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砥峰高原のノルウェーの森
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砥峰高原から程近いゴルフ場で年末のプレーをする。
関西のこの辺は冬になると芝は冬枯れとなるまでも、雪がフェアーウェイに積もるということはほとんどない。
気圧配置が多少気になりながらも、友数人とラウンドを楽しんだ。
昼食をとった頃からチ珍しく鳥の羽がふわふわと舞い降りるかのように、大きくまとまった雪が、情緒良く降りてくる。
「冬の到来か」などと流暢に構えていると、一向に止まない大粒の雪は、そのうちにフェアウェイ全体を白黒塗りつぶし、周囲の紅葉の後に僅かに残っていた枯れ葉をまとった木々をもクリスマスツリーのように着飾ってきた。
「クローズだな」と仲間と話していると、案の定、ゴルフ場のカートが現れた。スタイルのいい若い女性二人だった。
「クローズですか」と聞くと、
「いいえ」と答える。
明らかにプレーを止めて帰りましょうの雰囲気だが、向こうからはクローズを言い出さない。
「雪が積もって来てますが、プレーは自由ですよ」と言う。
こうなると、スタッフと我々の我慢比べだ。
数ホールしたものの、スタッフは黙ってプレーを後ろから追いかけながら見守っている。
グリーンのボールが縦に雪が着いてタイヤのようになり、パタンと倒れるのを見て、断念した。
「参りました、止めます」
若い女性のスタッフ二人は無線でフロントに電話して、今、最後のお客様がプレーを止めますと伝えている。
我々のカートとスタッフのカート二台で分散し、スタッフの運転でゴルフハウスまで戻ることとなった。
スタッフはなぜかこの雪のなか、長袖のシャツ一枚で、雪を被ったシャツは寒そうでありながらも、下着も透けて見えるほど濡れていた。
何故か、二台目は僕ともうひとりのスタッフの二人だけが乗った。
前のカートは人数分も多いせいか、急な勾配のある砥峰高原にも似た風景の中を、タイヤもスリップすることなく雪のカート道をたどって行けたようだ。
僕と彼女のカートは雪道に苦戦して、おいて行かれてしまった。
雪はどんどん酷くなってくる。
雪でゴルフ場で遭難、そんなことも頭をよぎった。
彼女は勾配の緩いコースを探して戻りましょうと軽く言うと、軽やかに、明らかにオーバースピードと思われる早さで雪のゴルフ場をカートで疾走する。
彼女は何かハミングしている。
注意して聞いていると、それはビートルズのノルウェーの森であることがわかった。
砥峰高原を二人でカート疾走する姿をドロー映像のように思い浮かべた。
透けた下着の彼女に対して、「雪のなかの素敵なドライブデートだな、最後まで我慢した甲斐があったな」と、僕が爽快な風を受けながら呟くと、
彼女は笑いなが「もちろん」と答える。
関西のこの辺は冬になると芝は冬枯れとなるまでも、雪がフェアーウェイに積もるということはほとんどない。
気圧配置が多少気になりながらも、友数人とラウンドを楽しんだ。
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「冬の到来か」などと流暢に構えていると、一向に止まない大粒の雪は、そのうちにフェアウェイ全体を白黒塗りつぶし、周囲の紅葉の後に僅かに残っていた枯れ葉をまとった木々をもクリスマスツリーのように着飾ってきた。
「クローズだな」と仲間と話していると、案の定、ゴルフ場のカートが現れた。スタイルのいい若い女性二人だった。
「クローズですか」と聞くと、
「いいえ」と答える。
明らかにプレーを止めて帰りましょうの雰囲気だが、向こうからはクローズを言い出さない。
「雪が積もって来てますが、プレーは自由ですよ」と言う。
こうなると、スタッフと我々の我慢比べだ。
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「参りました、止めます」
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スタッフはなぜかこの雪のなか、長袖のシャツ一枚で、雪を被ったシャツは寒そうでありながらも、下着も透けて見えるほど濡れていた。
何故か、二台目は僕ともうひとりのスタッフの二人だけが乗った。
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