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第四章 王立学院中等部三年生
257 恋人のお宅訪問④
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前話の※が②として投稿されていますが、②は普通の話で抜けております。
順番を変えてアップしてますので、毎日見てくださっている読者様は、恋人のお宅訪問②(無印)から読み直していただけると助かります。
いきなり話が飛んで※話になっていて申し訳ありませんでした。
(1.18)
********
Side:アシェル14歳 秋
アシェルが意識を浮上させると、アークエイドは着替えを済ませており、アシェルも丁寧に身体を拭かれたのかスッキリとした状態で服を着せられていた。
恐らく床に置かれて丸まった布団が使ったものなのだろう。
アシェルが寝ている場所には新しくて綺麗な布団が使われていた。
たっぷりと中に出した白濁をどうしたのかは、流石に恥ずかしくて聞けなかった。
というよりも、クリーンは基本的に体外を綺麗にするものだ。聞かなくても指を入れて掻き出すか、お湯などで洗い流すかしか方法はない。
手桶の中には濁った水とタオルが入っているので、それも使って綺麗にしてくれたのだろう。
そしてイザベルは下着まで用意していたのかと、シャツから覗いた色の違うブラジャーを見て思った。
着心地が悪いということは無く、綺麗に胸の肉はカップの中に納められている。
アシェルはイザベルに言われて初めて正しいブラジャーの着用方法を知ったのだが、アークエイドはどこでそんな知識を仕入れたのだろうか。
アークエイドはというと、リクライニングチェアに座って何かを書いていた。
書類のように見えるので、執務の一部なのかもしれない。
「アーク……ごめんね、身支度までさせて。」
「ん、起きたか。無理をさせて悪かったな。一応傷薬は塗っておいたが、身体が痛んだりしないか?」
使った場所はアシェルの秘部にということだろうか。
ハッキリと傷が出来ていたら魔法で治してしまえば早いのだが、目視出来ない傷は治療がしにくい。それに女性器の中など、普通は詳しくないだろう。
確かに無理やり挿れた自覚はあったので、気遣って薬を塗ってくれたのだろう。
「痛いところ……喉。」
「くくっ、そりゃあれだけ声を上げればな。」
辛うじて声はかすれていないものの、違和感は残っている。
『ストレージ』の中から喉の炎症に効くトローチを取り出して口に放り込む。
「アークも要る?トローチ。喉が痛くなくても、一個くらいならスースーして美味しいよ。というか、近寄っても大丈夫?」
「いや、トローチは要らない。風邪をひいた気分になる。……あぁ、これか。城から持ち出しているものは、特に見られても問題ないものだが……。気になるなら仕舞っておくか。」
アークエイドは書類を纏めると、『ストレージ』の中に万年筆と共に仕舞いこんでしまう。
「邪魔してごめんね。」
「気にするな。」
まだ上手く力の入らない足に力を入れ、アークエイドの膝の上に乗る。
アシェルが何かを言ったわけではないのに、それはすんなりと受け入れられる。
アークエイドの匂いと体温が心地いい。
また寝入ってしまいそうだ。
そんなことを考えているとアークエイドから声がかかる。
「多分、晩餐用の服だとは思うんだが……。ドレスじゃないんだな?」
「着替え?確かにジャケットは夕飯用のだったと思う。シンプルなワンピースくらいなら着れるけど、ドレスは一人じゃ着れないし。あと、多分僕が限界だって分かってたからじゃない?」
アシェルのものも、アークエイドのものも。
夕飯に着てもおかしくない普段着よりは少しだけ装飾の入ったベストとジャケットは、まだテーブルの上に置かれている。直前に着ないと皺になってしまうからだろう。
「限界って……。元は、丸一日ドレスの日もあると言ってなかったか?」
「あるけど、ドレスの日はいつも以上に最低限しか人と関わらないから。家庭教師の先生と、朝食と夕飯時の家族くらいかな。大体錬金小屋に籠っちゃうから、お昼は抜いてたし。だから、ドレスで貴族令嬢らしく誰かの受け答えをしたのは、最長記録なんだよね。扇持ってオホホってしろって言われなかっただけマシなんだろうけど。」
「アシェの中ではそれがお茶会のイメージなのか?まぁ、令嬢のお茶会はそうかもしれないな。扇で口元を隠せば表情が分かりにくくなるから、真意が分かりにくくなる。女性の社交は別の意味での戦場だからな。」
「可愛いレディとのお話は楽しいけど、腹の探り合いみたいなのは面倒だなぁ。一応そういう話術も習ったけど、噂話に興味は無いし、恋愛話にもあまり興味が無いし、政治にも興味が無いし……。あ、政治には少しくらい興味持った方が良い?王子と婚約するなら、興味が無いからって知らないままは良くないよね?」
いずれ国母になる王太子妃程では無いにしても、ある程度の知識は求められそうな気がする。
そう思って聞いたのだが、首を横に振られる。
「アシェは今のままで十分だ。兄上の婚約者であればある程度は求められるだろうが……俺の執務を手伝ってもらうつもりはないし、こなせないほどじゃないからな。それよりも、メイディーとして名前が売れてるアシェなら、今まで通り錬金に力を注いでもらった方が喜ばれる。パーティーで声を掛けられるとしたら、アシェの能力を知った上の人間かおべっか使いかのどちらかだ。ただ……アシェは宮廷医務官か王立病院で働くか、従軍医師になるつもりだったか?アシェの実力があればどれも可能だと思うが、調べてみても女がなったという前例がないんだ。」
申し訳なさそうに言われるが、それは女だと発表する時点で分かっていたことだ。
アシェルとしては大好きな錬金を続けられるのであれば、職場に拘りはない。
「別に僕は出世を目指してるわけじゃないし、気にしてないよ。男だって言い張ってるままなら、王宮か病院で働いても良いかなって思ってたけど。それも、メイディーの男がフラフラしてちゃダメかなって理由だし。小さなお薬屋さんにでもなれたら良いかなぁってくらいかな。多分今まで通り冒険者ギルドや王立病院へ薬を卸していれば、生きてくための収入的には問題ないから、お店まで要らないかもとは思うけど。パーティーだなんだと出席するなら、お金は必要でしょ? 」
「そういう準備にかかるお金は気にしなくて良い。財源が国庫である以上無駄遣いは出来ないが、公務の社交関係に必要なものは経費と一緒だからな。それに、アシェはそういう無駄遣いはしないだろ?」
「宝石買うくらいなら、その分素材にお金をかけたい。」
「くくっ、ぶれないな。まぁ、アシェが望むなら希望する職場に捻じ込めるように頑張るから、その時は言ってくれ。受け入れ側は大歓迎だろうしな。錬金と新しいレシピの発表をしてくれるだけで、国としては十分利益が出てるんだ。何かしらの形で続けてくれるなら、誰も文句は言わないだろ。」
「ん、分かった。」
自分が誰かと将来について語っているというのは不思議な感覚だが、大事なことだしアシェルのことを思ってくれているのが嬉しい。
話に区切りがついたタイミングで、コンコンと扉が叩かれる。
「アシェル様、アークエイド様。イザベルです。入ってもよろしいでしょうか?」
「うん、良いよ。」
夕食のためにイザベルが呼びに来てくれたので、アークエイドから降りてベストとジャケットを羽織り支度をしてしまう。
その間に扉がキラキラと光り、イザベルが入ってくる。
「支度は終えられておりましたか。旦那様より、夕食はお部屋ではなく食堂に来るようにとの伝言を賜っております。もう少しだけ時間がございますので、一先ずお部屋の方へ。」
イザベルに促され、錬金小屋を後にする。
自室のソファでもアークエイドは隣に座るアシェルの腰に手を回し、喋りながらも愛おしそうにキスをしてくる。
なんていうか、今まで以上に駄々甘い。
貰うばかりもと思い、お返しにアークエイドの頬にキスをする。
一瞬驚いた表情をしたが、その次には嬉しそうに目を細めた。
「唇にはくれないのか?」
「アークだって唇にはしてないでしょ?それに、もうすぐ夕飯だから。」
「俺はいつだってアシェにキスしたいが……。ある程度許可を貰ったとはいえ、一応嫌がられたら悪いと思ってな。」
「家族の前だと流石にちょっととは思うけど……。ベルの前なら良いよ?学院に居る間は、一緒に居る時間も多いだろうし。」
これだけ甘ったるく感じるのに遠慮してくれていたらしいことを知り、今度は唇を重ね舌を押し込む。
やっぱりアークエイドとキスをすると、心がぽかぽかと温まる。
たっぷりとアシェルの好きなだけ舌を絡めてから唇を離すと、啄むようなキスが返ってくる。
「俺は嬉しいが……そのキスはシたい時かシても良い時だけな。」
本来であれば恋人同士のキスなので、何故ディープキスが閨事前提なのかと首を傾げる。
そのよく分かっていないであろうアシェルの様子に、アークエイドは苦笑した。
「一番はアシェの蕩けた表情を他の奴に見せたくないからだが。アシェを襲いたくなる。ただでさえアシェはキスが上手いんだ。」
「散々出したのに……まだシたくなるの?」
「愛しいアシェが隣に居て、シたくないわけないだろ。」
「年頃だし、アークってば絶倫だもんね……。夜はダメだからね?どうしてもって言うなら、アークだけ抜いてあげるから。」
中高生あたりの男子は、それこそ脳内エロ一色だと言っても過言ではないと聞いた事がある。
こちらでは成人が早いのでそこまでではないかもしれないが、身体は成長しているのにちょうどエッチなものは制限される時期だ。
それにアークエイドはどれだけ出してもすぐに復活する。
絶倫というのは物語の中だけだと思っていたが、アシェルが思う存分乱れて気をやるまで、アークエイドのモノが萎えているところを見たことが無い。
気絶した後はどうしているのだろうか。
そういえば、ファンタジーな世界には男性の精を糧にするような魔物だっているはずだ。
サキュバスとかアルラウネとか、そういう魔物はいないのだろうか。
そういう魔物と絶倫な人間とでは、やはり人間が負けてしまうのだろうか。
「十分満たされたからそこまでは。……何考えてるんだ?」
「えっ。あぁ。こっちには人間の精気を糧にする魔物は居るのかなって。ファンタジー世界でエッチな要素があると必ずと言っていいほど出てくるから。」
「人間の精気を?」
「うん。どの魔物も綺麗な女の人の恰好をしていて、男の人を魅了して食べちゃうの。物理的にじゃなくて性的に。で、そのまま精気を搾り取れるだけ搾り取って殺しちゃうっていう。干からびてミイラになる描写が多かったけど……そもそもミイラって通じる?そういう魔物が居るのなら、アークみたいに絶倫相手だとどうなるのかなーって。あ、でも体力とか生命エネルギー的なものを精液として摂取してるなら、アークでもダメかなぁ。」
「ミイラは分からないが、要は水分が干上がった人間ってことだな?その手の魔物なら、居なくはないがかなり希少だぞ。それも、ダンジョンでしか出てこないような魔物だ。魅了という魔法にかかってしまったら、生きて戻ってこれないと言われている。ダンジョンは人間の死体も時間が経てば消えてしまうから、犠牲者がどうなってるかは分からないがな。その目撃情報も、たまたま魅了から逃れたか対象外か、抵抗できて逃げ出したかのどれかだ。そいつらのパーティーメンバーも遺品も見つかっていない。更に言うと、男相手じゃなくて女特攻みたいなやつもいる。まぁ、興味本位で見に行くような魔物じゃないし、かなり深層で稀に出会うレベルの奴だ。……お願いだから、見に行きたいとは言わないでくれよ?」
アシェルの漠然とした疑問に、的確に答えが返ってくる。
希少例だから知っていたのだろうか。それとも、冒険者が行方不明になる辺りで報告書が上がってるのだろうか。
どうして知っているのかは分からないが、ダンジョンの深層であるならばアシェルは行きたいとは思わないし、生活が懸かっているわけでも無いのでわざわざ冒険をしたいとも思わない。
「ドロップ素材が欲しいなら別だけど、興味本位だけでリスクを負うつもりはないよ。ただいるんだなぁって。ゴブリンとかオークの繁殖に、瘴気じゃなくて人間の女性が必要とかそういうのは?これもファンタジーあるあるなんだけど。」
「アシェの居た日本はそんなものまで知られているのか?……本当に、魔物の居ない世界なんだよな?」
「居ないよ。国によって人種は違えど、ケモミミが生えてる人間だってファンタジーなおとぎ話みたいなものだし。」
「それも希少例だがあり得る。大体はそうなるまで放置しているとスタンピードが起きてしまうが……。瘴気の弱いエリアだとゴブリン、オーク、コボルトは集団で生活することがある。基本的にエリア外に出てこないから、それこそ迷い込んだ村人や、弱い冒険者がたまに囚われて苗床にされるくらいだな。そもそも魔物が集落を作っているのを見つけた時点で、冒険者ギルドに連絡するようになっている。大抵は初期で殲滅するから、そういうイレギュラーは滅多に起こらない。」
「あぁ、そういえば何処にでも魔物が居るっていうより、悪質なのは基本的に魔素溜まりになっている場所だけだもんね。なるほど。授け子みたいな転生システムは無かったけど、もしかしたら僕みたいに、あっちの世界にも記憶持ちが居たりするのかな?」
「さぁ、どうだろうな。居てもおかしくはないと思うがな。」
こればかりは悩んで答えが出るものではない。
コンコンと扉が叩かれ、黙って控えていたイザベルが応対する。
「アシェル様、アークエイド様。お待たせいたしました。食堂へどうぞ。」
アシェルは胸潰しはないとはいえ男の恰好なのでエスコートはされずに、いつの間にか扉の前に立っていたダニエルも一緒に食堂へと向かった。
前話の※が②として投稿されていますが、②は普通の話で抜けております。
順番を変えてアップしてますので、毎日見てくださっている読者様は、恋人のお宅訪問②(無印)から読み直していただけると助かります。
いきなり話が飛んで※話になっていて申し訳ありませんでした。
(1.18)
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Side:アシェル14歳 秋
アシェルが意識を浮上させると、アークエイドは着替えを済ませており、アシェルも丁寧に身体を拭かれたのかスッキリとした状態で服を着せられていた。
恐らく床に置かれて丸まった布団が使ったものなのだろう。
アシェルが寝ている場所には新しくて綺麗な布団が使われていた。
たっぷりと中に出した白濁をどうしたのかは、流石に恥ずかしくて聞けなかった。
というよりも、クリーンは基本的に体外を綺麗にするものだ。聞かなくても指を入れて掻き出すか、お湯などで洗い流すかしか方法はない。
手桶の中には濁った水とタオルが入っているので、それも使って綺麗にしてくれたのだろう。
そしてイザベルは下着まで用意していたのかと、シャツから覗いた色の違うブラジャーを見て思った。
着心地が悪いということは無く、綺麗に胸の肉はカップの中に納められている。
アシェルはイザベルに言われて初めて正しいブラジャーの着用方法を知ったのだが、アークエイドはどこでそんな知識を仕入れたのだろうか。
アークエイドはというと、リクライニングチェアに座って何かを書いていた。
書類のように見えるので、執務の一部なのかもしれない。
「アーク……ごめんね、身支度までさせて。」
「ん、起きたか。無理をさせて悪かったな。一応傷薬は塗っておいたが、身体が痛んだりしないか?」
使った場所はアシェルの秘部にということだろうか。
ハッキリと傷が出来ていたら魔法で治してしまえば早いのだが、目視出来ない傷は治療がしにくい。それに女性器の中など、普通は詳しくないだろう。
確かに無理やり挿れた自覚はあったので、気遣って薬を塗ってくれたのだろう。
「痛いところ……喉。」
「くくっ、そりゃあれだけ声を上げればな。」
辛うじて声はかすれていないものの、違和感は残っている。
『ストレージ』の中から喉の炎症に効くトローチを取り出して口に放り込む。
「アークも要る?トローチ。喉が痛くなくても、一個くらいならスースーして美味しいよ。というか、近寄っても大丈夫?」
「いや、トローチは要らない。風邪をひいた気分になる。……あぁ、これか。城から持ち出しているものは、特に見られても問題ないものだが……。気になるなら仕舞っておくか。」
アークエイドは書類を纏めると、『ストレージ』の中に万年筆と共に仕舞いこんでしまう。
「邪魔してごめんね。」
「気にするな。」
まだ上手く力の入らない足に力を入れ、アークエイドの膝の上に乗る。
アシェルが何かを言ったわけではないのに、それはすんなりと受け入れられる。
アークエイドの匂いと体温が心地いい。
また寝入ってしまいそうだ。
そんなことを考えているとアークエイドから声がかかる。
「多分、晩餐用の服だとは思うんだが……。ドレスじゃないんだな?」
「着替え?確かにジャケットは夕飯用のだったと思う。シンプルなワンピースくらいなら着れるけど、ドレスは一人じゃ着れないし。あと、多分僕が限界だって分かってたからじゃない?」
アシェルのものも、アークエイドのものも。
夕飯に着てもおかしくない普段着よりは少しだけ装飾の入ったベストとジャケットは、まだテーブルの上に置かれている。直前に着ないと皺になってしまうからだろう。
「限界って……。元は、丸一日ドレスの日もあると言ってなかったか?」
「あるけど、ドレスの日はいつも以上に最低限しか人と関わらないから。家庭教師の先生と、朝食と夕飯時の家族くらいかな。大体錬金小屋に籠っちゃうから、お昼は抜いてたし。だから、ドレスで貴族令嬢らしく誰かの受け答えをしたのは、最長記録なんだよね。扇持ってオホホってしろって言われなかっただけマシなんだろうけど。」
「アシェの中ではそれがお茶会のイメージなのか?まぁ、令嬢のお茶会はそうかもしれないな。扇で口元を隠せば表情が分かりにくくなるから、真意が分かりにくくなる。女性の社交は別の意味での戦場だからな。」
「可愛いレディとのお話は楽しいけど、腹の探り合いみたいなのは面倒だなぁ。一応そういう話術も習ったけど、噂話に興味は無いし、恋愛話にもあまり興味が無いし、政治にも興味が無いし……。あ、政治には少しくらい興味持った方が良い?王子と婚約するなら、興味が無いからって知らないままは良くないよね?」
いずれ国母になる王太子妃程では無いにしても、ある程度の知識は求められそうな気がする。
そう思って聞いたのだが、首を横に振られる。
「アシェは今のままで十分だ。兄上の婚約者であればある程度は求められるだろうが……俺の執務を手伝ってもらうつもりはないし、こなせないほどじゃないからな。それよりも、メイディーとして名前が売れてるアシェなら、今まで通り錬金に力を注いでもらった方が喜ばれる。パーティーで声を掛けられるとしたら、アシェの能力を知った上の人間かおべっか使いかのどちらかだ。ただ……アシェは宮廷医務官か王立病院で働くか、従軍医師になるつもりだったか?アシェの実力があればどれも可能だと思うが、調べてみても女がなったという前例がないんだ。」
申し訳なさそうに言われるが、それは女だと発表する時点で分かっていたことだ。
アシェルとしては大好きな錬金を続けられるのであれば、職場に拘りはない。
「別に僕は出世を目指してるわけじゃないし、気にしてないよ。男だって言い張ってるままなら、王宮か病院で働いても良いかなって思ってたけど。それも、メイディーの男がフラフラしてちゃダメかなって理由だし。小さなお薬屋さんにでもなれたら良いかなぁってくらいかな。多分今まで通り冒険者ギルドや王立病院へ薬を卸していれば、生きてくための収入的には問題ないから、お店まで要らないかもとは思うけど。パーティーだなんだと出席するなら、お金は必要でしょ? 」
「そういう準備にかかるお金は気にしなくて良い。財源が国庫である以上無駄遣いは出来ないが、公務の社交関係に必要なものは経費と一緒だからな。それに、アシェはそういう無駄遣いはしないだろ?」
「宝石買うくらいなら、その分素材にお金をかけたい。」
「くくっ、ぶれないな。まぁ、アシェが望むなら希望する職場に捻じ込めるように頑張るから、その時は言ってくれ。受け入れ側は大歓迎だろうしな。錬金と新しいレシピの発表をしてくれるだけで、国としては十分利益が出てるんだ。何かしらの形で続けてくれるなら、誰も文句は言わないだろ。」
「ん、分かった。」
自分が誰かと将来について語っているというのは不思議な感覚だが、大事なことだしアシェルのことを思ってくれているのが嬉しい。
話に区切りがついたタイミングで、コンコンと扉が叩かれる。
「アシェル様、アークエイド様。イザベルです。入ってもよろしいでしょうか?」
「うん、良いよ。」
夕食のためにイザベルが呼びに来てくれたので、アークエイドから降りてベストとジャケットを羽織り支度をしてしまう。
その間に扉がキラキラと光り、イザベルが入ってくる。
「支度は終えられておりましたか。旦那様より、夕食はお部屋ではなく食堂に来るようにとの伝言を賜っております。もう少しだけ時間がございますので、一先ずお部屋の方へ。」
イザベルに促され、錬金小屋を後にする。
自室のソファでもアークエイドは隣に座るアシェルの腰に手を回し、喋りながらも愛おしそうにキスをしてくる。
なんていうか、今まで以上に駄々甘い。
貰うばかりもと思い、お返しにアークエイドの頬にキスをする。
一瞬驚いた表情をしたが、その次には嬉しそうに目を細めた。
「唇にはくれないのか?」
「アークだって唇にはしてないでしょ?それに、もうすぐ夕飯だから。」
「俺はいつだってアシェにキスしたいが……。ある程度許可を貰ったとはいえ、一応嫌がられたら悪いと思ってな。」
「家族の前だと流石にちょっととは思うけど……。ベルの前なら良いよ?学院に居る間は、一緒に居る時間も多いだろうし。」
これだけ甘ったるく感じるのに遠慮してくれていたらしいことを知り、今度は唇を重ね舌を押し込む。
やっぱりアークエイドとキスをすると、心がぽかぽかと温まる。
たっぷりとアシェルの好きなだけ舌を絡めてから唇を離すと、啄むようなキスが返ってくる。
「俺は嬉しいが……そのキスはシたい時かシても良い時だけな。」
本来であれば恋人同士のキスなので、何故ディープキスが閨事前提なのかと首を傾げる。
そのよく分かっていないであろうアシェルの様子に、アークエイドは苦笑した。
「一番はアシェの蕩けた表情を他の奴に見せたくないからだが。アシェを襲いたくなる。ただでさえアシェはキスが上手いんだ。」
「散々出したのに……まだシたくなるの?」
「愛しいアシェが隣に居て、シたくないわけないだろ。」
「年頃だし、アークってば絶倫だもんね……。夜はダメだからね?どうしてもって言うなら、アークだけ抜いてあげるから。」
中高生あたりの男子は、それこそ脳内エロ一色だと言っても過言ではないと聞いた事がある。
こちらでは成人が早いのでそこまでではないかもしれないが、身体は成長しているのにちょうどエッチなものは制限される時期だ。
それにアークエイドはどれだけ出してもすぐに復活する。
絶倫というのは物語の中だけだと思っていたが、アシェルが思う存分乱れて気をやるまで、アークエイドのモノが萎えているところを見たことが無い。
気絶した後はどうしているのだろうか。
そういえば、ファンタジーな世界には男性の精を糧にするような魔物だっているはずだ。
サキュバスとかアルラウネとか、そういう魔物はいないのだろうか。
そういう魔物と絶倫な人間とでは、やはり人間が負けてしまうのだろうか。
「十分満たされたからそこまでは。……何考えてるんだ?」
「えっ。あぁ。こっちには人間の精気を糧にする魔物は居るのかなって。ファンタジー世界でエッチな要素があると必ずと言っていいほど出てくるから。」
「人間の精気を?」
「うん。どの魔物も綺麗な女の人の恰好をしていて、男の人を魅了して食べちゃうの。物理的にじゃなくて性的に。で、そのまま精気を搾り取れるだけ搾り取って殺しちゃうっていう。干からびてミイラになる描写が多かったけど……そもそもミイラって通じる?そういう魔物が居るのなら、アークみたいに絶倫相手だとどうなるのかなーって。あ、でも体力とか生命エネルギー的なものを精液として摂取してるなら、アークでもダメかなぁ。」
「ミイラは分からないが、要は水分が干上がった人間ってことだな?その手の魔物なら、居なくはないがかなり希少だぞ。それも、ダンジョンでしか出てこないような魔物だ。魅了という魔法にかかってしまったら、生きて戻ってこれないと言われている。ダンジョンは人間の死体も時間が経てば消えてしまうから、犠牲者がどうなってるかは分からないがな。その目撃情報も、たまたま魅了から逃れたか対象外か、抵抗できて逃げ出したかのどれかだ。そいつらのパーティーメンバーも遺品も見つかっていない。更に言うと、男相手じゃなくて女特攻みたいなやつもいる。まぁ、興味本位で見に行くような魔物じゃないし、かなり深層で稀に出会うレベルの奴だ。……お願いだから、見に行きたいとは言わないでくれよ?」
アシェルの漠然とした疑問に、的確に答えが返ってくる。
希少例だから知っていたのだろうか。それとも、冒険者が行方不明になる辺りで報告書が上がってるのだろうか。
どうして知っているのかは分からないが、ダンジョンの深層であるならばアシェルは行きたいとは思わないし、生活が懸かっているわけでも無いのでわざわざ冒険をしたいとも思わない。
「ドロップ素材が欲しいなら別だけど、興味本位だけでリスクを負うつもりはないよ。ただいるんだなぁって。ゴブリンとかオークの繁殖に、瘴気じゃなくて人間の女性が必要とかそういうのは?これもファンタジーあるあるなんだけど。」
「アシェの居た日本はそんなものまで知られているのか?……本当に、魔物の居ない世界なんだよな?」
「居ないよ。国によって人種は違えど、ケモミミが生えてる人間だってファンタジーなおとぎ話みたいなものだし。」
「それも希少例だがあり得る。大体はそうなるまで放置しているとスタンピードが起きてしまうが……。瘴気の弱いエリアだとゴブリン、オーク、コボルトは集団で生活することがある。基本的にエリア外に出てこないから、それこそ迷い込んだ村人や、弱い冒険者がたまに囚われて苗床にされるくらいだな。そもそも魔物が集落を作っているのを見つけた時点で、冒険者ギルドに連絡するようになっている。大抵は初期で殲滅するから、そういうイレギュラーは滅多に起こらない。」
「あぁ、そういえば何処にでも魔物が居るっていうより、悪質なのは基本的に魔素溜まりになっている場所だけだもんね。なるほど。授け子みたいな転生システムは無かったけど、もしかしたら僕みたいに、あっちの世界にも記憶持ちが居たりするのかな?」
「さぁ、どうだろうな。居てもおかしくはないと思うがな。」
こればかりは悩んで答えが出るものではない。
コンコンと扉が叩かれ、黙って控えていたイザベルが応対する。
「アシェル様、アークエイド様。お待たせいたしました。食堂へどうぞ。」
アシェルは胸潰しはないとはいえ男の恰好なのでエスコートはされずに、いつの間にか扉の前に立っていたダニエルも一緒に食堂へと向かった。
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サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
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