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8.破局
しおりを挟む「あなたが憎むニダの国の……しかも王族の血が私の中に流れているのです…」
李流は、悲しげにそう告げた。
「それ……ほんと…なの?」
信じられなくて法子は声が震える。
そんな法子に一歩李流は詰め寄る。
李流が近づくと法子は一歩無意識に下がった。
ちょうど後ろにベッドがある……
「……はい…」
李流はつぶやくように肯定する。
その声音は苦しそうにも感じる。
「統治時代に日和帝国から当時は李国と呼ばれていたニダ国に嫁いだ祈り姫と間にできた子供が祖父です」
当時の李国の風習で、最初に出来た子供は『不義の子』として、死刑になるのです。
それを不憫に思い侍女に子供を預けて、祖父は生き延びた。
後に預けられた祖父は、祈り姫が懇意にしていた桜庭の宮の養子になった。
祖父が、祈り姫の子どもという証に宮姫のみに伝わるペンダントを母との繋がりの証に大切にしていた。
ペンダントの中には宮家しか知らない外への抜け道の地図が彫ってあって、その真実を確かめるために、内裏護衛という皇室を愛する若者しかつけない伝統衛士になり、地図に従い、法子に出会った。
李流は襟元のボタンをはずし首にかかるペンダントを見せる。
法子もそれには、見覚えがあった…
李流が捕まった時に、落ちていた法子も持っているペンダントより古いもの。
やはり李流のものだったのだ。
と思うものの、
胸元を開けた李流は少し、婀娜っぽい……
「そして、陛下に直接お会いした時に、このペンダントをご覧頂き、祈り姫の子孫で皇室の一族だとし、私達の縁を認めて戴いたのです……」
更に李流は法子に近づき、憂いの瞳で見つめて法子の右手首を掴んで、そのままベッドに倒れ込む。
「きゃ!」
法子はあまりのことに後ろにベッドがあることに気が付かなかった。
ベッドのバネにバウンドする体に李流がのしかかる。
「この真実を知ってあなたは……」
法子は、仰向けになって李流の顔を仰ぎ見る。
いつもの優しい柔和な表情ではなく、厳しい、責めるような表情、眉間にシワが寄って怒っているような真剣な表情。
「ニダの国の血をも受け継ぐオレを……
人間以下の汚らわしいモノを愛してくれますか……?」
李流は息がかかるほどに、顔を近づけ、法子の頬に触れ、親指で、唇の輪郭をなぞる。
その行為はどこか冷たく、冷淡に感じた。
無理やり親指で顎を引き唇を開けさせる……
「……っ!」
願っていたことなのに……
キスして欲しいと思っていたけれど……
「やっ……やめて!」
パンっと李流の頬が鳴る。
押さえつけられてない左手で李流頬をひっぱたいてた。
フッと李流は険しげな表情をやめて、悲しげに眉をひそめ、ベットから離れる。
法子は李流が勘違いしたのかもと、ベッドから起き上がり、
「あ…違うの…口づけをしようとしたから……」
法子はドキドキが止まらない、顔が赤いのがわかる。
「唇は今までしてないじゃない!それに雰囲気が怖かったからで、嫌いってわけじゃないわ!」
必死に弁護をする。
嫌いじゃない
嫌いじゃないけど…
あまりの突然な告白と行動に、どうしたらいいのかわからない…
ニダは嫌い、
でも、李流は大好き、
そんな李流がまさか、
ニダの血を引いていたなんて知らなくて、混乱している事は冷静にわかるのに、どうしたらいいのかわからない……
李流はひっぱたかれた頬を抑えながら
「これは当然の報いです……」
李流は法子に背を向けて扉に向かう。
扉を開けて、最後に法子に振り向いて、
「本来、こんな汚らわしいオレが祈り姫のそば近くにいる事は相応しくもないのです」
とても悲しげな表情をしている。
その悲しい表情が、法子の心臓をキュッと冷たい手に掴まれたように苦しく痛い……
「さようなら……
『祈り姫』……」
扉がバタンと閉まるのと、法子の心臓が一瞬止まるのが同時だった……
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