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第一章 非公式お茶会
15 天性の女ったらし①
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Side:アシェル8歳 冬
「アシェル様、ごきげんよう。本日も麗しいですわ。」
王宮の北東にある離宮に続く回廊。
そこには最近見慣れてきた、色とりどりのドレスに身を包んだご令嬢達の姿。
年の頃も、少し年下から王立学院入学前であろう年齢まで様々だ。
「おはよう、ウォレン嬢。今日は少し遅くなってしまってね。寒空の下レディを待たせてしまってごめんね?皆の身体が冷えていなければいいんだけれど。」
声をかけてきたウォレン侯爵家のご令嬢の手をとり、その手の甲に唇を落とす。
唇は触れさせない、ただの挨拶だ。
10歳の侯爵令嬢である彼女は、このご令嬢達の取り纏め役になっている。
集まっているご令嬢の中では一番家格が上のようだ。
ウォレン侯爵令嬢の後ろでは、いつも通りキャーと黄色い声が上がっている。
「いいえ、今日もこうしてお会いできて嬉しいですわ。お隣の方はご家族かしら?」
すっと視線を向けられた先には、”非公式お茶会”の見送りに来てくれたメアリーとメルティーの姿、その後ろにサーニャが控えている。
「えぇ、義母と義妹と侍女です。失礼、時間がないので差し入れの受け取りをさせていただいても?」
言いながらアシェルは『収納』——無属性魔法で、魔力量によってサイズが変わり、時間停止効果のある倉庫——から大きなバスケットを取り出した。
バスケットを出すと、ご令嬢達がその手に持ったプレゼントをどんどん詰め込んでいく。
おはようございます、お願いします、と声をかけてくれるご令嬢方に、一人ずつ返事はできないので笑顔を向ける。
「ありがとう、お嬢様方。ちゃんと皆に渡しておくね。さぁ、レディがこれ以上身体を冷やすと良くないよ。気を付けてお帰り。」
一通りプレゼントが乗ったことを確認して『ストレージ』に収納する。
にこっと微笑み手をひらひらと振ると、またキャーと歓声が上がった。
「よろしくお願いいたしますわ。ではまた。」
ウォレン侯爵令嬢はすっと綺麗なカーテシーをして、離宮とは逆方向へ歩いていく。
カラフルなご令嬢達もそれぞれ礼をしながらそのあとに続いた。
笑顔で手を振り姿が見えなくなったのを確認して、待たせた三人に謝罪し離宮へと移動する。
「アシェ義兄様……さっきのなんなんですの?」
離宮のサロンに入る直前、付き添ってくれていたメルティーが不思議そうに聞いてきた。
「えぇっと……ファンクラブ……みたいな?」
曖昧な回答にメルティーも首をかしげている。
サロンに入るともう全員——といっても2組の双子は辺境組なのでいないため王都組だけだ——が揃っていた。
「おはよう、アシェ。今日は遅かったな。」
エラートがにかっと笑って手を上げて挨拶してくる。
「おはよう。遅くなったついでに、いつもの貰ってきたから仕訳けてくれる?」
『ストレージ』からバスケットを取り出しマリクに渡す。
「今日も美味しいのあるといいなー。」
テーブルに置かれたバスケットの中身は、マリクとエラートの手でそれぞれメッセージカードを見て、誰宛の物なのか分けられていく。
「俺ら宛で便箋って。どう分けろっていうんだ……。」
アークエイドは呆れたように呟きながら、仕訳けられた中から、差し入れのメッセージカードを宛名の人数分書き映している。
「リリィに送っちゃう?僕らが使うには可愛すぎるデザインな気もするし。」
サーニャに外套を預け、アシェルも仕分けに参加した。
メアリーは大人テーブルへ挨拶に行ってしまっている。
メルティーはというと、その流れ作業に目が釘付けだ。いや、作業というより焼き菓子に釘付けな気がする。
「メル、お菓子が気になるの?」
可愛い視線に気づいてクスリと揶揄うと、メルティーの顔が真っ赤になって慌てて否定される。
「い、いえ。アシェ義兄様のものを取ったりしませんわっ!……ただその……ちょっと美味しそうだなぁって。」
ごにょごにょと言葉を紡ぐメルティーの頭を撫でてやる。
むぅ、と口を尖らせて恥ずかしそうにしているが、逃げずに大人しくされているメルティーは本当に可愛い義妹だ。
(いつも甘やかしてくれてたお兄様達は、きっとこんな気持ちだったんだよなぁ。)
未だにアレリオンもアルフォードも、アシェルやメルティーにたっぷり愛情を注いでくれている。
「ちょっと待っててね。」
ぽんぽんと叩いた頭から手を離し、大人テーブルに向かう。
「おはようございます、アンジェラ様、キルル様。」
二人から挨拶が返ってくる。王都組の保護者はこの二人だけだ。
近くにはメアリーも立っていて、挨拶の後少し雑談をしていたようだ。
最近少しだけだが、送迎時にメアリーが大人テーブルで雑談している姿を見かける。
その間メルティーは、送迎時に到着しているメンバーと子供テーブルで雑談だ。
「アンジェラ様。一時間程度でいいので、メルティーもお茶会に同席させてもよろしいでしょうか?差し入れに興味があるようでして。」
ついっと子供テーブルに視線をやれば、メルティーはアークエイド達に混じって差し入れの仕分けをしていた。
「あら……構わないけれど、メアリー夫人の送迎が大変でしょう。手土産として持たせたらどうかしら?」
気付かないうちに名前呼びする仲になっていたらしい。
子供達が近くにいるときはアシェルのお義母さんと呼ぶ姿しか見たことが無かったのに。
そんな些細な変化に抱いたちょっとした驚きを隠しつつ、メルティーを茶会に参加させたい理由を告げる。
筋が通っていればしっかり話を聞いてくれるのがアンジェラだ。
「いえ、差し入れは何が入っているのかわかりませんので……。アレリオンお兄様は王立学院ですし、アルフォードお兄様も春の学院入学に向けて忙しいようなので、できればここで一緒にと思いまして。」
二人の名前を出せば理由ははっきりと伝わったようだ。
家名を明かさないとはいえ、アンジェラはシェリーの友人で主催者ともいえる。
メイディー公爵家の体質だって有名な話だ。
「なるほどね……いいわ。お昼の用意まではしてあげられないから12時頃まででしたら許可しましょう。いつもはアビーが勝手に乱入してるのに、ダメなんて言えないわ。メアリー夫人、この後のご予定はよろしいかしら?何度も送迎なんて大変だもの。貴女も一緒にお茶をしていくといいわ。」
ころころ笑いながら許可をくれたアンジェラに「ありがとうございます。」と頭を下げた。
メアリーも「よろしくお願いします。」と頭を下げて着席した。
アンジェラは案内してくれた騎士に声をかけ、メイディー家の馬車をいったん帰らせて、12時前に再度来るようにという伝言をし下がらせた。
「というわけで、今日は義妹のメルティーも参加させてもらうことになったから。お昼までよろしくね。」
「わたくし、メルティー・メ、んにゅ。」
自己紹介とカーテシーをしようとしていたメルティーの唇に、人差し指を押し当てて塞ぐ。
「メル、ここでは名前だけだよ。分かった?」
ニコッと笑って問いかければ、こくこくと頷くメルティーのしまったという表情が目に入った。
指を離してやると、こほんと気を取り直して再度挨拶を始めた。
「わたくしメルティーと申します。この度は急な参加をお許しいただきありがとうございます。」
すっとカーテシーをしたメルティーに、それぞれ声をかけてくれる。
「アークエイドだ。アークで構わない。よろしくメルティー嬢。」
「俺はエラート、エトって呼んでな。確か一つ違いだっけ?」
「俺はマリクだよー。よろしくねメルティーちゃん。」
三者三様の笑顔を浮かべ——アークエイドだけ若干ぎこちない笑顔だが、いつもの人見知りだろう——メルティーを歓迎してくれた。
いつも朝にちょこっと雑談しているとはいえ、アシェル達の会話に返事をする程度なので、名前を紹介したりメルティーが友人達の名前を呼んだことはなかった。
「アーク義兄様にエト義兄様、マリク義兄様ですわね。覚えましたわ。どうぞわたくしのことはメルとお呼びくださいませ。」
さっと見渡すと、そっぽを向いて耳を赤くしたアークエイドと固まって顔を赤くしたエラート。にこにこして尻尾をぶんぶん振っているマリクがいた。
この三人は全員末っ子と一人っ子だ。
(あぁ、メルの満面の笑顔と、“義兄様”は破壊力抜群だなぁ。)
「メルはそんなにいっぱい“お義兄様”が欲しいの?僕からの愛情が足りなかったかな。」
ひょいっとメルティーの身体を抱え、自分の膝の上で横抱きにして着席する。
「アシェ義兄様、セリフと声色があってませんわ。揶揄わないでくださいませ。」
メルティーはつんと顔を背けてみせる。
そんな姿すらも可愛らしくて愛おしい。
「わたくしは年下ですので、呼び捨てはできませんでしょう?様付けはよそよそしいしなって考えたら、お義兄様が一番しっくりきたんですもの。」
「そっかぁ、じゃあ仕方ないか。皆も満更じゃなさそうだしね。」
「えへへーアシェ、俺メルちゃんのおにーちゃんだって!可愛いいもーとができて嬉しいなぁ。」
「メルは僕のだよ、あげないからね。他の男にやるときはメルが嫁に行く時だけだから。」
「アシェ……それは父親のセリフじゃないか?」
「アシェがお袋から親父にクラスチェンジだな。」
あははと誰からともなく笑い声が溢れた。
テーブルの上にはラッピングされた焼き菓子がいくつも並んでいる。
まずは4人宛のカードの刺さったラッピングを開き、無作為に選んだ一つを口に含む。
問題がないことを確認して、アークエイドが複製したカードをそれぞれの手元に回す。
確認が終わった袋はその口を広げて、本来のカードと共にテーブルの中央に並べていく。
個人宛てのカードの場合、複製したカードは個人にだけ回す。
個人宛ての袋はそれぞれ受け取った人からの提供だ。
圧倒的にアークエイド宛てのカードが多い。
流石一国の王子様だ。
「カードだけ回収して、使用人達に菓子をやっても減らないんだ。」
うんざりした様子で話すアークエイドに、分かるわーと皆してうんうん頷く。
「甘いものは嬉しいけど、僕的には日用品とか消耗品が嬉しいなぁ。」
「俺は菓子よりもっとガッツリした食いもんがいい……菓子なら甘くないやつ。」
「俺は食べれるものならなんでもいいかなー。物は臭いやつが多いから欲しくない。」
三者三様の返答についていけてないのはメルティーだけだ。
「アシェ義兄様、結局これはなんなんですの?」
「えっと、さっきファンクラブみたいな人達って説明したでしょ?どこから漏れたのか、ある時から会場の近くでご令嬢達に突撃されるようになってね。プレゼントを受け取ってくださいって。警備的にも邪魔だし、せっかく遊びに来てるのに邪魔されるのも嫌でしょ?アークなんて機嫌が最悪になるし、冷笑してるのに微笑んでくれたーって騒がれたりしてたよね。あの時の理解できないって表情には笑ったな。」
思い出し笑いしながら続ける。
「で、突撃が面倒だから、朝一番9時50分に一度だけ、あの場所でプレゼントを受け取る時間を設けたんだ。家名は名乗らない非公式な集いであることを説明して、窓口は僕——アシェルだけ。プレゼントには必ず、日付・皆様宛てか家名なしの誰宛か・誰からかはフルネームで・何を送ったのか、のカードを付けてもらうことにして。受け取りはするけど全部消費できるかは分からないこと、でもカードは必ず皆受け取るよって説明して、今のスタイルになったんだ。ちなみに宛名に僕らの家名がかかれていた時点で、問答無用でカードごと破棄されることになってるよ、あとは指定した内容以外のメッセージが入ってるカード付きのやつもだね。」
「で……それだけ面倒な手順なのに、あんなにご令嬢が集まっていましたの?」
「そう。お礼がもらえたり個別のメッセージを届けることができる訳じゃないのに、減らないんだよね。というか、むしろ増えてて仕分けが大変になってきてるんだ。ちゃんと決まりを守ってくれるご令嬢ばかりなのが救いかなぁ。」
呆れ顔のメルティーに苦笑して見せる。
アシェルだって、ああまでして差し入れをしたいものなのかなと思っているのだ。
「アシェから臭いのは嫌って言ってもらったら、嫌な臭いも減ったしねー。」
「マリクは狼獣人で鼻が利くから、香水の匂いがきついのはダメみたいなんだよね。最初の頃は僕らでもきついなぁって思うくらいの匂いがしてたから、香水を控えてもらうようにお願いしたんだよ。」
「アシェ義兄様のことだから、どうせ女性をたらしこむようなことをおっしゃっ——むぐぅ。」
じとーっとした目を向けられ、誤魔化すために焼き菓子を一つ取り千切った欠片を楽しんだ後、残りをメルティーの口に押し込んだ。
途中で言葉を遮られたメルティーから咎めるような眼が向けられる。
「そんなことないと思うんだけどなぁ。」
「いや、言った。」
「たらし込むって確かにって感じだよな。」
ご令嬢達とアシェルだけの時に伝えたはずなのに、思わぬところから加勢が入る。
きょとんとしているとエラートが説明してくれた。
「いや、香水の匂いがーってなった時に、次のお茶会の時にご令嬢達にお願いしてみるって言ってたじゃん?もし逆上させたりとかしたら女って怖いしさ。最悪アシェを連れてとんずらするために、アークと一緒に近くで待機してたんだけど……。」
「んぐ……アシェ義兄様が上手いことたらしこんだと。」
「そそ。」
「ちょ、それは流石に濡れ衣じゃない?」
「絶対濡れ衣じゃありませんわ。我が家のお義兄様達の女ったらしは義妹であるわたくしが保証します。」
「そんな保証要らないよ。」
がっくりと肩を落とすが、何故か皆メルティーの味方だ。
マリクだけは我関せずでお菓子を食べている。
アシェルも焼き菓子を手に取りちぎったかけらを食べてから、残りをメルティーの口に押し込んだ。
「『いつも差し入れありがとう。レディ達に囲まれると、色とりどりの花が咲き乱れる庭園に紛れ込んだみたいだね。とてもいい香りなんだけど……せっかくいただいたお菓子の香りが分からなくなってしまうんだ。わざわざ強い香りを纏わなくても、お嬢様方ならいい匂いがすると思うんだけどな。……ねぇ、今度は君自身の香りを楽しませてくれる?』…だ。」
アークエイドが何時になく流暢に喋っている。無表情とセリフの中身が全く噛み合っていない。
その横でエラートがうんうんと頷き、マリクはあれは良い香りじゃないよーとうな垂れている。
メルティーがやっぱり、とため息を吐いた。
なんかそれっぽいことを言った覚えはあるが、そんな恥ずかしい台詞だっただろうかと首を捻る。
あまりにも甘すぎる台詞に少し顔が赤くなってしまった。
というよりも、もう一年以上昔のことなのに、台本を読んだように当時の台詞が出てくるものなのだろうか。
「これをいつもの笑顔で、最後の台詞に至っては一人のご令嬢の手を取って、手の甲にキスしながら上目遣いだ。ご令嬢たちの歓声が凄かった。」
「あー確かにあれはすごかったよなぁ。ちょっと間失神したご令嬢もいたしな。」
「え、そうなの?っていうか、ご令嬢達がキャーキャー言ってるのなんていつものことだから、気にしたことないよ。」
確かにちょこちょこ黄色い歓声があがるが、いつものことだ。
「朝のご令嬢が増えているのは、間違いなくアシェ義兄様目当てのご令嬢せいですわ、えぇ。」
確信を持ったように力強く頷くメルティー。
「むぅ……でも差し入れは僕宛が一番少ないんだよ?」
「俺個人宛てにカードをくれていたご令嬢達は何人か、皆宛てに変わってるんだ。多分エトやマリク目当てのご令嬢にも、同じように皆宛てに変えてる令嬢がいるんじゃないか?」
どうせ気付いていないだろうけど、とアークエイドが苦笑する。
「というわけで、原因は女ったらしなアシェ義兄様自身ですわ。」
こうしてアシェルは不服にも、齢8歳にして義妹と友人達から【女ったらし】認定されたのだった。
この流れでメルティーはすっかり皆と馴染んで、お昼まで他愛のない話をして盛り上がった。
アシェルも話に参加しながら、少しだけ千切って味見した菓子をメルティーの口に放り込んでいった。
もぐもぐ口をいっぱいにしたメルティーは本当に可愛いくて、何回か膝の上のメルティーを抱きしめて怒られた。
大人テーブルの方にもその賑やかさが伝わったのだろうか。
その後の非公式お茶会も、メルティーも毎回お昼まで一緒にお茶をすることになったのだった。
「アシェル様、ごきげんよう。本日も麗しいですわ。」
王宮の北東にある離宮に続く回廊。
そこには最近見慣れてきた、色とりどりのドレスに身を包んだご令嬢達の姿。
年の頃も、少し年下から王立学院入学前であろう年齢まで様々だ。
「おはよう、ウォレン嬢。今日は少し遅くなってしまってね。寒空の下レディを待たせてしまってごめんね?皆の身体が冷えていなければいいんだけれど。」
声をかけてきたウォレン侯爵家のご令嬢の手をとり、その手の甲に唇を落とす。
唇は触れさせない、ただの挨拶だ。
10歳の侯爵令嬢である彼女は、このご令嬢達の取り纏め役になっている。
集まっているご令嬢の中では一番家格が上のようだ。
ウォレン侯爵令嬢の後ろでは、いつも通りキャーと黄色い声が上がっている。
「いいえ、今日もこうしてお会いできて嬉しいですわ。お隣の方はご家族かしら?」
すっと視線を向けられた先には、”非公式お茶会”の見送りに来てくれたメアリーとメルティーの姿、その後ろにサーニャが控えている。
「えぇ、義母と義妹と侍女です。失礼、時間がないので差し入れの受け取りをさせていただいても?」
言いながらアシェルは『収納』——無属性魔法で、魔力量によってサイズが変わり、時間停止効果のある倉庫——から大きなバスケットを取り出した。
バスケットを出すと、ご令嬢達がその手に持ったプレゼントをどんどん詰め込んでいく。
おはようございます、お願いします、と声をかけてくれるご令嬢方に、一人ずつ返事はできないので笑顔を向ける。
「ありがとう、お嬢様方。ちゃんと皆に渡しておくね。さぁ、レディがこれ以上身体を冷やすと良くないよ。気を付けてお帰り。」
一通りプレゼントが乗ったことを確認して『ストレージ』に収納する。
にこっと微笑み手をひらひらと振ると、またキャーと歓声が上がった。
「よろしくお願いいたしますわ。ではまた。」
ウォレン侯爵令嬢はすっと綺麗なカーテシーをして、離宮とは逆方向へ歩いていく。
カラフルなご令嬢達もそれぞれ礼をしながらそのあとに続いた。
笑顔で手を振り姿が見えなくなったのを確認して、待たせた三人に謝罪し離宮へと移動する。
「アシェ義兄様……さっきのなんなんですの?」
離宮のサロンに入る直前、付き添ってくれていたメルティーが不思議そうに聞いてきた。
「えぇっと……ファンクラブ……みたいな?」
曖昧な回答にメルティーも首をかしげている。
サロンに入るともう全員——といっても2組の双子は辺境組なのでいないため王都組だけだ——が揃っていた。
「おはよう、アシェ。今日は遅かったな。」
エラートがにかっと笑って手を上げて挨拶してくる。
「おはよう。遅くなったついでに、いつもの貰ってきたから仕訳けてくれる?」
『ストレージ』からバスケットを取り出しマリクに渡す。
「今日も美味しいのあるといいなー。」
テーブルに置かれたバスケットの中身は、マリクとエラートの手でそれぞれメッセージカードを見て、誰宛の物なのか分けられていく。
「俺ら宛で便箋って。どう分けろっていうんだ……。」
アークエイドは呆れたように呟きながら、仕訳けられた中から、差し入れのメッセージカードを宛名の人数分書き映している。
「リリィに送っちゃう?僕らが使うには可愛すぎるデザインな気もするし。」
サーニャに外套を預け、アシェルも仕分けに参加した。
メアリーは大人テーブルへ挨拶に行ってしまっている。
メルティーはというと、その流れ作業に目が釘付けだ。いや、作業というより焼き菓子に釘付けな気がする。
「メル、お菓子が気になるの?」
可愛い視線に気づいてクスリと揶揄うと、メルティーの顔が真っ赤になって慌てて否定される。
「い、いえ。アシェ義兄様のものを取ったりしませんわっ!……ただその……ちょっと美味しそうだなぁって。」
ごにょごにょと言葉を紡ぐメルティーの頭を撫でてやる。
むぅ、と口を尖らせて恥ずかしそうにしているが、逃げずに大人しくされているメルティーは本当に可愛い義妹だ。
(いつも甘やかしてくれてたお兄様達は、きっとこんな気持ちだったんだよなぁ。)
未だにアレリオンもアルフォードも、アシェルやメルティーにたっぷり愛情を注いでくれている。
「ちょっと待っててね。」
ぽんぽんと叩いた頭から手を離し、大人テーブルに向かう。
「おはようございます、アンジェラ様、キルル様。」
二人から挨拶が返ってくる。王都組の保護者はこの二人だけだ。
近くにはメアリーも立っていて、挨拶の後少し雑談をしていたようだ。
最近少しだけだが、送迎時にメアリーが大人テーブルで雑談している姿を見かける。
その間メルティーは、送迎時に到着しているメンバーと子供テーブルで雑談だ。
「アンジェラ様。一時間程度でいいので、メルティーもお茶会に同席させてもよろしいでしょうか?差し入れに興味があるようでして。」
ついっと子供テーブルに視線をやれば、メルティーはアークエイド達に混じって差し入れの仕分けをしていた。
「あら……構わないけれど、メアリー夫人の送迎が大変でしょう。手土産として持たせたらどうかしら?」
気付かないうちに名前呼びする仲になっていたらしい。
子供達が近くにいるときはアシェルのお義母さんと呼ぶ姿しか見たことが無かったのに。
そんな些細な変化に抱いたちょっとした驚きを隠しつつ、メルティーを茶会に参加させたい理由を告げる。
筋が通っていればしっかり話を聞いてくれるのがアンジェラだ。
「いえ、差し入れは何が入っているのかわかりませんので……。アレリオンお兄様は王立学院ですし、アルフォードお兄様も春の学院入学に向けて忙しいようなので、できればここで一緒にと思いまして。」
二人の名前を出せば理由ははっきりと伝わったようだ。
家名を明かさないとはいえ、アンジェラはシェリーの友人で主催者ともいえる。
メイディー公爵家の体質だって有名な話だ。
「なるほどね……いいわ。お昼の用意まではしてあげられないから12時頃まででしたら許可しましょう。いつもはアビーが勝手に乱入してるのに、ダメなんて言えないわ。メアリー夫人、この後のご予定はよろしいかしら?何度も送迎なんて大変だもの。貴女も一緒にお茶をしていくといいわ。」
ころころ笑いながら許可をくれたアンジェラに「ありがとうございます。」と頭を下げた。
メアリーも「よろしくお願いします。」と頭を下げて着席した。
アンジェラは案内してくれた騎士に声をかけ、メイディー家の馬車をいったん帰らせて、12時前に再度来るようにという伝言をし下がらせた。
「というわけで、今日は義妹のメルティーも参加させてもらうことになったから。お昼までよろしくね。」
「わたくし、メルティー・メ、んにゅ。」
自己紹介とカーテシーをしようとしていたメルティーの唇に、人差し指を押し当てて塞ぐ。
「メル、ここでは名前だけだよ。分かった?」
ニコッと笑って問いかければ、こくこくと頷くメルティーのしまったという表情が目に入った。
指を離してやると、こほんと気を取り直して再度挨拶を始めた。
「わたくしメルティーと申します。この度は急な参加をお許しいただきありがとうございます。」
すっとカーテシーをしたメルティーに、それぞれ声をかけてくれる。
「アークエイドだ。アークで構わない。よろしくメルティー嬢。」
「俺はエラート、エトって呼んでな。確か一つ違いだっけ?」
「俺はマリクだよー。よろしくねメルティーちゃん。」
三者三様の笑顔を浮かべ——アークエイドだけ若干ぎこちない笑顔だが、いつもの人見知りだろう——メルティーを歓迎してくれた。
いつも朝にちょこっと雑談しているとはいえ、アシェル達の会話に返事をする程度なので、名前を紹介したりメルティーが友人達の名前を呼んだことはなかった。
「アーク義兄様にエト義兄様、マリク義兄様ですわね。覚えましたわ。どうぞわたくしのことはメルとお呼びくださいませ。」
さっと見渡すと、そっぽを向いて耳を赤くしたアークエイドと固まって顔を赤くしたエラート。にこにこして尻尾をぶんぶん振っているマリクがいた。
この三人は全員末っ子と一人っ子だ。
(あぁ、メルの満面の笑顔と、“義兄様”は破壊力抜群だなぁ。)
「メルはそんなにいっぱい“お義兄様”が欲しいの?僕からの愛情が足りなかったかな。」
ひょいっとメルティーの身体を抱え、自分の膝の上で横抱きにして着席する。
「アシェ義兄様、セリフと声色があってませんわ。揶揄わないでくださいませ。」
メルティーはつんと顔を背けてみせる。
そんな姿すらも可愛らしくて愛おしい。
「わたくしは年下ですので、呼び捨てはできませんでしょう?様付けはよそよそしいしなって考えたら、お義兄様が一番しっくりきたんですもの。」
「そっかぁ、じゃあ仕方ないか。皆も満更じゃなさそうだしね。」
「えへへーアシェ、俺メルちゃんのおにーちゃんだって!可愛いいもーとができて嬉しいなぁ。」
「メルは僕のだよ、あげないからね。他の男にやるときはメルが嫁に行く時だけだから。」
「アシェ……それは父親のセリフじゃないか?」
「アシェがお袋から親父にクラスチェンジだな。」
あははと誰からともなく笑い声が溢れた。
テーブルの上にはラッピングされた焼き菓子がいくつも並んでいる。
まずは4人宛のカードの刺さったラッピングを開き、無作為に選んだ一つを口に含む。
問題がないことを確認して、アークエイドが複製したカードをそれぞれの手元に回す。
確認が終わった袋はその口を広げて、本来のカードと共にテーブルの中央に並べていく。
個人宛てのカードの場合、複製したカードは個人にだけ回す。
個人宛ての袋はそれぞれ受け取った人からの提供だ。
圧倒的にアークエイド宛てのカードが多い。
流石一国の王子様だ。
「カードだけ回収して、使用人達に菓子をやっても減らないんだ。」
うんざりした様子で話すアークエイドに、分かるわーと皆してうんうん頷く。
「甘いものは嬉しいけど、僕的には日用品とか消耗品が嬉しいなぁ。」
「俺は菓子よりもっとガッツリした食いもんがいい……菓子なら甘くないやつ。」
「俺は食べれるものならなんでもいいかなー。物は臭いやつが多いから欲しくない。」
三者三様の返答についていけてないのはメルティーだけだ。
「アシェ義兄様、結局これはなんなんですの?」
「えっと、さっきファンクラブみたいな人達って説明したでしょ?どこから漏れたのか、ある時から会場の近くでご令嬢達に突撃されるようになってね。プレゼントを受け取ってくださいって。警備的にも邪魔だし、せっかく遊びに来てるのに邪魔されるのも嫌でしょ?アークなんて機嫌が最悪になるし、冷笑してるのに微笑んでくれたーって騒がれたりしてたよね。あの時の理解できないって表情には笑ったな。」
思い出し笑いしながら続ける。
「で、突撃が面倒だから、朝一番9時50分に一度だけ、あの場所でプレゼントを受け取る時間を設けたんだ。家名は名乗らない非公式な集いであることを説明して、窓口は僕——アシェルだけ。プレゼントには必ず、日付・皆様宛てか家名なしの誰宛か・誰からかはフルネームで・何を送ったのか、のカードを付けてもらうことにして。受け取りはするけど全部消費できるかは分からないこと、でもカードは必ず皆受け取るよって説明して、今のスタイルになったんだ。ちなみに宛名に僕らの家名がかかれていた時点で、問答無用でカードごと破棄されることになってるよ、あとは指定した内容以外のメッセージが入ってるカード付きのやつもだね。」
「で……それだけ面倒な手順なのに、あんなにご令嬢が集まっていましたの?」
「そう。お礼がもらえたり個別のメッセージを届けることができる訳じゃないのに、減らないんだよね。というか、むしろ増えてて仕分けが大変になってきてるんだ。ちゃんと決まりを守ってくれるご令嬢ばかりなのが救いかなぁ。」
呆れ顔のメルティーに苦笑して見せる。
アシェルだって、ああまでして差し入れをしたいものなのかなと思っているのだ。
「アシェから臭いのは嫌って言ってもらったら、嫌な臭いも減ったしねー。」
「マリクは狼獣人で鼻が利くから、香水の匂いがきついのはダメみたいなんだよね。最初の頃は僕らでもきついなぁって思うくらいの匂いがしてたから、香水を控えてもらうようにお願いしたんだよ。」
「アシェ義兄様のことだから、どうせ女性をたらしこむようなことをおっしゃっ——むぐぅ。」
じとーっとした目を向けられ、誤魔化すために焼き菓子を一つ取り千切った欠片を楽しんだ後、残りをメルティーの口に押し込んだ。
途中で言葉を遮られたメルティーから咎めるような眼が向けられる。
「そんなことないと思うんだけどなぁ。」
「いや、言った。」
「たらし込むって確かにって感じだよな。」
ご令嬢達とアシェルだけの時に伝えたはずなのに、思わぬところから加勢が入る。
きょとんとしているとエラートが説明してくれた。
「いや、香水の匂いがーってなった時に、次のお茶会の時にご令嬢達にお願いしてみるって言ってたじゃん?もし逆上させたりとかしたら女って怖いしさ。最悪アシェを連れてとんずらするために、アークと一緒に近くで待機してたんだけど……。」
「んぐ……アシェ義兄様が上手いことたらしこんだと。」
「そそ。」
「ちょ、それは流石に濡れ衣じゃない?」
「絶対濡れ衣じゃありませんわ。我が家のお義兄様達の女ったらしは義妹であるわたくしが保証します。」
「そんな保証要らないよ。」
がっくりと肩を落とすが、何故か皆メルティーの味方だ。
マリクだけは我関せずでお菓子を食べている。
アシェルも焼き菓子を手に取りちぎったかけらを食べてから、残りをメルティーの口に押し込んだ。
「『いつも差し入れありがとう。レディ達に囲まれると、色とりどりの花が咲き乱れる庭園に紛れ込んだみたいだね。とてもいい香りなんだけど……せっかくいただいたお菓子の香りが分からなくなってしまうんだ。わざわざ強い香りを纏わなくても、お嬢様方ならいい匂いがすると思うんだけどな。……ねぇ、今度は君自身の香りを楽しませてくれる?』…だ。」
アークエイドが何時になく流暢に喋っている。無表情とセリフの中身が全く噛み合っていない。
その横でエラートがうんうんと頷き、マリクはあれは良い香りじゃないよーとうな垂れている。
メルティーがやっぱり、とため息を吐いた。
なんかそれっぽいことを言った覚えはあるが、そんな恥ずかしい台詞だっただろうかと首を捻る。
あまりにも甘すぎる台詞に少し顔が赤くなってしまった。
というよりも、もう一年以上昔のことなのに、台本を読んだように当時の台詞が出てくるものなのだろうか。
「これをいつもの笑顔で、最後の台詞に至っては一人のご令嬢の手を取って、手の甲にキスしながら上目遣いだ。ご令嬢たちの歓声が凄かった。」
「あー確かにあれはすごかったよなぁ。ちょっと間失神したご令嬢もいたしな。」
「え、そうなの?っていうか、ご令嬢達がキャーキャー言ってるのなんていつものことだから、気にしたことないよ。」
確かにちょこちょこ黄色い歓声があがるが、いつものことだ。
「朝のご令嬢が増えているのは、間違いなくアシェ義兄様目当てのご令嬢せいですわ、えぇ。」
確信を持ったように力強く頷くメルティー。
「むぅ……でも差し入れは僕宛が一番少ないんだよ?」
「俺個人宛てにカードをくれていたご令嬢達は何人か、皆宛てに変わってるんだ。多分エトやマリク目当てのご令嬢にも、同じように皆宛てに変えてる令嬢がいるんじゃないか?」
どうせ気付いていないだろうけど、とアークエイドが苦笑する。
「というわけで、原因は女ったらしなアシェ義兄様自身ですわ。」
こうしてアシェルは不服にも、齢8歳にして義妹と友人達から【女ったらし】認定されたのだった。
この流れでメルティーはすっかり皆と馴染んで、お昼まで他愛のない話をして盛り上がった。
アシェルも話に参加しながら、少しだけ千切って味見した菓子をメルティーの口に放り込んでいった。
もぐもぐ口をいっぱいにしたメルティーは本当に可愛いくて、何回か膝の上のメルティーを抱きしめて怒られた。
大人テーブルの方にもその賑やかさが伝わったのだろうか。
その後の非公式お茶会も、メルティーも毎回お昼まで一緒にお茶をすることになったのだった。
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