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第三章 王立学院中等部二年生
130 記憶持ちの相談①
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Side:アシェル13歳 春
一週間で出店許可証関係の魔道具の雛型を作り上げ、無事に納品を済ませたアシェルは、王宮にあるアークエイドの私室を訪れていた。
「ねぇ。本当にアン兄様に相談しなきゃダメ?それに、邸や寮じゃダメ??僕がここにいるの、すっごい場違いなんだけど。」
さすが王子様の私室と言うべきか、広い私室の中の調度品の一つ一つや実用的な家具まで、どれも高級品が揃っている。
商業ギルドのVIP室など目じゃないくらいの、品の良い高級品が目白押しだ。
アシェルのメイディー邸の私室など、家具や布団などは高価なものだが、調度品には興味が無いのでかなりシンプルな部屋だ。
必要な家具だけしか置いてないので、花瓶の一つすらない。
「別に、前にも一度来た事があるだろ。それに俺の私室の中なら、護衛も付かないし人払いも簡単だ。普段から、あまり人を入れないようにしている。」
アークエイドが言う通り、こんなに広い私室なのに侍女や侍従、騎士の姿はない。
ふかふかのソファに座っている二人の目の前にある紅茶は、アークエイドが手ずから淹れてくれたものだ。
しっかりアークエイドのものは珈琲である。
王子様の私室で、わざわざアシェルのためだけに王子様に紅茶を淹れさせてしまっているという、普通ではあり得ない状況になっている。
「前はウォルナットの事件の後で、なし崩し的にでしょ。目が覚めたら邸に居たから、あんまり覚えてないし。広すぎて、豪華すぎて落ち着かない。」
「くくっ、アシェの部屋はシンプルだったからな。逆に、公爵家でよくあれだけシンプルな部屋を許されたな。」
大抵は格式だなんだと煩いのだが、メイディー公爵家は違う。
「我が家は見えるところさえキッチリしてたらいいから、人をいれない私室は自由なんだよ。私室にお金を掛けない分、温室の横に僕専用の実験室を作ってもらったから。そっちを充実させたから、別に私室に余計なものはなくて良いんだよ。」
「あぁ、前に案内してもらった場所か。あれはわざわざ作ったんだな。」
「うん。お父様やお兄様達は、離れに実験室を持ってるよ。僕はお気に入りの温室の傍が良かったから、誕生日におねだりしちゃった。」
誕生日プレセントのおねだりで、わざわざ小屋と呼ぶには些か豪華な建物が建つとは思ってなかったのだが、結果としては素晴らしいプレゼントだった。
広さや使い勝手がしっかり考えられている、錬金のためだけに建てられた建物だからだ。
アシェルが今までで唯一希望した、5歳の誕生日プレゼントだ。
「くくっ、それはメイディー卿も張り切って大工を呼んだだろうな。」
そんなことを話していると、コンコンと扉を叩く音がする。
広い部屋なので普通に扉を叩いているのではなく、しっかり細工されたノッカーが鳴らす金属音だ。
「誰だ。」
「医務官のアレリオン・メイディーです。診察に参りました。」
「入れ。」
アークエイドが短く受け答えし、許可を得たアレリオンが入ってくる。
アレリオンは茶褐色の耳にかかる程の髪の毛で、アシェルとそっくりなアメジスト色の吊り目だ。
服装は医務官の仕事着である白衣姿で、アシェルは初めてアレリオンの白衣姿を見た。
アシェルとメルティーが卒業祝いにプレゼントした、メイディー公爵家の家紋入りループタイが胸元を飾ってる。
「わざわざ悪いな。座ってくれ。」
「いいえ、アークエイド殿下からのご指名ですし、どちらかというと我が家のことですしね。」
アシェルとアークエイドの向かい側に座ったアレリオンは、優しい笑顔をアシェルに向けてくれる。
この笑顔が消えてしまわないか、怖くて仕方がない。
「アシェ、僕が観るから、アシェは魔力を切りなさい。今からの診察は、身体に不調が出るんだろう?」
アシェルの観ていた密度の高い探査魔法の間を縫うように、アレリオンの探査魔法が展開される。
そのアレリオンの魔力に少しずつ場所を譲りながら、全てをアレリオンに託して魔力を出すことを止めた。
「アン兄様にはお見通しでしたか。」
「だって、アシェは王宮の人間を信用していないだろう?特に、自室に医師を呼びつけるなんて、何かあったと思われてもおかしくないからね。部屋に入るまで、しっかり変なのが付いてきていないかも確認しているし、許可があったから気配遮断と認識阻害もかけてきたから大丈夫だよ。」
アシェルの心配していたことが無くなり安心する。
「さて、じゃあアシェの話を聞かせて貰おうかな。詳しいことは本人から聞いてくれと言われていてね。」
にこりと笑うアレリオンと無表情なアークエイドの顔を見るが、どちらもアシェルが話さないという選択肢は取らせてくれそうにない。
諦めて口を開くが、どんな言葉を選んでいいのかも分からない。
「その……突飛な話だとは分かっているんですが。僕は“授け子”じゃないのに、“授け子”のリリィに似た記憶があります。急に思い出したとか、そういうのじゃなくて……その、僕の記憶がある3歳の少し前くらいからありました。なんて伝えたら良いのかも分からなくて、言えなくて……騙していたみたいでごめんなさい。」
しょんぼりと肩を落としたアシェルに、アレリオンは優しく声を掛ける。
「謝ることじゃないよ。それに薄々だけど、僕とアルはアシェが記憶持ちである可能性を考えていたからね。“授け子”以外に記憶持ちが産まれる可能性も知っているし、どんな記憶があろうとアシェはアシェだよ。それにしても……今の記憶があるのは3歳頃からなんだね?」
前世の記憶の話をしているはずなのに、何故か今世の記憶について確認された。
一先ず、すんなりと受け入れて貰えたのは良かった。
まさかアレリオンとアルフォードが、アシェルのことを記憶持ちだと予測していたとは思っていなかったが。
気付かないうちに何か変な行動をしてしまっていたのだろうか。
「はい。厳密には2歳と6か月頃からです。覚えていると言ってもサーニャがお世話をしてくれて、アン兄様とアル兄様が時間を作って会いに来てくれて、時々お父様が様子を見に来てくれたなってことくらいですけど。」
「そうなんだね。普通はそんなに小さい時のことを覚えているほうが珍しいんだよ。」
アレリオンが、アシェルが乳児期の嫌な記憶を覚えていなかったことに安堵したことなどつゆ知らず、相談事の本題に入る。
「そうらしいですね。でも僕は割と記憶力が良いほうみたいで、そこからの記憶は思い出そうと思えば思い出せるんです。でも前世の記憶の方は……前世の私は今の僕のように、記憶力が良かったはずなのに、思い出せないところがあるんです。前世の記憶ですし、“授け子”でもないので、思い出せなくて当たり前だとは思うんですが……。思い出せる記憶は靄の中から手探りで記憶を引っ張ってきてる感じなんです。単語や状況なんかで思い出すと、芋づる式にそれに関わる記憶を思い出したり、思い出せるようになったり。でも……。」
そこでアシェルは言葉を止め言い淀む。
今からアシェルが言うことは、あくまでもアシェルの予想で心因性の何かが原因だと考えているだけで、本来記憶とはこういうものなのかもしれない。
薬が効かない頭痛がするといえば、優しいアレリオンに心配をかけるだけではないだろうか。
「でも?大丈夫だよ。何があってもアシェを嫌いになることは無いし、否定することは無いよ。大事で可愛い僕の妹だからね。」
優しく続きを促され、意を決して続きを口にする。
「学院に入学した後くらいから、前世の記憶を思い出そうとした時に、靄の中に蓋みたいなものがあることに気が付いたんです。何かを思い出すときに、その蓋に阻まれているような感じで……その蓋がある記憶を思い出そうとしてしまうと、必ず頭痛が起きるんです。それが何度も。あまり関連性のないような記憶を探る時でも、蓋があれば痛むんです。一度休みの日に、どうにかして思い出せないかと頑張ってみたんですが、頭痛が酷くて……。薬も飲んでみたんですけど、全く効かなくて。原因は分からないんですが、心因性のものかなって。アークが言うには、僕の頭痛が酷い時は、どこか遠くを見ているらしいです。確かに一度、アークに指摘された時に、前世の幼馴染達の姿が見えていたような気がしました。といっても、顔も名前も分からないので、見えるはずないんですけど。アークに記憶のことを話したら、お父様かアン兄様に相談したほうが良いって言われて、今日のこの運びになりました。」
一気に説明を終えて、ちらりとアレリオンの表情を見る。
アシェルと同じアメジスト色の瞳には負の感情はなく、ただただアシェルを心配していることが伝わってくる。それと見え隠れする好奇心だ。
その好奇心は嫌なものではなく、仮にこれが逆の立場だったとしたら、アシェルも同じ瞳をしていただろう。
心配ではあるが、記憶や精神的なものという、目に見えないものへの知的好奇心と研究をしたいという欲求は、抑えようとして抑えられるものではない。
「なるほどね。アシェはその記憶をどうしたいんだい?頭痛を無くしたいのか、思い出してスッキリしたいのか、それとも原因を知りたいのか。どれにしても一度は記憶を探らなくてはいけないから、頭痛は付きまとうと思うけれどね。アシェの作った薬で効いてないなら、薬に期待しない方が良いと思うし。」
「思い出せない記憶があることが気持ち悪いんです。出来れば、思い出すか原因を知りたいです。原因が分かれば頭痛が起きないように、選択的に記憶を思い出すことが出来るかもしれませんし。記憶の中にある蓋に、自分自身に拒絶されているような気分なんです。それと、アークから告白されても、僕は返事を考えるスタートラインにも立ってないんです。前世の記憶のせいか、何故か結婚して母親になることには忌避感があります。でも、それが何故なのかも分からなければ、お付き合いの先にあるものなので。……色々理由はつけてますが、結局は自分の中に、自分が理解できないものがあるのが怖いんです。」
「分かったよ。殿下の予想通り、これは長期戦になるだろうね。一応、アシェの冬休みいっぱいは殿下の私室に籠れるようにしてるから、じっくり診ていこうか。ちなみにだけど、2歳半前の記憶を思い出そうとすると、同じように蓋は見えたり頭痛はするかい?」
また今世の記憶について聞かれてアシェルは首を傾げる。
だが、アレリオンが聞くということは必要だということだ。
意識してアシェルの幼少期の記憶を探る。
3歳頃から遡り、歩いて活発に動き出した頃から、まだ私室から出ていなかった頃まで。
2歳半の記憶より前の記憶を探ろうとしたところでズキンと頭痛がし、その場所を咄嗟に抑えてしまう。
「頭痛がするんだね?」
「……はい。かなり痛いですし、同じように蓋があって拒絶されてる感じです。」
意識を他のことにやって頭痛を引かせながら素直に答えると、アレリオンが「やっぱり。」と小さく呟いた。
つまりアレリオンは、アシェルのこの記憶の蓋がある原因を知っているということだ。
「アン兄様……僕の小さい時に何かあった……んですよね?」
「そうだよ。アシェが覚えていないのなら、覚えていないままでいて欲しかったんだけどね。その前世の記憶を探る手掛かりにするには、教えたほうが良いんだろうけど……。」
困ったように微笑んだアレリオンが黙り込む。
「聞かせてください。気付いてしまったら、分からないままなのは気持ち悪いです。」
「そうだね。僕が覚えていることを教えるよ。でも、あまりにも頭痛が酷くなったり、気分が悪くなったりしたらすぐに言うんだよ?休憩を挟んでも、途中で聞くのをやめても良いんだからね。」
今日から冬休みが終わるまでか原因が判明するまでは、アークエイドの私室に三人で籠ることが決定しているので、時間はたっぷりとある。
アシェルが頷いたのを見て、アレリオンは思い出話をしてくれた。
それはアシェルがまだ、今は亡き母シェリーのお腹の中に宿って育っている時から始まり、シェリーが死に、アシェルが産まれた時のこと。
その後しばらくは、離れでサーニャと医師が付きっきりで世話をしてくれていたらしいことと、アシェル自身に命の危険もあったこと。
産まれてしばらく経ってから出会ったアシェルが、イザベルと比べて泣かないし笑わない子だったが、足蹴く通ううちに日に日に笑顔が見られるようになったこと。
アシェルが今の邸に移ってきてからのこと。
その時にアシェルの部屋付きになった三人の侍女と、段々とアシェルの表情が動かなくなっていったこと。
そしてサーニャが家の用事で一か月いない期間に、アレリオンが気付いたこととその対処。
サーニャが戻るまでアルフォードと二人でアシェルの世話をしながら証拠を集めて、父アベルに掛け合って、アシェルの育つ環境を整えてくれたこと。
そうやって時間と手間をかけてようやく屈託なく笑って、以前のように暗い何も映していない瞳をすることが全く無くなったのが、アシェルの覚えている2歳半頃だったこと。
それらを一つ一つ丁寧に教えてくれる。
「だからね。アシェが人の気配に敏感なのも視線に敏感なのも、きっと記憶持ちだろうって思ってたんだよ。アシェの反応が、孤児院のトラウマを抱えた子供達と同じだったんだ。前にカフェでパニックになった時、アルの手を払いのけただろう?あれもトラウマに対する反応だね。僕が覚えている限りの話はこれで全部だよ。」
聞いている途中では半信半疑だったが、話が終わりに近づくにつれ、ゆっくりと記憶の蓋が開いたのが分かった。
「思い……だしました。あの嫌な眼をした侍女たちの顔も、名前も覚えてます。流石に離れの記憶はぼやけてますけど、蓋がある感じじゃなくて、靄がかかっていて分からない感じです。……あの時確かに僕は、急に触れた何かをはたきましたね。泣いたのも覚えてます。泣くつもりはなかったんですけど、虐待を受けていたのがフラッシュバックして、コントロールできませんでした。あとからアン兄様だったって聞いて、申し訳ないなとは思ったんです。でもフラッシュバックした虐待は……今世のものではないです。でも……なんで?私は施設育ちなのに、どこかの一軒家に私と知らない夫婦が居る……おかしいな。産まれてすぐに施設に置き去りにされてたはずなのに……。」
アシェルの記憶に前世の記憶が絡んでいて、フラッシュバックした虐待を受ける自分を見下ろすような光景は見えるのに、なぜそんな状況だったのかが全く思い出せない。
ズキズキと痛む頭を無視して記憶を探っていると、不意に強く抱きしめられた。
「アシェ!思い出すのを一旦やめろ!!」
気付けば焦点のあった視界のすぐ目の前に、焦ったアークエイドの表情が見える。
「アーク……もしかして、僕また違うところを見てた?」
「あぁ。戻ったな。頭痛は大丈夫か?」
「うん。痛かったけど、アークが呼んでくれたおかげで大丈夫みたい。」
アシェルの言葉を聞いて、ようやくアークエイドの腕が緩まり離れていく。
そんな二人の様子を見ていたアレリオンは考察を口にする。
「今のが殿下が言っていたという、遠くを見ている状態ですね?そして立ち合いを希望したのは、今の様な状態に対応するためと……。今の眼は、アシェが小さい時の眼に通じるものがあります。一つの防御反応だろうか。それにフラッシュバックした記憶が前世のものだということは、アシェが初めて会った時には泣いたり笑ったりしなかったのは、やっぱり前世に原因がありそうですね。それにフラッシュバックするほど強いトラウマだ。これは一筋縄ではいかないかもしれないね。」
少し考えこんだアレリオンは、『ストレージ』から大量のレポート用紙と万年筆を取り出した。
「とりあえず、アシェが前世について思い出せることを聞きとっていこうか。アシェの覚えている一番小さい時から、最後の記憶まで。出来るだけ仔細に思い出して話してくれるかい?辛いだろうけど、記憶の蓋や頭痛がするところも教えて欲しい。もし頭痛に強弱があるのなら、それも。良いかい?」
「アン兄様に話をすることが決まった時から、覚悟はしています。僕でもそうしますから。ただ……その。僕は一般的な子供とは感覚も違かったし、僕が居たのは魔法のない世界です。訳の分からないことを言ってしまうかもしれません。」
「ふふ、それは構わないよ。これでも“授け子”に関しては調べていて、ある程度知識があるんだ。“日本”という国についてもね。」
なぜアレリオンは、アシェルの前世が“日本”人だったことを知っているのだろうか。
少し疑問に思いながらも、アシェルは覚えている限り小さな時の記憶から話し始めた。
一週間で出店許可証関係の魔道具の雛型を作り上げ、無事に納品を済ませたアシェルは、王宮にあるアークエイドの私室を訪れていた。
「ねぇ。本当にアン兄様に相談しなきゃダメ?それに、邸や寮じゃダメ??僕がここにいるの、すっごい場違いなんだけど。」
さすが王子様の私室と言うべきか、広い私室の中の調度品の一つ一つや実用的な家具まで、どれも高級品が揃っている。
商業ギルドのVIP室など目じゃないくらいの、品の良い高級品が目白押しだ。
アシェルのメイディー邸の私室など、家具や布団などは高価なものだが、調度品には興味が無いのでかなりシンプルな部屋だ。
必要な家具だけしか置いてないので、花瓶の一つすらない。
「別に、前にも一度来た事があるだろ。それに俺の私室の中なら、護衛も付かないし人払いも簡単だ。普段から、あまり人を入れないようにしている。」
アークエイドが言う通り、こんなに広い私室なのに侍女や侍従、騎士の姿はない。
ふかふかのソファに座っている二人の目の前にある紅茶は、アークエイドが手ずから淹れてくれたものだ。
しっかりアークエイドのものは珈琲である。
王子様の私室で、わざわざアシェルのためだけに王子様に紅茶を淹れさせてしまっているという、普通ではあり得ない状況になっている。
「前はウォルナットの事件の後で、なし崩し的にでしょ。目が覚めたら邸に居たから、あんまり覚えてないし。広すぎて、豪華すぎて落ち着かない。」
「くくっ、アシェの部屋はシンプルだったからな。逆に、公爵家でよくあれだけシンプルな部屋を許されたな。」
大抵は格式だなんだと煩いのだが、メイディー公爵家は違う。
「我が家は見えるところさえキッチリしてたらいいから、人をいれない私室は自由なんだよ。私室にお金を掛けない分、温室の横に僕専用の実験室を作ってもらったから。そっちを充実させたから、別に私室に余計なものはなくて良いんだよ。」
「あぁ、前に案内してもらった場所か。あれはわざわざ作ったんだな。」
「うん。お父様やお兄様達は、離れに実験室を持ってるよ。僕はお気に入りの温室の傍が良かったから、誕生日におねだりしちゃった。」
誕生日プレセントのおねだりで、わざわざ小屋と呼ぶには些か豪華な建物が建つとは思ってなかったのだが、結果としては素晴らしいプレゼントだった。
広さや使い勝手がしっかり考えられている、錬金のためだけに建てられた建物だからだ。
アシェルが今までで唯一希望した、5歳の誕生日プレゼントだ。
「くくっ、それはメイディー卿も張り切って大工を呼んだだろうな。」
そんなことを話していると、コンコンと扉を叩く音がする。
広い部屋なので普通に扉を叩いているのではなく、しっかり細工されたノッカーが鳴らす金属音だ。
「誰だ。」
「医務官のアレリオン・メイディーです。診察に参りました。」
「入れ。」
アークエイドが短く受け答えし、許可を得たアレリオンが入ってくる。
アレリオンは茶褐色の耳にかかる程の髪の毛で、アシェルとそっくりなアメジスト色の吊り目だ。
服装は医務官の仕事着である白衣姿で、アシェルは初めてアレリオンの白衣姿を見た。
アシェルとメルティーが卒業祝いにプレゼントした、メイディー公爵家の家紋入りループタイが胸元を飾ってる。
「わざわざ悪いな。座ってくれ。」
「いいえ、アークエイド殿下からのご指名ですし、どちらかというと我が家のことですしね。」
アシェルとアークエイドの向かい側に座ったアレリオンは、優しい笑顔をアシェルに向けてくれる。
この笑顔が消えてしまわないか、怖くて仕方がない。
「アシェ、僕が観るから、アシェは魔力を切りなさい。今からの診察は、身体に不調が出るんだろう?」
アシェルの観ていた密度の高い探査魔法の間を縫うように、アレリオンの探査魔法が展開される。
そのアレリオンの魔力に少しずつ場所を譲りながら、全てをアレリオンに託して魔力を出すことを止めた。
「アン兄様にはお見通しでしたか。」
「だって、アシェは王宮の人間を信用していないだろう?特に、自室に医師を呼びつけるなんて、何かあったと思われてもおかしくないからね。部屋に入るまで、しっかり変なのが付いてきていないかも確認しているし、許可があったから気配遮断と認識阻害もかけてきたから大丈夫だよ。」
アシェルの心配していたことが無くなり安心する。
「さて、じゃあアシェの話を聞かせて貰おうかな。詳しいことは本人から聞いてくれと言われていてね。」
にこりと笑うアレリオンと無表情なアークエイドの顔を見るが、どちらもアシェルが話さないという選択肢は取らせてくれそうにない。
諦めて口を開くが、どんな言葉を選んでいいのかも分からない。
「その……突飛な話だとは分かっているんですが。僕は“授け子”じゃないのに、“授け子”のリリィに似た記憶があります。急に思い出したとか、そういうのじゃなくて……その、僕の記憶がある3歳の少し前くらいからありました。なんて伝えたら良いのかも分からなくて、言えなくて……騙していたみたいでごめんなさい。」
しょんぼりと肩を落としたアシェルに、アレリオンは優しく声を掛ける。
「謝ることじゃないよ。それに薄々だけど、僕とアルはアシェが記憶持ちである可能性を考えていたからね。“授け子”以外に記憶持ちが産まれる可能性も知っているし、どんな記憶があろうとアシェはアシェだよ。それにしても……今の記憶があるのは3歳頃からなんだね?」
前世の記憶の話をしているはずなのに、何故か今世の記憶について確認された。
一先ず、すんなりと受け入れて貰えたのは良かった。
まさかアレリオンとアルフォードが、アシェルのことを記憶持ちだと予測していたとは思っていなかったが。
気付かないうちに何か変な行動をしてしまっていたのだろうか。
「はい。厳密には2歳と6か月頃からです。覚えていると言ってもサーニャがお世話をしてくれて、アン兄様とアル兄様が時間を作って会いに来てくれて、時々お父様が様子を見に来てくれたなってことくらいですけど。」
「そうなんだね。普通はそんなに小さい時のことを覚えているほうが珍しいんだよ。」
アレリオンが、アシェルが乳児期の嫌な記憶を覚えていなかったことに安堵したことなどつゆ知らず、相談事の本題に入る。
「そうらしいですね。でも僕は割と記憶力が良いほうみたいで、そこからの記憶は思い出そうと思えば思い出せるんです。でも前世の記憶の方は……前世の私は今の僕のように、記憶力が良かったはずなのに、思い出せないところがあるんです。前世の記憶ですし、“授け子”でもないので、思い出せなくて当たり前だとは思うんですが……。思い出せる記憶は靄の中から手探りで記憶を引っ張ってきてる感じなんです。単語や状況なんかで思い出すと、芋づる式にそれに関わる記憶を思い出したり、思い出せるようになったり。でも……。」
そこでアシェルは言葉を止め言い淀む。
今からアシェルが言うことは、あくまでもアシェルの予想で心因性の何かが原因だと考えているだけで、本来記憶とはこういうものなのかもしれない。
薬が効かない頭痛がするといえば、優しいアレリオンに心配をかけるだけではないだろうか。
「でも?大丈夫だよ。何があってもアシェを嫌いになることは無いし、否定することは無いよ。大事で可愛い僕の妹だからね。」
優しく続きを促され、意を決して続きを口にする。
「学院に入学した後くらいから、前世の記憶を思い出そうとした時に、靄の中に蓋みたいなものがあることに気が付いたんです。何かを思い出すときに、その蓋に阻まれているような感じで……その蓋がある記憶を思い出そうとしてしまうと、必ず頭痛が起きるんです。それが何度も。あまり関連性のないような記憶を探る時でも、蓋があれば痛むんです。一度休みの日に、どうにかして思い出せないかと頑張ってみたんですが、頭痛が酷くて……。薬も飲んでみたんですけど、全く効かなくて。原因は分からないんですが、心因性のものかなって。アークが言うには、僕の頭痛が酷い時は、どこか遠くを見ているらしいです。確かに一度、アークに指摘された時に、前世の幼馴染達の姿が見えていたような気がしました。といっても、顔も名前も分からないので、見えるはずないんですけど。アークに記憶のことを話したら、お父様かアン兄様に相談したほうが良いって言われて、今日のこの運びになりました。」
一気に説明を終えて、ちらりとアレリオンの表情を見る。
アシェルと同じアメジスト色の瞳には負の感情はなく、ただただアシェルを心配していることが伝わってくる。それと見え隠れする好奇心だ。
その好奇心は嫌なものではなく、仮にこれが逆の立場だったとしたら、アシェルも同じ瞳をしていただろう。
心配ではあるが、記憶や精神的なものという、目に見えないものへの知的好奇心と研究をしたいという欲求は、抑えようとして抑えられるものではない。
「なるほどね。アシェはその記憶をどうしたいんだい?頭痛を無くしたいのか、思い出してスッキリしたいのか、それとも原因を知りたいのか。どれにしても一度は記憶を探らなくてはいけないから、頭痛は付きまとうと思うけれどね。アシェの作った薬で効いてないなら、薬に期待しない方が良いと思うし。」
「思い出せない記憶があることが気持ち悪いんです。出来れば、思い出すか原因を知りたいです。原因が分かれば頭痛が起きないように、選択的に記憶を思い出すことが出来るかもしれませんし。記憶の中にある蓋に、自分自身に拒絶されているような気分なんです。それと、アークから告白されても、僕は返事を考えるスタートラインにも立ってないんです。前世の記憶のせいか、何故か結婚して母親になることには忌避感があります。でも、それが何故なのかも分からなければ、お付き合いの先にあるものなので。……色々理由はつけてますが、結局は自分の中に、自分が理解できないものがあるのが怖いんです。」
「分かったよ。殿下の予想通り、これは長期戦になるだろうね。一応、アシェの冬休みいっぱいは殿下の私室に籠れるようにしてるから、じっくり診ていこうか。ちなみにだけど、2歳半前の記憶を思い出そうとすると、同じように蓋は見えたり頭痛はするかい?」
また今世の記憶について聞かれてアシェルは首を傾げる。
だが、アレリオンが聞くということは必要だということだ。
意識してアシェルの幼少期の記憶を探る。
3歳頃から遡り、歩いて活発に動き出した頃から、まだ私室から出ていなかった頃まで。
2歳半の記憶より前の記憶を探ろうとしたところでズキンと頭痛がし、その場所を咄嗟に抑えてしまう。
「頭痛がするんだね?」
「……はい。かなり痛いですし、同じように蓋があって拒絶されてる感じです。」
意識を他のことにやって頭痛を引かせながら素直に答えると、アレリオンが「やっぱり。」と小さく呟いた。
つまりアレリオンは、アシェルのこの記憶の蓋がある原因を知っているということだ。
「アン兄様……僕の小さい時に何かあった……んですよね?」
「そうだよ。アシェが覚えていないのなら、覚えていないままでいて欲しかったんだけどね。その前世の記憶を探る手掛かりにするには、教えたほうが良いんだろうけど……。」
困ったように微笑んだアレリオンが黙り込む。
「聞かせてください。気付いてしまったら、分からないままなのは気持ち悪いです。」
「そうだね。僕が覚えていることを教えるよ。でも、あまりにも頭痛が酷くなったり、気分が悪くなったりしたらすぐに言うんだよ?休憩を挟んでも、途中で聞くのをやめても良いんだからね。」
今日から冬休みが終わるまでか原因が判明するまでは、アークエイドの私室に三人で籠ることが決定しているので、時間はたっぷりとある。
アシェルが頷いたのを見て、アレリオンは思い出話をしてくれた。
それはアシェルがまだ、今は亡き母シェリーのお腹の中に宿って育っている時から始まり、シェリーが死に、アシェルが産まれた時のこと。
その後しばらくは、離れでサーニャと医師が付きっきりで世話をしてくれていたらしいことと、アシェル自身に命の危険もあったこと。
産まれてしばらく経ってから出会ったアシェルが、イザベルと比べて泣かないし笑わない子だったが、足蹴く通ううちに日に日に笑顔が見られるようになったこと。
アシェルが今の邸に移ってきてからのこと。
その時にアシェルの部屋付きになった三人の侍女と、段々とアシェルの表情が動かなくなっていったこと。
そしてサーニャが家の用事で一か月いない期間に、アレリオンが気付いたこととその対処。
サーニャが戻るまでアルフォードと二人でアシェルの世話をしながら証拠を集めて、父アベルに掛け合って、アシェルの育つ環境を整えてくれたこと。
そうやって時間と手間をかけてようやく屈託なく笑って、以前のように暗い何も映していない瞳をすることが全く無くなったのが、アシェルの覚えている2歳半頃だったこと。
それらを一つ一つ丁寧に教えてくれる。
「だからね。アシェが人の気配に敏感なのも視線に敏感なのも、きっと記憶持ちだろうって思ってたんだよ。アシェの反応が、孤児院のトラウマを抱えた子供達と同じだったんだ。前にカフェでパニックになった時、アルの手を払いのけただろう?あれもトラウマに対する反応だね。僕が覚えている限りの話はこれで全部だよ。」
聞いている途中では半信半疑だったが、話が終わりに近づくにつれ、ゆっくりと記憶の蓋が開いたのが分かった。
「思い……だしました。あの嫌な眼をした侍女たちの顔も、名前も覚えてます。流石に離れの記憶はぼやけてますけど、蓋がある感じじゃなくて、靄がかかっていて分からない感じです。……あの時確かに僕は、急に触れた何かをはたきましたね。泣いたのも覚えてます。泣くつもりはなかったんですけど、虐待を受けていたのがフラッシュバックして、コントロールできませんでした。あとからアン兄様だったって聞いて、申し訳ないなとは思ったんです。でもフラッシュバックした虐待は……今世のものではないです。でも……なんで?私は施設育ちなのに、どこかの一軒家に私と知らない夫婦が居る……おかしいな。産まれてすぐに施設に置き去りにされてたはずなのに……。」
アシェルの記憶に前世の記憶が絡んでいて、フラッシュバックした虐待を受ける自分を見下ろすような光景は見えるのに、なぜそんな状況だったのかが全く思い出せない。
ズキズキと痛む頭を無視して記憶を探っていると、不意に強く抱きしめられた。
「アシェ!思い出すのを一旦やめろ!!」
気付けば焦点のあった視界のすぐ目の前に、焦ったアークエイドの表情が見える。
「アーク……もしかして、僕また違うところを見てた?」
「あぁ。戻ったな。頭痛は大丈夫か?」
「うん。痛かったけど、アークが呼んでくれたおかげで大丈夫みたい。」
アシェルの言葉を聞いて、ようやくアークエイドの腕が緩まり離れていく。
そんな二人の様子を見ていたアレリオンは考察を口にする。
「今のが殿下が言っていたという、遠くを見ている状態ですね?そして立ち合いを希望したのは、今の様な状態に対応するためと……。今の眼は、アシェが小さい時の眼に通じるものがあります。一つの防御反応だろうか。それにフラッシュバックした記憶が前世のものだということは、アシェが初めて会った時には泣いたり笑ったりしなかったのは、やっぱり前世に原因がありそうですね。それにフラッシュバックするほど強いトラウマだ。これは一筋縄ではいかないかもしれないね。」
少し考えこんだアレリオンは、『ストレージ』から大量のレポート用紙と万年筆を取り出した。
「とりあえず、アシェが前世について思い出せることを聞きとっていこうか。アシェの覚えている一番小さい時から、最後の記憶まで。出来るだけ仔細に思い出して話してくれるかい?辛いだろうけど、記憶の蓋や頭痛がするところも教えて欲しい。もし頭痛に強弱があるのなら、それも。良いかい?」
「アン兄様に話をすることが決まった時から、覚悟はしています。僕でもそうしますから。ただ……その。僕は一般的な子供とは感覚も違かったし、僕が居たのは魔法のない世界です。訳の分からないことを言ってしまうかもしれません。」
「ふふ、それは構わないよ。これでも“授け子”に関しては調べていて、ある程度知識があるんだ。“日本”という国についてもね。」
なぜアレリオンは、アシェルの前世が“日本”人だったことを知っているのだろうか。
少し疑問に思いながらも、アシェルは覚えている限り小さな時の記憶から話し始めた。
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