氷の王子様と微笑みの男装令嬢

芯夜

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第二章 王立学院中等部一年生

58 ミルトン兄弟① ※

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※激しい抵抗はないものの、同意なしのプレイ表現があります。
ご注意ください。苦手な方は次の話へ。

今後も注意喚起(※)が必要な話は増えていくかと思います。

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Side:アシェル12歳 夏



結界術の授業で起きた事件から1週間以上が経った。
ちなみにあのあと、アークエイドとはいつも通りでスもしていない。

結界術を担当していたロータス先生は懲戒免職処分を言い渡され、既に学院にはいないらしい。
そして今は新しい教師を探しているようで、結界学の授業は夏季休暇明けに授業を再開する予定だそうだ。

夏季休暇というものの、前期と後期で分かれている王立学院の夏休みは9月だ。
丸一か月以上、結界学の授業を受けることが出来ないことに、アシェルは密かに落ち込んだ。

また、それぞれ朝のホームルームで、潜在消費の起こす衝動が満たされなかった時の衝動暴発について、その脅威を懇々と説明された。
クラスメイトの大半はその身を以って体験したので、言われるまでもなく衝動暴発の脅威を知っただろう。

ついでに魔力枯渇の辛さも。



そんな事件が起きた後の、日常を取り戻した8月の真夏日。
水曜日の4限目生物の授業を終え、一緒に授業を受けていたリリアーデと別れて、校舎の5階に来ていた。

目的の場所は【生徒会執行部】の教室だ。

コンコン、と扉を叩くと「どうぞ。」と声がしたので、扉を開き中に入る。
生徒会室の入り口までアークエイドやノアールを送ってくることはあるが、中に入るのは入学式以来だ。

「失礼します。」と言いながら中に入ると、その広い教室にいるのはクリストファーだけだった。

部屋の奥にある応接セットのソファで優雅にお茶を飲んでいたクリストファーは、入ってきた人物に腰を上げる。

「おや、珍しい。アシェル君が一人で生徒会執行部に来るなんて。今日はどうしたの?」

すっと隣に寄ってきたクリストファーは、教室の奥にあるソファまで付き添ってくれるつもりのようだ。

「アル兄様がいるかと思ってきたのですが、まだのようですね。また放課後に——。」

「あぁ、アルフォード先輩に用事なんだね。行き違いになってもいけないし、ゆっくりしていきなよ。」

結局教室の奥まで誘導されてしまい、ソファに座らされる。

そして5人掛けの大きなソファーなのに、真ん中ではなく少し端に寄って座ったアシェルと、ソファのひじ掛けとの間にクリストファーが腰を降ろす。

「クリストファー先輩?狭いでしょうし、向かいの元の席に……。」

向かいの席に座るクリストファーの真正面にならないように座ったつもりだったのだ。

「近くに居る方が仲良くなれる気がするでしょ?弟にも少し話は聞いてるけど、僕も是非アシェル君と友達になりたくてね。」

そういったクリストファーは瑠璃色の瞳を細め笑った。

「弟君はシオン殿でしたね。友達というほど仲良くはないと思うのですが、よく声をかけていただきますよ。」

アシェルはにっこりと微笑み、前に置かれた紅茶に「いただきますね。」といい口をつけた。

「クスクス、シオンはまだ友達じゃないんだ?じゃあ僕の方が先に仲良くしてもらえるかな?」

「さぁ、どうでしょう?クリストファー先輩とまともにお話しするのも、今日が初めてですので。」

「それもそうだね。せっかく二人っきりなんだから、この機会に仲良くなってもらえるように頑張ってみようかな。」

「私には幼馴染という信頼できる友人が沢山いますから、新しい友達は募集してないんですよ。知人だとは思っていますから。」

同族嫌悪というわけではないが、アシェルはなんとなくこの軟派なクリストファーとは仲良くなれない気がしていた。
別に話をしたりは問題ないのだが、お互い張り付けた笑みの下で本音を探り合うような状態は、アシェルの思う友達とは違う気がするからだ。

貴族らしいといえば貴族らしいのだが、小さい時から実家か非公式お茶会くらいしか交友のなかったアシェルは、それがクラスメイト達の友人同士でも多々見受けられることに気付いていない。

「ふふ、振られてしまったね。」

「そもそも告白すらしてませんからね。それに私は口説かれるより口説きたいタイプですので、先輩とは合わないと思いますよ?」

にっこり微笑むアシェルの視線の先で、クリストファーが楽しそうに喉の奥でクックッと笑う。

「いいねぇ。アルフォード先輩よりはっきり口にするじゃないか。それにその眼つきが全然違うよね。」

「お褒め頂きありがとうございます。眼つきについてはアル兄様は父譲り、私は母譲りですので違って当たり前です。」

「意味が少し違うんだけどなぁ。あぁ、髪も真っすぐでキラキラ輝いて綺麗だ。」

そう言ったクリストファーは結ばれて背中に垂れている青味かかった銀髪に指を絡めた。

「私の優秀な侍女が毎日手入れをしてくれますので。」

特に髪の毛に触れたことを咎める様子のないアシェルに、クリストファーは少しにじり寄る。

「私の、ねぇ。その侍女のこと可愛がってるんだ?」

「大切な侍女ですよ、当たり前でしょう?」

クリストファーの言葉の意味は正しくは伝わらず、アシェルはイザベルを大切な侍女だと言い切った。
だがクリストファーの耳には、手籠めにして学院に連れてくるほど寵愛を与えている侍女がいるのだという意味を持って捉えられた。

「へぇ。ますます気に入ったよ。レディの扱いに慣れていそうだとは思っていたけど。」

「……それは言外に“女ったらし”だと言ってますか?」

最近は直接言われなくなったその言葉を使えば、クリストファーは笑う。

「“女ったらし”か、それもそうだね。でも僕としては“微笑みの貴公子”の方が馴染みがあるかな。いつも綺麗な微笑みを浮かべて、レディに優しく接する紳士の鏡だよね。」

「褒めていただいた、ということにしておきますね。」

「うん、褒めてるんだよ。そして……その微笑みがどう歪むのか楽しみだよね。」

「え?」

トンと肩を押され、体勢を崩したアシェルにクリストファーが覆いかぶさる。
両手は頭の上で一纏めにされ、片手で抑え込まれてしまう。

流石に微笑みを張り付けることもできずに、薄浅葱色の髪をした楽しそうに口角を上げる男をキッと睨みつけた。

「離してください。」

「うん、いいね、その表情。いつもの笑みよりそっちのほうが似合ってるよ。」

「普段からこんな表情してたら、可憐なレディ達が怖がってしまいますから。」

「そうかい?それはそれでモテると思うけどね。」

「冗談を。」

そんな話をしながらも、どうにか抜け出せないかと身をよじる。
しかしクリストファーはそこまで体格がいい訳でも背が高い訳でもないのに、上手く体重をかけられ抜け出すことができなかった。

「ふふ、抵抗しようとしてるの?いいね、ゾクゾクするよ。」

「変態ですね。私は全く楽しくないのですけど。」

「なんとでも。」

そういったクリストファーの唇がアシェルの耳を掠め、ぺろりと舐めあげられた。

咄嗟にあげそうになる声を抑え、一層強くクリストファーを睨みつける。
声をあげたら喜ばせるだけだと思ったからだ。

だがクリストファーはどちらでも良かったらしい。

「その眼も強気なところも、本当に僕好みだよ。その強気な顔をぐちゃぐちゃになるまで乱れさせて、僕なしじゃいられない身体にしてあげる。」

そう満足そうに言いながら頬や首筋を舐められる。

「悪趣味ですね。」

「そんなことないよ。それにしても……口説かれるより口説く方が、何て言ってる割には……残してるなんて妬けちゃうなぁ。」

いつの間にはだけさせられたのか、シャツで隠れていたはずの所有印をペロリと舐められた。

「っん!?」

「耳よりこっちがいいのかな?……それにしても、薬瓶で肌を傷つけないためか、瓶の圧迫が痛くないようにかい?窮屈そうだけど仕方ないのかな。」

アシェルがシャツの下に着こんでいる革製の胸つぶしに気付いたクリストファーは、見当違いなことをいいながら勝手に納得した。

(逃げるにも隙を見つけないと。)

一番いいのはある程度好きにさせておいて、気の緩んだ所で膨らんだ急所を蹴り上げるか、口でしてやると見せかけて噛みついてやるかだ。
好き勝手に舌を這わすクリストファーの下で、そんな物騒なことを考える。

「遊び慣れてるから、コレくらいじゃ反応してくれないのかな?それとも我慢してる?」

クスクスと笑うクリストファーの顔が近づいてきて、今度は唇に柔らかいものが触れた。

そのまま舌で唇はこじ開けられ、歯列をなぞるように舌が動き出す。
そのしつこいまでの口付けに諦めて噛みしめる力を抜けば、舌を絡めとられる。

好き勝手にされるのも嫌で舌を絡め返せば、驚いて見開いた瑠璃色の瞳と目が合った。

(中途半端に慣れてる分。アークの時みたいにドキドキしたり可愛いって思ったりもないし、僕の方が上手いよね。)

襲われているのはアシェルだというのに、そんなことを考えながら。激しく舌を絡めるキスの主導権を奪っていく。

(高いプライドがあるのかな。必死にやり返してもこの程度じゃ、僕には敵わないよ?)

部屋を満たす淫靡は空気と違い冷静な思考なまま。逆にクリストファーの中へ舌を押し込み、その口腔内を蹂躙する。

しばらくクチュ、ピチャと唾液がたてる水音が響いていたが、先に限界を迎えたクリストファーの顔が離れた。

「はぁ……っ、はぁ。……遊び慣れてるとは思ってたけど、ココまでなんてね。一体何人喰ったの?」

「ふふ、これくらいで遊び慣れてるなんて心外ですよ?今までよっぽど初心な子ばかり相手にしてきたんですね。」

「くっ。……本当に、性格まで僕好みだよ。これは真剣に落とさないとダメかな。」

クリストファーの余裕のない表情に、アシェルはいつもの笑みを浮かべる。

「クスクス、せいぜい頑張ってください?まぁ、この程度じゃあ僕は落ちないですけどね。」

「っ!」

挑発するようなアシェルの言葉に、サッとクリストファーの頬に朱がはしる。

そして再度貪るような激しいキスをされた。

最初の余裕がある感じではなく、年相応の。なんとしてでもアシェルを屈服させたい意思が伝わってくるような舌遣いは、簡単にアシェルのペースに巻き込まれていく。



二人の荒い息と水音が響く中。



不意にキィ、パタンという音がし、誰かが生徒会室に入ってきたことが分かる。

(そういえばここ生徒会室だった。)

瑠璃色の視線が上がり、誰が入ってきたのかを確認したことが分かるが、残念ながらアシェルがその人物を見ることは敵わない。

(アル兄様とアビー様じゃありませんように。っていうか、人が来たならやめるでしょ、普通。)

今まで以上に力強く握られた手首にそんなことを考えながら、キスを止めるつもりのないクリストファーの舌に応戦する。

カツカツと歩く足音がソファのすぐ傍で止まったのが分かるが、アシェルの視界からは外れている。

結局誰が来たんだろうと思っていると、不機嫌さを前面に押し出した低い声が響いた。

「クリストファー先輩、アシェ。ナニをしてるんですか。」

(よりによってアークかぁ。リリィの時と言い……あまり見られたくなかったかも。)

せめて会長か副会長だったらな、なんて考えているアシェルから唇を離し顔を上げたクリストファーは、アークエイドの視線を真っ向から受けながら笑う。

「アークエイド君……今イイところなんで、邪魔しないでもらえます?」

どこがイイところだよ、と心の中でアシェルは突っ込む。

「へぇ。私にはクリストファー先輩が、無理やりアシェを襲っているようにしか見えませんがね。」

両手を抑えられ馬乗りになられてるのだ。それはそうだろう。

「無理やりだなんて失礼だなぁ。現にこうやって抵抗されてないっていうのに。」

その言葉に返事を返したのはアシェルだった。

「あれ、抵抗したら解放してくれるんですか?てっきり先輩が喜ぶだけかと思ってました。」

確実に激しく抵抗したその姿すらクリストファーを興奮させるだけだったと確信をもって言えば、「仕方ないなぁ、残念。」と両手が解放され、かかっていた体重が無くなったことを感じる。

それを確認して起き上がり、声がしていたほうを見れば、明らかに怒った表情のアークエイドが立っていた。
普段は幼馴染達以外の他人に対して表情を動かさないので、それだけでかなり怒っているのが解る。

「えっと、アーク?助けてくれてありが——わっ。」

アシェルが言い終えるより早くアークエイドに抱え上げられ、荷物のように肩に乗せられてしまう。

「ちょ、降ろして。歩けるってば!」

ぽかぽかと背中を叩き抗議するが、そんなアシェルを無視したアークエイドは一言。

「本日の会議は休みます。」

とだけ言って生徒会執行部の教室を出た。

閉まった扉の奥でクリストファーは「独占欲の強い殿下がライバルかぁ。手ごわそうだな。」と一人呟いた。





怒ったままのアークエイドの肩に抱えられたまま寮に戻り、オートロックの扉を潜り、アシェルの部屋の前まで来た。

「鍵。」

短くそういうアークエイドに、何を言っても無駄だと大人しくポケットから鍵を取り出して渡せば、鍵を開けたアシェルの部屋に入る。
そして鍵とチェーンロックまでかけたのが見えた。

「ちょっと、それまでかけたらベルが入れないでしょ?」

そんな抗議も無視して、応接間より先に続く扉を開き、寝室へ入る。
アークエイドの部屋と間取りは全く一緒なので迷う気配はなかった。

そのまま乱暴に寝台に降ろされ、転がったままのアシェルの上にギシっと音を立ててアークエイドが覆いかぶさってきた。
いつの間に外したのか、眼鏡越しではないサファイアブルーの瞳に見つめられる。

その先程までの再現のような、一週間と少し前の再現のような状態にアシェルは戸惑う。
またイチャイチャしている光景にあてられてしまったのだろうか、と。

何か考えているのを感じたのか、アークエイドが短く尋ねる。

「今何を考えてた?」

「え、今?……僕がクリストファー先輩とキスしてたせいで、雰囲気にあてられたかなぁって。」

素直にそう答えると、アークエイドの眉間にしわが寄った。

「どうせそんなところだろうと思った。それで?なんで抵抗も嫌がりもせずに大人しくヤられてたんだ?あいつが好きなのか?それとも、エロいことをしてくれるなら誰でもいいのか??」

少し早口に捲し立てられ、アシェルは困惑する。

「別に先輩を好きとかないよ?今日で二回目だよ、会ったの。それに節操無しみたいにいわないでよ。先週も言ったでしょ。そういう経験の数。」

「それはあくまでも経験したものだろ?大人の余裕がある男に襲われて欲情したのか?俺の付けた印まで観られて興奮でもしたか??」

そう乱暴に言い放つアークエイドは言葉とは裏腹に、優しく所有印の付けられたはだけた白肌をなぞり、その表情を切なそうに歪める。
その印をつけた本人に所有印を撫でられたことに、ピクンとアシェルの身体が反応した。

「そんな、欲情なんてっ!」

「してないって?こんなに素直に反応しておいて??」

そういうアークエイドが指先でゆっくり鎖骨から首筋をなぞり、そのゾクゾクとする刺激にアシェルの小さな声が漏れる。

さっきまでは何ともなかったのに。やっぱりアークエイドが相手だと、雛への刷り込みのように快楽の刺激に敏感になっている気がする。

「……んぅ……ぁ、コレはちが……んんっ!?」

言葉の途中でぬるりと首筋を舐められ、指先とは違う刺激に大きな声が漏れる。

「はっ、さっきは生徒会室だったから声を抑えてたのか?」

「違う、そんなんじゃ、ひゃぁ、ダメっ。」

耳元で聞こえた言葉に、あの時はどうやって切り抜けるか考えていて気持ちよくなどなかったと伝えたいのに、チュゥと首筋に強く吸い付かれゾクゾクとした快感が背中を走る。

「へぇ、何が違うって?これだけ反応しといて。」

そう言いながらも、二つ、三つと首筋に強く吸い付かれる。
右側の首筋に付け終えたら左へ。そして少し薄くなっている所有印達の散らばる胸元へ。

革製の胸潰しギリギリの位置までつけられる。

「っ、ふっ……やぁ……ん、だめ。……ダメって、言ってるのにぃ……。」

口ではそう言いながらも、やはり全く抵抗をしないアシェルにアークエイドは小さく「クソッ。」と悪態を吐いた。
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