氷の王子様と微笑みの男装令嬢

芯夜

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第四章 王立学院中等部三年生

214 交換条件②

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Side:アシェル14歳 春



アークエイドとあーだこーだと言い合いをした結果。

元々アシェル達兄妹の好みに合わせたデートをしてくれようとしていたアークエイドへのお礼として、今日から丸二日間一緒に過ごすと伝えたのだ。
膝の上には乗らないが寮でよくそうしているように、アークエイドの膝の間に座って本を読んでいていいなら、そこまでの触れ合いは許すということで決着がついた。

流石に豪華すぎる天蓋付きの寝台でそんなことをする訳にはいかないので、靴を脱いで大きなソファに足を上げ、アークエイドを背もたれに座っている状態だ。
一国の王子様の私室で、その王子様を背もたれにするなど不敬以外のなにものでもないのだが、本人がそれが良いと言っているし、壁際に控えるダニエルも何も言ってこないので問題ないのだろう。

いくつか読みたい本をストレージに入れて持ってきていいと言われていたし、特別何かをするわけではなく、最初からこんな風にのんびり過ごすつもりだったのだろうと、ご機嫌なアークエイドから伺い知ることが出来る。
——アークエイドがご機嫌なのはそれだけではなく、ダニエルが居るにも関わらずアシェルがここまでの密着を許してくれたことにもだった。

『ストレージ』から取り出した、今年アスラモリオン帝国から発表された術式論文に目を落とす。バインダーにメモ用紙を挟み、万年筆も取り出して準備万端だ。

この分厚い論文は毎年この時期に発表されるので、アシェルが読むだろうとアベルが取り寄せてくれているのだ。

「これは……何の術式だ?。」

後ろからアークエイドが覗き込みながら、疑問を漏らす。

アークエイドはあまり返事を期待していなさそうだったが、周囲を観ているアシェルは流石に聞こえている。
——いつもだったら文字を追い始めた時点で、声をかけられても気付かなかった自信があるが。

「これは術式の一部だけだから、ココだけじゃ分からないと思うよ。今年のは色とりどりの花火に、それを更に彩るイルミネーションを複合させた術式だね。今までそれぞれ単体の発表はあったけど、こうやって一つの術式で完成されているのは初めてかな。」

基本的にアスラモリオン帝国の魔術開発室から発表される術式は、どれも一つ一つが大きく、あちらでは魔法使いではなく魔導士と呼ばれている人間が数人がかりで魔力を注ぎ込んで、ようやく発動するようなものだ。

常夏のアスラモリオン帝国は観光地になっていて、毎年発表される術式は、どれも大勢の目や耳を楽しませてくれることが目的のものだ。

アスラモリオン帝国には魔族と呼ばれる人種が住んでいて特徴的な青灰色の肌を持ち、ヒューナイト王国に住む人族と違って、国民全員が魔力持ちだ。
そんな民たちですら魔法を扱うのが当たり前な国の中でも魔力量が多く、より魔法を使うのに長けた人間を魔導士と呼ぶ。

毎年それなりの数の論文が発表されるのだが、今時期に出るものが新しい術式で、そのあと一年間は少し梃入れしたものやアレンジをしたものが発表される。

そしてどの論文もダミーのない術式だけのスッキリした記載でありながら、大きすぎるが故に、術式はパーツごとに数枚に分かれて記載されている。
そのパーツの配置図はあるものの本当の術式を一度に全部確認したいと思ったら、自分で実際に書き写すか、アシェルのように頭の中で組み立てて理解する必要があるのだ。

「内容的にアスラモリオンのものか。」

「うん。今年のヤツが数日前に邸に届いたから。気になる?どうせ没頭は出来ないから、何がどうなってるのか説明してあげるよ?どんな効果を持たせてるとか、この術式はこんな働きを持ってるとかで、パーツごとに分かれて術式と論文の記載があるから。いきなり全体を見るより分かりやすいはずだし。一部の論文は物凄く丁寧にその術式を選んだ理由とか、もし他の事例ならどうするかとかまで書かれてるから。僕が説明するまでもなく、アークにも分かる場所はあると思うよ。」

「一部なのか?」

「うん、一部。沢山の人間が集まって、多分ここに書かれてるパーツごとにチームがあって、一つの目標に合わせてパーツを仕上げて、持ち寄って擦り合わせてを繰り返して作られているから。担当ごとに論文の仕上がりに差があるんだよね。学院祭の学生が書いた論文も、人によって説明の仕方に差があったでしょ?あれは個人だからそこまで目立たないけど、一冊にまとめられているから慣れてないと少し読みにくいかも。」

「そうか……だが俺に説明すると、アシェがゆっくり見れないだろ。俺はいつもみたいに後ろから見てるから、自由に読んでくれ。」

「そう?じゃあ遠慮なく。」

説明は要らないらしいので論文の術式に目を落とし、まずは全体的な術式を把握してしまう。

それからまた最初のページに戻り、今度はパーツごとに論文を読みこみながら、しっかりとどんな術式だったのかということを理解していく。

その一つ一つのパーツごとにまずは気付いたことを書きだして、最後まで読んで。
それから書きだしたことを見比べながら、今度は他のパーツとの相性や接続も見ながらメモに修正を加えて。
それを何度も繰り返して初めて、アシェルはこの論文を理解し読み切ったと言える。

そのとても楽しい読書に没頭してしまわないように気を付けながら、温かい居心地の良い温もりの中で、アシェルはいつものように論文を読み進めるのだった。



「アシェ。お腹は空いてないか?昼食は過ぎてしまったが、菓子やケーキで良ければ準備させるぞ。」

「えっ、もうそんな時間なの?ごめん、お昼食べたかったんじゃない?」

アークエイドの言葉にハッと顔を上げ時計を見れば、もう15時だ。
探査魔法サーチを使っているので周囲に気を配っているし、論文に没頭しきっていたわけじゃないが、どうも時間感覚はいつも通り無くなるものらしい。

言われてみればお腹が空いている気がしなくもないが、冒険者活動をしている時はお昼を摂っていないことが常だったし、普段錬金で実験室に籠ると寝食を忘れて没頭してしまうくらいだ。

「俺は別に構わない。食事はそこまで重要視してないしな。むしろ、神経を使わなくて良い分、王宮では回数は少ないほうが楽だ。」

王族の関係は良好なのに、家臣たちが勝手に暗躍して後継者争いをさせようとしているからだろう。
アークエイドの言葉から、毒殺の危険に対して神経を使っているのだと分かる。

「僕はどっちでも良いけど、アークが食べたいなら僕が味見するから。アークが気を付けなくても良いよ。仮に誤って口にしたとしても、ちゃんと解毒してあげるから。」

「くくっ、それは心強いな。だが、アシェが要らないなら俺は良い。折角アシェとこうやって過ごしているのに、邪魔者は入れたくないからな。」

アシェルに回されていた腕に力が入り、チュッと耳元にキスが落とされる。
そのくすぐったいような甘い刺激から目を反らしながら、アシェルは苦言を呈す。

「アーク。それは僕、許してないんだけど。もし次やったら、縛り上げるからね。」

「もっとアシェに触れたいのを我慢してるんだ。これくらい許してくれ。」

「アークの希望に合わせてココに座ってるんだから。それくらい我慢してよね。」

アークエイドの苦笑が背後から聞こえる中、食事もお茶もしないならと、また論文に目を落としかけて、どうやら沢山のを引き連れた乱入者が訪れそうだと溜息を吐いた。

今アシェルの観ている範囲に入ってきたのは、おそらく乱入者を追いかけているとそのだろう。
渡り鳥が探査魔法サーチを使って、必死に追いかけてきている。

出来ればアシェルの勘違いであってほしいと思うが、乱入者であるは凄い勢いで躊躇いもなく真っ直ぐと、王族の私室が集まるこの奥まったエリアに踏み込んできた。白騎士を伴っている雰囲気でもない。
流石に非常識すぎるのではないのだろうか。

「アーク、離して。」

ひんやりとした冷たさを持ったアシェルの声に、アークエイドは流石に先程のキスはやりすぎたのだろうかと慌てる。

「すまない、怒らせたか。」

「違う。もうすぐ招かれざる客が来るから。多分、保護者は迷って間に合わない。を刺激すると、ダニエル殿が対応に困るでしょ?だから離して。」

アシェルの言葉から事情を察したダニエルが、壁際からスッと扉の前に移動する。
背を向けて警護をしていると言われても、あまり違和感が無い状態だ。

「くそっ、またか……。ダニエル、このままでも問題ないか?」

「殿下の思し召しのままに。というよりも、いっそ事実は置いておいて、男色だと言い張ってみたらどうですか?現在の状態であれば、説得力もありますし。」

苦々しく呟いたアークエイドに問われたダニエルは、周囲を警戒しながらも軽口を叩く。

いや、軽口に聞こえるが、既に何度もこの突撃が行われているのだろう。
軽口のようでいて、それでこの襲撃が無くなる可能性があるなら、本気でそう思わせたら良いと思っているようだ。

「女が苦手だと言っても無駄だったしな。……アシェ、すまない。巻き込んでしまうが構わないか?」

「全然離してくれる気配は無いし、困ってるんでしょ?付き合ってあげるけど、僕自身が男色だと思われるつもりはないからね。……突撃に気付いていなかったフリして、このまま仲が良いアピールすれば良いんじゃない?学院祭の時と違って、いつも通り親し気に話していればそれっぽく見えるだろうし。状況によっては、不本意だけどにアプローチして誤魔化すから。そのつもりでいてよね。」

「それは……困る。」

「何が困るのさ。」

「アシェに本気になられたら、今度はアシェのところに押しかけるだろ。それは嫌だ。」

「アークより対応上手い自信あるから、迷惑とか気にしなくて良いんだよ。——30秒後、来るよ。」

まるで魔物が出る直前のように小さく鋭い声でアシェルが言った言葉に、作戦会議擬きは終了し、先程までのような和やかな雰囲気が作られる。

「ねぇ、アーク。ここの術式だけど、ココを他のに置き換えるとしたら、何に置き換える?」

アークエイドと視線を合わせるように顔を上げながら、論文の一部を指さす。

ちらりと護衛対象の位置を確認したダニエルは、先程までの会話が無ければ二人の会話も仕草もとても自然なもので、あれだけ親密に見える状態ながらも、本人たちはお互いに意識していないと言い張ることもできるだろうと思う。

「ここか?少し——。」

アークエイドが言葉を言い終わる前に、バァン!と大きな音を立てて両開きの扉が開かれた。

少し声が聞こえていたが、その乱入者を止めようとする白騎士たちは、「来賓で皇族であるわたくしに手を出して良いのかしら?もしそうなら、わたくしの護衛達が黙ってませんわよ。」と脅され、それでも止めようとしたところで達に周囲を囲まれてしまった。

下手に護衛とやり合うだけでも国際問題になりかねないため睨み合いを続けているものの、あちらも主君の命令がある以上、お互いに手を出せないし引けもしない膠着状態なのだろう。

「アークエイド殿下っ。本日も参りましたわ。今日こそわたくしとお茶を——。」

「本日、ムーラン皇女殿下の訪室は予定にございません。お引き取り下さい。」

開け放った扉から現れた鮮やかな青の——サファイアブルーのドレスを着た、特徴的な青灰色の肌を持つ少女が、そのままの勢いでアークエイドを探して突撃しようとする。
その進路にスッとダニエルが立ち塞がり、事務的に告げた。

アスラモリオン帝国第一王女のムーラン・モリオンは、ダニエルのことを頭からつま先までじろじろと見て、小馬鹿にしたように口を開く。

「また貴方なの?毎回毎回、わたくしの邪魔をしないでくださるかしら?いくら貴方が愛しのアークエイド殿下の近衛だとしても——。」

「ねぇ、アーク。今日はお客さんが来る予定だったの?あのご令嬢は、前に学院祭の見学にいらしてたムーラン皇女殿下だよね?」

「あぁ。春から留学生として学院に来るからな。それまでの間、王宮に滞在してるんだ。でも、ムーラン皇女とは何の約束もしてない。それより、術式についてだろ?皇女の相手はダニエルがしてくれるから、アシェは気にするな。」

「でも……アークと早く新しい論文を見たくて押しかけちゃったけど、僕なんかより皇女殿下の方が大事でしょ?……論文の話はしたいから、もしアークが迷惑じゃなければ皇女殿下とお茶が終わるまで、どこかで待ってるよ?」

「アシェの方が大事に決まってるだろ。俺はアシェと一緒に居たいんだ。それに、いつ来ても良いと言ってるだろ?もっと遊びに来てくれて構わないんだぞ。」

伝わるかなと思ったが、アークエイドはアシェルの望む返事を返してくれた。
これでムーランに伝わらなければ、非常識な上におつむの足りない皇女だということになる。

ムーランは声が聞こえた場所に見えた、恋人同士が密着して座っているような体勢で、それも視線を合わせて話す顔の近い二人の男性に。
そして前に護衛として来ていた無礼な男が、折角気を利かせてどっかに行こうとしているのに、アークエイドがそれを引き留めることに。

ムーランは顔を真っ赤にして、怒りでわなわなと震えた。

それに今の話はどう聞いてもアシェルと言ったあの男は、約束もなく今日たまたま遊びに来ているようだ。それならば約束をしていなかったムーランと同じ条件なのに、あの男はいつ来ても良くて、ムーランは毎回追い返されるのだ。納得がいかない。

「アークエイド殿下っ。わたくしよりも、そんな男との時間を望まれますの!?身分も見た目も、アシェルなんかよりずっとわたくしの方が釣り合いますわっ。抱き心地だって、女のわたくしの方が良いですわよ?アシェルだってわたくしとお茶をするように言ってるし、わたくしとお茶をしましょう。その方がずっと有意義な時間だわ。」

ツカツカと歩み寄ってきたムーランは、怒鳴ったかと思えば何故か自信ありげに、メルティーよりもない胸を張った。
褐色の髪の毛は癖っ気でフワフワしていて可愛らしいイメージだし、小柄で幼児体型だ。

確かに抱き心地は良いのかもしれないが、それは女性的な柔らかさと言うよりも、小さな子供を抱き抱える抱き心地の良さだろう。
性格がここまで残念だと、ムーランに求婚する人間は身分目当てか幼女趣味か。もしくはこの自由気ままで他人の迷惑を考えない破天荒な性格が好きな、変わり者なのではないかと思う。

それにアシェルはムーランとお茶をするなら待っていると言っただけで、別にムーランとお茶をすることを勧めた覚えはないのだが。

視線をムーランに向けたので、アークエイドがどんな表情をしているのかは分からない。
それでもアークエイドの怒りがひしひしと伝わってきて、会話の矢面に立つために口を開こうとした時。

若干迷いつつもようやく辿り着いたが、見覚えのある二人のを連れて、開け放たれたままの扉から飛び込んできた。

「はぁっ、はぁっ。私室への許可なき立ち入り、失礼しますっ。……姉上!!何度ご迷惑をお掛けしないように説明すれば理解していただけるのですかっ。あぁ、それにお客人がいらしてるじゃありませんかっ。……アシェル殿?お久しぶりです。まさか編入前にお会いできるとは思いませんでした。それと前回に引き続き、姉上がご迷惑をおかけして申し訳ありません。ほら、姉上。戻りますよ。」

アスラモリオン帝国第二皇子であるモーリスは、息を切らしながらもしっかりとアークエイドに詫びを入れて、アシェルにわざわざ挨拶をした上で、更には何の躊躇いもなく頭を下げた。
相変わらずモーリスは皇子でありながら謝罪慣れしているし、頭を下げることに躊躇いは無いようだ。

一緒に走ってきていたダーガとクーフェという護衛の二人は、白騎士と睨み合いを続けていた自国の騎士たちに命令し、謝罪させ、全てを廊下に直立させている。
沢山いるムーランの護衛騎士よりも、モーリスの護衛騎士である二人の方が立場が上のようだ。

モーリスはムーランと違って、とても常識的で礼儀正しい。そして、祖父と母の影響を受けて魔術式が大好きな好青年だ。

昨年の学院祭に、ムーランとモーリスが公務であるもののお忍びで見学にやってきた。
その時にムーランはとてもじゃないが看過出来ないことをしでかしたので早急にご退場いただいたのだが、モーリスは真剣に学生の術式論文発表を見に来ていた。

モーリスの許可も得て、身分差が有るにも関わらず互いに砕けた口調で話し、論文について沢山語り合ったメイディーと同類の人間だ。

「モーリス殿、お久しぶりです。……いえ、モーリス皇子殿下とお呼びするべきですね。」

「いえいえ。正式な自己紹介はしていませんし、あれだけ楽しくお話させていただいたんです。新学期からは、一学年下にはなりますがヒューナイト王国の王立学院に留学させていただけることになりましたので、余所余所しくされると少し寂しく思ってしまいます。」

何故か弟とアシェルが親し気に会話を交わす様子に、アークエイドとの会話を邪魔されたムーランは、その邪魔者であるモーリスを睨みつける。
ダニエルも邪魔だが、毎回毎回何故かモーリスが気が付いてこうして走ってきて、ムーランとアークエイドの逢瀬を邪魔するのだ。

「貴方たち。話すなら他所に行ってくれるかしら?モーリスが頭を下げるのは勝手だけど、別にご迷惑なんてかけてないわ。それと、アシェル。いつまでアークエイド殿下に身体を寄せてるの?さっさとそこを退きなさい。」

折角モーリスが来たことで背後の怒りが少し落ち着きかけたのに、今度は何に怒ったのだろうか。
さっきはアークエイドの意見を無視した無茶苦茶なことを言っていたが、今の矛先はモーリスとアシェルだったはずだ。

「ムーラン皇女殿下。さっきからアシェのことを呼び捨てにしているが、名前で呼ばないでいただけるだろうか?アシェへの命令もだ。先程の話だが、私は女性が苦手だとお伝えしたはずだ。貴女の抱き心地がどうかは知らないし、知りたいとも思わない。公務中は仕方ないが、必要以上に触れ合うつもりはない。」

アークエイドの冷ややかな声が聞こえる。
それでもムーランは、アシェルを呼び捨てにして何が悪いの?と首を傾げていた。

確かに名前に関しては、事前に資料としてフルネームは伝えてあるはずだが、対面してからはアシェルとしか紹介されていない。呼び捨てにするのは常識外れだが、名前呼びだけはムーランは悪くないだろう。

「きっとそれはアークエイド殿下が、今まで女性との関わりが少ないせいですわ。もっとわたくしと過ごす時間を増やしていただけたら、そんな考えなんて消えてしまいますわ。それに、わたくしがアシェルに命令をするのがどうしていけないの?わたくしよりも身分の低い民は、皇族であるわたくしの命令を聞くべきだわ。」

「姉上っ!何度そんなことは無いと言えば!民も家臣も、心を持った人間なのですよ!?」

「うるさいわ、モーリス。黙りなさい。そして、アシェル。わたくしは退きなさいと言ったわよね?何をグズグズしているの??」

本当はムーランの言うことを素直に聞いてやる必要はないのだが、あまり自由にキャンキャン吠えさせるとアークエイドがぶち切れそうだ。外交に影響が出ては不味い。

「失礼しました、ムーラン皇女殿下。」

体重を預けていたアークエイドから身を起こし靴に手を伸ばそうとした身体は、またアークエイドの温もりに包まれる。

「どうしたの、アーク。ムーラン皇女殿下の御命令だし、僕とこうしてるのは良くないんでしょ?」

自然を装ってアークエイドのサファイアブルーの瞳を確認する。

怒ってはいるようだが、抑えが効かないほどではないようだ。
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