怒らないし表情を崩したりもしない。そりゃ、悪いことをしたら怒られたり厳しくされたりもしたけれど、俺に対しては基本的に優しく、愛情を持って接し育ててくれた。そして幼い頃からしっかりと物事の善し悪しも教えてくれて、そのおかげで、良識や一般常識も割と早く身につけることができたと思う。
家族仲も至って良好。父も母もいつもラブラブで仲良し。親戚同士も仲が良いからトラブルなんてのも滅多にない。そんなごくごく普通の、平和で幸せな一般家庭。それが我が家であると、俺はなんとなく思っていた。
しかし自分の両親と、「東雲」という名前が持つ力が周りと一線を画していると気付いたのは、俺が小学生になってしばらく経ってからだった。
とある日。当時仲良くしていたクラスメイトの一人、友人Aに、両親と一緒に家に遊びにこないかと誘われたことがあった。
俺はこの頃は外で体を動かして遊ぶばかりで、誰かの家で遊んだことなんかなかった。友人Aも、どちらかというと外で遊んでばかりの子だったように思う。そのため不思議に感じつつも単純に「新鮮で楽しそうだな」と思い、父は仕事だったため母だけを伴って遊びに行くことになった。
集まったのは、仲良くしていたクラスメイト数人とその両親、そして俺と母。結構な人数だったが、全員が入ってもまだ余裕があるくらい、友人A家は大きなものだった。
正直家の中でなにをして遊ぶのかわからなかったが、内容的にはホームパーティーのような感じで、友人Aの両親が用意してくれた料理をみんなで食べたり、みんなで持ち寄ったお菓子を食べたり、その後は大人同士はただただ話をして、子どもたちは別の部屋でボードゲームやテレビゲームをして遊んだ。
が、俺は正直飽きてきていた。ゲームは好きだが普段からそこまで長時間やらないし、ボードゲームも面白みを感じない。何せこの時期はとにかく外で遊びたい盛りだったので、じっとしているのが落ち着かなかったのだ。
しかしみんなはゲームを楽しそうにやっているから外に遊びに行こうなんか誘えるわけもなく、俺はみんなのプレイを見ながら早く帰りたいなぁなんて思っていた。
そんなときだった。友人Aが俺に質問してきたのだ。
「東雲のお母さん、オメガって本当?」
突然、なぜそんなことを聞いてくるのか。意図が汲み取れず怪訝に思いながらも、母自身も隠していないようだったのでそうだと頷いた。すると友人Aが、俺と同じく招待されていた友人Bとにやにやと顔を見合わせた。
「オメガって、発情期っていうのがあるんだろ?すっげーいい匂いがして、エロくなるって父さんに聞いた!」
「東雲のお母さんもそうなんの?見たことある?」
「え、なになに、オメガの話?」
先程までゲームで対戦をしていた友人Cと友人Dも、話題に興味があるのか会話に参加してくる。
「東雲のお母さん、やっぱりオメガなんだって」
「えーっ、まじで?」
「うちの父さん、東雲のお母さんすげぇきれいって褒めてたよ。あいじんにするのもいいかもなぁって言ってた」
「あいじんってなに?」
「えーっとたしか、もう一人のお嫁さんにする、みたいな意味」
「あ、それ、俺の父さんも言ってた。東雲のお父さんが羨ましいーって」
「東雲のお母さん、モテモテじゃーん」
「たしかに東雲のお母さん、美人だよなぁ」
「でもさぁ、オメガってなにもできないんだろ?うちの母さんが言ってたよ。発情期があるからなんとかーって」
「発情期ってエロくなるだけじゃないの?」
「人に迷惑かかるんだってー。れっとうしゅ?らしいよ」
「オメガとは仲良くするなってみんな言ってるよなー」
「じゃあ東雲のお母さんとも仲良くしたらだめなの?」
「でも父さんたちは普通にしてるよなー。俺も東雲のお母さんをあいじんにしたらいいのかな」
「えぇ!俺もあいじんにしたい!」
「俺も!」
「……なにそれ」
黙って聞いていたが、我慢ならず俺は立ち上がった。友人たちがぽかんとこちらを見上げている。
「最低だな、お前らも、お前らの親も」
「え?」
「ど、どうしたんだよ。なに怒ってるんだよ」
俺が友人たちを見下ろし声を低くして言えば、みんな困惑気味に互いの顔を見合わせる。
怒っている理由がわからないだなんて。こいつらは一体、どういう教育を受けているんだ。あぁ、いや、子どもに向かって聞くに堪えない下世話な話ができるくらいだから、たかがしれているか。
俺は両親から、この世の第二次性に関しての教育は一通りしてもらったことがある。
アルファは容姿、体格、能力共に優れている者が多いヒエラルキー最上位の性別。ベータはごくごく普通の一般人で人口の殆どを占める性別。そしてオメガは男女共に子どもが産めて、特にアルファを誘惑するフェロモンを有し定期的に発情期が訪れる性別だ。
見てわかる通り、オメガはこの三つの性別の中で一番特殊な性別だ。そのためか、一昔前はオメガを下に見て虐げる等の差別的な思想が横行し、犯罪に巻き込まれるオメガが後を絶たなかったらしい。しかし現在はそんな差別的な思考は淘汰されつつあり、オメガの人も社会的に生きやすくなっているそうだ。
とは言え、その考えはまだまだ根付いていない。特に代々アルファの家系に生まれた人は、そういう古い考えのままアップデートされず、オメガを下に見続けている。
きっと、この友人たちの親もそういう考えの人たちなのだろう。それに影響を受け友人たちもオメガを――母を、人として見ていない。
それを汲み取った途端、今目の前にいる友人たちが自分と同じ人間だとは思えなくなった。これまでこんなのと仲良くしていた自分が信じられない。どうしようもない嫌悪感が湧き上がる。
この場にいるのも不愉快で、俺は子どもだけでゲームをしていた部屋を出て大人たちがいるであろうリビングに向かった。話し声がしたがそんなのも構わずドアを開け放つと、大人たちが長机を挟んで談笑していた。その中には当然母もいて愛想のいい笑みを浮かべている。しかしその隣りには、愛人にするとかなんとか言っていたやつ、友人Aの父親が座っていた。しかもちらちら母を盗み見ているし、その視線がなんだかじっとりとした嫌なもので、不快感と怒りが一気にこみ上げる。
「母さん!」
「え、陽?どうしたの?」
「もう帰ろう」
咄嗟に母に駆け寄り、腕を引っ張って立ち上がらせた。母は目を丸くして困惑し、周りの大人たちもざわついて俺にどうかしたのかと問いかけてくるが、俺はそれを無視して母をぐいぐい引っ張る。
隅っこに置いてあった母と俺の荷物を拾い上げ、そのまま玄関まで行こうとしたのだが、その行く手を友人Aの父親と母親が阻んだ。
「陽くんどうしたんだ?」
「子どもたちがなにか粗相をしてしまったかしら」
「もしよかったら何があったか話してくれないか?問題があったなら謝らせてほしい」
「……どいてください」
なにやらごちゃごちゃ言っている二人を睨め上げる。二人は少しびくっと肩を震わせたが、父親の方が早く立ち直り引き攣った笑みを浮かべた。
「ま、まぁまぁ、一旦冷静になろう、な?陽くんも一緒にそこに座って、お話しよう。さぁ、東雲さんも――」
「ッ!母さんに触るな!」
友人Aの父親が俺たちを席に促すため、俺と母の肩に触れようとした。咄嗟にその腕を掴み、自分でもびっくりするくらいの怒声が喉から飛び出る。
俺が手を掴んだ父親は目を見開いたあとその場に尻もちをつき、なぜか母親の方も床にへたり込んでこちらを畏怖の目で見上げていた。
なぜ二人の大人が情けなくも床に尻をつけて子どもの自分に怯えた目を向けているのか。頭の中が怒りでいっぱいになりながらも、その光景をほんの少し不審に感じた。
「陽……!」
すると俺の後ろにいた母が俺の肩を掴み俺と目線を合わせるよう床に膝をついた。
「お母さんは大丈夫。なんともないよ」
「母さん……」
「陽、深呼吸できる?心を落ち着けないと、みんな怖がって動けないから」
「怖がる、って……」
母にそう言われてから、後ろの方からも自分を見ている視線があることに気が付いた。振り向けばそこにはいつの間にかリビングにやってきていた友人たちと他の大人たちがいて、みんな友人Aの両親と同じような目を俺に向けていた。
初めて向けられる種類の視線に、怒りよりも怪訝が勝る。それと同時に怯えていた人たちがどこかほっとした表情を浮かべ、母もなぜか俺の頭をよしよしと撫でた。その手に、不思議とふっと心が軽くなる。
「陽、一体なにがあったのか話せる?」
「……言いたくない。言葉にもしたくない」
母から優しく言葉をかけられたが、俺はゆるゆると首を振った。
先程の友人たちのオメガを下に見たような言葉や、聞き及んだ彼らの両親のオメガに対する印象を思い出し、またふつふつと怒りが湧き上がる。しかし母が俺を抱き寄せ背中をゆっくり撫でてくれたおかげで、またすぐに気持ちが落ち着いた。
「……お騒がせして申し訳ありません。今日のところはお暇させていただきます。後日また、ご連絡させてください」
少ししておもむろに立ち上がった母は、リビングにいるみんなに向かってそう言って会釈をしたあと俺と自分の荷物を持って二人でそそくさと友人A宅をあとにした。
我が家までの帰り道、母になにがあったのか改めて事情を聞かれた。しかし俺は、オメガである母に自分の意思や言動じゃないにしても、あんな人とも思えない言葉はとてもじゃないが言えなかった。
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