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香茂家の事情
叔母の願い
しおりを挟む「葛葉子ちゃんを早く子供や家庭を作らせるように促したのは宿命だったのね……」
真陽はそう納得したようにつぶやいた。
そして、涙が止まらない…
どうしても二人を結ばせてしあわせになって欲しかった。
二人よりも強くそう思っていた…
そして、念願叶った時に葛葉子の寿命のことを告げられてなおさら幸せになって欲しかった…
でも、寿命のことは信じてなかった…信じたくなかった…
なのに…
「ほんとに十五年しか生きられなかったなんて…」
信じたくは無かったけれど、病に苦しむ葛葉子を見て真陽は覚悟を決めて、まだ幼い子供たちの面倒もきちっと見ると約束もして、瑠香がヘタれるだろう事も予期して、真陽は葛葉子の葬式をやり遂げた。
自分がしっかりしなくてはと泣きはしたが気丈に振る舞いすべてを整え終えた。
そして気が緩んで真陽は夫の春陽の胸で泣く。
葛葉子の死に顔はとても幸せそうだった。
一生分の幸せを全て味わったというように感じた。
瑠香は暫く葛葉子から離れなかった。
言葉を失ってしまったみたいだ。
子どもたちもそうだ。
だけど、桂と薫は瑠香に暴言吐かれて、口を聞きたくないみたいだった。
だらしのない弟に可愛い甥っ子達を任せることなんて到底できなかった…
それから約二年後…
悲しみが思い出になった日のこと。
「春陽、わかる?聞こえる?」
「…まさか、葛葉子?」
隣で生まれたばかりの子供を抱いて眠る真陽は気がつかない。
三十路になった春陽は香茂の当主になった。
陰陽寮には香茂代表として瑠香が常に宿直をしているので香茂家の運営で毎日が忙しい。
「疲れているところ起こしてごめんね。」
「い、いや、別に構わないけど……」
「春陽は魂を見るの得意だったよね。」
いつかは葛葉子を見る事はあるだろうと思っていたが…
やはり死んでいるものを目の前にすると悲しい。
しかも、とても親しい親戚だ…
「伝えて欲しいんだ。真陽姉さんにも幸せだったよって…」
葛葉子は、真陽と赤ちゃんを見て微笑む。
最初に結んだ縁はこの母娘だから…
「わかった…あとは?」
「あと、子どもたちの事ありがとう
瑠香はあの通りだから…いつか和解すると思うけど…」
「それが心残りでこの世にいるの?」
家族崩壊状態では心配で上がれないだろうなぁとは思っていた。
葛葉子は微笑んで否定する。
「私、死んでからも使命あるみたいだから。この通り普通の幽霊と違うでしょ?」
確かに、オーラが金色に光っていて神のようだ。
なかなか子供が授からなくて諦めていた時に似たような光を感じたことがある。
これは葛葉子のお陰だったのかと思うと妻子を愛おしく見る。
ふふふっと葛葉子は微笑んで。
「だから、悲しまないで!
私、頑張って縁結びの御役目してるから!」
生きていた頃のように元気な幽霊というか、神格化している魂に安堵し春陽はふふっと泣き笑いする。
真陽に嫌がられているこの能力もすてたもんじゃない。
今やテレパシーで会話もできるようになった。
一人で喋ってる春陽を不思議に思い起きて、
「あなた?何、笑ってんの?」
「真陽…あのね、さっき…」
さっきの事を話すと真陽はとても喜ぶが、悲しく切なくて涙も出る。
そんな真陽を抱きしめて幸せな気分で眠りに落ちる事ができた。
桂と薫は真陽に引き取られ無事成人した。
「真陽叔母さんは第二のお母さんだよ!」
と言われるととても嬉しい真陽だった。
「そう言われたいがために、葛葉子ちゃんに早くあんた達を産みなさいって促してあげたのよ。」
と、胸を張って言う。
「そんで、あんた達は瑠香に孫を早く作って幸せにしてあげなさい。あの子は私の弟だから可愛い孫娘が出来たらデレデレになるわよ!」
現に、姪っ子の日向をかわいがってたりする…
きっと孫が出来たら葛葉子にしていた態度を取り戻すと真陽は確信を持って甥っ子達に促したのだった。
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