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第三章 王立学院中等部二年生
138 入学式⑤
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Side:アシェル13歳 春
「ここが僕の部屋だよ。いらっしゃい。」
学生寮の四号棟の五階までエレベーターで上がり、オートロックの扉を抜けた先の廊下の一番奥にある扉の鍵を開ける。
アシェルが扉を開くと、今日はイザベルだけでなく、アルフォードの専属侍従のアイザックとメルティーの専属侍女のマルローネも出迎えてくれる。
『おかえりなさいませ。』
三人の声が綺麗に重なり出迎えられる。
「ただいま、ベル。……なんだか落ち着かないね。」
ささっとイザベルの傍に寄る。
前世の記憶のせいか、こうやって出迎えられるのは何度経験しても苦手だ。
「本来であればもう少し使用人を連れてくるので、これでも少ないほうです。アシェル様が私しか侍女を付けなかったせいで、メルティーお嬢様まで使用人をマルローネ一人しか連れて来てないんですよ。事の重大さを分かっておられますか?」
アシェル達と一緒に育ったと言っても過言ではないイザベルは、アルフォード達を義兄と慕っていて、メルティーのことも可愛い義妹として可愛がってくれていた。
使用人として邸に仕え始めてからは表立って可愛がることがなくなったが、それでも可愛い義妹だと思ってるのをアシェルは知っている。
「僕のせいなの?……でもやっぱり、ベル以外の使用人は要らない。ベルがいないなら、僕は一人でもいいもの。」
頑なに他の使用人を拒絶する主に、イザベルは小さな溜め息を吐いた。
「とりあえず食事に致しましょう。」
「あ、ベル達もちゃんと座って食べてよ?せっかくダイニングテーブルも入れたんだしさ。」
今まで広すぎる応接間は間仕切りで半分にして使っていて、半分はただの広い空き部屋と化していた。
応接間には大き目のソファやテーブルで、大人数な幼馴染達が来てもしっかり座れるようにしていたが、やはり少し低い位置にある食事は摂りにくかった。
今回、知人以外が訪れることのない入ってすぐの応接間に、新たにダイニングテーブルを導入したのだ。
8人掛けの長いテーブルを二つ繋げており、16人まで、お誕生日席を入れれば18人まで対応可能だ。
横に長いだけなので、応接セットと一緒に並べても部屋にゆとりがある。
もし内装を気にするような来客があるのなら、隣の空きスペースに移すかストレージに仕舞えば良いのだ。
繋げて使う予定のダイニングテーブルが一つずつに分かれている。
今いるのは8人なのでそれでも全く問題はないのだが、問題はその席の数だ。
椅子が5脚しか並んでいない。
もう片方のテーブルには全く椅子が並んでいない。
「ですが私達は……。」
「僕の部屋でそんなこと気にしないの。気にする人は、僕の部屋にご飯食べに来ないから。」
渋るイザベルを無視して、ささっと間仕切りを開けて椅子を持ってくる。
そして5脚だけ椅子が並んでいるテーブルに並べていく。
そんな主の一人の暴挙を目の当たりにし、それぞれ専属で付いている主へ視線を向けて対応の指示を仰ぐ。
「アビーにも、夕食は使用人も一緒に席を囲むって言ってるから問題ないぞ。アイザックもちゃんと椅子に座れよ?」
「マリーもですわ。わたくしの我儘で、貴女一人だけしか侍女を連れてきていないし、アシェお義兄様が甘えさせてくれることには甘えちゃいましょう。マリーだけ別に食事を摂るのも大変でしょう?」
本来であれば、使用人が主人である貴族と一緒にテーブルを囲むなどあってはならないことなのだが。
主達は外ではきっちりしているものの、貴族らしい決まりのことは割とどうでも良いと思っている節がある。
どうやら食卓を囲む顔ぶれも、主達にとってはどうでもいいことのようだ。
アシェルの部屋では新参者の二人は、主の言葉を受けるも、明らかに顔ぶれの中でさらに格上の王族へと視線を向けた。
「アルの言った通り、気にしないから大丈夫よ。それに、アルとアシェが信用している人間しか、ここには入れないんでしょう?だったら、王宮よりも安全な場所だわ。」
「俺も気にしないし、イザベルとは一緒に食事を摂ったこともある。冒険者活動で野営もしてるんだ。今更気にしない。食事のマナーも気にするな。普段からそんなもの気にしてたら、美味しい食事が台無しだ。」
客人も了承済みだということに胸を撫で下ろすと同時に、マナーについても目をつぶるという言葉までもらってしまう。
恐れ多いことに違いはないが、全員納得しているのなら主人達の意向に沿うまでだ。
「ですから言ったでしょう。こうなると思うって。さぁ、お食事をお出しましょう。」
イザベルがアイザックとマルローネを引き連れて厨房へ消える。
侍女長の娘で早くからメイディー邸に仕えていたイザベルは、アイザックとマルローネより少しだけ先輩だ。
「席順はどうしますか?というか、こっちに僕らとベルで、向かいにアビー様とアーク、アイザックとマルローネでも良いですか?」
部屋の主であるアシェルの問いに、アビゲイルは頷いたがアークエイドが少し渋る。
だが、アビゲイルだけを使用人に囲ませるのは、という一言で引きさがってくれた。
テーブルにはしっかりと前菜からメインなどの食事が色々と並んだ。
皆で「いただきます。」を言い、用意してもらった食事を口に運ぶ。
「うん、美味しいね。でも、この味付けはベルじゃないよね。」
「これはマリーですわ。」
「スープがアイザックだな。」
「へぇ、やっぱり作る人が変わると、味付けの癖も変わるんですね。メル、口開けて。あーん。」
メイディーの兄妹はそれぞれ食事を摂りながら、それぞれの使用人達の味付けの癖から誰が作ったのかを言い当てる。
メルティーは学院に入る前に、マルローネだけを連れてくるために、食事の味付けについてはチェック済みだった。
アルフォードは冒険者活動をする時にアイザックと二人で出かける事があるので、野営の食事だろうか。
アシェルの差し出すフォークから、パクリとお肉を口に含んで飲み込んだメルティーに、反対側から次のフォークがやってくる。
「メル、こっちも。あーん。」
反対から伸ばされたフォークにもパクリと食いつき、ようやく飲み込み終えたメルティーが喋る。
「アシェお義兄様、アルお義兄様。わたくしも同じものをいただいてますわ。」
「うん、知ってる。でも、可愛いメルに食べさせてあげたかったんだ。まだ要る?」
「そうだな。でも、メルはあーんしたら、ちゃんと食べてくれるだろ?」
メルティーの左右を挟む二人は終始ご機嫌なまま、和やかに食事を終えた。
ソファに移って食後の紅茶をいただきながら、ゆったりとした時間を過ごす。
イザベルが配慮してくれていて、アークエイドだけはちゃんと珈琲が出てきている。
「なぁ、メルティー。……まさか、家でもその状態か?」
やはり左右から挟まれているメルティーは、二人に髪の毛を触られている。
亜麻色の髪の毛に色白な二人の指がするすると通り抜けては、また指が絡んでくる。
「邸では一緒に居れる時間が短いので、一緒に居る時はこんな感じですわね。アンお義兄様がいたら、わたくしはアンお義兄様の膝の上ですわ。」
全く動じる気配がなくされるがままのメルティーに、問いかけたアークエイドの方が苦笑する。
想像以上の答えが返ってきたからだ。
「そうだよね。僕ら兄妹が揃うのって、食事の時か、お茶か遊ぶ時だもんね。お茶の時だって、全員が揃うことなんて滅多にないし。」
「俺と兄上は、アシェやメルと少し年が離れてるしな。その分、邸に来たばかりの可愛いメルのことも一杯覚えてるけどな。」
邸に来たばかりのメルティーは2歳だ。
アシェルよりも一回り小さくて、人見知りもしないメルティーはとにかく可愛かった。
「メルは色んなものに興味津々で、分からないだろうに庭の植物の名前を一生懸命聞いてきてましたよね。ふふ、あの時のメルも可愛かったな。メルが楽しいって思ってくれないと、もしかしたら義妹が出来ないかもしれないと思って、メルに色々説明してあげたんだ。絶対分かってないのに、僕の言葉に大袈裟に驚いてくれたり、笑ってくれたり。毒草だって言ってるのに触ろうとして、慌てて止めたりね。とにかくすっごく可愛かったし、今もそれ以上に可愛い。」
メルティーを楽しませる作戦のはずが、アシェルの方が楽しんでしまったくらいだ。
「アシェお義兄様っ、そんな小さい時のこと……恥ずかしいですわ。覚えてないから余計に。わたくしには大きなお邸に来たことと、キラキラした部屋に王子様達とお姫様がいると思ってたんですの。お庭ではお義兄様達の髪が綺麗に輝いていて、天使様と女神様みたいだなって。」
「そういえば、そんなことも言ってたな。っていうか、アシェはよくそんな細かいことまで覚えてるな?」
「アン兄様からどう聞いたか分からないですけど、僕は昔から記憶力だけは良いんですよ。流石に乳児期の記憶はぼんやりしてますけどね。アン兄様とアル兄様が、僕のことを一生懸命お世話してくれたのも、しっかり思い出しましたよ。あの時の侍女の名前もフルネームで言えます。初めて僕の部屋に移った時、彼女達がお兄様達に自己紹介をしたのを聞いてましたから。」
アルフォードはアシェルが詳細に覚えていることは聞いてなかったようで、驚きに目を見開いている。
首を傾げているのがメルティーとアビゲイルで、壁際に控えている三人は沈黙を守っている。
「いいタイミングだし、少し僕の話をしますね。皆に聞いてもらっていいですか?ベル達も、一緒に座って聞いて。」
アシェルの呼びかけに、食事の時と同じ席順でソファに座る。
「アシェ……隣に居なくても平気か?」
アシェルよりも不安そうな表情のアークエイドに微笑みかける。
「大丈夫だよ。僕は僕だから。」
「ねぇ、アシェル。アークがこんな表情をするのはただ事じゃないわよね?本当にそれは、わたくしも聞いていい内容なのかしら??」
「アビー様も聞いてください。私の目が原因で、嫌な思いをさせたくないので。」
一人称を変えたアシェルに、メルティーが首を傾げた。
アシェルが男装の時は、“僕”という一人称を間違えたことは無い。
アシェルが振る舞いも言動も男になり切ろうとしているから、メルティーはアシェルの姿で呼び分けているのだ。
「僕には産まれた時から、“授け子”のように前世の記憶があります。いわゆる記憶持ちっていうやつで、最近ようやく全てを思い出したんですけどね。私は薫という名前でした。孤児院出身で、学校は6歳から18歳まで通って、20歳を目前に生涯を閉じています。」
アークエイドの顔色が変わったのが見える。
きっと今のアシェルは薫の眼をしているのだろう。
「私は色んな子供が集まる孤児院の中でも歪な存在でした。ようやく立って歩ける頃に絵本の読み聞かせを聞きながら文字を追えば文字を覚え。職員の話を聞いて単語や意味を知り、絵本を読み漁って得られるだけの知識を得ました。アシェルと薫の本質は一緒で、知的好奇心を満たしたい欲求はあるのに、身の回りには私の心を躍らせてくれるものが無かったんです。そんな世界は、私にとって色のない世界でした。ただただ退屈で、変わらない日々でした。そんな薫は今みたいな眼をしていたみたいです。ねぇ、アーク。そうなんでしょ?」
淡々と話しながらアシェルが問えば、頷きが返ってくる。
「あぁ。見ているこっちが不安になるくらい、アシェが何も見ていないか、どこか違う風景でも見ているかのような眼だ。」
「やっぱりそうなんだね。僕は全く意識してないんだけど。……元々薫の記憶は、名前も分からない状態で靄の中にある感じだったんです。意識して初めて思い出せるような、どことなく他人事のような。でも学院に入って、前世の記憶に触れる機会が多くなってから、僕が薫の眼をすることがあって……。冬休みにアン兄様とアークに付き合ってもらって、ちょっと色々あって、全てを思い出しました。他人事のように見下ろしていた灰色の世界から、私を連れ出してくれた二人の親友のこと。二人を通してみる世界だけが色づいていて、その二人を守る為なら、悪い大人の言うことも聞いてきました。嫌なことを言われたり、されたりもありました。特に嫌な感情を含んだ視線には敏感になっていて、薫はよくパニックを起こしてました。メルは気付いてるよね。僕が時々、メアリーお義母様の視線を避けてること。」
「えぇ。メアリーお母様が何を考えているのかは分からないけれど、アシェお義姉様が、あまりお母様と会いたくないのは知ってるわ。だからお母様がお茶会なんかで長時間いない日が、ドレスの日なのよね?」
「うん、そうだよ。僕の苦手な感情を含んだ眼なんだ。今のこの眼は、僕が小さい時にアン兄様とアル兄様が見た事があるたしいんです。その時はまだ薫の記憶がしっかりと残っていたからだと思います。その時に自分で記憶を封じたのに、自分で開けてしまいました。もうアシェルと薫は一緒だと認識しているし、記憶も馴染んでいるんですけど。どうも記憶力が良すぎて、細かな部分まで思い出せてしまう影響なのか。薫だった時のことを思い出すと、この眼になってしまうらしいです。なので、僕がもしこんな目をしても、あぁ、何か思い出してるんだな、くらいに思ってもらえますか?“授け子”じゃないのに完璧な記憶持ちなのは、少し気味が悪いかもしれませんが。」
そこまで話し終えたアシェルは、瞳を閉じてゆっくりと深呼吸し、アシェルの記憶に思いをはせる。
思い出すのは先程話した、小さくてかわいいメルティーだ。
ゆっくりと瞼を上げれば、明らかに安堵した表情をしたアークエイドと目が合い、大丈夫だよと微笑みかける。
「もういつもの僕ですよね。今はメルのことを思い出してました。こんな風に、気を付けてないと薫の眼をするらしいので。仲が良いほど驚かせたり、怖がらせる可能性があったので話しました。」
周囲を見渡すと、誰もアシェルの嫌な眼はしていない。
イザベルだけが少し泣きそうな表情だが。
「そう……分かったわ。別にわたくし達は、アシェルに前世の記憶があったとしても、気味が悪いなんて思ったりはしないわよ。“授け子”が身近にいるから、記憶持ちのこともすんなり受け入れられると思うわ。少しだけカオルって子の眼をしたアシェルを見てると、不安にはなるけれどね。でも、アシェルはなんともないんでしょう?なら、わたくし達はそういうものだと受け入れればいいだけだわ。皆もそう思っているんじゃないかしら?」
アビゲイルの言葉に、その場の全員が頷いた。
本当にアシェルは恵まれた環境に生きている。
「アシェル様……わたくしは母から話を聞いております。どれだけ辛い思いをされればあんな……。わたくしは、そんなことでアシェル様を嫌いになったりしません。アシェル様はどんなアシェル様でも、わたくしの大切な人です。」
「ベル……ごめんね、泣かないで。薫の記憶より、ベルが泣く方が僕は辛いから。」
アシェルの胸の中に飛び込んできて、グスグスと泣くイザベルの頭を優しく撫でる。
「でも、でもっ……。」
「僕の為に泣いてくれてありがとう、ベル。」
イザベルが泣き止む気配がないのを見て、アルフォードが解散を促す。
「アシェ、そろそろ俺らはお暇させてもらうよ。ベル、アシェは大丈夫だよ。でも、気が済むまで泣いて、アシェに甘えるといい。」
久しぶりにイザベルを愛称で呼んだアルフォードも、少しだけイザベルの頭を撫でて立ち上がる。
来客が全員頭を下げて部屋から出て行き、最後にアークエイドだけが残った。
「鍵は閉めておいてやるから、ゆっくりしてろ。イザベル、アシェは大丈夫だ。長兄もそう判断した。……また明日な。」
「ありがとう、アーク。」
全員出て行くまで待ってたのは、アークエイドが合鍵を持っていることを知られない為だったのかもしれない。
最後の一人が出て行き、部屋にはアシェルとイザベルだけの二人になる。
「ベル、そんなに泣くと目が腫れちゃうよ。」
「分かってますっ。でも、止まらないんです。」
「ふふ、ベルは小さい時から泣き虫さんだね。今日は一緒に寝ようか。怒る人は誰もいないからね。」
イザベルが腕の中で小さく頷いたのを確認して、イザベルを抱き上げ寝台へ向かう。
イザベルを抱きしめたまま横になると、しばらく泣いていたイザベルは、アシェルの腕の中で泣き疲れて眠った。
「ベル……僕と薫のために泣いてくれてありがとう。僕は今、とっても幸せなんだよ。」
聞こえてないと知りつつも、想いを口にしてアシェルも目を閉じた。
「ここが僕の部屋だよ。いらっしゃい。」
学生寮の四号棟の五階までエレベーターで上がり、オートロックの扉を抜けた先の廊下の一番奥にある扉の鍵を開ける。
アシェルが扉を開くと、今日はイザベルだけでなく、アルフォードの専属侍従のアイザックとメルティーの専属侍女のマルローネも出迎えてくれる。
『おかえりなさいませ。』
三人の声が綺麗に重なり出迎えられる。
「ただいま、ベル。……なんだか落ち着かないね。」
ささっとイザベルの傍に寄る。
前世の記憶のせいか、こうやって出迎えられるのは何度経験しても苦手だ。
「本来であればもう少し使用人を連れてくるので、これでも少ないほうです。アシェル様が私しか侍女を付けなかったせいで、メルティーお嬢様まで使用人をマルローネ一人しか連れて来てないんですよ。事の重大さを分かっておられますか?」
アシェル達と一緒に育ったと言っても過言ではないイザベルは、アルフォード達を義兄と慕っていて、メルティーのことも可愛い義妹として可愛がってくれていた。
使用人として邸に仕え始めてからは表立って可愛がることがなくなったが、それでも可愛い義妹だと思ってるのをアシェルは知っている。
「僕のせいなの?……でもやっぱり、ベル以外の使用人は要らない。ベルがいないなら、僕は一人でもいいもの。」
頑なに他の使用人を拒絶する主に、イザベルは小さな溜め息を吐いた。
「とりあえず食事に致しましょう。」
「あ、ベル達もちゃんと座って食べてよ?せっかくダイニングテーブルも入れたんだしさ。」
今まで広すぎる応接間は間仕切りで半分にして使っていて、半分はただの広い空き部屋と化していた。
応接間には大き目のソファやテーブルで、大人数な幼馴染達が来てもしっかり座れるようにしていたが、やはり少し低い位置にある食事は摂りにくかった。
今回、知人以外が訪れることのない入ってすぐの応接間に、新たにダイニングテーブルを導入したのだ。
8人掛けの長いテーブルを二つ繋げており、16人まで、お誕生日席を入れれば18人まで対応可能だ。
横に長いだけなので、応接セットと一緒に並べても部屋にゆとりがある。
もし内装を気にするような来客があるのなら、隣の空きスペースに移すかストレージに仕舞えば良いのだ。
繋げて使う予定のダイニングテーブルが一つずつに分かれている。
今いるのは8人なのでそれでも全く問題はないのだが、問題はその席の数だ。
椅子が5脚しか並んでいない。
もう片方のテーブルには全く椅子が並んでいない。
「ですが私達は……。」
「僕の部屋でそんなこと気にしないの。気にする人は、僕の部屋にご飯食べに来ないから。」
渋るイザベルを無視して、ささっと間仕切りを開けて椅子を持ってくる。
そして5脚だけ椅子が並んでいるテーブルに並べていく。
そんな主の一人の暴挙を目の当たりにし、それぞれ専属で付いている主へ視線を向けて対応の指示を仰ぐ。
「アビーにも、夕食は使用人も一緒に席を囲むって言ってるから問題ないぞ。アイザックもちゃんと椅子に座れよ?」
「マリーもですわ。わたくしの我儘で、貴女一人だけしか侍女を連れてきていないし、アシェお義兄様が甘えさせてくれることには甘えちゃいましょう。マリーだけ別に食事を摂るのも大変でしょう?」
本来であれば、使用人が主人である貴族と一緒にテーブルを囲むなどあってはならないことなのだが。
主達は外ではきっちりしているものの、貴族らしい決まりのことは割とどうでも良いと思っている節がある。
どうやら食卓を囲む顔ぶれも、主達にとってはどうでもいいことのようだ。
アシェルの部屋では新参者の二人は、主の言葉を受けるも、明らかに顔ぶれの中でさらに格上の王族へと視線を向けた。
「アルの言った通り、気にしないから大丈夫よ。それに、アルとアシェが信用している人間しか、ここには入れないんでしょう?だったら、王宮よりも安全な場所だわ。」
「俺も気にしないし、イザベルとは一緒に食事を摂ったこともある。冒険者活動で野営もしてるんだ。今更気にしない。食事のマナーも気にするな。普段からそんなもの気にしてたら、美味しい食事が台無しだ。」
客人も了承済みだということに胸を撫で下ろすと同時に、マナーについても目をつぶるという言葉までもらってしまう。
恐れ多いことに違いはないが、全員納得しているのなら主人達の意向に沿うまでだ。
「ですから言ったでしょう。こうなると思うって。さぁ、お食事をお出しましょう。」
イザベルがアイザックとマルローネを引き連れて厨房へ消える。
侍女長の娘で早くからメイディー邸に仕えていたイザベルは、アイザックとマルローネより少しだけ先輩だ。
「席順はどうしますか?というか、こっちに僕らとベルで、向かいにアビー様とアーク、アイザックとマルローネでも良いですか?」
部屋の主であるアシェルの問いに、アビゲイルは頷いたがアークエイドが少し渋る。
だが、アビゲイルだけを使用人に囲ませるのは、という一言で引きさがってくれた。
テーブルにはしっかりと前菜からメインなどの食事が色々と並んだ。
皆で「いただきます。」を言い、用意してもらった食事を口に運ぶ。
「うん、美味しいね。でも、この味付けはベルじゃないよね。」
「これはマリーですわ。」
「スープがアイザックだな。」
「へぇ、やっぱり作る人が変わると、味付けの癖も変わるんですね。メル、口開けて。あーん。」
メイディーの兄妹はそれぞれ食事を摂りながら、それぞれの使用人達の味付けの癖から誰が作ったのかを言い当てる。
メルティーは学院に入る前に、マルローネだけを連れてくるために、食事の味付けについてはチェック済みだった。
アルフォードは冒険者活動をする時にアイザックと二人で出かける事があるので、野営の食事だろうか。
アシェルの差し出すフォークから、パクリとお肉を口に含んで飲み込んだメルティーに、反対側から次のフォークがやってくる。
「メル、こっちも。あーん。」
反対から伸ばされたフォークにもパクリと食いつき、ようやく飲み込み終えたメルティーが喋る。
「アシェお義兄様、アルお義兄様。わたくしも同じものをいただいてますわ。」
「うん、知ってる。でも、可愛いメルに食べさせてあげたかったんだ。まだ要る?」
「そうだな。でも、メルはあーんしたら、ちゃんと食べてくれるだろ?」
メルティーの左右を挟む二人は終始ご機嫌なまま、和やかに食事を終えた。
ソファに移って食後の紅茶をいただきながら、ゆったりとした時間を過ごす。
イザベルが配慮してくれていて、アークエイドだけはちゃんと珈琲が出てきている。
「なぁ、メルティー。……まさか、家でもその状態か?」
やはり左右から挟まれているメルティーは、二人に髪の毛を触られている。
亜麻色の髪の毛に色白な二人の指がするすると通り抜けては、また指が絡んでくる。
「邸では一緒に居れる時間が短いので、一緒に居る時はこんな感じですわね。アンお義兄様がいたら、わたくしはアンお義兄様の膝の上ですわ。」
全く動じる気配がなくされるがままのメルティーに、問いかけたアークエイドの方が苦笑する。
想像以上の答えが返ってきたからだ。
「そうだよね。僕ら兄妹が揃うのって、食事の時か、お茶か遊ぶ時だもんね。お茶の時だって、全員が揃うことなんて滅多にないし。」
「俺と兄上は、アシェやメルと少し年が離れてるしな。その分、邸に来たばかりの可愛いメルのことも一杯覚えてるけどな。」
邸に来たばかりのメルティーは2歳だ。
アシェルよりも一回り小さくて、人見知りもしないメルティーはとにかく可愛かった。
「メルは色んなものに興味津々で、分からないだろうに庭の植物の名前を一生懸命聞いてきてましたよね。ふふ、あの時のメルも可愛かったな。メルが楽しいって思ってくれないと、もしかしたら義妹が出来ないかもしれないと思って、メルに色々説明してあげたんだ。絶対分かってないのに、僕の言葉に大袈裟に驚いてくれたり、笑ってくれたり。毒草だって言ってるのに触ろうとして、慌てて止めたりね。とにかくすっごく可愛かったし、今もそれ以上に可愛い。」
メルティーを楽しませる作戦のはずが、アシェルの方が楽しんでしまったくらいだ。
「アシェお義兄様っ、そんな小さい時のこと……恥ずかしいですわ。覚えてないから余計に。わたくしには大きなお邸に来たことと、キラキラした部屋に王子様達とお姫様がいると思ってたんですの。お庭ではお義兄様達の髪が綺麗に輝いていて、天使様と女神様みたいだなって。」
「そういえば、そんなことも言ってたな。っていうか、アシェはよくそんな細かいことまで覚えてるな?」
「アン兄様からどう聞いたか分からないですけど、僕は昔から記憶力だけは良いんですよ。流石に乳児期の記憶はぼんやりしてますけどね。アン兄様とアル兄様が、僕のことを一生懸命お世話してくれたのも、しっかり思い出しましたよ。あの時の侍女の名前もフルネームで言えます。初めて僕の部屋に移った時、彼女達がお兄様達に自己紹介をしたのを聞いてましたから。」
アルフォードはアシェルが詳細に覚えていることは聞いてなかったようで、驚きに目を見開いている。
首を傾げているのがメルティーとアビゲイルで、壁際に控えている三人は沈黙を守っている。
「いいタイミングだし、少し僕の話をしますね。皆に聞いてもらっていいですか?ベル達も、一緒に座って聞いて。」
アシェルの呼びかけに、食事の時と同じ席順でソファに座る。
「アシェ……隣に居なくても平気か?」
アシェルよりも不安そうな表情のアークエイドに微笑みかける。
「大丈夫だよ。僕は僕だから。」
「ねぇ、アシェル。アークがこんな表情をするのはただ事じゃないわよね?本当にそれは、わたくしも聞いていい内容なのかしら??」
「アビー様も聞いてください。私の目が原因で、嫌な思いをさせたくないので。」
一人称を変えたアシェルに、メルティーが首を傾げた。
アシェルが男装の時は、“僕”という一人称を間違えたことは無い。
アシェルが振る舞いも言動も男になり切ろうとしているから、メルティーはアシェルの姿で呼び分けているのだ。
「僕には産まれた時から、“授け子”のように前世の記憶があります。いわゆる記憶持ちっていうやつで、最近ようやく全てを思い出したんですけどね。私は薫という名前でした。孤児院出身で、学校は6歳から18歳まで通って、20歳を目前に生涯を閉じています。」
アークエイドの顔色が変わったのが見える。
きっと今のアシェルは薫の眼をしているのだろう。
「私は色んな子供が集まる孤児院の中でも歪な存在でした。ようやく立って歩ける頃に絵本の読み聞かせを聞きながら文字を追えば文字を覚え。職員の話を聞いて単語や意味を知り、絵本を読み漁って得られるだけの知識を得ました。アシェルと薫の本質は一緒で、知的好奇心を満たしたい欲求はあるのに、身の回りには私の心を躍らせてくれるものが無かったんです。そんな世界は、私にとって色のない世界でした。ただただ退屈で、変わらない日々でした。そんな薫は今みたいな眼をしていたみたいです。ねぇ、アーク。そうなんでしょ?」
淡々と話しながらアシェルが問えば、頷きが返ってくる。
「あぁ。見ているこっちが不安になるくらい、アシェが何も見ていないか、どこか違う風景でも見ているかのような眼だ。」
「やっぱりそうなんだね。僕は全く意識してないんだけど。……元々薫の記憶は、名前も分からない状態で靄の中にある感じだったんです。意識して初めて思い出せるような、どことなく他人事のような。でも学院に入って、前世の記憶に触れる機会が多くなってから、僕が薫の眼をすることがあって……。冬休みにアン兄様とアークに付き合ってもらって、ちょっと色々あって、全てを思い出しました。他人事のように見下ろしていた灰色の世界から、私を連れ出してくれた二人の親友のこと。二人を通してみる世界だけが色づいていて、その二人を守る為なら、悪い大人の言うことも聞いてきました。嫌なことを言われたり、されたりもありました。特に嫌な感情を含んだ視線には敏感になっていて、薫はよくパニックを起こしてました。メルは気付いてるよね。僕が時々、メアリーお義母様の視線を避けてること。」
「えぇ。メアリーお母様が何を考えているのかは分からないけれど、アシェお義姉様が、あまりお母様と会いたくないのは知ってるわ。だからお母様がお茶会なんかで長時間いない日が、ドレスの日なのよね?」
「うん、そうだよ。僕の苦手な感情を含んだ眼なんだ。今のこの眼は、僕が小さい時にアン兄様とアル兄様が見た事があるたしいんです。その時はまだ薫の記憶がしっかりと残っていたからだと思います。その時に自分で記憶を封じたのに、自分で開けてしまいました。もうアシェルと薫は一緒だと認識しているし、記憶も馴染んでいるんですけど。どうも記憶力が良すぎて、細かな部分まで思い出せてしまう影響なのか。薫だった時のことを思い出すと、この眼になってしまうらしいです。なので、僕がもしこんな目をしても、あぁ、何か思い出してるんだな、くらいに思ってもらえますか?“授け子”じゃないのに完璧な記憶持ちなのは、少し気味が悪いかもしれませんが。」
そこまで話し終えたアシェルは、瞳を閉じてゆっくりと深呼吸し、アシェルの記憶に思いをはせる。
思い出すのは先程話した、小さくてかわいいメルティーだ。
ゆっくりと瞼を上げれば、明らかに安堵した表情をしたアークエイドと目が合い、大丈夫だよと微笑みかける。
「もういつもの僕ですよね。今はメルのことを思い出してました。こんな風に、気を付けてないと薫の眼をするらしいので。仲が良いほど驚かせたり、怖がらせる可能性があったので話しました。」
周囲を見渡すと、誰もアシェルの嫌な眼はしていない。
イザベルだけが少し泣きそうな表情だが。
「そう……分かったわ。別にわたくし達は、アシェルに前世の記憶があったとしても、気味が悪いなんて思ったりはしないわよ。“授け子”が身近にいるから、記憶持ちのこともすんなり受け入れられると思うわ。少しだけカオルって子の眼をしたアシェルを見てると、不安にはなるけれどね。でも、アシェルはなんともないんでしょう?なら、わたくし達はそういうものだと受け入れればいいだけだわ。皆もそう思っているんじゃないかしら?」
アビゲイルの言葉に、その場の全員が頷いた。
本当にアシェルは恵まれた環境に生きている。
「アシェル様……わたくしは母から話を聞いております。どれだけ辛い思いをされればあんな……。わたくしは、そんなことでアシェル様を嫌いになったりしません。アシェル様はどんなアシェル様でも、わたくしの大切な人です。」
「ベル……ごめんね、泣かないで。薫の記憶より、ベルが泣く方が僕は辛いから。」
アシェルの胸の中に飛び込んできて、グスグスと泣くイザベルの頭を優しく撫でる。
「でも、でもっ……。」
「僕の為に泣いてくれてありがとう、ベル。」
イザベルが泣き止む気配がないのを見て、アルフォードが解散を促す。
「アシェ、そろそろ俺らはお暇させてもらうよ。ベル、アシェは大丈夫だよ。でも、気が済むまで泣いて、アシェに甘えるといい。」
久しぶりにイザベルを愛称で呼んだアルフォードも、少しだけイザベルの頭を撫でて立ち上がる。
来客が全員頭を下げて部屋から出て行き、最後にアークエイドだけが残った。
「鍵は閉めておいてやるから、ゆっくりしてろ。イザベル、アシェは大丈夫だ。長兄もそう判断した。……また明日な。」
「ありがとう、アーク。」
全員出て行くまで待ってたのは、アークエイドが合鍵を持っていることを知られない為だったのかもしれない。
最後の一人が出て行き、部屋にはアシェルとイザベルだけの二人になる。
「ベル、そんなに泣くと目が腫れちゃうよ。」
「分かってますっ。でも、止まらないんです。」
「ふふ、ベルは小さい時から泣き虫さんだね。今日は一緒に寝ようか。怒る人は誰もいないからね。」
イザベルが腕の中で小さく頷いたのを確認して、イザベルを抱き上げ寝台へ向かう。
イザベルを抱きしめたまま横になると、しばらく泣いていたイザベルは、アシェルの腕の中で泣き疲れて眠った。
「ベル……僕と薫のために泣いてくれてありがとう。僕は今、とっても幸せなんだよ。」
聞こえてないと知りつつも、想いを口にしてアシェルも目を閉じた。
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けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【ご報告】
2月28日より、第五章の連載を再開いたします。毎週金・土・日の20時に更新予定です。
また、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。
引き続きよろしくお願いいたします。
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