Hearty Beat

いちる

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    思わず圭はその隣の温もりをそのまま抱きしめた。
「……七生さん、抱かせて下さい」
 返事は無かったけれど、そっと腕が背中に回される。
 自然と二人の唇は重なり、薄く開けられた隙間から舌先をねじ込み、お互いの味を確かめる。
 柔らかく蠢く七生の舌先が圭の口内を弄ぶ。
 鼓動の高鳴りと、下腹部に感じる熱がもどかしく、そのままソファに押し倒そうとしたら七生が腕の中から抜け出した。
「シャワー浴びてくる。……ベッドで待ってろ」
 ふっと、目を細めて笑うと、七生は立ち上がりながらTシャツを脱ぎ捨てる。
 そうして、圭はコンビニの袋を投げられた。

    御堂家で一番生活感が無い部屋はここじゃ無いかと思うくらい、寝室は殺風景でベッドしかなかった。
   どうやら日頃は防音室で曲を作りながらそのまま寝てしまうか、リビングのソファで眠ってしまうらしい。
   圭はコンビニの袋からローションとコンドームを出すとベッドの端っこに置いた。

    女の子とは経験がある。
    ネットで男同士のやり方も調べてきた。
     だから、大丈夫、な、はず……。
     ベッドに腰掛け落ち着くために深呼吸をする。

     誰かとセックスするのにこんなに緊張するのは初めてだ。
    自分が抱く方で、いいんだよ、な?
    さっき、抱かせてくれと言ったら否定はされなかった。

   ぐるぐると頭の中で今までの経験とネットでの知識を結びつける。
   四つ年上の恋人を失望させるわけにはいかない。

「はあ」
   ともう一度ため息にも似た深呼吸をすれば、部屋のドアが開き、シャワーを浴びた七生が髪の毛をタオルで乾かしながら入って来た。
「……んだよ、ため息って、どういうこと」
 不機嫌そうな低い声が圭を攻める。
「あ、いや、これは」
 深呼吸です、気持ちを落ち着かせるための。
 そう口に出す前に、にやりと笑いながら腕に飛び込んできた七生に唇を塞がれた。

「あ…ああ…」
 足を身体で割り入れて開かせ、ローションをまぶした指を七生の後孔にあてがう。
 
 先ほど自分もシャワーを浴びると七生の身体を押しのけようとしたが、お前は良いんだとキスを強請られた。
 押し倒されてぴちゃぴちゃと音を立てるキスをしているうちに、七生が下になっていた。
 色は白く、細く、でも華奢というわけでは無く、引き締まった身体。
 首筋から、胸の淡い突起に唇を這わせた。
 コロコロと舌先で弄れば、つんと尖りをみせる。
「あ……それ……」
 七生の腕が圭の背中に回され、もっとと言わんばかりに抱きしめられる。
「気持ちいいんですか」
「あ……うん……」
 もう片方は指で撫でれば下腹部の二人重なった部分に熱を持ってくるのが分かる。
 はあ、と時折甘い声を吐き出す七生に圭の下腹部も固さを増す。

 ああ、ちゃんと感じてくれているんだ、と圭は安堵した。

「お前、男、初めてだよな?」
   くちゅりくちゅりとローションのぬめりを借りて七生の後孔を解せば、腕の中で七生が言った。
「そうです。七生さんが最初の男です」
   一本がすんなりと飲み込めたら、今度は二本。
   孔を広げるために中で指を広げればきゅうっと奥に誘うように壁が蠢く。
「……平気そ?」
「何を言ってんですか」
   圭は七生の手をとり、自分の下半身の熱に誘った。
「もう、こんなんです」
「……はは、若いなあ」
 七生の瞳にも安心の色が浮かんだ。

 三本の指がすんなり入るようになったとき、中で動かしていた指がしこりに触れたのか、七生がびくりと腰を揺らした。
「えっと、今のが、七生さんの気持ちいいところ?」
「ん」
 頬を上気させ、軽く頷く姿に、また圭の胸は高鳴る。
 潤んだ瞳がまっすぐに自分を見ていてくれるのが嬉しい。
 けど。
「七生さん、挿れて、いい?」
「ん?……ああ、多分、もう、大丈夫」
「ん、分かった」
 ちゅ、っと額にキスを一つ落として、圭は七生の身体をくるりとうつ伏せにすると、腰を高く上げさせて、掴む。
「圭、……お前の顔見て、……やりてー、けど……」
 枕に顔を埋めて少し苦しげに七生は言った。
「こっちが楽だって、ネットで、見ました」
 それに。
「七生」
 七生の双丘を割り、丁寧に解した薄い桃色のそこに自分自身の切っ先を当てながら、圭は七生の名前を呼んだ。
「七生」
 少しだけ力を入れれば、その綻んだ蕾は嬉しそうに圭を呑み込み奥へと誘う。
 蠢く中のしこりをカリの部分で擦れば七生の身体が揺れる。

 日頃は呼び捨てにはしないから。
 俺の顔が見えないなら。
 ちゃんと、あの人に抱かれてるって思えるでしょう?
 七生さん。

「あ……け……い……」
 ゆっくりと奥まで沈めたら、もう一度七生の腰を抱きしめなおした。
「動くよ、七生」
 そのままでも中の熱さに持って行かれそうになる。
 最初はゆっくりと、でもそんな我慢は長くは続かなくて。
 気付けばその身体を貪るように、圭は七生の身体を突いていた。
 あがる嬌声と、甘い吐息と。

「ヒ……ロ、キ……」

 微かに聞こえた、違う男の名前と。

 ね、だから、七生さん。
 俺の顔見えない方が、いいでしょう?

 唇をかみしめながら、圭は七生の奥に、欲望を放った。
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みんなの感想(2件)

きのこ
2023.11.29 きのこ

更新をワクワクしながら読ませていただいてます。
活動からお休みして再活動…作品の更新もバンド活動のようです。

圭くんと違って七生さんの心理描写が出てこないので、そこが切なさを加速させます。
32話最後の残酷さ。それを予想して行動していた圭くん。もう胸が張り裂けそうです…。

過去を重ねず二人が同じ未来にすすめますように。
続きを楽しみにお待ちしています。

解除
夜曲
2023.11.07 夜曲

こんにちは!

バンド関係は未知の世界なので、こちらの作品で自分が余り馴染みがないが世界知れるのが嬉しいです☺️

しかも今日の更新で!キャーキャーキャー🤭秘密が一つ明かされましたね!
それを知って、今後どう動くのか!

続きを楽しみにしています🎵


(完全に一読者として感想書かせて頂いてるので、お気遣いなく〜)

2023.11.08 いちる

ありがとうございます
音楽好きなのと身内に音楽関係の職業がいるのですが妄想をミックスしながら書いています。ので業界の事はあまり信用しないでくださいね(笑)
やっと七生が圭にこだわる理由が出てきました。
七生の気持ちはどこに向いてるんでしょうか?
考えながら書いています。

解除

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