氷の王子様と微笑みの男装令嬢

芯夜

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第二章 王立学院中等部一年生

65 旅行代わりの討伐一人旅③

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Side:アシェル12歳 夏



「ココだ。」

ガルドがそういうと、二の森と三の森との間を流れる川の丁度真ん中くらいで、トーマがその背に抱える大きな荷物を下ろす。

その荷物にわいわいとパーティーメンバーが集まっていき、荷解きを始める。

一応ガルドは招待した手前か、森を抜けてすぐのところに立ち止まったアシェルの隣に居てくれる。
だが他のメンバー同様、周囲を警戒している気配がない。

さっさと結界を張るか、魔法使いが探査魔法サーチを使っているのであれば話は少し違ってくるのだが、そんな魔力反応もない。

「アシェルはいつもソロなのか??」

「いや、ソロで潜るのは今日が初めてだよ。一の森も二の森にも、パーティーメンバーとは結構きたけどね。」

「へぇ。それであんな急所狙いの一撃必殺みたいな戦い方してたのか。すげぇな。」

「何の話してるんだ?」

「あぁ、ジン。いや、アシェルが普段からソロなのか聞いてたんだよ。急所への一撃狙いだったから、すげぇなって思って。」

「あぁ、あれは凄かったな。良い場所に入ってた。」

「だろ?そう思うよな!」

どうやらガルドとジンはアシェルが一人で魔物を倒すために急所を狙っていて。たまたまいいタイミングで隙をついて、いい具合の場所に落下速度が乗った一撃が入った、と思っているような話しぶりだ。

その男性陣の盛り上がり様に、二人の少女もなになに?とやってくる。
サポーターであるトーマは一人でせっせとテントを張っていた。

「さっきのアシェルの戦いはすごかったよなって話だよ。」

「凄く運のいい一撃だったよなってな。」

「へぇーそんなに凄かったの?あれって。」

「確かにフォレストベアの皮は硬いもんね。私の弓じゃ弾かれるわよ。」

「おぉ、そう聞いたら私にも凄いってわかる!」

やっぱり、運よく討伐できたことになっているようだ。

「盛り上がってるところ申し訳ないけど。確かにはしにきたけど、命捨てに来たわけじゃないんだよね。それにあれは一撃じゃなくて、二撃目。一度傷をつけて脆くなったところをついただけだよ。」

事実を伝えるアシェルの言葉に、剣士二人は「「はぁ?」」と声を揃えた。

「いやいや、前に一撃入れてたとしても、あんなんで同じ所に当てれるわけねぇだろ?」

そのガルドの言葉にジンはうんうんと頷く。

「うーん。まぁ信じてもらえないのは仕方ないけど。僕らの力量差も結構あるだろうし、解らないよね。……ところで、結界はいつ張るの?」

「あ、結界はいつも仮眠を取り出す前に張るんです。申し訳ないんだけど、私の魔力量ってそんなに多くなくて……。」

申し訳なさそうなアーニャに、アシェルは首を傾げる。

「結界はスクロールを使うんでしょ?それなりの魔石を使えば、普通の野営の範囲くらいなら問題なく結界を張れると思うんだけど。」

「魔石も値が張るし、夜までにあまり魔力が残ってなくて……。結界に注ぎすぎると、次の日までに回復しきれない可能性もあって。」

そんなアーニャの言葉に、マナポーションを常備しないパーティーなのかと感じた。
魔法使いなら魔力枯渇に備えて、最低でも一本は身に着けておきたい常備薬と言っても過言ではないし、メジャーな薬なのでそこまで高いものでもない。

「そう。リーダーのガルドと魔法使いのアーニャに忠告しとくけど。戦闘で魔法を使うなら、最低でも一本はマナポーションを身につけさせておくこと。備えてないところを見ると、まだ魔力枯渇を起こしたことがないんだろうけど。戦闘中に枯渇したら、命はないと思って。君達の実力じゃ守りながら戦うのは無理だよ。戦闘中じゃなくても、魔力枯渇は動けなくなったり意識がなくなるから。」

脅すようなアシェルの言葉に、四人が息を飲むのが分かった。

左腿に付けたホルスターを外して、ダガーは二本とも『ストレージ』に仕舞いこむ。

そして空のホルスターの薬瓶入れに、ベストから取り出したマナポーションを三本突っ込んだ。
ダガーも仕舞えるようになっているホルスターの限界量だ。

「はい、これあげる。ベルトを締めて太腿に付けれるようになってるから、今すぐ着けて。これ、三本ともマナポーションだから。ここにはダガーを仕舞うこともできるからね。使ったらその分、街に戻った時に補充すること、古いものから使うこと。三か月以上経った薬は破棄して新しいものに交換すること。分かった?」

思わぬ貰い物に、アーニャがコクコクと頷き「こんな上等な物を……ありがとうございます!」と頭を下げた。
恐らくマナポーションではなく、繊細な刺繍が施されているホルスターの方のことだろう。

アーニャはトーマの建てたテントの一つに消えていく。
ローブ姿なので、流石に外でローブの裾を捲れなかったのだろう。

入れ違いにトーマがやっきた。

「皆さん、準備できましたよー。夕飯の準備をするようでしたら火を熾しますが、どうしましょうか?」

「あぁ、トーマもいいところに。さっきも言ったように魔法使いというか、誰でも魔力を使いすぎると魔力枯渇を起こすことがある。このパーティーでそのリスクが高いのはアーニャとトーマだね。」

いきなり名前を出されたトーマが「僕もですか?」と首を傾げている。

「トーマは荷物を持ち運ぶのに、身体強化に無意識に魔力を割いてると思う。で、魔力を使いすぎると、まずは身体が怠くなったり、頭が痛くなったりする。こうなったら……出来ればこうなる前に、マナポーションを飲んでほしい。即効性があるわけじゃないからね。そして更に使いすぎれば、動けなくなったり失神する。そしてないとは思うけど、それすらも超えた場合、命に関わると思って。だから魔力枯渇で倒れた人を見たら、失神する前にマナポーションを口に突っ込むこと。緊急時にローブ捲るのが恥ずかしいとか、そういうのは無しだからね?」

やはりというべきか、一般市民には魔力枯渇の恐ろしさは伝わっていないのだろう。
仲間の命がかかっているとあって、四人とも真剣に頷きながら聞いてくれる。

(魔力枯渇については、ギルドの初心者講習にいれておくべきじゃないかな。)

「まぁ。マナポーションの話は置いておいて。仮眠までに結界を張らないなら、普段はどうしてるの?」

そういって森から距離を取るために、火を熾すであろう石を積んだ場所まで歩く。

「普段?あぁ、森から出てきたやつを迎撃する感じだな。」

ガルドが何でもないことのように言う。

トーマは火打石で火を熾し始めた。

アーニャもホルスターを装着し終えたようで、テントの一つから出てくる。

「そう。じゃあやっぱり気付いてないんだね。来るよ、ウルフ、数5。」

何を言ってるんだ?みたいな顔をしたガルドとジンが目に入る。

「良いから、剣構えて。」

ぴしゃりと言い切った言葉に慌てて二人が剣を構えると、丁度森からフォレストウルフが飛び出してきた。

「ほ、本当に5匹……。」

驚きの声と共に、場の空気が緊迫したものに変わる。

「後衛二人とトーマは守ってあげるから、自由に戦って?ガルドに『攻撃力向上アタック』、『防御力向上プロテクト』。ジンに『攻撃力向上アタック』、『防御力向上プロテクト』。さぁ、特別大サービスだよ。」

何をされたか分からない二人は、戸惑いながらも駆け出していく。

魔法使いのアーニャと、最初からアシェルをキラキラ瞳で見つめてくるトーマだけが興奮気味だ。

「凄い、凄いです!まさか強化魔法を見ることができるなんて!!」

二人はウルフの攻撃が掠めたり、攻撃を与えた時のいつもとの違いに戸惑っているように見える。

「ご希望であれば、ユウナとアーニャにもかけてあげるけど?」

「それは……弓にも効果があるの?」

「もちろん。ユウナに『攻撃力向上アタック』。ついでにアーニャにも『攻撃力向上アタック』。分かってると思うけど火属性の魔法は使わないでね。籠める魔力量も普段の半分に抑えて。」

ユウナはえいっと弓を放ち、フォレストウルフの身体に刺さったことに目を輝かせた。
普段は弾かれているのだろう。

続いてアーニャが詠唱を始める。

「澄み渡る空気よ。自由を愛する風よ。空を駆け抜け切り裂く刃となれ『ウィンドカッター』!」

省略することなく紡がれたウィンドカッターは、ジンを横から狙っていたフォレストウルフに命中し、無数の深手を負わせた。

「こんなに威力が違うなんて……。」

致命傷ともいえる一撃をお見舞いした当の本人は、その光景を見て呆然と呟いている。

前衛の二人もそこそこの実力はあるようで、時間はかかったものの、大きな一撃を貰うことなく戦闘を終了させた。

「お疲れ様。ところで、その遺体はどうするの?」

今にもウルフ達の遺体に刃を通そうとしている二人に、『拘束バインド』をかけ動きを止めた。

「くぅ、また……。どうするって魔石と牙だけ抜いてあとは焼却だよ。」

「野営地なのに?」

「はぁ?野営地でも何でも、荷物を減らすためには仕方ないだろ。」

「まぁ……その状態じゃ、しょうがないか。売り物にならないもんね。もう動けるよ。悪いんだけど、結界張らせてもらってもいい?結界もない索敵もできてないんじゃ、安心して夕飯の支度もできやしない。」

返事も聞かずにアシェルは、『ストレージ』から結界スクロールと適当な魔石を取り出す。

アーニャとトーマが見学したいというので自由にさせた。

いつものように地面の四隅に模様を描きながら、二束三文の魔石を置いていく。
そして大体中央に当たる焚き火の隣に、スクロールを置いて魔力を通した。

結界が完成すると同時に、僅かに空気が変わったのが解る。

「はい、完成。もしもの為に一応、寝ずの番は置いた方がいいかもしれないけど。まぁ、よっぽどのことがない限り、ここに迷い込んでくることは無いかな。」

ウルフ達の処理を終えた二人が戻ってくるが、「あんなクズ魔石で、この広さを、一瞬で、しかもこの強度!」と感動しているアーニャを不思議そうに見ている。

『ストレージ』から一人分の食器、折り畳みのキャンプ椅子を6脚出し、小さな折り畳みテーブルと魔道ポット、ドリンクホルダーに入るコップを取り出す。
ついでに料理に使いやすそうな兎肉も一塊取り出した。

「はい、使って。珈琲か紅茶なら用意できるからね。あとトーマが料理作るんだよね?これ僕の食器とホーンラビットの肉。もう処理してあるからそのまま料理に使えるよ。あ、それとあっちの一角を使わせてもらうね。悪いけど、ご飯が出来たら呼んでくれる?」

眼を白黒させる五人に言いながら、ポットの中に『水』を満たして、保温機に魔力を通した。
食事ができるころには沸騰しているだろう。

「ありがとうございます!腕によりをかけて作りますね!」

「よろしく。」

トーマの頼もしい言葉を聞いたアシェルは、先程示した場所に移動しマナポーションを飲んだ。
それから『ストレージ』から取り出したフォレストウルフを二体、『拘束バインド』で枝に吊るしていく。

アーニャはアシェルの一挙一動に感動しているようで、近くで感激の声を上げている。

近くに『穴を掘った』あと、吊るした毛皮に『水』をかけて洗い、『クリーン』で綺麗にする。

少し待ち時間になるので、昨日の仮眠をとる直前に血抜きを終えたフォレストベアを『ストレージ』から取り出し、解体を始める。

基本的な手順はどの魔物でも変わらない。

ダガーで腹を裂き、魔石と内臓を取り出す。
フォレストベアの胆嚢は薬になるので、丁寧に取り出し瓶詰にした。

要らない内臓をポイっと穴の中に投げ捨て、討伐証明部位となる両手の真ん中の爪をはぎ取り紐で縛る。
左右の判別がつきにくいので、左右合わせて初めて一体の討伐とカウントされる。

それからダガーを滑らせ、肉から皮を剥がしていく。

その手慣れた様子にアーニャがおぉ!と声を上げながら、食い入るように迷いなく動く手元を見ている。

皮を剥ぎ終え、熊肉をブロック肉に加工するか、フォレストウルフの処理をするか迷ったところで食事ができたと声がかかった。
ウルフ二体の魔石と内臓だけ抜いて内臓を捨て、穴を『燃やし』て『埋めた』。
遺体達は『ストレージ』に収納した。



パチパチと爆ぜる焚き火の音を聞きながら、六人で食事を摂る。
それぞれ手元には温かい飲み物、乾燥野菜と兎肉のスープ、炙ったバケットが用意されている。

「いやーすげぇ豪華だな!」

「本当、お肉の入ったスープを野営で飲めるなんて思ってもみなかったわ。」

皆口々に色々なことを話している中、トーマがアシェルに話しかける。

「今日はブロードソードを使ってるんですね。前は確かロッドと弓を持っていたように思ったんですけど。」

「うん。よく見てるし、よく覚えてたね。」

「命の恩人ですからね!てっきり後衛職だと思ってたのでびっくりしました。」

トーマの言葉にメンバーたちもなんだなんだと会話に参加してくる。
仲のいいパーティーのようだ。

「あぁ、パーティーで行動する時は、僕は後衛職になるね。メンバー的に適材適所にすると、どうしてもね。」

なんせ王都組の前衛の一人は、まともに使う魔法は身体強化とストレージくらいなものだ。
それ以外の有り余って勿体ない魔力は結界スクロールに注がれるだけという、正しく宝の持ち腐れな脳筋なのだ。
結局それぞれに出来ること、得意なこと、バランスを考えると、アシェルは補助魔法を使えるサポーターのような立ち位置になってしまう。

「嘘だろ、あれで後衛職?」

「さっきフォレストウルフの血抜き見ましたけど、首だけスッパリ……あれは魔法で?」

ガルドとアーニャに「今日は剣でしか戦ってないよ。」と返す。

「アシェルのパーティーの前衛職はどれだけすごいんだよ……。」

「うーん。一番強い子で、さっきの魔法をかけてあげたガルドとジンが、二人同時に飛び掛かって戦っても勝てないかな。ちなみに僕も勝てない。圧倒的に力負けする。」

思わぬ形でトーマたちのパーティーにお世話になっているが、口から付いて出た自虐的な発言に、そう言えばストレス発散に来たんだったと思い出してしまう。

「えー、じゃあアシェルは普段どんなことしてるの?さっきの凄い魔法??」

ユウナは余程ウルフに弓が刺さったのが嬉しかったのか、満面の笑みだ。

「そうだね。僕の担当は基本的にさっきみたいな、攻撃力や防御力を増幅させる魔法を使うことかな。それで前衛がサッサと決着をつける感じ。ちなみに僕のパーティーは、全員首狙いだよ。余計な傷をつけたら毛皮の価値が落ちちゃうからね。」

アーニャがそれであんなに綺麗な、と納得している。

「あとは野営中のご飯作ったりとかかな。トーマがやってるような内容だね。僕らはテントは建てないけど、こんな椅子やテーブルは準備するよ。寝ずの番は交代でするし、その辺りはあまり他のパーティーと変わらないんじゃないかな?」

「へぇーでもなんだって普段後衛のアシェルが、一人で魔の森に来てるんだ?確かに凄い強いけど、流石に危なくねぇか??」

「あぁ、ちょっとしてみたくなってね。今夏休みで暇だし、ちょっとストレス発散しに来たんだ。パーティーで来ると僕が暴れる暇なんてないから、暴れようと思ったらソロかなって。」

笑顔で言ってのけるアシェルに、聞いたガルドの方が苦笑する。

「なんで暴れに来たのに血塗れなんだよ。本気でどっか怪我してると思ったんだからな?」

「だって首狙いだよ?頸動脈切ったら血が噴き出すんだから返り血くらい浴びるよ。クリーンって魔法で手軽に綺麗にできるけど、それをいちいち討伐するたびにかけてたら、魔力が勿体ないから。」

「なんだそれ……。血の臭いさせてたら魔物が寄ってくるだろうに。」

「ふふ、ジンも心配してくれるの?ありがとう。でも、魔物討伐に来てるんだから、向こうから来てくれるなら大歓迎だよ。まだまだ暴れたりないし、楽しみたいからね。クエスト報告の期限までに帰ればいいかなって。」

ガルドとジンがあれで?みたいな顔をしている中、アーニャが口を開く。

「夏休みってことはアシェルさんは王立学院生ですよね?トーマが貴族様って言ってたし。もしかして討伐した魔物は全てストレージの中に??ベアも二匹とも収納してましたし、さっきの奴は別個体ですよね。血抜き済みでしたもんね?魔法も無詠唱でどんどん使ってたし。本当に凄いです!技術も魔力量もすごいなんて、絶対追いつけないのは分かってても憧れちゃいます!!」

早口で熱く語るアーニャは、本当に魔法が好きなんだろうなと思う。

「うん、王立学院生だね。そうだよ、全部ストレージに入れてる。一部は自分で解体して持ち込むけど、大体ギルドで解体を依頼するかな。一度で無理な時は、残りをまた別の日に持ち込むこともあるよ。魔力さえあれば、重量や鮮度を気にしなくていいから楽なんだよね。」

「あぁ、凄いです!いいなぁ。私が使ったらあっという間に魔力が無くなっちゃいますよ。」

しゅんと肩を落としたアーニャの頭を、つい癖でよしよしと撫でてしまう。
——嫌がられなかったので、セクハラではないと思うことにする。

「そう言えば、このあと野営中にすることはある?」

「いや、飯の片付けと寝ずの番決めて警戒するくらいだな。」

「あぁ、じゃあ皆もうすることないんだね。夜の番をしてあげるから寝ていいよ?」

「いやいや、流石にそれは……。」

下手に足手まといがいるよりは寝ていてくれた方が嬉しい、という言葉はグッと飲み込み、トーマを見た。

「トーマ。皆が普段、どこでどうやって寝てるか分かる?」

「っ!わかります、任せてください!!」

トーマの瞳がキラリと輝き、自信たっぷりの返事が返ってくる。

「トーマ何言ってるんだ?」

「ふふ、トーマはいい子だね。さぁ皆、朝までゆっくり『スリープおやすみ』。」

アシェルが言い終わると同時に四人の身体が椅子に沈む。

「す、凄いです!今の魔法ですか??」

「うん。魔法で寝てもらったよ。皆5時くらいまではぐっすりだと思う。このまま寝ると気持ち悪いだろうから、身体も綺麗にしてあげようね。」

そう言って、アシェルとトーマを含めた全員に『クリーン』を掛ける。

「わぁ、すごくスッキリしました。よっぽど汚れた時じゃないとクリーンのスクロール使うなんて勿体ないので、水浴びばかりになるんですよね。」

「喜んでもらえてよかったよ。さぁ、皆の寝る場所教えてくれる?運んじゃうから。片付けが終わったらトーマも寝てね。あ、その前にコレ飲んで。」

「これは?」

「マナポーション。荷物持ちをしてる間は常に魔力を使ってるみたいだから、飲んだ方が明日スッキリするよ。普段はいいけど、何日も泊まり込みが解ってるときは用意しておいた方がいいかもね。」

「分かりました、ありがとうございます!」

素直にアシェルの言うことを受け入れたトーマは、飲み干し空になった薬瓶をアシェルに返した。

トーマの指示に従って、四人をそれぞれテントにある敷物の上に寝かせていく。

そしてアシェルが解体作業の続きをしている間に、トーマは片付けを終えて寝たようだった。

今日も懐中時計が2時を示し、そろそろ寝ようかと思った頃。結界の外に魔物の気配を感じる。

「夜這いに来たの?仕方ない子達だなぁ。いい子は寝る時間だよ。」

そう言い終わった後に立っているのは、月明かりに照らされ血濡れたアシェルだけだった。

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