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第二章 王立学院中等部一年生
75 学院祭初日②
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Side:アシェル13歳 冬
こんな感じで、アシェルと幼馴染達が女子生徒と、極まれにカップルと思しきペアを案内している中。
圧倒的に男子生徒に人気があるのがシオンと、兎耳のビエナート伯子息だ。
二人とも己の可愛さを十分に分かって武器にしているタイプなので、アシェル達に黄色い声が上がるのに対して、少しだけ野太い歓声が一部で上がっている。
「わー、ご主人様のとっても美味しそう!え、僕に食べさせてくれるんですか?嬉しいなぁ、あーん。……んぐ、んっ……うん、真っ白なのが甘くて、とっても美味しいですね。僕コレ好きだなぁ。……ふふ、どうしたんですか、ご主人様。顔が赤いですよ?」
シオンはどうやらお客様にケーキを貰って、そのまま揶揄って遊んでいるらしい。
彼なりのサービスだろうか。
そんなやり取りが聞こえたのか、アシェルが案内した女子生徒達も、サーブを終えたアシェルを引き留めた。
そしてフォークに刺したケーキをアシェルに食べさせようとしてくる姿に、にっこりと微笑みを浮かべて答える。
生憎と、お兄様達以外から食べさせてもらう趣味はない。
「私は食べさせてもらうよりも、お嬢様に食べて頂きたいな。私がその可愛らしいお口へ、運ばせていただいても良いですか?」
フォークを受け取って、一口大のケーキを恥じらいながら開かれる口に運ぶ。
ぱくん、とフォークを咥えたのを見て、少し斜め上に引き上げるようにしてフォークを引き抜く。こうすればスプーンやフォークに余分なものが残らず、綺麗に無理なく食べさせることが出来るのだ。
「どうですか、美味しいですか?ふふ、お嬢様は小さなお口なんですね、可愛らしい。クリームが付いてますよ……ん、甘くておいしいですね。」
恥じらいできちんと開き切らなかった唇についたクリームを、そっと指ですくいぺろりと舐める。
歓声が大きくなったのは言うまでもない。
それから胸元のポケットチーフを差し出す。
「これで拭いてください。——あとで紅を直すのを忘れずに。……では、ごゆっくりと。」
クスリと小さく耳元で囁けば、何を連想したのか、ただでさえ赤かった顔に更に赤みが増す。
食事やお茶をしたあとに紅を直すのは当たり前の行為だが、それ以外にも口付けの後に直すこともある。恐らく後者の連想をしたであろう女子生徒を置いて、厨房に行く。
ポケットチーフの補充をして、壁際に戻った。
「ねーねー、さっきアシェは何て言ったのー?」
「ん?あぁ、紅を直すのを忘れないでねって。食事なんかで口紅って落ちちゃうでしょ。」
尋ねてくるマリクにそう答えれば「なるほどー。」と返ってくる。
その横でアークエイドが口を開いた。
「本当にその意味で言ったか怪しいところだがな。」
「酷いな。僕はそのつもりだよ。どう聞こえたかは解らないけど。」
悪戯っぽく笑ったアシェルに、アークエイドは小さな溜め息を吐いた。
受付で呼び出しの旗が上がり、アークエイドは接客に行く。
「ねーアシェー。俺、そろそろ限界かもー。撫でてーって言ったら怒るー?」
着替えてすぐに髪型のセットが崩れることを指摘したのを気にしているのか、伺うようにマリクが聞いてくる。
「怒らないよ、おいで。髪型くらい、担当の子が直してくれるよ。」
「アシェに撫でてもらうの、気持ちーいいんだよね。えへへ。」
許可を出せば、待ってましたとばかりに青灰色の頭が胸に飛び込んでくる。
ずっと緊張状態だった尻尾がぶんぶんと揺れ出す。
マリクの頭を撫でながら入り口の受付を見ると、何故かアシェルとマリクの担当補佐役が、お客様をテーブルまでエスコートしている。
そっとリリアーデを盗み見れば、してやったりと言う満面の笑みでこちらを見ていた。
(マリクがこうなるのも織り込み済みってことか。他のクラスメイトの動きもスムーズすぎるもんね。)
恐らく今入ってきたのは、アシェルとマリクのエスコート希望だが、本人にエスコートされるより、マリクをもふもふしているアシェルとの絡みを観たい人達と言うことだ。
しかもアシェル達が個別に案内しなくていい分、ハイペースで案内されていく。
これはこれでサボりにならないのならいいかと思う。
せっかく監督達公認なら、マリクの毛並みを堪能させて貰おう。
「マリクの毛が手触り良いから、撫でるのが楽しいんだよ。耳もピクピク動いて可愛いよね。人間の耳もあるのは不思議だけど。」
わしわしとマリクの頭や三角耳を撫でながら、長年の素朴な疑問を口にする。
いつもマリクの少し長い髪は、片耳にかけてあるアシメントリーな髪型だ。その耳は人間の耳だった。
「あーこれ?なんか人化する時に、人族の姿を取るから絶対ついてくるよー。いちおー、人の耳に集中すれば使えるけど頭の耳より不便だから、獣人はわざわざそっち使ったりしないと思うー。あ、でも、周りがうるさいときには便利かもー。頭の耳じゃうるさすぎても、人の耳なら耐えられることもあるんだよねー。」
「へぇ、つまりどっちに集中するかで聞こえ方が変わるんだ……面白い構造だね……。それって魔力通して解るかな?もし解るんだったら、是非今度どう違うのか見せてよ。すっごく気になる。」
マリクが人間と獣人のハーフだから人間の耳が付いているのだと思っていたが、純粋な獣人でも人化した時には漏れなくついてくるらしい。
では、ただの飾りなのかと言えば、意識すれば人間の耳まで使えるとは。その仕組みや構造がものすごく気になる。
生物学の授業では、人間の身体の構造しか教えてくれないのだ。人化した獣人はほぼ人間と一緒とだけ聞いている。
「良かったー。アシェのことだから、後で直してあげるし痛くしないからかいぼーさせてーって言うと思ってた。痛くないならいつでもいーよー。アシェいー匂いだった、ありがとー。」
満足したのか、胸元で撫でるのを要求していた三角耳が離れていく。
180cmに届こうかという背丈のマリクがしっかり立つと、アシェルは見上げなくてはいけない。15cmの身長差はデカい。
アシェル達の絡みで一気に席が埋まったからなのか、気付けば執事役全員が壁際に戻っていた。
「解剖はやって元に戻せなかったらって思うと怖いでしょ?痛みも意識も無くしてあげれるし、なんなら治す自信もあるけど。魔力を通せば解るならその方が身体に優しいし。それに、幼馴染の身体にメス入れたくないよ。さすがにそこまで酷いこと言わないよ?」
「それがもし、犯罪者とかで遠慮が要らない知らない相手なら?」
「躊躇う必要はどこにもないよね。」
エラートの問いに、すぐに返事をする。
それに対する幼馴染達の、やっぱりな、という声が聞こえてくる。
堂々と解剖できる機会があれば、薬の実用の確認もしながら存分に知識欲を満たしたい。
知らないことを知るのは楽しいのだ。
「アシェに魔力を通してもらうなら、部屋から出ない日か寝る前の方がいいぞ。」
「なんでー?」
「しばらく魔力回路が上手く働かなくなる。アシェの魔力が混じってて、魔力を練るにも邪魔される感じだった。」
アークエイドはレストランの媚薬事件のことを言っているのだろう。
あの時はたっぷりアシェルの魔力を、アークエイドの魔力を無視して流し込んだのだ。
不快感とは別に、マナポーションで自身の魔力がアシェルの魔力を抑え込むまで、魔法が上手く使えなかったはずだ。
「そうか?僕が魔力譲渡を受けた時は、入ってきて流れる違和感と言うか、不快感はあったけど。まぁ、元が魔力枯渇を起こしてたせいかもしれないけど、魔力が練れない感じはなかったぞ。普通に身体強化も使えたし。」
デュークはこの前の、結界学の衝動暴発事件のことを言っているようだ。
あの時もアシェルの魔力をたっぷり流したので、入ってくる不快感は強かっただろうが、魔法が使えないということは無かったはずだ。
意見が食い違うのはなんで?という幼馴染達の視線に、アシェルは答える。
「アークのは、僕の魔力を馴染ませずに好き勝手に中で暴れた状態。最初は暴れた魔力の回収もしてたけど、後半はそれじゃ間に合わなくて暴れっぱなしだったから、回復に時間がかかってるんだ。対してデュークの場合、デュークの魔力と馴染むように、デュークの魔力の流れにピッタリ合わせて流れる量を増やした状態。感覚としては、マナポーションで回復する時間を早送りした感じだと思ってもらえたら。」
「なんか違うって事だけ理解した。」
「俺は多分、分かったと思うー。俺の身体診るなら、アークみたいになるってことだねー。」
「ノアは分かったか?」
「感覚は分からないけど理屈は。トワは?」
「んーなんとなく?」
それぞれが口々に感想を言う中、席を立つ客が増えてきた。休憩時間は終わりのようだ。
それに合わせてまた受付から呼び出し旗があがり、アシェル達はそれぞれお客様の対応に出向くのだった。
こうして王立学院祭初日の執事喫茶は、開始直後から常に満員御礼だった。
「皆様、大変申し訳ありませんが、本日の執事喫茶は経った今受け付けた方までになりますわ。今並んでいる方たちは明日の整理券を配るので、明日も来て下さる方は忘れずに受け取ってくださいね。」
廊下でカナリアの声が響く。
少ししてお客様が全て引き払った教室で、今日を締める。
「皆様、お疲れさまでした。まさかの4時間で完売でしたわね。一人一つ、サンドイッチを用意しているので、お昼代わりに食べていって下さいね。この後は自由時間ですわ。でも、執事役の皆様は着替えては駄目ですわよ。そのまま校内を楽しんでくださいね。では、解散!」
こうして13時過ぎには完売となったのだった。
わぁぁとクラスメイト達は口々にお疲れ様と言い合いながら、恐らく忙しくても片手間に摘まめるようにだろう。個別に包んで用意してくれていたサンドイッチを手にする。
アシェル達もサンドイッチを食べ、少しだけお腹を満たした。
こんな感じで、アシェルと幼馴染達が女子生徒と、極まれにカップルと思しきペアを案内している中。
圧倒的に男子生徒に人気があるのがシオンと、兎耳のビエナート伯子息だ。
二人とも己の可愛さを十分に分かって武器にしているタイプなので、アシェル達に黄色い声が上がるのに対して、少しだけ野太い歓声が一部で上がっている。
「わー、ご主人様のとっても美味しそう!え、僕に食べさせてくれるんですか?嬉しいなぁ、あーん。……んぐ、んっ……うん、真っ白なのが甘くて、とっても美味しいですね。僕コレ好きだなぁ。……ふふ、どうしたんですか、ご主人様。顔が赤いですよ?」
シオンはどうやらお客様にケーキを貰って、そのまま揶揄って遊んでいるらしい。
彼なりのサービスだろうか。
そんなやり取りが聞こえたのか、アシェルが案内した女子生徒達も、サーブを終えたアシェルを引き留めた。
そしてフォークに刺したケーキをアシェルに食べさせようとしてくる姿に、にっこりと微笑みを浮かべて答える。
生憎と、お兄様達以外から食べさせてもらう趣味はない。
「私は食べさせてもらうよりも、お嬢様に食べて頂きたいな。私がその可愛らしいお口へ、運ばせていただいても良いですか?」
フォークを受け取って、一口大のケーキを恥じらいながら開かれる口に運ぶ。
ぱくん、とフォークを咥えたのを見て、少し斜め上に引き上げるようにしてフォークを引き抜く。こうすればスプーンやフォークに余分なものが残らず、綺麗に無理なく食べさせることが出来るのだ。
「どうですか、美味しいですか?ふふ、お嬢様は小さなお口なんですね、可愛らしい。クリームが付いてますよ……ん、甘くておいしいですね。」
恥じらいできちんと開き切らなかった唇についたクリームを、そっと指ですくいぺろりと舐める。
歓声が大きくなったのは言うまでもない。
それから胸元のポケットチーフを差し出す。
「これで拭いてください。——あとで紅を直すのを忘れずに。……では、ごゆっくりと。」
クスリと小さく耳元で囁けば、何を連想したのか、ただでさえ赤かった顔に更に赤みが増す。
食事やお茶をしたあとに紅を直すのは当たり前の行為だが、それ以外にも口付けの後に直すこともある。恐らく後者の連想をしたであろう女子生徒を置いて、厨房に行く。
ポケットチーフの補充をして、壁際に戻った。
「ねーねー、さっきアシェは何て言ったのー?」
「ん?あぁ、紅を直すのを忘れないでねって。食事なんかで口紅って落ちちゃうでしょ。」
尋ねてくるマリクにそう答えれば「なるほどー。」と返ってくる。
その横でアークエイドが口を開いた。
「本当にその意味で言ったか怪しいところだがな。」
「酷いな。僕はそのつもりだよ。どう聞こえたかは解らないけど。」
悪戯っぽく笑ったアシェルに、アークエイドは小さな溜め息を吐いた。
受付で呼び出しの旗が上がり、アークエイドは接客に行く。
「ねーアシェー。俺、そろそろ限界かもー。撫でてーって言ったら怒るー?」
着替えてすぐに髪型のセットが崩れることを指摘したのを気にしているのか、伺うようにマリクが聞いてくる。
「怒らないよ、おいで。髪型くらい、担当の子が直してくれるよ。」
「アシェに撫でてもらうの、気持ちーいいんだよね。えへへ。」
許可を出せば、待ってましたとばかりに青灰色の頭が胸に飛び込んでくる。
ずっと緊張状態だった尻尾がぶんぶんと揺れ出す。
マリクの頭を撫でながら入り口の受付を見ると、何故かアシェルとマリクの担当補佐役が、お客様をテーブルまでエスコートしている。
そっとリリアーデを盗み見れば、してやったりと言う満面の笑みでこちらを見ていた。
(マリクがこうなるのも織り込み済みってことか。他のクラスメイトの動きもスムーズすぎるもんね。)
恐らく今入ってきたのは、アシェルとマリクのエスコート希望だが、本人にエスコートされるより、マリクをもふもふしているアシェルとの絡みを観たい人達と言うことだ。
しかもアシェル達が個別に案内しなくていい分、ハイペースで案内されていく。
これはこれでサボりにならないのならいいかと思う。
せっかく監督達公認なら、マリクの毛並みを堪能させて貰おう。
「マリクの毛が手触り良いから、撫でるのが楽しいんだよ。耳もピクピク動いて可愛いよね。人間の耳もあるのは不思議だけど。」
わしわしとマリクの頭や三角耳を撫でながら、長年の素朴な疑問を口にする。
いつもマリクの少し長い髪は、片耳にかけてあるアシメントリーな髪型だ。その耳は人間の耳だった。
「あーこれ?なんか人化する時に、人族の姿を取るから絶対ついてくるよー。いちおー、人の耳に集中すれば使えるけど頭の耳より不便だから、獣人はわざわざそっち使ったりしないと思うー。あ、でも、周りがうるさいときには便利かもー。頭の耳じゃうるさすぎても、人の耳なら耐えられることもあるんだよねー。」
「へぇ、つまりどっちに集中するかで聞こえ方が変わるんだ……面白い構造だね……。それって魔力通して解るかな?もし解るんだったら、是非今度どう違うのか見せてよ。すっごく気になる。」
マリクが人間と獣人のハーフだから人間の耳が付いているのだと思っていたが、純粋な獣人でも人化した時には漏れなくついてくるらしい。
では、ただの飾りなのかと言えば、意識すれば人間の耳まで使えるとは。その仕組みや構造がものすごく気になる。
生物学の授業では、人間の身体の構造しか教えてくれないのだ。人化した獣人はほぼ人間と一緒とだけ聞いている。
「良かったー。アシェのことだから、後で直してあげるし痛くしないからかいぼーさせてーって言うと思ってた。痛くないならいつでもいーよー。アシェいー匂いだった、ありがとー。」
満足したのか、胸元で撫でるのを要求していた三角耳が離れていく。
180cmに届こうかという背丈のマリクがしっかり立つと、アシェルは見上げなくてはいけない。15cmの身長差はデカい。
アシェル達の絡みで一気に席が埋まったからなのか、気付けば執事役全員が壁際に戻っていた。
「解剖はやって元に戻せなかったらって思うと怖いでしょ?痛みも意識も無くしてあげれるし、なんなら治す自信もあるけど。魔力を通せば解るならその方が身体に優しいし。それに、幼馴染の身体にメス入れたくないよ。さすがにそこまで酷いこと言わないよ?」
「それがもし、犯罪者とかで遠慮が要らない知らない相手なら?」
「躊躇う必要はどこにもないよね。」
エラートの問いに、すぐに返事をする。
それに対する幼馴染達の、やっぱりな、という声が聞こえてくる。
堂々と解剖できる機会があれば、薬の実用の確認もしながら存分に知識欲を満たしたい。
知らないことを知るのは楽しいのだ。
「アシェに魔力を通してもらうなら、部屋から出ない日か寝る前の方がいいぞ。」
「なんでー?」
「しばらく魔力回路が上手く働かなくなる。アシェの魔力が混じってて、魔力を練るにも邪魔される感じだった。」
アークエイドはレストランの媚薬事件のことを言っているのだろう。
あの時はたっぷりアシェルの魔力を、アークエイドの魔力を無視して流し込んだのだ。
不快感とは別に、マナポーションで自身の魔力がアシェルの魔力を抑え込むまで、魔法が上手く使えなかったはずだ。
「そうか?僕が魔力譲渡を受けた時は、入ってきて流れる違和感と言うか、不快感はあったけど。まぁ、元が魔力枯渇を起こしてたせいかもしれないけど、魔力が練れない感じはなかったぞ。普通に身体強化も使えたし。」
デュークはこの前の、結界学の衝動暴発事件のことを言っているようだ。
あの時もアシェルの魔力をたっぷり流したので、入ってくる不快感は強かっただろうが、魔法が使えないということは無かったはずだ。
意見が食い違うのはなんで?という幼馴染達の視線に、アシェルは答える。
「アークのは、僕の魔力を馴染ませずに好き勝手に中で暴れた状態。最初は暴れた魔力の回収もしてたけど、後半はそれじゃ間に合わなくて暴れっぱなしだったから、回復に時間がかかってるんだ。対してデュークの場合、デュークの魔力と馴染むように、デュークの魔力の流れにピッタリ合わせて流れる量を増やした状態。感覚としては、マナポーションで回復する時間を早送りした感じだと思ってもらえたら。」
「なんか違うって事だけ理解した。」
「俺は多分、分かったと思うー。俺の身体診るなら、アークみたいになるってことだねー。」
「ノアは分かったか?」
「感覚は分からないけど理屈は。トワは?」
「んーなんとなく?」
それぞれが口々に感想を言う中、席を立つ客が増えてきた。休憩時間は終わりのようだ。
それに合わせてまた受付から呼び出し旗があがり、アシェル達はそれぞれお客様の対応に出向くのだった。
こうして王立学院祭初日の執事喫茶は、開始直後から常に満員御礼だった。
「皆様、大変申し訳ありませんが、本日の執事喫茶は経った今受け付けた方までになりますわ。今並んでいる方たちは明日の整理券を配るので、明日も来て下さる方は忘れずに受け取ってくださいね。」
廊下でカナリアの声が響く。
少ししてお客様が全て引き払った教室で、今日を締める。
「皆様、お疲れさまでした。まさかの4時間で完売でしたわね。一人一つ、サンドイッチを用意しているので、お昼代わりに食べていって下さいね。この後は自由時間ですわ。でも、執事役の皆様は着替えては駄目ですわよ。そのまま校内を楽しんでくださいね。では、解散!」
こうして13時過ぎには完売となったのだった。
わぁぁとクラスメイト達は口々にお疲れ様と言い合いながら、恐らく忙しくても片手間に摘まめるようにだろう。個別に包んで用意してくれていたサンドイッチを手にする。
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