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始まりの王国
勇者、さらなる試練に挑む
しおりを挟む「うぅ……もうダメ…」
俺は地面にぺたんと座り込んで、プルプルと震える腕を抱えた。
アルヴァさんの“徹底した基礎訓練”は想像以上にキツかった。剣を振るのではなく、操る――言葉にすると簡単なのに、実際やってみると全然うまくいかない!
「これぐらいで音を上げるとは、まだまだですね」
「うぅ、アルヴァさん……俺、もう腕が上がらないよぉ……」
ぶんぶん腕を振ってアピールしてみるが、アルヴァさんは涼しい顔で見つめてくるだけ。ちょっとぐらい労ってくれてもいいのに!
「その程度でへこたれていては、いざという時に戦えませんよ」
「いやいやいや! いざっていう時には、俺だって本気出すし!」
「そういう人に限って、いざという時に動けなくなるのです」
「ぐぅ……アルヴァさんが言うと、なんか説得力ある……」
「それに、あなたは剣士ではなく勇者なのですから、本来であれば剣など不要なはずなのですが」
「それを言っちゃダメぇぇぇ!!」
俺は両手をバッと広げて、アルヴァさんの口をふさぐフリをする。
「俺が剣に慣れ始めてきたっていう大事なタイミングなんだから、そこを否定しちゃダメなの! ダメなんだからね!」
「……わかりました、わかりました」
アルヴァさんは軽く肩をすくめて、俺の熱弁を受け流した。うぅ、やっぱりこの人、俺の扱いに慣れすぎてる……!
「ですが、あなたは確かに成長していますよ。以前は剣をまともに握ることもできなかったのに、今ではこうして振ることができるのですから」
「……そ、そう? へへっ、もっと褒めてもいいんだよ?」
「褒めすぎると調子に乗るでしょう?」
「うぐっ……言い返せない……!」
でも、アルヴァさんにちゃんと成長を認めてもらえたのは、やっぱり嬉しい。
俺、少しずつだけど強くなれてるんだ――。
「さあ、休憩は終わりです」
「えっ!? もう!?」
「剣の修行は終わりませんよ、勇者殿?」
「うわぁぁん!! アルヴァさんの鬼ぃぃぃ!!」
俺は地面に転がりながら、全身で抗議の意志を示した。だが、アルヴァさんはそれを冷静に見下ろし、腕を組むだけ。
「そもそも、基礎訓練で泣き言を言うなど、早すぎるのでは?」
「いやいや、これ、基礎の範疇超えてるからね!? もう俺、腕がもげるかと思ったんだけど!」
「では、腕がもげるほど頑張ったのですね。ならば、もう少しだけ耐えられるはずです」
「論理が破綻してるぅぅ!!」
ジタバタと抗議する俺をよそに、アルヴァさんは片手を差し伸べてきた。
「立ちなさい、誠。次は回避の訓練です」
「ええぇぇぇ!? 今度は避けるの!?」
「剣は攻撃のための道具ではなく、防御のための道具でもあります」
「いや、それは確かにそうなんだけどさぁ……。俺、まだ満足に振れるようになったばっかりなのに……」
「だからこそ、次の段階に進むのです」
「アルヴァさんって、もしかしてドS……?」
「何か言いましたか?」
「いえ……言ってません……」
アルヴァさんの鋭い眼光に、俺は慌てて口をつぐんだ。
仕方ない、やるしかないのか……!
俺はよろよろと立ち上がり、剣を構える。すると、アルヴァさんは剣を鞘に納めたまま、俺に向かって軽く手を広げた。
「では、始めますよ」
「……え、ちょっと待って、俺、心の準備が――」
言い終わる前に、アルヴァさんの体がブレた。
次の瞬間――俺の視界から、彼の姿が消えた。
「えっ……?」
驚く間もなく、背後にゾワリと冷たい気配。
「遅いですね」
「うわぁっ!?」
慌てて前に飛び出すと、すぐ後ろにアルヴァさんがいた。いつの間に!?
「これが回避の訓練です」
「ちょっと待って、何その瞬間移動!? 俺にできるわけないじゃん!」
「これは瞬間移動ではありません。ただの移動速度の違いです」
「いや、それは嘘でしょ!? 絶対おかしいもん!」
「では、できるようになるまで鍛えましょう」
「うわぁぁぁぁ!!」
それから数時間――。
俺は何度も地面に転がされ、転び、転ばされ、そしてまた転んだ。
「ふふ、あなたの動きも少しは良くなりましたね」
「ぜんっぜん嬉しくないぃぃぃ……」
俺は地面に大の字になって、ぐったりと息をついた。アルヴァさんはそんな俺の姿を見て、微かに笑っているような気がする。
「では、今日の訓練はここまでにしましょう」
「ま、マジで!? やったぁ……!」
俺は勢いよく飛び上がり、バンザイのポーズを取る。
アルヴァさんは呆れたように首を振るが、どことなく優しげな眼差しをしていた。
「お疲れ様です。誠様」
「ふふん、俺、頑張ったよね? もっと褒めてもいいんだよ?」
「調子に乗るのもほどほどに」
「うぐっ……!」
それでも、アルヴァさんに認めてもらえるのは、やっぱり嬉しい。
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