氷の王子様と微笑みの男装令嬢

芯夜

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第三章 王立学院中等部二年生

160 解毒剤を待ちわびる②

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Side:アシェル13歳? 夏



「熱が下がらないですね。薬を——。」

「治療——。」

寝起きのぼんやりしている頭に、喋り声が入ってくる。

薄っすらと眼を開ければ、ぽたぽたと点滴が規則的に雫を落としていく。

自分は熱を出してしまったらしい。
病院で点滴を受けるなんて、よっぽど悪かったのだろうか。

氷枕をしているようだが、もう生ぬるいぶよぶよした枕でしかない。

熱が出て身体が熱いのに、寒気もしているのでまだ熱が上がっている最中なのだろうか。
身体もとても痛い。

ベッドの周囲がカーテンで区切られているのは、感染症だからだろう。

部屋は薄暗く、明るいカーテンの向こうから喋り声は聞こえてくる。
その落ち着いた喋り方は大好きな人物のものだ。

「……ねぇ、……お見舞い来てくれたの?迷惑かけてごめんね。動けないし、移しちゃダメだから。咲はカーテンよりこっちにきちゃダメだよ?いつも入ってくるの、咲に移さないか心配なんだから。」

点滴を受けているということはに居るんだろう。
温かみのある部屋だが、一般部屋が開いてなかったのかもしれない。個室代は大丈夫だろうか。免除になっていれば良いのだが。

「……薫?目ぇ覚めたん?うちは身体が丈夫やけん、そんなん気にせんでいいんに。体調はどうなん?やっぱしんどい??」

「寒気がするし、身体痛いから。また熱が上がるのかも。面会時間は大丈夫?のせいで、咲が怒られるのは嫌よ。」

「付き添いの許可貰ってきたけん大丈夫ばい。薫はそんな心配せんでいいんちゃ。それより喉乾いとらん?手伝うけん、少し飲んどこ?」

病院の付き添いは滅多なことが無い限り許可は出ないのに、は付き添いの許可をもぎ取ったらしい。

落ち着いているように見えて割とアクティブな彼女は、周囲に迷惑をかけなかっただろうか。

「飲みたい…。ごめんね。マスク、しておいてね。」

「もー分かっとうき、そんなん心配せんときぃ。」

カーテンの開く音がする。

薄っすらと眼を開けるが、逆光での顔は見えない。

優しく抱き起されて唇にちょんちょんと、吸い飲みの先が当てられる。

「自分で飲めそう?吸えるんやったら、自分で吸った方がむせんけん。怠いんやったら目ぇつぶっとったらいいき、無理せんどきぃ。」

「うん。」

お言葉に甘えて重たい瞼を閉じたまま、唇に当たっている吸い飲みから水を吸う。

上手く傾けてくれているみたいで、吸わなければ口には入ってこないし、かと言って空気を吸うこともない。

満足いくまで飲んでから唇を離すと、優しく身体を横たえてくれた。

「咲、ありがとう。……付添い。施設長やお医者さんに怒られてない?嫌な事言われたり、されたりしてない?」

「薫は心配性やねぇ。大丈夫やったに決まっとうやろ。今は熱も高いけん身体もしんどいやろうけど、点滴もしとるし、ちゃんとよくなるきね。薫は余計な心配せんと、しっかり寝ときぃ。」

の大丈夫という言葉にほっとする。
薫のせいで大切な人に被害が及ばなくて良かった。咲も健斗も、薫に対して嘘を吐いたりしないから。

「うん……。ねぇ、咲。いつも熱出した時みたいに手、ぎゅってして貰いたいけど……迷惑じゃない?痛いのと熱で身体がふわふわして、私だけ……どっか行っちゃいそうで怖い。……咲と健斗が居ないとこは嫌……。」

「手ぇくらいずっと握っとってあげるし、傍におるきね。安心して眠りぃ。うちはどこにも行ったりせんき。」

点滴の入っている腕の手が、ぎゅっと握られひんやりする。
薫の我儘をきいてくれたのだ。

「我儘言ってごめんね。咲の手気持ちいぃ……。私が寝たら、施設に帰ったりしない?一緒に、居てくれる?」

身体が辛くて眠たいのに、このまま寝てしまったらが施設に帰ってしまいそうで怖い。

付き添いの許可を貰っていても、あの施設長なら連れ戻しに来る可能性もあるのだ。
を薫のいない施設に帰したくない。

「うん、ちゃんとおるき安心しちょって。おやすみ、薫。明日には、熱下がっちょると良いね。」

「……うん。おやすみ、咲。早く元気になって、健斗にも大丈夫って言わないとだね。」

「そうやね。やき、薫はしっかり寝て、元気にならんとダメばい?」

「うん。」





========



Side:アークエイド13歳 夏



こくりと頷いたは、すやすやとまた寝息をたて始める。

それを見ては小さなため息を吐いた。

病人が手を握って欲しいというだけで、我儘を言ってしまったと思っているのだろうか。

きっとアシェルは熱と痛みに浮かされいて、使った麻酔の影響もあり記憶が混濁しているのだろう。
点滴を見て、過去に入院していた時の記憶が引き出されたのかもしれない。

熱くて青白い手をぎゅっと握ってあげたまま、リリアーデはの向こうへ視線を投げ掛ける。

部屋に居たアレリオンとアークエイド、イザベルが布の隙間から様子を伺っていた。

は寝ましたよ。でも、出来たら防音しておいた方が良いかもしれないですね。痛みと熱で眠りが浅くなっているみたいなので、私達の話し声で起きちゃうかもしれません。あと、部屋は薄暗いままじゃないと、姿が見えたらアシェルも薫も混乱するかもしれないです。」

リリアーデの意見を聞いたアレリオンが、アシェルの周囲だけを囲むように『防音サイレス』をかけた。

イザベルがリリアーデの為にベッドサイドに椅子を用意してくれて、リリアーデはアシェルの手を握ったままそこに腰掛けた。
寝台は広いが、点滴の支柱棒を置くためにアシェルをベッドサイドに寄せておいてよかった。

アークエイド達もそれぞれ椅子を置いて、アシェルが目覚めたとしても視界に入らない位置に陣取る。
次に目覚めた時も、意識が混濁していないとは限らないからだ。

「リリアーデ嬢が居てくれて、本当に助かったよ。僕達には喋り方なんて分からないから。確か同郷なんだっけ?」

アレリオンの言葉にリリアーデは頷く。

「同じ国で、同じ地方出身ですわね。先程のように、地域ごとに特殊な言葉使いというか、方言があるんですけど。薫の親友二人は、その方言で喋っていたみたいなので、薫が標準語なのが珍しいんですよ。前にわたくしが百合っぽい落ち着いた声で喋っている時は、咲さんの声に雰囲気が似てるって言ってたから……勘違いしたのかもしれませんわね。」

リリアーデが大人びた横顔で、アシェルに優しい視線を向けている。

ただ見ていることしか出来なかったアークエイドは、これでもアシェルが少しは弱い部分も見せてくれるようになったと思っていた。
だが、それはあくまでも今の幼馴染の中では、に過ぎなかったようだ。

「アシェは……サキとケントになら弱音を吐くんだな。」

「ふふ、なによ、アーク。薫の幼馴染にヤキモチ妬いてるのかしら?絶対に二人と同じ立ち位置にはなれないから、ヤキモチ妬くだけ無駄よ。」

リリアーデの揶揄うような言葉に、アークエイドはムッとする。

「何故そう言い切れる。」

「薫と違って、アシェの世界は閉ざされていないもの。きっと薫には咲さんと健斗君しか、頼れる人も守りたい人もいなかったんでしょうね。いつもアシェが言ってたでしょう?って。それってつまり、その二人が居なかったら薫は、自殺でもしてたかもしれないってことよ。そして最後は……皆様は聞いてないかもしれないけれど、わたくしは聞いたわ。他殺だってこと。きっと全く抵抗しなかったんでしょうね。薫にとって、すでに咲さんと健斗君と離れ離れになった世界は、頑張ってでも生き延びたい世界じゃなかったんでしょうね。アークは自分が死んだ時に、アシェが後追い自殺してくれるようになる自信ある?わたくしには無理ね。だって、アシェは誰かだけにしていないもの。」

アークエイドもアレリオンも薫の死因は、酔っ払った上司からのレイプと絞殺だと聞いている。

だが、唯一聞いていなかったイザベルが声を上げた。

「薫さんはどなたかに殺されて、アシェル様はそれを覚えているのですか!?」

「えぇ、本人はとてもどうでも良いことのように言ってたけれどね。経緯は置いておいて、死因は絞殺とだけ言っておこうかしら。今まで見たことが無いから予想でしかないけれど……アシェはチョーカーや首元がきっちりめのタートルネックは好まないんじゃないかしら?タートルネックを着ていても、デザイン的に首元にかなりゆとりがあるものしか着てないわよね。運動着の詰襟も、実はホック外してるし。思い出したのは最近のはずなのに、その前からだから、無意識に首への圧迫を避けているんだと思うのよね。」

「その通りでございます。アシェル様が珍しく嫌がるので、チョーカーやタートルネック、詰襟のお洋服はご用意しておりませんし、あってもアシェル様が良いとおっしゃられた物だけです。まさか、それが嫌な思い出のせいなんて……母にも注意するように伝えておきます。」

「リリィはよく、そんな細かいところまで見てたな。」

言われてみれば、絞殺されたのだから首への圧迫を避けてもおかしくはない。

それと同時にアークエイドは、普段は大雑把に見えるリリアーデの観察眼に驚かされる。

「真面目できっちりしてるアシェが、不良の学ランみたいに詰襟のホックを外してるのよ?気にならないわけないじゃない。」

アークエイドには分からない単語が出てきたが、おそらく前世には似たような形状の服があったのだろう。

「そうか……それで、依存とは?」

「言葉のままの意味よ。薫には親友二人しかいないし、二人に精神的な意味で頼り切ってたのよ。子供が親を無条件で頼るようにね。さっきの聞いてたでしょう?弱音を吐いてるのに、ずっと咲さんに嫌われないか、咲さんが嫌な眼に合わないかを気にしてたのよ?記憶が混濁するくらい辛いはずなのに、感染症からもルールに煩い大人からも、咲さんを守ろうとしてたのよ。自分より咲さんの方が大事だったのね。手を繋いで欲しいっていうお願いだって、本当は言いたくないけど、不安だから高熱の時は言っちゃうセリフなのね、きっと。咲さんの様子を伺って、我儘を言ったっていったのよ……たったこれだけのことなのに……。帰ってしまわないか聞いてきたのも、愛情確認の一種なんじゃないかしら。我儘を言ったから、嫌われてしまわないか不安だったんでしょうね。」

リリアーデの考察は的を得ていると、それを聞いた三人も思う。

リリアーデの機転のお陰で、アシェルはすっかり安心した様子で眠っている。

「アシェが小さい時から我儘を言わないのも、弱音を吐かないのも、その辺りも関係していそうだね。それにしても、リリアーデ嬢は、前世でもしっかり色々なことを学んでいたんだね。処置の介助と言い、アシェに水を飲ませるのも、考察もとても素晴らしいよ。」

「そんなことありませんわ。わたくしは、今も昔も勉強嫌いですもの。ただそういうことを仕事にしていて、経験があるから上手く見えるだけですわ。日常生活援助と患者さんの様子を観察して、違和感や異変があれば医師に進言するのは、看護師の業務ですしね。」

リリアーデは謙遜しているが、ただ経験があるだけではなく、そこには患者のことを気遣う心もあるのだろう。
そうでなければ、こんな風に相手に寄り添った会話や援助は出来ないはずだ。

「リリィは凄いな。俺は……。」

「もう。アークが暗い顔をしてたら、アシェが心配しちゃうわ。自分のせいでって。それにしてもアレリオン様から頂いたものも、叔母様特製の解熱剤も使ったのに、全く熱が下がらないわね。また壊死している独特の匂いもするし……。ただの術後侵襲なら一週間もすれば下がるけれど、傷が何度も悪化するんじゃ、熱も下がらないわ。」

「解毒剤自体は出来てるんだけど、アシェには使えないんだ。今アルと、父上が来てくれて調整はしてくれているけど……。」

アレリオンの言葉で、初めて解毒剤が既に完成していることを知り驚く。

だが、完成しているのに使えないとはどういうことなのだろうか。

アークエイドとリリアーデが疑問符を浮かべたのを見て、アレリオンは苦笑する。

「二人とも、出来たなら使えば良いのにと思ってるんだろう?アシェの体内魔力の動きが、僕らが味見した時の動きと全然違うんだ。ただ解毒をするだけなら、僕らは味見した時点で出来るんだけどね。アシェに魔力を渡したアルが言うには、全然動きが違うらしいから、魔力で解毒してやることもできない。その上、解毒剤はあくまでも通常状態の解毒を促すんだ。魔素が少ない場所で身体が頑張った影響なのかもしれないけれど、今のアシェを解毒するには、アシェの状態に合わせた専用の解毒剤を作らなくてはいけないんだ。ある程度完成させた時点でアルと父上がアシェの診察に来るとは思うけど、何回か調整する必要があるかもしれない。僕だって出来るだけ早く、アシェを楽にしてやりたいんだけどね。」

魔力での解毒は、何故しないのかとは思っていた。
NMの毒だから適応外なだけだと思っていたが、それとは別の事情があったようだ。

「さて、僕も実験室で手伝って来るよ。あんまり共同で開発したことが無いから、僕が行って役に立つかは分からないけどね。三人も交代で、ちゃんと睡眠や食事を摂るんだよ。看病している君達が倒れたら元も子もないからね。アシェにかけた防音サイレス解除キャンセルするまで消えないから、アシェと話すときは、アシェの腕の位置より頭を近付けてから喋ってあげてね。」

そう言って、立ち上がったアレリオンは部屋を出て行く。

「わたくしは手を繋いだままここで仮眠させて貰うわ。百合は夜勤をしてたこともあるし、不眠気味だったから、二日くらいなら徹夜も出来ちゃうしね。イザベルとアークは、ソファで仮眠したらどうかしら?心配で眠れなくても、横になって目を閉じているだけでも少しは身体が楽よ。」

頼もしいリリアーデに促されるが、眠る気にはなれない。

「私はリリアーデ様が、本日はお帰りにならないことを伝えてまいりますね。戻ってアシェル様の氷を交換してから、その後仮眠させてもらいます。」

「分かったわ。お願いね。」

立ち上がってぺこりと頭を下げたイザベルも部屋を出て行く。

「俺は仮眠するとしても、ここで良い。」

「全く。アシェもだけど、アークも言いだしたら聞かないんだから、困っちゃうわね。良いけど、椅子から落ちたりしないでよ?ケガ人が増えるのはごめんだからね。」

「そんなへまはしない。……リリィの見立てでは、アシェの状態はどうなんだ?」

アークエイドにはとにかく解毒が済むまで、アシェルの背中の傷は何度でも壊死してアシェルを苦しめるし、その傷がどうにかならないことには熱が下がらないということしか分からない。
そして壊死を放っておけばどんどん範囲が広がるので、あの苦痛を伴う処置を何度も行わなくてはならないのだろう。

「わたくしは医者ではないから、真に受けないでちょうだいね?本来、看護師は診察できないんだから。……どうにか点滴が入ったから、アシェがこのまま寝たきりでも、脱水や栄養不足で死んだりはしないわ。今入ってる針が使い物にならなくなった時に、血管が探しにくくないように、多めに捕液してるしね。むくんでこないかはちょっと心配だから、本当は尿量も見ておきたいんだけど。さすがにバルーンもオムツもないから医療用のスライム頼りだし、仕方ないわね。人間飲まず食わずでも、とりあえずこの点滴があれば一か月以上持つわ。」

今アシェルに入っている液体はそんなに凄いのかと驚いていると、リリアーデが苦笑する。

「別に、これにものすごく栄養があるわけじゃないわよ?ポカリを薄めたようなもの……そうね、人間の身体の水分に近くて、汗で出て行くミネラルなんかも入ってるって思ってもらったら良いかしら。人間、栄養がなくても、とりあえず水分があれば、しばらく生きていけるのよ。前世で治療上経口摂取できない患者さんも見て来たし。実際に一か月以上まともに食事が摂れなくても、水分だけで生きていた人間が言うんだから間違いないわよ。」

リリアーデは笑いながら言っているが、それはリリアーデの前世では食事が摂れないような状況だったということだろう。精神病を患っていたらしいので、そのせいなのかもしれない。

「次に傷の具合だけど……これは早く何とかしてあげたいわね。魔法も万能じゃないから、これだけ傷が大きくて回復させる量が多いと、ヒールをかけても身体への負担は大きいのよ。壊死した組織は取り除いてあげないと、魔法が無くったって綺麗なお肉は盛り上がってこないしね。クリーンも使ってるし、無菌操作できっちり処置をしているから問題ないと思うけど、感染症も怖いわ。傷が膿むだけじゃなくて、血管の中にまで菌が入っちゃうと、とても状態が悪くなるのよ。わたくしもアレリオン様もそこには注意してるけど、菌はどこにでもいるから、絶対に大丈夫って言う保証はないわ。アシェは普段から身体を鍛えているし、若くて体力もあるから、予後が悪いってことは無いと思うけれど。こればかりはその時がこないと分からないわね。……良くないことを気にしすぎないでね?わたくしは起こり得る可能性の話をしただけだし、耳触りの良いことだけを聞きたかったわけじゃないんでしょう?」

「あぁ……色々なことを考えているんだな。」

「まぁ、何が起こるか予想してないと、適切な観察も処置もできないもの。外傷の場合、どんなものでも同じことが言えるわね。その最悪の事態を起こさないために、達は処置や治療にも気を遣うし、早期発見早期治療が出来るように、患者さんの状態を観察するのよ。体温、血圧、顔色や尿量……そういった身体の一つ一つの状態が出すサインを、見逃さないようにね。まぁ、難しいことは良いのよ。私にはそれだけの経験と、経験に基づいた知識と勘があるってだけなんだから。アークに出来ることは、アシェの回復を祈って待つことだけよ。それが一番、苦しいんだけどね。」

リリアーデの言う通り、何もできない無力な自分が苦しいのかもしれない。

アシェルは今もこうして毒と傷で苦しんでいるのに、ただ回復を待ちわびる自分が苦しいなど、おかしい話かもしれないが。

イザベルが戻ってきて、アシェルを起こさないように氷枕と氷嚢を交換してくれる。
それからペコリと頭を下げ、応接間のソファで仮眠を取るために出て行った。

メイディー邸のアシェルの私室と一緒で、この部屋にも最低限の調度品しか置かれていない。
もしこの部屋にソファがあれば、イザベルはそこで寝たのだろう。

「まぁ、わたくしはこのまま、アシェが大丈夫って状態になるまではここに居るから。アークも何か気付いたことがあったら教えてちょうだいね。そういう違和感って、根拠が無くても大事なサインなこともあるから。わたくしは少し仮眠するわ。」

「分かった。おやすみ、リリィ。」

寝台に頭を預けてリリアーデが瞳を閉じたのを見届け、体質で薄暗くても良く見える眼でアシェルを見つめる。

時折苦しそうに呻くのは、傷と熱どちらも原因なのだろう。

やはり自分のせいでという後悔の念は消えないが、アシェルを不安にさせたり心配させないためにも、それが伝わらないように振舞わなくてはいけない。

誰もがアシェルの為に奔走する中、何もできない無力さを感じながら、アークエイドはただアシェルの無事を祈って時間が過ぎるのを待った。
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