2021年9月2日生まれの僕は

十二滝わたる

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2022年夏 水族館と動物園とデモの

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 生まれてから最初の寒い冬が過ぎ春になると、パパとママは幾度となくの海岸通りの水族館や小高い山にある動物園に僕を連れて行ってくれた。

 生まれて数ヶ月しか経てない僕は、乳母車に乗せられ、時には抱っこされながら、魚の泳ぐ姿や自由に檻の中で戯れている動物たちを見るのがことさらに好きだった。

 移動する車の中では、チャイルドシートがのゆりかごのように適度に振動するため、いつも爆睡した。そのうち、子供のくせになかなか昼寝をしないから、寝かせるときはママが必ず車でドライブする。毎日1時間程のドライブが僕のスケジュールにいつも組み込まれている。

 ママは毎日のように歩けない僕を抱っこして家の前を流れる喩え長江の堰堤を散歩してくれた。川の流れに乗ってやってくる風の匂いは、初冬から春、そして真夏へと移り変わっていくのが解った。季節のうつろいを伝えてくれるのは、しだいに緑を増してくる植物の成長や寒暖を感じる気温の変化だけではない。五感を敏感にして、僕は季節を感受し、僕の器官を通して僕の成長も感じとった。

 また、ママはほぼ毎日のように子供遊具施設を探しては僕を連れていってくれた。平日の施設は、フィバーの真っ最中のせいか、いつも親子は少なかったけど、その分僕の貸し切りのようになる。

 そこでも僕は、匍匐前進から立上り、伝え歩きと這い這いへと体を動かす術を進化させながら僕の意志のままにやりたいこと自由にやる。

 そんな日課が終わると、かなりの頻度でジィージの家に顔を出す。ジィージは喜んで僕を車まで迎えに来てくれるし、ケイちゃんは美味しい離乳食おやつを作ってくれる。ここでも僕のやることは子供遊具施設でやっている好奇心そのままの行動だ。

 ママと駅前をドライブしていると、時々大勢の人が張り紙のようなものを持って道路沿いに一列に並んでいるのに出くわすことが何度かあった。戦争反対、改悪反対のパフォーマンス行動らしい。

 よもやこの種の過去の遺物的な形態の戦争が、21世紀になって蘇るとは誰が想像したであろうか。歴史は終焉するどころか進歩することもないままに、ただ3000年の時を経過したに過ぎなかった。高度な物質的な技術が戦禍の程度を甚大にしている。

 話せば分かるなら武器はいらない。話せば分かると話しかけても問答無用と武器はくる。武器を持たなければやられてしまうから抑止のために武器を持つ。武器を持っていれば使いたくなる。抑止のためにさらにより沢山の武器を持とうとする。

 理想が現実を超えられるのであれば、それが理想には違いない。

 Oフィーバー、前近代的な戦争、至るところで分断され矛盾を露呈する社会と世界は複雑化していく。

 僕の周りには様々な黒い物質が降り注いている。

 けれど、今の僕は、目の前にあるどこまでも転がる赤い丸いボールが気になって仕方がない。

 
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