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第四章 王立学院中等部三年生
282 訪れた期日④
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Side:アシェル14歳 秋
スクロールの期限が訪れ、描かれていた術式が消えた。
本来であれば、アシェルの記憶はすっかり元通りになっているはずだ。
だがアシェルは過去に二度、精神や記憶に干渉する闇魔法を受けている。
一度は自分自身で前世の記憶を封じるために。
二度目は不審者からトラウマを思い起こさせるものを。
アシェルの健康に問題が無いのであれば、今度は禁忌とされる状態だったアシェルに魔法が使われた影響を調べなくてはいけない。
「アシェ、記憶はどうだい?」
アベルに問われ、小さなころから順番に思い出していく。
少なくとも、今のところ違和感も扉のような物もない。
「少なくとも、小さい時の記憶は思い出せるし、ちゃんと繋がってます。どこがおかしいのかは順番に思い出さないと分からないと思いますけど。バラバラだったパズルのピースが、ようやく揃った感じです。」
「一先ずソレが聞けて良かったよ。詳しく思い出すのは後にしようか。何か聞きたいことがあっても、お客さんの前だと聞きにくいかもしれないからね。アシェが記憶を無くす直前。スクロールのことは思い出せるかい?」
「はい。紙とペンがあれば、僕が見た術式を覚えてる限り書き写せます。」
おい、急げ。と声がしたと思ったら、ローブ姿の男がアシェルの前に新しい羊皮紙と万年筆を置いてくれる。
「魔力は、籠めた方が良いですか?」
アシェルが問えば首を振り籠めなくて良いというので、スクロールに出来ないただの図形を描いていく。
「メインの術式。……それからこれが条件指定。……これが期日。」
ぶつぶつとその時に思ったことを呟きながら、アシェルは記憶にあるままの、ダミーを取り払った綺麗な術式を描いていく。
その時に思ったことは思い浮かぶのに、今のアシェルにはそれが本当にその術式なのか分からない。
霞の向こう側に在って、意識しようとするとぼやけてしまうのだ。
魔法が使えるのかを確認しないと分からないが、どうやら術式に関しては思い出せていないようだ。
思い出せるのは、見たままの図形と、その時にアシェルが感じたことだけである。
ダミーを抜きにしても大小さまざまな術式が組み合わせてあって、書き上げるのにそこそこ時間がかかってしまった。
アシェルが意識を移した順番でしか描けなかったせいだろう。
「出来ました。」
「これは……ありがとうございます。こちらはお譲りいただいても?」
「えぇ。解読しきれてたら不要だとは思うんですけど、珍しい術式もあるので魔法庁では分からなかったものもあるんじゃないかと思うので。珍しい術式の部分はダミーが特別大盛りでしたから。」
「感謝します。」
ローブ姿の男はアシェルの渡した紙を持って、同じくローブ姿の男達とあーだこーだと議論を交わし始める。
「……すごい。僕でも、全ては分からなかったのに。」
「ダミーを見抜くのは、コツがあるから。」
「それでも凄いよ。その才能が羨ましいし、我が国の国民じゃないのが本当に悔やまれる。……アシェル殿は、今回のことが何故起こったのか。知る権利があると思うんだ。姉上の顔も見たくないというのなら、私から説明を。もし姉上からでも良ければ、この部屋に招きたいんだけれど。」
羨望の眼差しを向けてきた後に、モーリスは表情を引き締めた。
今からの話は、ムーランの人生に大きく影響することでもある。
「スクロールを使ったのは僕だから、別にムーラン嬢にどうこうっていうのは無いんだけれど……。モーリス殿の口ぶりだと、何か原因が別にありそうだね。ムーラン嬢が居るのなら、呼んで貰って良いよ。」
ムーランは自分がやってはいけないことをしたと、ちゃんとあの時自覚していた。謝罪の言葉がでてこなかっただけで。
そしてあのスクロールは譲り受けたものだという。
一体誰が、何のために、ムーランにこの術式を手渡したのか。
もし分かるのであれば、それくらいは知りたいと思う。
アベルが壁際に控えていた使用人の一人に声を掛け、ムーランが部屋に入ってくる。
モーリスの隣に腰掛けたムーランは、子供の様に無邪気に見える笑顔は息を潜め。何かを覚悟したような真剣な面差しをしていた。
「こうして会ってくれて嬉しいわ。まずは、アシェル。わたくしは、あのスクロールがどんなものか知っていたの。それなのに意図的に説明を省いて、騙す形で貴女に使わせてしまったわ。ごめんなさい。」
ムーランの下げられた頭を見て、まさか謝罪を受けるとは思っていなかったアシェルは言葉がでてこない。
顔を上げたムーランはそれを気にする様子もなく、更に言葉を続ける。
「まず、わたくしがあれを使わせたのは、アシェルとアークエイド様の仲を少し乱してやりたかったの。片方の記憶が無くなる程度で関係が崩れるのなら、わたくしだってと思うことが出来ると思ったから。逆に、そうじゃなければ諦めが付くからって。アシェルに使っても効果が薄いことは分かっていたけれど、わたくしはアークエイド様ではなくアシェルに使いたかった。お泊り会の話を聞いて……わたくしのこと、お友達と思ってくれていないのかって、むしゃくしゃしてたの。」
「お泊りの件は、僕こそごめんね。あの時の集まりは【シーズンズ】っていうファンクラブの会員だけだったんだ。その……ファンクラブでやってる内容を知らない人間がいると、契約魔法で言葉に制限がかかるものがあるんだ。会員ばかりで集まったから、それ以外の人に声を掛けるって発想が無かったんだ。決して、ムーラン嬢のことを友人だと思っていない訳じゃないよ。」
「ファンクラブ……。じゃあ、わたくしは何も知らないまま、八つ当たりをしてしまったのね。本当にごめんなさい。でも、話はここからなの。わたくしは昔と同じで、自分がむしゃくしゃしたってだけでスクロールを使わせたわ。でも。これ、本当はアークエイド様に使うように言われていたの。」
「アークに?」
ムーランはコクッと頷いた。
「アシェルに使っても効果が薄いから、アークエイド様に使うように持ってきたのだと、そう言っていたわ。でもモーリスが、精神干渉系の闇魔法を受けた人間には禁忌の術式だと言っていたでしょう?……王族や皇族が、その手の魔法を受けたことが無いなんてあり得ないのよ。もし受けたことが無いのなら、それは奇跡的な確率だわ。わたくしだって、何度か経験があるもの。そしてそのことを、現魔術開発室所長で、お母様とも懇意にしている彼が知らないはずが無いの。そのスクロールの禁忌についても。」
所長が独断でアークエイドを狙うのだろうか。
命ではなく、狙われたのは記憶なのだ。それを狙っても、他国の魔術開発室所長には何もメリットが無いように思える。
となると、それで利益を得る可能性のある黒幕が他にも居ることになる。
「スクロールを使えば、所長には分かるようになっているの。彼は自分の術式にプライドがあって、わたくしに預けたとはいえ、それがどうなったのか把握しておきたい人間だから。後発組は特別偉い人は居ないから、帝国に帰るのは強行軍のはず。時期的にそろそろ帰り着くかしらって頃合いだけど、きっとまだだろうからという名目で。お母様に報告したわ。まずはナイトレイ陛下からお父様に連絡をしていただいて、お母様の部屋を取り囲んだうえで。お母様が絡んでいる可能性が高いと思ったの。スクロールを使った事、わたくしはどうしたらいいのかってお母様に聞いたら。お母様は当たり前のように、スクロールはアークエイド様に使われた物だという前提で話し始めたわ。わたくしが次の皇帝になる為に必要だから、なんとしても記憶の曖昧なアークエイド様を連れて帰って来いって。モーリスが禁忌がどうのと言っていたという話をしたら、とても不機嫌になったけれど。それすら想定内だって。ヒューナイト王国の王子であることが重要で、アークエイド様の状態なんてどうでも良いと、そう言い切ったのっ!許せなかったわ、お母様のことも、それに協力したユーウェンのことも。まんまと手のひらで踊らされたわたくし自身のこともっ。これだけ大事になって、ようやくわたくしは、アシェルの言っていたことを理解したのよ。」
ぼろぼろと涙を溢しながら。
それでもムーランはアシェルに、この事件の裏でどんな思惑が動いていたのかを教えてくれる。
「何を言っても、何をしても償いきれることじゃないって分かっているわ。所長のユーウェンは、身柄を捕らえて魔力封じの枷をして投獄してる。家宅捜索で禁書の所持が見つかったから、余罪が無いか調べられているわ。お母様も、わたくしとの通信で口が軽かったから。そしてそれは、ヒューナイトの権力者同席の上での会話だったから。お父様にもリアルタイムで内容が報告されていたし、お母様の部屋を取り囲んだ者達からの報告も合致したから身柄を捕らえられたわ。離縁して、こちらも処遇を決めるために投獄してあるらしいの。計画的に他国の王族を狙ったんだもの、仕方のないことだわ。わたくしは——本来であれば既に皇女という身分を剝奪されて、処刑か牢に居るべき人間だわ。まだそれをされていないのは、アシェルに謝罪と真実を伝えるための猶予を貰ったに過ぎないの。ここから先は、わたくしがどうなっても国際問題にはならないわ。お父様——皇帝陛下にも、既に許可を頂いているの。わたくしのこの命は、一番の被害を受けたアシェルの好きにして良いわ。痛めつけても、殺しても構わない。作った薬の実験台でも構わないわ。遺体になっても引き渡す必要もないモノとして扱ってくれたらいいの。」
スクロールを使ったのがアークエイドではなくて良かった。
ムーランは感情のままに行動してしまったが、その行動を振り返り、他者の思惑に気付くまでに成長していて嬉しい。
少なくとも、愚者で傀儡のようだったムーランとは大違いだと感心していたのに。
ムーランの唇から紡がれ続ける話は、アシェルの思いもよらない方向に進んでいく。
「待って、なんでそうなるの?友人を手にかけるなんて、絶対嫌だからね。確かに、アークに危害を加えようとした二人は問題だと思うよ?僕も許せないって思うし。でもムーラン嬢は巻き込まれただけでしょ?しかも、実際にはアークじゃなくて僕がそのスクロールを使ってるんだから。実質、国際問題に発展するような状態でも無いし。……ムーラン嬢が聞いていたスクロールの内容と、そのユーウェンとやらが説明した内容では相違がある。禁忌については知らず、ムーラン嬢はあくまでも、一時的に記憶を忘れるがその記憶を補強するための術式だと思っていた。その内容から僕らへの婚約祝いとして受け取り、でもそれを見ても理解できないムーラン嬢は使わせるつもりはなかった。ただそのスクロールを見た僕が興味を示して、ムーラン嬢も婚約祝いとして使えるものだと知っていたから許可を出した。別に使えと強要されていないし、僕が勝手に使っただけだよね。たまたまただの貴族令嬢のはずの僕が、禁忌に触れた状態だったことでややこしくなったけど。状況だけならムーラン嬢に非は無いと思うよ?ですよね。グリモニア陛下。」
言い訳がましくきこえるかもしれないが、ムーランがあれをどう認識していたのかは置いておいて。
アシェルから見た事実はこれだ。
アシェルの意志で使ったものなのに、ムーランに責任を問うのは間違っているだろうとグリモニアに投げかける。
「ははっ、確かにそうだな。どうも、ムーラン皇女殿下から聞いた話と、当事者であるはずのアシェルから聞いた話では相違があるようだな?アーク。本当にアシェルは、ムーラン皇女殿下にスクロールを使うことを強要されていないのか?」
ムーランを庇う発言をするアシェルに、グリモニアは事実を確認するためにアークエイドへと話を振る。
実際にアシェルの言うとおりであれば、ヒューナイト王国としてもムーランの罪を問えないのだ。
首謀者二人と違って、巻き込まれてはいるが、何も知らなかったうえに王族に被害は出ていないのだから。
「されていない。たまたま術式の話で見本として見せてくれたものを、俺がアシェにも見せた。その術式にアシェが興味を示して、ムーラン嬢は見ても分からないが内容的にこういった物だと聞いているから使ってみても良いよと言った。それは強要ではなく提案だ。それを使うと言ったのはアシェだし、実際にムーラン嬢が言った通りの現象が起きたと、アシェが言っていた。どこにもムーラン嬢がスクロールの使用を強要したという事実はない。」
「ということは、まだアスラモリオン帝国の皇女であるムーラン皇女殿下の身柄を、アシェルに引き渡すことは出来んな。まぁそもそも、身柄の引き渡しも望んでいないようだが。この件と皇女殿下の処遇については、アスラモリオン帝国と話し合ってから決まるだろう。」
「ムーラン嬢が、死んだりしませんよね?僕は怒っていないし、事故のような物だと思ってます。」
「今の話が本当なら、ムーラン皇女殿下に身体的な罰は与えられないはずだ。一切のお咎めなしという訳にはいかないだろうから、私財から賠償金を支払う程度はあるかもしれないが。こればかりはあちらと話し合わないことにはだ。とにかく、必要な事実確認は済んだ。アベルも早くアシェルにどんな影響が残っているのか、残っていないのかの確認をしたいだろうし。アシェルも疲れているだろう。我々は引き上げようか。」
「アシェルっ。何で怒らないの?何でこんなことしたんだって。わたくしだって悪いのにっ。いいえ、わたくしが悪いのよっ。」
ムーランの中で、アシェルはそんなに怒りっぽくて悪逆非道を行いそうなイメージなのだろうか。
本気でそう思われているのだとしたら少し悲しい。
「悪くないとは言わないけど、それは周囲がムーラン嬢を利用しようとしたことに気付けなかったことだよ。でもちゃんと自分で考えて、首謀者まで辿り着いた。……苦しい決断だったかもしれないけれど、一人じゃなく周囲を頼ってちゃんと証拠を揃えることも出来た。今回は気付くのが少し遅かったけど、きっと次はもっと早く気付くことが出来るよ。何かおかしいと思ったら、今回みたいに周りを頼ればいい。相談すればいい。人間って、少しずつ過ちを犯しながら成長していくものなんだから。」
「でも……。」
「とりあえず、ここでの話はこれまでだ。アベルもアレリオンも、今日はここまででいい。他の者は帰るぞ。」
「姉上、今日はお暇しましょう。あとは陛下と父上がどうするかを決めることです。」
「……分かったわ。皆様、ご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありませんでした。失礼します。」
ムーランたちと宰相がまずは部屋を出て行く。
ローブ姿の男達は大至急片付けをしていて、挨拶の後慌てて後を追っていった。
だが、帰ると言った当の本人がソファから立ち上がる気配はない。
「……帰るんだが?」
「うん、聞いていたよ。」
「なら拘束を解いて欲しいんだがな?」
「どうしてだい?」
どうやらアベルがグリモニアの行動を阻害しているらしい。
アベルはにこにこと笑っているが、ちょっぴり不機嫌なことがその笑顔から伝わってくる。
「だから、帰るって言ってるだろうが。」
「私を置いて、だろう?」
「皇女への処罰に対する不満かと思ったら、そっちなのか……。別に良いだろう。ここと王宮は目と鼻の先なんだぞ?」
「王宮の敷地内ならまだしも。距離は関係ないって言ってるだろ?」
アベルの不機嫌さの理由が分かり、アシェルもアレリオンも納得した。
確かに距離なんて関係ない。
何処に危険が潜んでいるのか分からないのだし、出掛けていれば護衛の数は王宮内より少なくなるのだ。
ちょっとした距離だったとしても、しっかり周囲を警戒した上で送り届けたいというのは当然の感情だろう。
グリモニアのこれくらいいいじゃないかという主張を理解できたのは、アークエイドと壁際に控える使用人達だけだった。
結局宰相が呼びに来た時に、アベルがグリモニアに付き添うことが決まり。
ようやくグリモニアにかけられていた拘束が解けたのだった。
スクロールの期限が訪れ、描かれていた術式が消えた。
本来であれば、アシェルの記憶はすっかり元通りになっているはずだ。
だがアシェルは過去に二度、精神や記憶に干渉する闇魔法を受けている。
一度は自分自身で前世の記憶を封じるために。
二度目は不審者からトラウマを思い起こさせるものを。
アシェルの健康に問題が無いのであれば、今度は禁忌とされる状態だったアシェルに魔法が使われた影響を調べなくてはいけない。
「アシェ、記憶はどうだい?」
アベルに問われ、小さなころから順番に思い出していく。
少なくとも、今のところ違和感も扉のような物もない。
「少なくとも、小さい時の記憶は思い出せるし、ちゃんと繋がってます。どこがおかしいのかは順番に思い出さないと分からないと思いますけど。バラバラだったパズルのピースが、ようやく揃った感じです。」
「一先ずソレが聞けて良かったよ。詳しく思い出すのは後にしようか。何か聞きたいことがあっても、お客さんの前だと聞きにくいかもしれないからね。アシェが記憶を無くす直前。スクロールのことは思い出せるかい?」
「はい。紙とペンがあれば、僕が見た術式を覚えてる限り書き写せます。」
おい、急げ。と声がしたと思ったら、ローブ姿の男がアシェルの前に新しい羊皮紙と万年筆を置いてくれる。
「魔力は、籠めた方が良いですか?」
アシェルが問えば首を振り籠めなくて良いというので、スクロールに出来ないただの図形を描いていく。
「メインの術式。……それからこれが条件指定。……これが期日。」
ぶつぶつとその時に思ったことを呟きながら、アシェルは記憶にあるままの、ダミーを取り払った綺麗な術式を描いていく。
その時に思ったことは思い浮かぶのに、今のアシェルにはそれが本当にその術式なのか分からない。
霞の向こう側に在って、意識しようとするとぼやけてしまうのだ。
魔法が使えるのかを確認しないと分からないが、どうやら術式に関しては思い出せていないようだ。
思い出せるのは、見たままの図形と、その時にアシェルが感じたことだけである。
ダミーを抜きにしても大小さまざまな術式が組み合わせてあって、書き上げるのにそこそこ時間がかかってしまった。
アシェルが意識を移した順番でしか描けなかったせいだろう。
「出来ました。」
「これは……ありがとうございます。こちらはお譲りいただいても?」
「えぇ。解読しきれてたら不要だとは思うんですけど、珍しい術式もあるので魔法庁では分からなかったものもあるんじゃないかと思うので。珍しい術式の部分はダミーが特別大盛りでしたから。」
「感謝します。」
ローブ姿の男はアシェルの渡した紙を持って、同じくローブ姿の男達とあーだこーだと議論を交わし始める。
「……すごい。僕でも、全ては分からなかったのに。」
「ダミーを見抜くのは、コツがあるから。」
「それでも凄いよ。その才能が羨ましいし、我が国の国民じゃないのが本当に悔やまれる。……アシェル殿は、今回のことが何故起こったのか。知る権利があると思うんだ。姉上の顔も見たくないというのなら、私から説明を。もし姉上からでも良ければ、この部屋に招きたいんだけれど。」
羨望の眼差しを向けてきた後に、モーリスは表情を引き締めた。
今からの話は、ムーランの人生に大きく影響することでもある。
「スクロールを使ったのは僕だから、別にムーラン嬢にどうこうっていうのは無いんだけれど……。モーリス殿の口ぶりだと、何か原因が別にありそうだね。ムーラン嬢が居るのなら、呼んで貰って良いよ。」
ムーランは自分がやってはいけないことをしたと、ちゃんとあの時自覚していた。謝罪の言葉がでてこなかっただけで。
そしてあのスクロールは譲り受けたものだという。
一体誰が、何のために、ムーランにこの術式を手渡したのか。
もし分かるのであれば、それくらいは知りたいと思う。
アベルが壁際に控えていた使用人の一人に声を掛け、ムーランが部屋に入ってくる。
モーリスの隣に腰掛けたムーランは、子供の様に無邪気に見える笑顔は息を潜め。何かを覚悟したような真剣な面差しをしていた。
「こうして会ってくれて嬉しいわ。まずは、アシェル。わたくしは、あのスクロールがどんなものか知っていたの。それなのに意図的に説明を省いて、騙す形で貴女に使わせてしまったわ。ごめんなさい。」
ムーランの下げられた頭を見て、まさか謝罪を受けるとは思っていなかったアシェルは言葉がでてこない。
顔を上げたムーランはそれを気にする様子もなく、更に言葉を続ける。
「まず、わたくしがあれを使わせたのは、アシェルとアークエイド様の仲を少し乱してやりたかったの。片方の記憶が無くなる程度で関係が崩れるのなら、わたくしだってと思うことが出来ると思ったから。逆に、そうじゃなければ諦めが付くからって。アシェルに使っても効果が薄いことは分かっていたけれど、わたくしはアークエイド様ではなくアシェルに使いたかった。お泊り会の話を聞いて……わたくしのこと、お友達と思ってくれていないのかって、むしゃくしゃしてたの。」
「お泊りの件は、僕こそごめんね。あの時の集まりは【シーズンズ】っていうファンクラブの会員だけだったんだ。その……ファンクラブでやってる内容を知らない人間がいると、契約魔法で言葉に制限がかかるものがあるんだ。会員ばかりで集まったから、それ以外の人に声を掛けるって発想が無かったんだ。決して、ムーラン嬢のことを友人だと思っていない訳じゃないよ。」
「ファンクラブ……。じゃあ、わたくしは何も知らないまま、八つ当たりをしてしまったのね。本当にごめんなさい。でも、話はここからなの。わたくしは昔と同じで、自分がむしゃくしゃしたってだけでスクロールを使わせたわ。でも。これ、本当はアークエイド様に使うように言われていたの。」
「アークに?」
ムーランはコクッと頷いた。
「アシェルに使っても効果が薄いから、アークエイド様に使うように持ってきたのだと、そう言っていたわ。でもモーリスが、精神干渉系の闇魔法を受けた人間には禁忌の術式だと言っていたでしょう?……王族や皇族が、その手の魔法を受けたことが無いなんてあり得ないのよ。もし受けたことが無いのなら、それは奇跡的な確率だわ。わたくしだって、何度か経験があるもの。そしてそのことを、現魔術開発室所長で、お母様とも懇意にしている彼が知らないはずが無いの。そのスクロールの禁忌についても。」
所長が独断でアークエイドを狙うのだろうか。
命ではなく、狙われたのは記憶なのだ。それを狙っても、他国の魔術開発室所長には何もメリットが無いように思える。
となると、それで利益を得る可能性のある黒幕が他にも居ることになる。
「スクロールを使えば、所長には分かるようになっているの。彼は自分の術式にプライドがあって、わたくしに預けたとはいえ、それがどうなったのか把握しておきたい人間だから。後発組は特別偉い人は居ないから、帝国に帰るのは強行軍のはず。時期的にそろそろ帰り着くかしらって頃合いだけど、きっとまだだろうからという名目で。お母様に報告したわ。まずはナイトレイ陛下からお父様に連絡をしていただいて、お母様の部屋を取り囲んだうえで。お母様が絡んでいる可能性が高いと思ったの。スクロールを使った事、わたくしはどうしたらいいのかってお母様に聞いたら。お母様は当たり前のように、スクロールはアークエイド様に使われた物だという前提で話し始めたわ。わたくしが次の皇帝になる為に必要だから、なんとしても記憶の曖昧なアークエイド様を連れて帰って来いって。モーリスが禁忌がどうのと言っていたという話をしたら、とても不機嫌になったけれど。それすら想定内だって。ヒューナイト王国の王子であることが重要で、アークエイド様の状態なんてどうでも良いと、そう言い切ったのっ!許せなかったわ、お母様のことも、それに協力したユーウェンのことも。まんまと手のひらで踊らされたわたくし自身のこともっ。これだけ大事になって、ようやくわたくしは、アシェルの言っていたことを理解したのよ。」
ぼろぼろと涙を溢しながら。
それでもムーランはアシェルに、この事件の裏でどんな思惑が動いていたのかを教えてくれる。
「何を言っても、何をしても償いきれることじゃないって分かっているわ。所長のユーウェンは、身柄を捕らえて魔力封じの枷をして投獄してる。家宅捜索で禁書の所持が見つかったから、余罪が無いか調べられているわ。お母様も、わたくしとの通信で口が軽かったから。そしてそれは、ヒューナイトの権力者同席の上での会話だったから。お父様にもリアルタイムで内容が報告されていたし、お母様の部屋を取り囲んだ者達からの報告も合致したから身柄を捕らえられたわ。離縁して、こちらも処遇を決めるために投獄してあるらしいの。計画的に他国の王族を狙ったんだもの、仕方のないことだわ。わたくしは——本来であれば既に皇女という身分を剝奪されて、処刑か牢に居るべき人間だわ。まだそれをされていないのは、アシェルに謝罪と真実を伝えるための猶予を貰ったに過ぎないの。ここから先は、わたくしがどうなっても国際問題にはならないわ。お父様——皇帝陛下にも、既に許可を頂いているの。わたくしのこの命は、一番の被害を受けたアシェルの好きにして良いわ。痛めつけても、殺しても構わない。作った薬の実験台でも構わないわ。遺体になっても引き渡す必要もないモノとして扱ってくれたらいいの。」
スクロールを使ったのがアークエイドではなくて良かった。
ムーランは感情のままに行動してしまったが、その行動を振り返り、他者の思惑に気付くまでに成長していて嬉しい。
少なくとも、愚者で傀儡のようだったムーランとは大違いだと感心していたのに。
ムーランの唇から紡がれ続ける話は、アシェルの思いもよらない方向に進んでいく。
「待って、なんでそうなるの?友人を手にかけるなんて、絶対嫌だからね。確かに、アークに危害を加えようとした二人は問題だと思うよ?僕も許せないって思うし。でもムーラン嬢は巻き込まれただけでしょ?しかも、実際にはアークじゃなくて僕がそのスクロールを使ってるんだから。実質、国際問題に発展するような状態でも無いし。……ムーラン嬢が聞いていたスクロールの内容と、そのユーウェンとやらが説明した内容では相違がある。禁忌については知らず、ムーラン嬢はあくまでも、一時的に記憶を忘れるがその記憶を補強するための術式だと思っていた。その内容から僕らへの婚約祝いとして受け取り、でもそれを見ても理解できないムーラン嬢は使わせるつもりはなかった。ただそのスクロールを見た僕が興味を示して、ムーラン嬢も婚約祝いとして使えるものだと知っていたから許可を出した。別に使えと強要されていないし、僕が勝手に使っただけだよね。たまたまただの貴族令嬢のはずの僕が、禁忌に触れた状態だったことでややこしくなったけど。状況だけならムーラン嬢に非は無いと思うよ?ですよね。グリモニア陛下。」
言い訳がましくきこえるかもしれないが、ムーランがあれをどう認識していたのかは置いておいて。
アシェルから見た事実はこれだ。
アシェルの意志で使ったものなのに、ムーランに責任を問うのは間違っているだろうとグリモニアに投げかける。
「ははっ、確かにそうだな。どうも、ムーラン皇女殿下から聞いた話と、当事者であるはずのアシェルから聞いた話では相違があるようだな?アーク。本当にアシェルは、ムーラン皇女殿下にスクロールを使うことを強要されていないのか?」
ムーランを庇う発言をするアシェルに、グリモニアは事実を確認するためにアークエイドへと話を振る。
実際にアシェルの言うとおりであれば、ヒューナイト王国としてもムーランの罪を問えないのだ。
首謀者二人と違って、巻き込まれてはいるが、何も知らなかったうえに王族に被害は出ていないのだから。
「されていない。たまたま術式の話で見本として見せてくれたものを、俺がアシェにも見せた。その術式にアシェが興味を示して、ムーラン嬢は見ても分からないが内容的にこういった物だと聞いているから使ってみても良いよと言った。それは強要ではなく提案だ。それを使うと言ったのはアシェだし、実際にムーラン嬢が言った通りの現象が起きたと、アシェが言っていた。どこにもムーラン嬢がスクロールの使用を強要したという事実はない。」
「ということは、まだアスラモリオン帝国の皇女であるムーラン皇女殿下の身柄を、アシェルに引き渡すことは出来んな。まぁそもそも、身柄の引き渡しも望んでいないようだが。この件と皇女殿下の処遇については、アスラモリオン帝国と話し合ってから決まるだろう。」
「ムーラン嬢が、死んだりしませんよね?僕は怒っていないし、事故のような物だと思ってます。」
「今の話が本当なら、ムーラン皇女殿下に身体的な罰は与えられないはずだ。一切のお咎めなしという訳にはいかないだろうから、私財から賠償金を支払う程度はあるかもしれないが。こればかりはあちらと話し合わないことにはだ。とにかく、必要な事実確認は済んだ。アベルも早くアシェルにどんな影響が残っているのか、残っていないのかの確認をしたいだろうし。アシェルも疲れているだろう。我々は引き上げようか。」
「アシェルっ。何で怒らないの?何でこんなことしたんだって。わたくしだって悪いのにっ。いいえ、わたくしが悪いのよっ。」
ムーランの中で、アシェルはそんなに怒りっぽくて悪逆非道を行いそうなイメージなのだろうか。
本気でそう思われているのだとしたら少し悲しい。
「悪くないとは言わないけど、それは周囲がムーラン嬢を利用しようとしたことに気付けなかったことだよ。でもちゃんと自分で考えて、首謀者まで辿り着いた。……苦しい決断だったかもしれないけれど、一人じゃなく周囲を頼ってちゃんと証拠を揃えることも出来た。今回は気付くのが少し遅かったけど、きっと次はもっと早く気付くことが出来るよ。何かおかしいと思ったら、今回みたいに周りを頼ればいい。相談すればいい。人間って、少しずつ過ちを犯しながら成長していくものなんだから。」
「でも……。」
「とりあえず、ここでの話はこれまでだ。アベルもアレリオンも、今日はここまででいい。他の者は帰るぞ。」
「姉上、今日はお暇しましょう。あとは陛下と父上がどうするかを決めることです。」
「……分かったわ。皆様、ご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありませんでした。失礼します。」
ムーランたちと宰相がまずは部屋を出て行く。
ローブ姿の男達は大至急片付けをしていて、挨拶の後慌てて後を追っていった。
だが、帰ると言った当の本人がソファから立ち上がる気配はない。
「……帰るんだが?」
「うん、聞いていたよ。」
「なら拘束を解いて欲しいんだがな?」
「どうしてだい?」
どうやらアベルがグリモニアの行動を阻害しているらしい。
アベルはにこにこと笑っているが、ちょっぴり不機嫌なことがその笑顔から伝わってくる。
「だから、帰るって言ってるだろうが。」
「私を置いて、だろう?」
「皇女への処罰に対する不満かと思ったら、そっちなのか……。別に良いだろう。ここと王宮は目と鼻の先なんだぞ?」
「王宮の敷地内ならまだしも。距離は関係ないって言ってるだろ?」
アベルの不機嫌さの理由が分かり、アシェルもアレリオンも納得した。
確かに距離なんて関係ない。
何処に危険が潜んでいるのか分からないのだし、出掛けていれば護衛の数は王宮内より少なくなるのだ。
ちょっとした距離だったとしても、しっかり周囲を警戒した上で送り届けたいというのは当然の感情だろう。
グリモニアのこれくらいいいじゃないかという主張を理解できたのは、アークエイドと壁際に控える使用人達だけだった。
結局宰相が呼びに来た時に、アベルがグリモニアに付き添うことが決まり。
ようやくグリモニアにかけられていた拘束が解けたのだった。
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よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
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