氷の王子様と微笑みの男装令嬢

芯夜

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第五章 【アンブロシア】

293 魂を癒すということ②

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Side:“アンブロシア”アシェル



ほとんど寝てばかりいると日が経つのは早いもので、あっという間に一歳が目前に迫ってきた。

未だにこの生活が夢なのではないかと思うが、オムツにお漏らしした時の不快感や、抱き上げられた時の感触が現実だと伝えてくる。

順調に離乳食を食べることが出来ているので、夜中は1、2回オムツの確認に来てくれるだけになった。

布オムツではなく、吸水性ポリマーのたっぷり入った紙オムツだ。
このあたりは先進的である。

布オムツより安心感があって不快感が若干マシなので、不本意ながらお漏らししても特に騒がなかった。
定期的にお世話をしに来てくれるので、わざわざ呼びつける必要もないと思ったのだ。

その時に咲のタイミングでオムツ交換をしてもらって、お尻がかぶれていると物凄く怒られてしまった。

泣かなくてもいいから、せめてアピールしてくれとガラガラを渡されて、夜中以外にオムツを汚した時は自己申告するようになった。
早く自分でコントロールできるようになりたい。

日中は一人で暇をしているので頑張って伝い歩きを習得中で、歩けるようになったらトイレトレーニング予定だ。

そんなこんなで今夜もぐっすり眠っていたのに、空腹で目が覚めてしまった。

少し前にオムツ交換に来てもらったし、体感的には真夜中だろうか。

朝までにもう一度オムツを見に来てくれるかもしれないし。今日はいつもより疲れた顔をしていたから、咲は朝までぐっすり眠っているかもしれない。

珍しく昼間に二人は入れ代わり立ち代わり、何か用事で外に出ていたようなのだ。
大抵どちらか一人は近くに居るのに何かあったのだろうか。

ガラガラを鳴らせば夜中だろうと来てくれるだろうが、流石にお疲れの咲と健斗を起こしてしまうのは忍びない。
それもただの空腹である。

(赤ちゃんって、ほんと不便だな。)

空腹から目を逸らしながら天井を見つめていると、メイディー邸で過ごした時のことを思い出す。

サーニャがイザベルを領地に連れて戻り、アベルに取り入ることだけが目的の侍女三人にお世話をされていた時のことだ。

(あの頃はお水もなかなか貰えなくて、お腹も空いて。でも貰えないのが分かってたから諦めてたけど。赤ちゃんはお世話してもらうのが当然……なんだよね。)

だから遠慮なんてするな。
やって欲しいことがあれば遠慮なく訴えろ。と咲と健斗に言われたのだ。

サーニャにはいつもイザベルと一緒にお世話してもらっていた。
アシェルが訴えなくても時間なのか、サーニャからお世話をしに来てくれることもあった。

誰にもお世話してもらえなかった時は流石に辛いと感じたが、たった一晩や数時間くらいなら我慢は効くのだ。
なんせ精神年齢が大人なので。

(まぁこれくらいなら朝を待てばいいし……。二人にはゆっくり寝てもらいたいしね。)

ここは理性で食欲を無視する代わりに、明日の朝ご飯はデザートのおかわりを強請るぞ、と心に決める。
おかわりのヨーグルトに入れるジャムは違うものにして欲しいが、まだまだ上手く言葉を伝えられないので、味変は断念するしかないだろう。

そんなアシェル的な我儘を思い浮かべながら、また瞳を閉じた。

少しは気が紛れたはずだと、指ではなくヨダレ掛けの端っこを口に入れ、吸う動作をする。
さすがに指を吸うのは抵抗があるのだ。

赤ちゃんがミルクを飲む動作は、どういうわけか凄く心が落ち着く。

プラシーボ効果かもしれないが、眠りにくい時はこれが一番効果的なのである。
お腹が空いている時はより効果的だ。

自分の涎でしっとりしているガーゼを吸っているうちに、また眠気がやってくる。

アシェルはその眠気に身を委ねたのだった。



ちなみにしっかり朝食のデザートのヨーグルトはおかわりをした。
アシェルが訴えなくても、違うジャムのかかったヨーグルトを手に入れたのだった。



========



Side:“古都”映像を見守るアークエイド(15歳)達 秋



「あらあら。お腹が空いたんですね。」

「サーニャはなんでわかるんだい?」

ぱちりと目を覚ましたアシェルを見て、サーニャが感想をこぼす。
サーニャはアシェルの乳母だった頃の十数年前を思い出し、とても懐かしい気持ちでこの映像を見ていた。

でも映像からはなぜサーニャがそう判断したのかが分からず、アベルはサーニャに問いかけた。

「アシェルお嬢様の表情……ですね。おしめでしたら、少し不機嫌そうな表情でお目覚めになりますよ。そもそもアシェルお嬢様が夜中にお目覚めになること自体が稀で。お目覚めになるという事は、何かしら不快感を感じているということですから。」

「確かに、今は部屋に一人のようだし。なるほど。」

夜中にアシェルの元を訪室しては起こしてしまっていたアベルは、サーニャの説明に納得する。

そんな主人に、昔からサーニャはとあることを内緒にしている。
報告していないという方が正確だろうか。

それはサーニャだけは、寝ているところに近付いてもアシェルが目覚めないということだ。

これは恐らくだが、乳児期から付きっきりでお世話をしていた影響なのだと思う。
お世話をする時には基本的にイザベルの泣き声で目覚めているので、アシェルは気付いていないかもしれないが、寝ているアシェルに警戒されないことは密かにサーニャの自慢なのだ。

アベルに柔らかな笑みを返して、サーニャはまた映像を見始める。

しばしぼーっと天井を眺めていたアシェルがヨダレ掛けを口に含み、瞳を閉じた。

サーニャはアシェルがしたことのない行動を見て、どうしたのだろうかと首を傾げた。

しばらくして規則的な寝息が聞こえ始める。

そんな映像を見ながら“授け子”である二人は「分かるわー。」と頷き合っていた。

「お乳が恋しいとかじゃなくてぇ、少し空腹が紛れるんですよねぇ。」

「うんうん。前世の記憶があるから指吸いはしたくないし、でもお腹が空いて空いて……って時には、すっごくいいのよね。難点があるとすれば、自分のよだれでべちゃっとしたスタイ(※ヨダレ掛けのこと)が気持ち悪いことかしら。」

「そういえばぁ、こっちって粉ミルクとかないですよねぇ?双子ちゃんだと、乳母がもう一人いたとかですかぁ?」

パトリシアは前世の子育ての記憶を振り返りながらリリアーデに尋ねると、首が横に振られた。

「粉ミルクは無いわね。あと乳母はいなかったわ。お祈りまでしてようやく授かった子供だから、お母様が育てるんだって、凄く頑張ってたのよ。まぁ頑張ってたのは三つ下のシルまでね。その後はほぼ年子でどんどん産まれたから。それも男の子ばっかり。手もかかるし、流石に乳母を雇ってるわ。一番下は双子だから、お母様が付きっきりじゃないなら、できれば二人乳母を雇ってってお願いしたくらいよ。」

基本的に乳母を雇う時には、優先的に死産だったり子供を亡くした女性や、親族や使用人の身内など身元がハッキリしている女性を雇うことが多い。

子供を亡くした女性は探せば割と居るもので、乳母がいるが乳兄妹が居ない場合は、こういった子供を亡くした女性が雇われたケースだ。
乳母が未亡人だったりで独り身であれば、そのまま教育係兼侍女として長期間雇い入れることも多い。

シルコット辺境伯爵邸は今でこそ落ち着いているものの。
一時は年子のやんちゃ盛りがわらわらしていて、てんやわんやだったのだ。

「……ってことは、やっぱり足りてなかったんですねぇ。」

「ま、こればっかりは仕方ないわ。増えるものじゃ無いもの。前世じゃどうしてたか全く覚えてないけど、粉ミルク併用だったらしいわ。あんたは飲んでもよく吐き戻してたって言われてたけどね。こっちじゃ胃が丈夫だから吐き戻したりはしなかったんだけど。そもそも、わたくしは上手くお乳を吸えてるのかしら?って思ってたわ。こう……赤ちゃんは乳児期だけ特殊な吸い方をうんぬんって、授業で習ったことがあったから。」

「あーそれは思いますねぇ。哺乳瓶もないので比較できないし分かりにくいですけどぉ。吸ってみても、それが本来の出力なのかぁ。それとも少なめなのか分からないんですよねぇ。夜中とか飲むのに時間がかかってしまってぇ、申し訳ないなぁって思ってましたぁ。」

「うんうん。早く寝て欲しいものね。とりあえずお腹が空いたりオムツ交換して欲しい時は、デュークが泣いてくれるから。お腹が空いて目が覚めても、アシェみたいにスタイを吸ってたわ。どーしても我慢できないって時は、デュークを起こして泣かせてたわね。オムツが濡れてなければ、とりあえずお乳吸わせるでしょ?」

「ふふっ、自分で泣くのは出来たらやりたくないですよねぇ。まぁわたくしは泣く以外に訴える方法が無かったのでぇ、まずは声を出してみて、ダメなら泣いてましたけどぉ。それにしても、リリィ先輩は優しいですねぇ。」

パトリシアがにやにやと笑いながら指摘したことに、リリアーデは照れてプイっと顔を背けた。

「や、優しくなんかないわよっ。わたくしは我慢できるもの。先に飲ませてあげないと可哀想でしょう。」

「はいはい、そうですねぇ。とりあえずぅ、リリィ先輩が生粋のブラコンだってことは分かりましたぁ。」

「もうっ。それよりっ、パティはどうだったのよ!?」

きゃっきゃっと二人が思い出話を話しだす。
二人とも今世の乳児期はうろ覚えながらも、ある程度は覚えているようだ。
この辺りは自我が芽生えていたかどうかが大きいのかもしれない。

そんな二人の会話を、蚊帳の外なアークエイドとデュークは耳を傾けて聞いていた。

「なんでパトリシア嬢はブラコンって言ったんだ?」

「さぁな。リリィがそう言われることに違和感はないが、今の会話のどこをさしたのかは分からない。むしろ、デュークは呼び鈴代わりに起こされてたんだなと、不憫に思ったくらいだ。」

「それは僕も初耳だった。覚えてないから、出来れば知りたくなかったけど。」

デュークは流石にそんなに小さな頃のことは覚えていない。
覚えているのはリリアーデが女性特有の刺繍の勉強中に、デュークは授け子についてやリリアーデと婚姻する可能性などを叩きこまれていたという事だ。
辺境なので武術も魔法も男女問わず必修だ。

二人同時に危機に陥った場合。
どう考えてもリリアーデを助ける方が、シルコット家の存続としてはベストだという事も知っている。
“授け子”はその家系の血筋を残す事に特化しているので、最低でも一人はリリアーデに子供を産んで欲しい。というのが、シルコット家と親族の総意だ。

生命の神への信仰ももしかしたら絡んでいるのかもしれないが、そこまではデュークには分からない。
だが、とにかくその家系の特徴が色濃く、身体の丈夫な子が産まれることは確かだと聞いている。

恐らくリリアーデは何も知らないが、デュークはそのままでいいと思っている。
現状、加護を持っているのはリリアーデだったし、その婚約者は自分だ。
何があってもリリアーデのことはデュークが守るつもりなので、リリアーデはいつもどおり生活をしてくれれば。それでいいのだ。

リリアーデには教えなくても良いと思っていることを隠し事しているのに、リリアーデに隠されるとそれが何なのか気になってしまう。

ずっと一緒に生まれ育ったのに、リリアーデは“授け子”だからデュークの知らない知識と人生を持っている。

それは仕方が無いと思っていても、出来る限り知りたいと思うし。
なにより百合ではなくリリアーデのことは、どんな些細な事でも知りたかった。

リリアーデとパトリシアはきゃっきゃと乳児期や幼少期の話で盛り上がっているが、何回反芻しても先程の会話が良く分からない。

「ねぇ、リリィ。パトリシア嬢。さっきの話。なんで夜中に僕を起こしてたのに、リリィが優しいとかブラコンって話になるの?意地悪とかいうならまだ分かるんだけど。」

デュークの問いにパトリシアはニヤニヤと笑ってリリアーデを小突いているが、リリアーデはデュークから視線を逸らしてしまっている。
どうも隠すつもりらしい。

「隠さなきゃいけないような事なの?隠し事、されたくないっていつも言ってるよね?」

「うっ……別に、隠すような事じゃないけど。どうせデュークは覚えてないでしょ?とっくの昔のことだし、知らなくても良いのよ。」

「弟君は納得してないみたいですよぉ。おねーちゃん、愛されてますねぇ。」

「なんでこれで愛されてるってなるのよ!?」

しばし双子の無言の攻防戦が行われるが、デュークの視線に耐えられなくなったのかリリアーデが折れた。

「おっぱいを貰うのを、必ずデュークが先になるようにしてたのよ。普通、泣いてる方から先にあげるでしょ?」

「まぁ、末っ子たち見てたらそれは思うけど。……それがなんでブラコン?」

リリアーデから答えを引き出したのに、デュークは余計に訳が分からなくなって首を傾げた。

末っ子が双子で、乳母が一人しかいない時は泣いた方から先に乳を与えていたので、理論は分かるが理由が分からなかった。
乳母が二人いる時は、喧嘩しないように同時に与えていたのも覚えている。

「それはぁ、三児の母だったわたくしが教えてあげますねぇ。」

「あっ、パティ!」

慌ててリリアーデがパトリシアの口を塞ごうとするが、手だけの攻防戦を繰り広げながらパトリシアは言う。

「ずばり、お乳だけじゃ二人が満足いくほどの量が無かった、ですねぇ。お乳の量は個人差もありますけどぉ、なるべくデューク先輩にお腹一杯飲んでほしかったんでしょうねぇ。こっちは離乳食が始まるのもすっごく遅いですからぁ。お乳が減り始めると、空腹感が凄かったんじゃないかなぁと思いますよぉ。少しずつ水分は飲ませて貰いましたけどぉ、母乳程お腹は膨れないんですよねぇ。前世の記憶がある自分なら我慢できるけど、普通の赤ちゃんはお腹が空いちゃうと泣いちゃいますからぁ。双子育児で大変なお母さんにゆっくり休んでもらう目的もあったんじゃないかなぁと思いますよぉ。」

「……そうなの?」

パトリシアの説明を聞いて、デュークもアークエイドもなんとなく言いたいことは理解した。

「そうよ。改めて言葉にされちゃうと恥ずかしいわ。っていうか、当たり前の事でしょ?わたくしの方がお姉さんで、しかも大人だった記憶があるのよ?子供を産んだことは無くても、子育ての大変さは色んな所で聞いてたから知ってるつもりだし。……とにかくっ、当たり前の配慮よ。だからデュークが気にすることは何も無いし。この程度で優しいとか言われる必要はないと思うわ。」

リリアーデは少しだけ授け子だったことに負い目を感じていたというのもあるのだが、その言葉は飲み込んだ。
今やデュークだけでなく、テレビで大家族と紹介されるレベルで兄弟が沢山居るので、シルコット家に授け子は不要だったのではと思っている。
それでも両親はリリアーデのことを喜んでくれたし、兄弟が増えてもちゃんと娘として可愛がってくれている。

だから今では気にしないことにしているが、当時はリリアーデが居なければ、デュークはもっと付きっきりでミルクも愛情を貰えたんだけどな。と思ったのも事実だ。
双子は世間から羨ましがられるが、当の本人たちは双子だからこそのしがらみやどうしようもないストレスを感じてしまうことを、二人分の人生を通して知っているので余計にだ。

「覚えてないから分からないけど。リリィに辛い思いさせてたなんて……ごめん。」

「気にしなくて良いって言ってるでしょ?それに全く辛くなかったとはいわないけど、そこまで辛いなんて思ってなかったもの。そんなことよりも、デュークがお腹いっぱいになって幸せそうな寝顔してるのよ?それを見るのが退屈な赤ちゃん時期の至福の時間だったんだから。それならちょっとの空腹くらい我慢するわ。ご褒美が待ってるんだもの。」

赤ちゃんは天使よねぇとリリアーデが頬を緩ませる。

「その意見には同意する。赤子なんて実際見たことは無かったが……。確かに可愛い。天使というのも頷ける。」

「アークの場合、映ってるのがアシェだからだろ。」

「そうかもな。」

「否定はしないんですねぇ。確かにアシェ先輩がちっちゃくて可愛いですし、手のかからなさなんて天使過ぎますぅ。ちなみにぃ、母親目線で言わせてもらえばぁですけどぉ。どれだけ手がかかってもかからなくても、不細工だろうが何だろうが、我が子ってだけで世界一ですよぉ。何人いても皆世界一ですぅ。まぁだからこそ、前世の心残りになっちゃったんだと思うんですけどねぇ。」

「わたくしも子供がいたら、子供のことが心残りになってたのかしら?まぁ、どう考えても子作りなんて無理だったし、IFもしなんて今更考えたって無駄ね。あら、テレビが消えちゃった。」

わいわいとお喋りしている間にも映像は細切れに続いていて、アシェルの日常を映し出していた。

珍しくアシェルが身振り手振りでデザートのお代わりを要求していたのが印象的だったが、日常の中の変化といえばそれくらいだった。

早送りや細切れだったとしても、アシェルの姿が視界から消えたことで、アークエイドは心の中に消失感を感じていた。

手を伸ばせば届く距離にアシェルの身体があるのに、胸の底から込み上げる愛しさは映像の中のアシェルに感じている。
もちろん横たわるアシェルの姿を愛しい彼女だと認識しているが、何といえば良いのか。

隣に。
より傍に居たいと思うのは、映像の中で動いているアシェルなのだ。

時計を見れば既に外は真っ暗な時間で、王宮であれば晩餐を済ませたくらいの時間だ。

テレビがもう一度点かないことが確認され、視聴していた全員がそれぞれの日課に戻る。

初日の映像だけでアシェルが約半年過ごす姿が映されていた。

映像の中でアシェルの成長が間接的にでも見れるのは、少し嬉しいと感じる自分がいる。
その隣にアークエイド自身が居ないのが残念だと思うが、それと同時に出会う前のアシェルの姿を見れていることが嬉しいと思うのだ。

食事が寝室に運ばれてきて、それに合わせてリリアーデがアシェルに点滴を繋ぎ始める。

点滴でアシェルの身体に栄養補給している間にアークエイド達も食事を済ませ、その後は身体を拭いたり腕や足を動かして運動させたりして就寝なのだ。
仮眠や食事の為に応接セットを一つ寝室に持ってきている。

メイディー一家は応接間の一角で寝泊まりしているが、寝室にはアークエイド達と使用人が必ず一人毎日交代で寝泊まりしている。
それ以外の使用人は使用人室と書斎に分かれて寝泊まりしているようだ。

本来なら男女共同の寝室はあり得ないのだが、アークエイドがアシェルの傍を離れたくないこと。
夜間でもアシェルの身体の向きを変える援助は必要なので、リリアーデとパトリシアが交代でお世話するために近くにいる必要があること。
さらには各所に分散して寝る場所もないし、メイディー一家に水を差さないようにというのもあってこの形に落ち着いた。

アークエイドに関しては自分の学生寮に戻れば良い話しなのだが、幸いアベルは役に立たないアークエイドがアシェルの傍に居ることを許してくれている。
ただ傍に居る事しか出来ないのに。

今こちらにあるアシェルの身体は穏やかな表情で眠っている。

その寝顔をそっと撫でて、今日も一日を終える。

この日からアシェルの身体を維持する“古都”では、“アンブロシア”にいるアシェルの成長を見守るという日課が追加されたのだった。

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