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第一章 非公式お茶会
36 和食はほっこり美味しい
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********
※アシェルとリリアーデとデュークで、大衆食堂サクラで食事をします。
その中で恋愛とは?という話をしてオシマイですが、前世の貞操観念・恋愛事情について、奔放寄りな書き方をしています
なので、リアリティ溢れすぎて嫌だとか、そんな考え方はちょっと……という方はこの話を飛ばしてお読みください。
飛ばしてもストーリー進行に影響はありません。
********
Side:アシェル11歳 秋
アシェルはリリアーデとデュークを連れて、大衆食堂サクラにやってきた。
今日のアシェルは魔道具で色を変えていない。
リリアーデとデュークが魔道具を使用していないので、一人だけ変えても意味がないからだ。
服装はそれぞれ、このまま高級商業エリアに繰り出してもおかしくはない程度の恰好をしている。
「いらっしゃいませぇー。……あ、アシェさんだぁ、こんにちはぁ。」
「こんにちは、パティさん。個室って空いてるかな?」
「ご案内しますねぇ。」
王都組はよくサクラを利用しているので、割烹着姿で出迎えてくれたパトリシアとは今ではすっかり顔馴染になっている。
プライベートな話をするわけではないので、大体アシェルかエラートが名前を呼ばれるのと、時々季節のおすすめを教えてくれたりする。
テーブル席と掘りごたつ席を通り過ぎた奥。
引き戸の向こうの掘りごたつ席に案内され、リリアーデはきょろきょろと店内を見渡している。
パトリシアがメニューを置いて他の場所へ移動したのを確認して、リリアーデが口を開いた。
「へぇ、凄いわね。掘りごたつの座席は畳になってるし。確か和風の文化はエルフェナーレ王国では普通なんだっけ?」
「そう聞いてるね。実際には見たことないけど、かなーり昔に日本出身の“授け子”が王族に産まれて、その時からの文化らしいよ。」
「そうだったのね。」
「へぇ、デューク詳しいね。」
「リリィのために“授け子”関連の知識は小さい時から詰め込まれたんだよ……。だからアシェが感心するようなことじゃないと思う。」
“授け子”を支えるために必要ない知識を詰め込まれたのであろうデュークを不憫に思いながら、メニューを開いて料理を勧める。
「リリィには馴染があると思うけど、デュークは何が食べたいとかある?」
「うーん。メニューを見ても味の想像ができない。……リリィ、なんか僕の好きそうなの頼んでくれる?」
「オッケー。これ定食だから、全部お味噌汁ついてるわよね?」
「うん、オカズとご飯とお味噌汁。お新香と小鉢のお惣菜がついてるよ。」
「ふむふむ、じゃあ、季節の天ぷら定食とぶり大根定食にしようかしら。デュークは少し味見して、どっちがいいか選んだらいいと思うわ。」
「じゃあ僕はすき焼き定食にしようかな。」
続いてドリンクメニューを開き、リリアーデとあれこれ喋りながら何にするか決めていく。
「お茶の種類が豊富なのね。飲んだことないものばかりだわ。」
「ポットサービスでくるんだよ。お湯も何回でも淹れてくれるから、ゆっくりしたい時とかは日本茶もいいけど、中国茶系の方が長く楽しめるって感じかな。」
ページをめくり工芸茶の載ったページを開く。
写真付きで紹介されている、味も見た目も楽しめるお茶のコーナーだ。
「へぇ、中国茶まで置いているのね。華やかで綺麗だわ。でも今回は無難なほうじ茶と玄米茶にしようかしら。わたくし、昔から渋いのは苦手なのよね。」
「んーじゃあ僕はイチョウ茶にしてみようかな。」
少し引き戸を開け、近くにいた女将さんに注文を伝える。
今日のお通しは甘じょっぱい味付けの芋餅だ。
「本当はノアとトワも連れてきたかったんだけど、前世の記憶云々はリリィとデュークにしか教えてないから誘えなかったんだよね。」
「あら。王立学院では届け出さえ出せば、休日街に出ることもできるんでしょ?」
「ってお兄様達が言ってたから、少し学院に慣れたら皆で来たいなって思ってるよ。」
「きっと楽しいと思うわ。」
そこから少し他愛ない話をして、料理が運ばれてくる。
「わぁーデューク、見てみて!お味噌汁よ、お味噌汁!!それに天ぷらもぶり大根も!!懐かしいわっ。」
料理を見た瞬間から眼をキラキラと輝かせたリリアーデは、食べる前から満面の笑顔だ。
「はいはい。料理は逃げないから落ち着いてくれる?」
「酷いわ!デュークにはこの感動が分からないのね!」
「分かるわけないだろうが。」
そんな二人の掛け合いを、アシェルはクスクス笑いながら見守る。
「さぁ、食べようか。いただきます。」
「「いただきます。」」
アシェルとリリアーデだけが手を合わせた冒険者スタイル、デュークは言葉だけの貴族スタイルだ。
「僕はぶり大根の定食を貰っていい?味もだけど、天ぷらはナイフとフォークじゃ食べにくい。」
やはりお箸を使うのは難しいらしく、デュークは器用にナイフとフォークで食事を摂っている。
箸を使える日本人からすれば、そちらの方が難易度が高く思えてしまう。
対してリリアーデはお椀を抱え至福の表情だ。
「はぁ……十数年ぶりのお味噌汁。さいっこう…!」
「豆腐とワカメなんて、今世ではなかなか食べることないからね。」
「うんうん。ベーシックな具だけど、それがまたいいのよね。今だからこそ分かるありがたみだわ。」
お互いに少しずつオカズを分け合いながら、お喋りしながら完食した。
食後にデザートをつつきながら雑談する最中、アシェルはそういえばと口を開く。
「ねぇリリィ、デューク。友達の好きと恋愛感情の好きの違いって何?」
何の脈絡もない質問に、抹茶パフェをつついていたリリアーデがきょとんとした顔をする。
「藪から棒にどうしたの?誰かに恋でもした??」
興味津々という感情がのった声で聞かれるが、違うよと苦笑して返す。
「この前人に聞かれたんだけど、僕は明確な答えを持ってないなって思って。残念ながら前世は結婚した覚えもないし。」
「なーんだ。でも結婚まではいかなくても、恋愛くらいはしたんじゃないの?高校は卒業したんでしょう?」
「いや、勉強するのに必死だったし、そんな余裕なかったよ。」
勉強をしていた記憶はあるし、高校には特待生制度を使って通っていた。
詳細は定かではないが、市立図書館に時々通っていたのも覚えている。だから勉強に必死だったのではないかと思うが、あくまでも予想だ。
少なくとも恋人がいたという記憶はない。
「ほんとに?だってアシェのキス、すっごく上手だったわよ?あれで経験がないとか嘘よね?」
「んぐっ。」
リリアーデが訝しげな表情を浮かべる横で、咳込みはじめたデュークが慌ててお茶を流し込む。
あんみつの水分が気管にでも入ったのだろう。
「あぁ、キスは経験あるよ?ほら、そういうのって恋人じゃなくてもできるでしょ。中高生ってそういうのに興味があるお年頃だし。最後の最後まではしてないだけで、年齢の割には結構経験はあるほうだったと思うよ。」
さらりと口にすれば顔を真っ赤にしたリリアーデが「大人だわ。」と呟き、少し表情を暗くしたデュークが「僕はこれを聞いて良かったんだろうか。」と嘆いている。
「一応デュークに教えておくけど、前世の貞操観念は今世より薄いからね?まぁそのあたりがしっかりしてる人もちゃんといるけど。少なくとも施設……孤児院にいた知人たちは、心の隙間を埋めようとしてたんだろうね。割と性には奔放な人か、不潔だって倦厭するかに分かれてた気がする。」
「そうね……確かに恋人ができたからって、必ず結婚するわけじゃないし、婚約してなくても身体の関係を持つ人はいるものね。むしろ結婚まで生娘ってほうが希少よね。」
「分かった。分かったから、仮にも貴族令嬢が、男の前でそんなことを口にしないでくれ。」
少し顔を赤らめ慌てたように話を止めに入るデュークに、リリアーデと二人笑いがこぼれる。
「まぁ、というわけで、恋愛感情ってどんなのかな?って。」
「私が結婚した相手は、この人になら素の状態で接することができるし、辛いときに一緒に居てほしいって思った相手だったわ。ずっと一緒に居たいなって思って、初めて自分から告白した相手ね。好きだって思って結婚するに至ったけど、もし私が相手じゃなくても相手が幸せならって思えたくらいよ。それまでのお付き合いは、仲良くなった相手に告白されて付き合って、こっちが振ってを繰り返してたから全く参考にならないわ。」
ある意味初恋の相手が結婚相手だったのだろうか。それはそれで凄いと思うし、一体何人元カレがいたのだろうかと思ってしまう。
「こう……物語にあるようなドキドキとかは?」
「うーん……しなくはないわよ?でも、それってイチャイチャすることに慣れてない間って、誰が相手でもドキドキするじゃない?だから明確に何が違うの?って言われると困っちゃうかも。」
身も蓋もない話だ。
だが確かに、昔アークエイドに抱き寄せられた時はドキドキしたなと思う。
特別な恋愛感情を抱いている訳でなくてもドキドキはできるのだ。
「あ、でも片思い中は一緒に居なくても、すっごくドキドキしたかも。ちょっとしたメールのやり取りとか、たまに会う日がすごく楽しみだったりとか。あとは仕事で疲れてても、その人と会うときは時間作って頑張れたわね。お付き合いしてからはドキドキのタイミングは減っちゃったけど、一緒の時間が心地いいって思えて、ずっと一緒に居たいと思って結婚したかな。」
「なるほど。今世だと文通とかかぁ。即レスじゃないのってもどかしそう。」
「確かにね。でもこの世界観で皆が携帯持ってたら、それはそれで違和感しかないわ。通信用の魔道具は一応あるらしいけど、一般には普及してないしね。」
「確かに。」
リリアーデと笑い合うがデュークは話についていけずに置いてけぼりだ。
「ちなみに、デュークは好きの違いは何だと思う?」
いきなり話題を振られたデュークは虚を突かれたような表情をした後、ゆっくり言葉を選ぶように話し出す。
「……貴族だから、そして我が家の加護が特殊だから。そもそも恋愛結婚なんて考えてなかったというのは前提に置いておいてほしい。僕は相手を危険なことから遠ざけたり守りたいと思ったり、自分の手元に置いて逃がしたくないと思う。あとは他の男と二人っきりとかにはなってほしくないと思うな。リリィがその辺りの貞操観念が低いのはとても心配している。」
「え、今の話からわたくしの話になるの!?」
「リリィとアシェの前世の感覚が解らないけど、アシェも一応気を付けたほうがいいと思う。」
「あはは、僕は大丈夫だよ。今世はかなりキッチリ公爵令嬢としても子息としての教育もされたっていうか。さすがに閨教育までは受けてないけど、行きずりのご令嬢とどうこうするつもりはないし。」
「いや……うん、まぁいいか。」
アシェルが男性と二人きりになるのを忌避していない様子に忠告したつもりのデュークだったが、その意味が正しく伝わらないアシェルだった。
※アシェルとリリアーデとデュークで、大衆食堂サクラで食事をします。
その中で恋愛とは?という話をしてオシマイですが、前世の貞操観念・恋愛事情について、奔放寄りな書き方をしています
なので、リアリティ溢れすぎて嫌だとか、そんな考え方はちょっと……という方はこの話を飛ばしてお読みください。
飛ばしてもストーリー進行に影響はありません。
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Side:アシェル11歳 秋
アシェルはリリアーデとデュークを連れて、大衆食堂サクラにやってきた。
今日のアシェルは魔道具で色を変えていない。
リリアーデとデュークが魔道具を使用していないので、一人だけ変えても意味がないからだ。
服装はそれぞれ、このまま高級商業エリアに繰り出してもおかしくはない程度の恰好をしている。
「いらっしゃいませぇー。……あ、アシェさんだぁ、こんにちはぁ。」
「こんにちは、パティさん。個室って空いてるかな?」
「ご案内しますねぇ。」
王都組はよくサクラを利用しているので、割烹着姿で出迎えてくれたパトリシアとは今ではすっかり顔馴染になっている。
プライベートな話をするわけではないので、大体アシェルかエラートが名前を呼ばれるのと、時々季節のおすすめを教えてくれたりする。
テーブル席と掘りごたつ席を通り過ぎた奥。
引き戸の向こうの掘りごたつ席に案内され、リリアーデはきょろきょろと店内を見渡している。
パトリシアがメニューを置いて他の場所へ移動したのを確認して、リリアーデが口を開いた。
「へぇ、凄いわね。掘りごたつの座席は畳になってるし。確か和風の文化はエルフェナーレ王国では普通なんだっけ?」
「そう聞いてるね。実際には見たことないけど、かなーり昔に日本出身の“授け子”が王族に産まれて、その時からの文化らしいよ。」
「そうだったのね。」
「へぇ、デューク詳しいね。」
「リリィのために“授け子”関連の知識は小さい時から詰め込まれたんだよ……。だからアシェが感心するようなことじゃないと思う。」
“授け子”を支えるために必要ない知識を詰め込まれたのであろうデュークを不憫に思いながら、メニューを開いて料理を勧める。
「リリィには馴染があると思うけど、デュークは何が食べたいとかある?」
「うーん。メニューを見ても味の想像ができない。……リリィ、なんか僕の好きそうなの頼んでくれる?」
「オッケー。これ定食だから、全部お味噌汁ついてるわよね?」
「うん、オカズとご飯とお味噌汁。お新香と小鉢のお惣菜がついてるよ。」
「ふむふむ、じゃあ、季節の天ぷら定食とぶり大根定食にしようかしら。デュークは少し味見して、どっちがいいか選んだらいいと思うわ。」
「じゃあ僕はすき焼き定食にしようかな。」
続いてドリンクメニューを開き、リリアーデとあれこれ喋りながら何にするか決めていく。
「お茶の種類が豊富なのね。飲んだことないものばかりだわ。」
「ポットサービスでくるんだよ。お湯も何回でも淹れてくれるから、ゆっくりしたい時とかは日本茶もいいけど、中国茶系の方が長く楽しめるって感じかな。」
ページをめくり工芸茶の載ったページを開く。
写真付きで紹介されている、味も見た目も楽しめるお茶のコーナーだ。
「へぇ、中国茶まで置いているのね。華やかで綺麗だわ。でも今回は無難なほうじ茶と玄米茶にしようかしら。わたくし、昔から渋いのは苦手なのよね。」
「んーじゃあ僕はイチョウ茶にしてみようかな。」
少し引き戸を開け、近くにいた女将さんに注文を伝える。
今日のお通しは甘じょっぱい味付けの芋餅だ。
「本当はノアとトワも連れてきたかったんだけど、前世の記憶云々はリリィとデュークにしか教えてないから誘えなかったんだよね。」
「あら。王立学院では届け出さえ出せば、休日街に出ることもできるんでしょ?」
「ってお兄様達が言ってたから、少し学院に慣れたら皆で来たいなって思ってるよ。」
「きっと楽しいと思うわ。」
そこから少し他愛ない話をして、料理が運ばれてくる。
「わぁーデューク、見てみて!お味噌汁よ、お味噌汁!!それに天ぷらもぶり大根も!!懐かしいわっ。」
料理を見た瞬間から眼をキラキラと輝かせたリリアーデは、食べる前から満面の笑顔だ。
「はいはい。料理は逃げないから落ち着いてくれる?」
「酷いわ!デュークにはこの感動が分からないのね!」
「分かるわけないだろうが。」
そんな二人の掛け合いを、アシェルはクスクス笑いながら見守る。
「さぁ、食べようか。いただきます。」
「「いただきます。」」
アシェルとリリアーデだけが手を合わせた冒険者スタイル、デュークは言葉だけの貴族スタイルだ。
「僕はぶり大根の定食を貰っていい?味もだけど、天ぷらはナイフとフォークじゃ食べにくい。」
やはりお箸を使うのは難しいらしく、デュークは器用にナイフとフォークで食事を摂っている。
箸を使える日本人からすれば、そちらの方が難易度が高く思えてしまう。
対してリリアーデはお椀を抱え至福の表情だ。
「はぁ……十数年ぶりのお味噌汁。さいっこう…!」
「豆腐とワカメなんて、今世ではなかなか食べることないからね。」
「うんうん。ベーシックな具だけど、それがまたいいのよね。今だからこそ分かるありがたみだわ。」
お互いに少しずつオカズを分け合いながら、お喋りしながら完食した。
食後にデザートをつつきながら雑談する最中、アシェルはそういえばと口を開く。
「ねぇリリィ、デューク。友達の好きと恋愛感情の好きの違いって何?」
何の脈絡もない質問に、抹茶パフェをつついていたリリアーデがきょとんとした顔をする。
「藪から棒にどうしたの?誰かに恋でもした??」
興味津々という感情がのった声で聞かれるが、違うよと苦笑して返す。
「この前人に聞かれたんだけど、僕は明確な答えを持ってないなって思って。残念ながら前世は結婚した覚えもないし。」
「なーんだ。でも結婚まではいかなくても、恋愛くらいはしたんじゃないの?高校は卒業したんでしょう?」
「いや、勉強するのに必死だったし、そんな余裕なかったよ。」
勉強をしていた記憶はあるし、高校には特待生制度を使って通っていた。
詳細は定かではないが、市立図書館に時々通っていたのも覚えている。だから勉強に必死だったのではないかと思うが、あくまでも予想だ。
少なくとも恋人がいたという記憶はない。
「ほんとに?だってアシェのキス、すっごく上手だったわよ?あれで経験がないとか嘘よね?」
「んぐっ。」
リリアーデが訝しげな表情を浮かべる横で、咳込みはじめたデュークが慌ててお茶を流し込む。
あんみつの水分が気管にでも入ったのだろう。
「あぁ、キスは経験あるよ?ほら、そういうのって恋人じゃなくてもできるでしょ。中高生ってそういうのに興味があるお年頃だし。最後の最後まではしてないだけで、年齢の割には結構経験はあるほうだったと思うよ。」
さらりと口にすれば顔を真っ赤にしたリリアーデが「大人だわ。」と呟き、少し表情を暗くしたデュークが「僕はこれを聞いて良かったんだろうか。」と嘆いている。
「一応デュークに教えておくけど、前世の貞操観念は今世より薄いからね?まぁそのあたりがしっかりしてる人もちゃんといるけど。少なくとも施設……孤児院にいた知人たちは、心の隙間を埋めようとしてたんだろうね。割と性には奔放な人か、不潔だって倦厭するかに分かれてた気がする。」
「そうね……確かに恋人ができたからって、必ず結婚するわけじゃないし、婚約してなくても身体の関係を持つ人はいるものね。むしろ結婚まで生娘ってほうが希少よね。」
「分かった。分かったから、仮にも貴族令嬢が、男の前でそんなことを口にしないでくれ。」
少し顔を赤らめ慌てたように話を止めに入るデュークに、リリアーデと二人笑いがこぼれる。
「まぁ、というわけで、恋愛感情ってどんなのかな?って。」
「私が結婚した相手は、この人になら素の状態で接することができるし、辛いときに一緒に居てほしいって思った相手だったわ。ずっと一緒に居たいなって思って、初めて自分から告白した相手ね。好きだって思って結婚するに至ったけど、もし私が相手じゃなくても相手が幸せならって思えたくらいよ。それまでのお付き合いは、仲良くなった相手に告白されて付き合って、こっちが振ってを繰り返してたから全く参考にならないわ。」
ある意味初恋の相手が結婚相手だったのだろうか。それはそれで凄いと思うし、一体何人元カレがいたのだろうかと思ってしまう。
「こう……物語にあるようなドキドキとかは?」
「うーん……しなくはないわよ?でも、それってイチャイチャすることに慣れてない間って、誰が相手でもドキドキするじゃない?だから明確に何が違うの?って言われると困っちゃうかも。」
身も蓋もない話だ。
だが確かに、昔アークエイドに抱き寄せられた時はドキドキしたなと思う。
特別な恋愛感情を抱いている訳でなくてもドキドキはできるのだ。
「あ、でも片思い中は一緒に居なくても、すっごくドキドキしたかも。ちょっとしたメールのやり取りとか、たまに会う日がすごく楽しみだったりとか。あとは仕事で疲れてても、その人と会うときは時間作って頑張れたわね。お付き合いしてからはドキドキのタイミングは減っちゃったけど、一緒の時間が心地いいって思えて、ずっと一緒に居たいと思って結婚したかな。」
「なるほど。今世だと文通とかかぁ。即レスじゃないのってもどかしそう。」
「確かにね。でもこの世界観で皆が携帯持ってたら、それはそれで違和感しかないわ。通信用の魔道具は一応あるらしいけど、一般には普及してないしね。」
「確かに。」
リリアーデと笑い合うがデュークは話についていけずに置いてけぼりだ。
「ちなみに、デュークは好きの違いは何だと思う?」
いきなり話題を振られたデュークは虚を突かれたような表情をした後、ゆっくり言葉を選ぶように話し出す。
「……貴族だから、そして我が家の加護が特殊だから。そもそも恋愛結婚なんて考えてなかったというのは前提に置いておいてほしい。僕は相手を危険なことから遠ざけたり守りたいと思ったり、自分の手元に置いて逃がしたくないと思う。あとは他の男と二人っきりとかにはなってほしくないと思うな。リリィがその辺りの貞操観念が低いのはとても心配している。」
「え、今の話からわたくしの話になるの!?」
「リリィとアシェの前世の感覚が解らないけど、アシェも一応気を付けたほうがいいと思う。」
「あはは、僕は大丈夫だよ。今世はかなりキッチリ公爵令嬢としても子息としての教育もされたっていうか。さすがに閨教育までは受けてないけど、行きずりのご令嬢とどうこうするつもりはないし。」
「いや……うん、まぁいいか。」
アシェルが男性と二人きりになるのを忌避していない様子に忠告したつもりのデュークだったが、その意味が正しく伝わらないアシェルだった。
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