氷の王子様と微笑みの男装令嬢

芯夜

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第二章 王立学院中等部一年生

72 ファンとお茶会①

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Side:アシェル12歳 秋



新学期が始まってから一ヶ月が経ち、11月に入った。

あれからアシェルはアルフォードと、ファンクラブ【シーズンズ】の協力もあり、平穏な日々を過ごしている。

シーズンズの協力とは、授業のない時間にするファンクラブ会員達とのお茶会の時間だ。

この時間にはラストダンスの申し込みもないし、可憐な女性や、時折混じる男性と共に他愛もない会話をすることができる。

それに、会話の中でそれとなく「本当はアル兄様とラストダンスを踊りたかったのに、生徒会のお仕事があるからって断られてしまったんです。」と悲しそうに伝えれば、その噂が独り歩きして、普段の申込数も激減した。
断りまくっているので母数が減っただけという可能性もあるが、それでも少しずつ平穏を取り戻しつつある。

アビゲイルを差し置いてでも後夜祭のラストダンスを一緒に踊りたいくらい、メイディー兄弟は仲が良く互いに溺愛している。と、シーズンズの作者たちに新たな燃料を投下してしまったのは言うまでもないが、アシェルとしては勝手に創作活動を行う分には実害がないので構わない。

むしろ噂が広がった後もお礼代わりも兼ねて、こうして誘われたお茶会に参加しているくらいなのだから。
クラスメイトでシーズンズ会長ティエリアの妹であるカナリア曰く、このお茶会での発言もしっかり作品の糧になっているらしい。

「本日のメンバーは、シーズンズの製作陣を揃えてみましたわ。どの方もアシェル様が気に入ってくれた作者様ばかりでしてよ。」

校舎の北側で食堂の東側に位置するサロンで、アシェルを招いたティエリアは同じテーブルに座る面々を紹介してくれる。

「まずは最初に、アシェル様が初めて部屋に来て下さった時に褒めてくれた漫画を描いた、ユーリさん。」

最初に褒めたのは、あのクーデレ具合の素晴らしい刺激的な漫画を描いた作者だ。

「お初お目にかかります。わたくしウェンディー辺境伯爵が娘、ユーリと申します。中等部二年Aクラスです。アシェル様に御目通りが叶った上に、作品も褒めて頂けて恐悦至極に存じます。」

そう言って頭をペコリと下げたのは、アイスブルーのウェーブを描いた髪の毛をハーフアップにした小柄な少女だった。
おっとりとした印象を与える柔らかい目元は、ウェンディー辺境伯爵家の直系色であるサファイアブルーの瞳だ。

「こちらこそよろしくお願いいたします、ユーリ先輩。口調もそんなに改まらないでくださいね。あの作品の人物描画は素晴らしかったです。でも、ユーリ先輩はアークとは……。」

「えぇ、アンジェラ様は叔母ですので、従姉になりますわね。でも従姉であることソレ創作活動コレは別物ですわ。実物は無愛想すぎますもの。」

アシェルの言葉を引き継いだユーリは、ころころと鈴のなるような声で笑った。
あくまでも創作物は、想像上の産物として扱っているらしい。

「次はこちらのイザーク君。アシェル様が武芸系の描写を褒めていた作者ですわ。同じクラスだしご存知かしら?」

「同じクラスですが、お話しさせていただくのは初めてですね、アシェル様。ドゥーム侯爵が息子、イザークと申します。」

そう言って頭を下げた背の高そうな少年は、確かにホームルームの時や授業中に見かけたことのある顔だった。

茶褐色の短髪に、筋肉のついた統制のとれた体躯に小麦色の肌。整った顔立ちに眼光の鋭い山吹色の瞳。
正直、ケーキを目の前にして一緒のテーブルに座っているのが違和感なくらいの人物だ。

「君が……剣術や体術の癖の描写が素晴らしいよ。イザーク君の描いている漫画を見ていると、確かに、と共感できる部分が多くてね。今度、是非剣術の授業で手合わせをお願いしたいな。あと、クラスメイトなんだから口調はもっと砕けて、様呼びはやめてくれると嬉しいな。」

アシェル達の動きの癖を見抜くことが出来るくらいに、武芸に通じているということは、実力もそれなりにあるはずだった。
その楽しめる予感のする手合わせに期待して飛び切りの笑顔を向けて言えば、イザークの頬が赤く染まる。

「アシェルさ——アシェル君。是非、こちらこそ手合わせをお願いしたいです!まさかアシェル君に作品を褒めて貰えるなんて思ってなかったので嬉しいです。」

「ふふ、イザーク君も戦うのが好きなんだね。僕もだよ。次の剣術の授業が楽しみだな。」

上機嫌に笑うアシェルに、周囲のテーブルから黄色い声が上がる。
——もしかしなくても、サロンのこのテーブル周辺は、シーズンズのファンクラブ会員達が占領しているのだろうか。

「最後がミルルさん。普通の恋愛系で褒めて頂いた作者様ね。漫画も小説も書いている方よ。」

「はじめまして、アシェル様。チェンバー侯爵が娘、ミルルと申します。中等部二年です。あぁ、憧れのアシェル様にこうしてお会いできるなんて、夢のようです。」

自己紹介を終えたミルルはその橙色の瞳を閉じ、両手を頬に染めてうっとりとしたように言う。
その動きに合わせて薄墨色のミディアムボブが揺れた。

「はじめまして。漫画も小説も結構な数を執筆しているよね。スピードもだけど、どちらも表現が素晴らしいよ。ミルル先輩は、名前的にテイル領の侯爵家かな。」

「はいっ、そうなんですよ。祖母が獣人のハーフだったので、わたくしも弟も獣人系の名付け方なんです。よくご存知でしたね。」

獣人の国、ビースノートでは当たり前の名付けの法則だが、人間の国、ヒューナイト王国ではあまり見ない名付け方だ。
大体ビースノートの流れを汲んだ名付けをするのは獣人の親を持つか、テイル領に住んでいる場合が多い。

「幼馴染にテイル公爵子息がいるからね。それに、一応知識として外国のことも学んでいるから。」

「なるほど。マリク様と、とても仲が良さそうですものね。わたくし、家同士の付き合いでマリク様にお会いしたこともありますけど、あんなに楽しそうに尻尾が揺れてるのは見たことありませんわ。」

「家同士の交流会だと、マリクも緊張してるんじゃないかな?基本的に香水の匂いとかが嫌いだから、貴族の集まりも苦手だろうし。」

むしろ、しょんぼりと耳と尻尾が垂れてそうだ、なんて想像してしまう。
アシェル達の前ではいつも大型犬のような人懐っこさなので、楽しそうに揺れてない尻尾というと、しょんぼりか、戦闘中のピンと立ってるかのイメージだ。

「あら、それだけじゃないと思いますわよ?いつもアシェル様からマリク様の匂いがしますもの。人族には解らないかもしれませんけど、鼻の良い獣人の血が入っている者は大体気付いてますわよ。多分鼻が悪くても、獣人の身体的特徴が出てれば分かるんじゃないかしら。それくらい匂いが示してますのよ、アシェル様がマリク様のお気に入りだって。」

悪戯っぽく笑って言うミルルの言葉に、残る三人の目がキラーンと光った気がした。

そういえば、マリクが獣人にちょっかいを掛けられないようにマーキングしてくれているんだよなぁと思い出す。
毎朝の恒例行事になっていて、毎日人懐っこい愛犬を愛でている気分だった。

「確かクラスのラビちゃんから守ってくれてるらしいよ。っていうか、ミルル先輩は獣人の特徴が出てなくても解るんですね。」

「祖母が犬系獣人のハーフですのよ。」

「クラスのラビちゃんって、ビエナート伯子息だよな。マリク様が牽制してるなら大丈夫だろうけど、俺も気にしておきますね。」

クラスのラビちゃんで誰か分かったのだろう。教室に兎耳持ちは一人しかいない。

クラスメイトのイザークがぐっと握りこぶしを作りながら言う。長袖の白シャツの下なのに力こぶがしっかり分かる。羨ましいことこの上ない。

「まぁまぁ、素晴らしい情報ですわ。これは是非、リサーチに行かなくてはなりませんわね。」

「ふふ、新しいユーリさんの作品が楽しみね。」

ユーリとティエリアは楽しそうに笑っている。
それはマリク相手の作品が出来るのか。それともラビちゃんこと、ビエナート伯子息との作品が出来るのだろうか。どちらも出来る可能性もある。

「ティエリア先輩。今日は私の好きな作者様を集めたって言ってますけど、年齢や家格も考慮してくださってますよね?ありがとうございます。」

確かに褒めた作者達だが、他にも褒めた作品はある。
その中でわざわざ卒業後、公爵家と交流を持ってもおかしくない家格の者ばかり。それも全員中等部の学生だ。
ティエリアはその辺りの気が利く方なので、偶然ではなく狙ったとしか思えなかった。

「あら、アシェル様にはお見通しですのね。えぇ、わたくしは今年で卒業ですし、できればシーズンズで仲のいい方が、カナ以外もいたほうがいいかと思いまして。それに彼女達なら喜んでになってくれますわよ。嫉妬されても、上級生でもそうそう手は出せませんしね。」

とは、あのラストダンスのお誘い祭りのことを言っているのだろうか。

「……もしかして、私が不機嫌だったのはお見通しですか?恥ずかしいな。」

「うふふ、伊達に貴族をやってませんわよ。ご安心くださいな、気付いたのは一部の人間だけでしょうから。皆アシェル様の綺麗なご尊顔に見惚れるばかりで、全く気付いておりませんでしたから。」

ティエリアはそう言うが、その一部の人間に入ってるのがこのメンバーなんだろうなとも思う。
そうでなければ、ティエリアがだと紹介してくれるわけがない。

「ティエリア先輩には頭が上がりませんね。今日はどんなお話を聞かせてもらえるんですか?」

いつもならば主催者が参加者の紹介をして、女子生徒の話に笑顔で相槌を打っていれば終わるのだが、今日集められたメンバーの趣旨とは違うように感じる。

「今日は是非、アシェル様に質問に答えて頂きたいと思うのだけれど、良いかしら?もちろん、答えたくない質問は拒否していただいて構いませんわ。」

「なるほど、今日は質問会だね。作品の糧になるのかな?いいよ、私で答えられることであれば。」

ティエリアの言葉に了承を返せば、作家たちのボルテージが上がったのを感じる。

びしっと手を挙げた人物の名前を、ティエリアが呼ぶ。口々に質問を飛ばすのではなく、議会形式のようだ。
統率の取れている【シーズンズ】らしい。

「アシェル君はいつもの皆様と手合わせをする時、お互い相手のことを分かっているような動きをしますよね?アシェル君は剣だけ、エラート様は全て、他の方々はそれぞれ一つ、ないし二つ授業を取ってるけど、総合戦だと誰が強いんです?」

イザークの質問に、アシェルは頭を悩ませる。

「そうだね……総合戦、のどこに重きを置くかで変わってくると思うよ。身体強化のみの、授業と同じルールに則っての対人戦なら、間違いなくエトが一番だね。彼は騎士団仕込みだから、騎士道に則った対人戦にはものすごく強い。ただ、そこのルールを無くせば、アークもマリクもいい線行くと思うよ。エトとは戦い方の基本が違うんだ。イザーク君ならなんとなくわかると思うけれど。」

エラートの戦い方は、騎士道に則った誰かを守る剣や動きだ。
対してアークエイドやマリクの動きは、環境などの取れる手段も用いて貪欲に勝ちを取りに行く戦い方だ。
ルール無用となれば、エラートの方が負ける可能性も十分に出てくる。

「なるほど。授業と同じルールなら、授業での結果がそのまま反映される感じだな。じゃあ、魔法だけや、魔法込みだとどうなる?まぁ、派手にドンパチすることなんてないから、予測で良いんだけど。」

「うーん。魔法も使うとかぁ。それもどこまで使っていいのかで、かなり変わってくるかな。僕らの中で攻撃系属性魔法一発の威力が一番デカいのは、間違いなくリリィだよ。その代わり魔力消費量も多いけどね。魔力の扱いが上手くて、攻撃系属性魔法の威力が高いのはノアかな。魔法も武術もバランスよく使うのならアークだね。僕は攻撃魔法って言うよりも無属性魔法の方が得意だから。正々堂々というより、搦め手の方が得意なんだよね。だから、模擬戦向きじゃないんだ。」

「ふむふむ、なるほど。ちなみに、魔法が一番苦手なのは?」

「それは間違いなくエトだね。身体強化とストレージしかまともに使えないなんて、膨大な魔力の持ち腐れだよ。」

苦笑したアシェルに、イザークが「カドラス侯爵家は、コンラート公爵家の血が濃いですからね。」と苦笑した。

「ありがとうございます。」

「では、次はミルルさんね。」

イザークの質問が終わったと見たミルルが、びしっと手を挙げ、進行役のティエリアが名前を口にする。

「アシェル様は好みの女性像はありますか?小柄なほうがいいとか、グラマラスなほうがいいとか。あと、告白する時のシチュエーションならどんな感じにしますか!?恋人には尽くしたいタイプですか?尽くされたいタイプですか??」

ミルルの口から矢継ぎ早に跳び出してくる質問に、アシェルは一つずつ返事を返す。

「まず好みの女性像だよね。特に気にしたことはないけれど……そうだね、腕の中にすっぽり納まるくらいの子が好きかな。ベルくらいか、それより小さいと抱き締めた時ちょうど良いんだ。でも、どんな女性でも可憐で可愛いと思うよ。笑顔の女性は、それぞれ違った魅力を持つ花々を愛でているようで好きなんだ。」

アシェルのセリフに周囲で「キャー、アシェル様が好きですって!!」と言う黄色い声が上がるが、無視して話を続ける。

「告白のシチュエーションか……。ロマンチックなことに越したことはないんだろうけど、雰囲気を狙ってグズグズして、他の人に取られちゃうのも嫌だからね。例えば……。」

そう言って椅子から立ち上がったアシェルは、ミルルの後ろに立ってその首に腕を回す。
そして耳元に唇を近づけ囁いた。
アシェルが瞳を上げた先にはイザークが座っている。

「君の瞳が他のヤツを映しているのは悲しいな。私の方が君のことを好きなのに……ねぇ、私のモノになってよ。他のヤツなんて眼に入らないくらい、溺れさせてあげるからさ。」

切ない響きを持った声で言い、そのまま寄せた耳元にチュッとリップ音を立ててキスをする。
それからゆっくり指で、そっと髪に触れながらその腕を離した。

キャー!!と先程までにはない熱量の黄色い声がサロンを埋め尽くす。
遠くの方で、事情を知らない生徒達の困惑している姿が目に入った。

アシェル渾身のサービスを受けたミルルは、顔を真っ赤にして口をパクパクしている。

「ふふ、照れてるミルル先輩も可愛いですね。どうです?質問の答えにはなりましたかね。あと私は尽くされるよりも、恋人はたっぷり甘やかして溶かしてあげたいタイプです。可愛い顔を見るのが好きですから。」

座っていた席に戻り、にっこりと微笑む。
その笑顔に、ハッとミルルが我に返った。

「あぁ、アシェル様!素晴らしいです、創作意欲が沸きすぎます!!まさかこの身に体験させて頂けるなんて!!素晴らしいトキメキですわっ。申し訳ありません。今すぐ!この感動を残しておきたいので、メモを取ることをお許しくださいませ。」

言うが早いか、『ストレージ』からノートと万年筆を取り出したミルルは、凄い勢いで手を動かしている。
どうやらネタ帳のようで、文字もイラストも思うがままに書き連ねているようだ。

「あらあら、いくらアシェル様が愛でる対象とは言え、ミルルさんが羨ましいわね。さぁ、最後はユーリさんね。」

推しは愛でるもので触れるものではない、を掲げているティエリアが羨ましがるとは思わなかった。
ティエリアにやったらやったで頬を染めてくれるのではなく、幼馴染の誰か相手に目の前でやってくれと言われそうな気がする。

「わたくしからの質問はアシェル様の魔力操作の精度や、使用できる魔法について色々お伺いしたいですわ。今度、かなりハードな内容のものを検討しておりますの。無表情な殿下が泣いて懇願するまで調教……素晴らしいと思いませんか。」

ユーリは可愛らしい笑顔と、鈴のなるような声でえげつないことをさらりと口にした。
作品の傾向からなんとなく分かっていたが、ユーリはBLでもノーマルな展開よりマニアックでアブノーマルな展開を好む傾向にあるらしい。

この質問に答えたら一体どんな作品が出来上がるのか。
楽しみでもあり、少し怖くもある。

「えっと……そういう系に使える魔法を、どれくらいの精度や強度で使えるかって事で良いんだよね?」

さすがに“調教”とは口に出せず濁したアシェルに、ユーリは「そうです。意味がちゃんと伝わったようで安心しましたわ。アシェル様が調教するとしたら、どんな手段を取りますか?」と、口調も表情も変わらないのに、その瞳には好奇心いっぱいだと出ている。

「どんな手段か……。とりあえず、縛り上げるのは拘束バインドで事足りるよね。あれは術者の魔力が流れ続けるから、アークにだって解除キャンセル出来ないし、させるつもりもないし。魔力操作で僕に勝てる幼馴染はいないと自負しているよ。あと、バインドは結構汎用性が高いんだ。少ない魔力消費量で色々なことが出来て便利だよ。」

どこの言葉に反応したのか解らないが、またもや周囲で黄色い声が上がる。
こんなアブノーマルな話でも盛り上がるくらい娯楽に飢えているのだろうか。

「そこから先は……痛めつけたいのか、グズグズに蕩けさせたいのかで変わるんじゃないかな?痛めつけて心を折りたいのなら、ウィンドカッターでじわじわ傷をつけながら血を失う感覚に恐怖させるとか、水責めでギリギリいっぱいまで窒息でもいいし、毒薬系を使って死ぬほど辛い目に合わせながら、解毒して生かしておく感じとか。あぁ、身体の自由を奪うだけなら、拘束バインドを使わなくても、麻痺毒でも対応できるよ。」

なんともないことのように痛めつけるための手段を述べるアシェルに、イザークだけが一人身体を震わせながら眼を白黒させている。イザークには刺激が強すぎる話なようだ。
それに対して、女性陣は期待で瞳がキラキラと輝いている。

「それで、快楽堕ちコースでしたらどうしますの?」

そう聞くユーリの声も、どこか興奮したような色が混じっている。
サロンで真昼間からする話じゃないよなぁなんて考えながら、周囲はほとんどファンクラブ会員のようだから別にいいか、という結論に辿り着く。

「まずはテクニックだけで、絶対に私に勝てないって身体に教え込むコース。しっかり可愛がってあげた後に、休む間もなくずっともどかしいくらいの刺激だけ与え続けたらどうなるだろうね。ずっとイイばかりより効果あると思うんだ。」

クスリと笑うアシェルに、ユーリまで『ストレージ』からノートと万年筆を取り出し、何かを書き始める。

「もしあらゆるものを駆使してだったら……私らしいのは漬けとかかな。とびっきり気持ち良くなれる薬を投与するよ。私特製のだから、効果は保証するし、後遺症もなければ法にも引っかからないよ。」

あの凶悪な媚薬で与えられる刺激に耐えられる人間がいるのなら、見てみたいと本気で思う。
あの最高に心が躍った研究対象で作った媚薬は、飲み口から効果までとにかく凶悪すぎた。
あんなものを世に出したら、性犯罪者が量産されてしまう。

「それは……それは素晴らしいですわ。なるほど、そうですわね。アシェル様はメイディー公爵家の方ですもの。お薬にも精通してますし、ご自身で望むものを作れますものね。」

ミルルのようなハイテンションと呼べる口調ではないが、ユーリも会話の内容に創作意欲が刺激されたのか、言葉の端々に興奮の色が隠しきれてなかった。

ユーリの「あの口ぶりは該当のを既にお持ちですわね。ふふふ。」と妖しく笑う声は、周囲の黄色い声でかき消された。

この後は、質問会と言うより色々な作品の感想を語り合う会に発展した。
リリアーデと共に時々ティエリアかカナリアの部屋で読ませてもらっているので、アシェルにも分かる内容だった。
相槌を打つだけがほとんどだが、心の中ではしっかり返事をしたり語っていたのは、アシェルだけが知っている。
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