ネトウヨのお姫様

花咲マイコ

文字の大きさ
6 / 28

6.スマホ取り上げられる

しおりを挟む
 李流の悪い予感はあたった。

 女性週刊誌で、
【祈り姫はネトウヨだった?!】 のという見出しが踊った。

「ネトウヨでなにが悪いの?」

 法子は首を傾げる。
 ネトウヨと言われる書き込みはほとんど愛国的な書き込みで、反日するコメントと闘っている。

 それは悪いことではなく当然な事だと法子は思っていた。

『ネトウヨ』と言われて悪い気は全くしないのだ。
 むしろ『愛国者』と言われているようなものだ。

 それなのに、『悪者』ように書かれている意味がわからない。

 それは、ツーチャンネルを良くないモノと思っているマスゴミの策略か、一般人が感じたものなのかは不明だが……


 李流は眉間に指を当てて渋い顔をしている。

「たしかに、愛国者は悪いことではなく当然なことなのですけど、未だに反日左翼の思想が国民の思想になって、愛国者は悪というプロパガンダが蔓延っているのです…」

 法子も覚えがあるし、それが原因でいじめられた。
 はやく、国民が国を愛する国になれば良いと願っていたけれど、十年経ってもなかなか変わらないなんて……

 法子は悲しくなる。
 なぜ国を愛せないのかと……
 いや、ネット上ではいるのだ。
 まだ少ないけれど……
 流石に法子は難しい顔をする。

 そんな法子の心を慰めたいけれど、問題は週刊誌の見出しの意味は祈り姫、皇室を傷つけていることに気づいていない。

「ネトウヨの定義が
【差別主義者、民族主義な発言をする差別主義者】ですからね…
 一般人にはそう取られて、法子様は差別主義者というレッテルを貼られた……という事です。これは皇室に対しても由々しき問題です」

 李流は断言する。
 これをリークした人間が宮中にいると言うことが最大の問題だ。
 それを知っているのは法子の側近の者達しかいない。

「所詮、週刊誌目くじら立てることないじゃないですか?」
 トミがフォローのつもりか口を挟むが、李流はきっと目を釣り上げて、
「女性週刊誌くらいしか皇室のことを良くも悪くも噂にはしないでしょう、それを誰かが流したことが由々しき問題なのです!」
ピシャリとトミの言葉を否定する。
 皇室を汚されたに怒りを李流は怒りを隠さない。

 トミはその容赦無い李流の言葉にへこたれることなく、

「だったら、スマホを本当に使わなければいいのですよ、そもそも李流さんの原因ではないですか」

 李流は一番怪しいのは新人のトミだと思いながら口に出さない。

 ミヤコとトシコの報告で怪しい侍女とも報告を受けているが、まだ確証はないのだから……

 トミの言うとおり一番悪いのは自分だ。

 結局法子に甘く、スマホ取り上げなかったのだから……

 法子の側近たちも気まずい雰囲気が流れる。
 疑われてよい気分しない。

 李流は一つため息をつく。
 法子の側近たちに
「疑うことを言って申し訳ありません……」

 深々と、頭を下げる。

「いえいえ、私達も忠言しなかった事も悪いのですから」

 普通は外にもれないプライベートのことは女性週刊誌の飛ばし記事でもあるけれど、ホントの事でもある。
 それが確実に漏れているのは確かなのだ。

 対策は必要で、まずは改めるのは自分からだ。

 李流は法子の方に向き直ると、すっごい笑顔だった。
 逆にその笑顔が怖い。

「こう、噂が広まったからには、スマホは没収ですね?」

 有無を言わせないと言うよりか言えない。
 李流のスマホが原因かもしれないけれど使ってた自分も原因だ。

 あんなにスマホを返すのを拒んでいたのに、おずおずと素直に返す。
 李流の手にスマホを握らせるのと同時にその手を両手で挟む。

「うー……恋愛アプリもやりたい」
そういうゲームもやってたのか……
「それは私がいる時一緒にやりましょうか?」
 自分との恋愛では不満なのかな?と内心少しショックだった。
 二次元とは違うと思うが……

「じゃぁ、私の部屋でみてくれるか?」
 法子はさらに上目遣いで懇願する。
「え?」
 不意のしぐさにドキッとする、李流は法子の昔言葉に弱い。

 どんな脅しでも、スマホ取られたくないから作戦を変えてみる。

「わたしは李流を信頼してるから部屋で見ても問題無いでしょ?」
 恋人に信頼とは矛盾している……
 降嫁するまで手を出さないつもりでいるけれど

 さらに色気で押してみる。

「スマホでどんなもの読んでるの分かるのは李流だけなら問題なかろう?」

「私達も、法子殿下がネトウヨだと、他言しません!
 姫様の僅かな楽しみを奪わないで頂けませんでしょうか?」
 李流だけが法子に甘いのではなく側近たちもやはり法子に甘かった。

 日和国の若い親王殿下は安泰なほどに沢山お生まれになったけれど、姫巫女になりたる内親王は法子様しかいなかった。

 けれど、五年前に女宮が生まれたので、最低でも5年経てば、祈り姫の任を交代できる。

 祈り姫は宮に隠り祈ることが公務で外の世界は憧れなのだ。
 法子のはツーチャンネルだけではなく、海外反応や我が国がどのように評価されてあるのかを見るのも、文化を動画で見るのも好きだった。

 外に出られない分スマホは外とつなぐアイテムでもあることを李流、側近は知っているから放置した。

「私がいる時限定ですからね」

 顔を背けて譲歩した。
 結局甘い。

「李流ありがとう!」

 法子は李流に抱きつく。
 法子の満面な笑顔は昔から変わらず可愛いと李流は思って頭を畏れながらなでてしまう。

 ずっとスマホいじれないのは辛いけれど、こんなふうに誰にも遠慮無く李流とイチャイチャ出来ると思うと一石二鳥だと法子は思った。

 けれど、二人きりで部屋でスマホを観る。
 それって、念願のプライベート!ホントの恋人の関係が築けるかも!それこそ、週刊誌の大スクープになってしまうかもー!?
と、
 李流が仕事に戻ったあと、侍女たちとキャッキャッと今時の乙女のように話していたことは女性週刊誌の話題にはならなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...